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掲載日:2024年4月2日

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答申第31号 「教職員に係る係争中の争訟事件等の調査について(報告)のうちの「様式10 懲戒処分等(体罰に係るもの)」の部分公開決定(平成16年8月6日)

答申第31号(諮問第25号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県総務部公文書センター所長(以下「所長」という。)が平成8年8月30日付けで行った、教職員に係る係争中の争訟事件等の調査について(報告)(平成8年5月24日決裁)のうちの「様式10 懲戒処分等(体罰に係るもの)」(以下「本件文書」という。)を部分公開とした決定は妥当である。

2 審査請求及び審査の経緯

(1) 本件不服申立人(以下「申立人」という。)は、平成8年7月3日、埼玉県行政情報公開条例(昭和57年埼玉県条例第67号。以下「旧条例」という。)第5条第1項の規定に基づき、所長に対し「教職員に係る係争中の争訟事件等の調査報告書(文部省への回答)のうち様式10(体罰に係る懲戒処分等)1994から1996年度起案分教職員課」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

(2) 所長は、本件請求に対する行政情報を本件文書と特定した上で、平成8年8月30日付けで部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、申立人に通知した。

なお、公開しない行政情報及びその理由は、次のとおりである。

  • ア 公開しない行政情報
    1 「体罰を行った教師の概略」のうちの教職経験年数及び現在校在籍年数
    2 「体罰の概略」のうちの年月日、時間・場所及び行為
    3 「体罰を受けた児童生徒の概略」のうちの人数、学年及び健康状態
    4 個人を特定し得る部分
  • イ 公開しない理由
    個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るものであり、旧条例第6条第1項第1号に該当するため。

(3) 申立人は、平成8年9月23日付けの審査請求書により、埼玉県教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、部分公開決定により公開しない行政情報とされた部分のうち、「(事件)年月日」について公開すべきであるとして、不服申立てを行った。

(4) 当審査会は、本件不服申立てについて平成14年3月26日付けで実施機関から埼玉県情報公開条例(平成12年埼玉県条例第77号。以下「新条例」という。)第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会の本件審査に対し、実施機関から平成15年2月5日付けの開示決定等理由説明書の提出を受けたが、申立人から実施機関の当該説明書に対する反論書の提出は受けていない。

(6) 当審査会は、平成16年2月16日に、実施機関の事務局である教育局の職員から事情聴取を行った。
なお、申立人は、当審査会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。

3 申立人の主張の要旨

申立人は、公開しない行政情報とされた情報のうち、「(事件)年月日」について公開するよう求めるとともに、本件決定には非公開理由付記義務懈怠の瑕疵があるため、所長がなした本件決定は旧条例の理念と解釈を誤った違法・不当なものであり、本件決定は取り消されるべきであると主張している。

4 実施機関の主張の要旨

本件不服申立てに対する実施機関の主張の要旨は、次のとおりである。

(1) 旧条例第6条第1項第1号の該当性について

  1. 旧条例第6条第1項は、「次の各号の一に該当する行政情報は、公開しないことができる。」と規定し、その第1号に「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得る」と規定している。
    この「特定の個人が識別され、又は識別され得る」とは、当該情報から直接識別できる場合のほか、当該情報のみでは識別できないが、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別され、又は識別され得る場合を含むものである。
    また、一般の人にとっては識別できないが、「一定の知識・経験を有する者であれば特定の個人を識別することができる場合を含む」ものである。
  2. 「体罰の概略」のうちの『年月日』(以下「事件年月日」という。)を公開すると、当該体罰事故の発生した学校の生徒や教師など一定の者は、体罰の年月日が明らかになることによって、又は当該体罰事故に係る職員事故報告書を併せ用いることによって、当該教師及び体罰を受けた児童生徒を識別することができ、当該情報は旧条例第6条第1項第1号に該当する。

(2) 非公開理由付記義務懈怠の瑕疵について

  1. 旧条例第10条第4項は、実施機関が公開請求に係る行政情報を公開しないことと決定したときは、その理由を記載した書面により通知をしなければならない旨を規定している。
    ところで、条例が非公開決定通知書又は部分公開決定通知書(以下「非公開決定通知書等」という。)にその理由を付記すべきものとしているのは、非公開の可否について、実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、非公開理由を公開請求者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与える趣旨である。
    したがって、非公開決定通知書等に付記すべき理由としては、公開請求者において旧条例6条第1項各号所定の非公開理由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならない。
  2. 本件部分公開決定通知書の「公開しない理由」欄には、非公開の根拠規定である旧条例第6条第1項第1号の規定をそのまま記載してあるのみである。しかし、旧条例第6条第1項第1号の意義は一義的であることから、公開請求者においては、本件部分公開決定通知書の「公開しない行政情報」及び「公開しない理由」の各欄の記載だけで、旧条例第6条第1項第1号に該当することをその根拠とともに了知し得るというべきであり、非公開理由付記義務懈怠はない。

5 審査会の判断

(1) 答申するに当たっての適用条例について
新条例は平成13年4月1日に施行されたが、本件は旧条例に基づきなされた処分に対する不服申立てであるため、当審査会は、旧条例の規定に基づき本件不服申立ての検討を行う。

(2) 本件文書について
本件文書は、実施機関が教職員に係る係争中の争訟事件等の調査について旧文部省に報告するための伺い文書であり、体罰に係る教職員の懲戒処分等が記載されたものである。

(3) 旧条例第6条第1項第1号の該当性について
本件決定で公開しない行政情報とされた情報のうち、申立人が公開を求めたのは「事件年月日」であり、当該情報については、旧条例第6条第1項第1号本文に該当しないと主張しているので、この点について検討する。旧条例第6条第1項第1号本文では、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」については、原則として公開しないと規定している。本号は、個人のプライバシーを最大限に保護するため、個人に関する情報の内容のいかんを問わず、特定の個人が識別され又識別され得る限りにおいて、当該情報を原則公開しないことができるとするものであるが、ここでいう「特定の個人が識別され、又は識別され得る」とは、当該情報から直接識別できる場合のほか、当該情報のみでは識別できないが、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別され、又は識別され得る場合も含むものと解せられる。実施機関は、「事件年月日」を公開すると、当該体罰事故の発生した学校の生徒や教師など一定の者は、当該体罰事故に係る職員事故報告書を併せ用いることによって、当該教師及び体罰を受けた児童生徒を識別することができるので、本号本文に該当すると主張している。本件文書に関連する職員事故報告書においては、「発生時刻」、「事故発生場所」、「事故の概要」、「教師の職名」、「学校の対応」などが公開されている。本件文書のうち、「処分内容」、「担当教科」は、既に申立人に公開されており、これらの情報に加え、「事件年月日」を公開すると、職員事故報告書が特定され、加害教諭や被害児童生徒の氏名を識別することができると考えられ、さらに加害教諭の処分内容が明らかになると考えられる。したがって、かかる「事件年月日」は、公開することによって、特定の教員が識別され、その職及び職務遂行内容が明らかとなることから、他の情報と組み合わせることにより特定の個人を識別され得る情報であり、旧条例第6条第1項第1号に該当する。

(4) 非公開理由付記義務懈怠の瑕疵について
申立人は、本件決定には非公開理由付記義務懈怠の瑕疵があることから、取り消されるべきであると主張している。旧条例第10条第4項では「実施機関は、公開請求に係る行政情報を公開しないことと決定したときは、その理由を記載した書面により、前項の通知をしなければならない。この場合において、公開しないことと決定した行政情報が一定の期間の経過により第6条第1項に規定する行政情報に該当しなくなることが明らかであるときは、併せてその該当しなくなる時期を記載しなければならない。」と規定している。この規定の趣旨は、公開等の決定について、慎重かつ合理的な判断を確保するとともに、非公開決定等が争訟の対象となる不利益な処分であることから、処分の内容を明確にし、それを請求者に知らせて争訟の便宜を図るためのものである。具体的には、請求者がその通知だけから了知し得る程度、すなわち、非公開とされた情報が旧条例第6条第1項各号のどれに該当するのか、また、なぜ当該非公開条項に該当するのかを知ることができる程度に記載されていることが必要である。そこで本件決定についてみると、旧条例第6条第1項第1号に該当する理由として記載している内容は、当該条文とほとんど同じであるが、本件決定が部分公開決定であり、公開しない行政情報が個別具体的に記載されていること及び本件文書が体罰に関するものであり、公開された情報から公開しない部分にどのような情報が記載されているかを概ね推定することができることから判断すれば、このような概括的な記載であっても、請求者は各非公開情報がなぜ旧条例第6条第1項第1号に該当するかを了知し得ると考えられ、本件決定を取り消さなければならない程度に理由付記の不備があるとまではいえない。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

審議の経過

年月日

内容

平成14年3月26日

諮問を受ける(諮問第25号)

平成15年2月5日

実施機関より開示決定等理由説明書を受理

平成16年1月27日

審議

平成16年2月16日(第32回審査会)

実施機関より意見聴取及び審議

平成16年3月1日(第33回審査会)

審議

平成16年4月21日(第35回審査会)

審議

平成16年5月24日(第36回審査会)

審議

平成16年6月14日(第37回審査会)

審議

平成16年7月14日(第38回審査会)

審議

平成16年8月6日

実施機関に答申

埼玉県情報公開審査会委員名簿(平成16年8月6日現在)

氏名

現職

備考

礒野 弥生

東京経済大学教授

 

遠藤 順子

弁護士

会長職務代理者

大橋 豊彦

尚美学園大学教授

会長

田村 泰俊

明治学院大学教授

 

野村 武司

獨協大学教授

 

馬橋 隆紀

弁護士

 

(五十音順)

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