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掲載日:2024年4月2日

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答申第35号 「道路交通法違反指導取締り基準の制定について(例規通達)(平成14年3月25日付け埼例規第23号(交指)埼秘第4号(交指)」の部分開示決定(平成16年10月15日)

答申第35号(諮問第36号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県警察本部長が、平成14年5月24日付けで行った「道路交通法違反指導取締り基準の制定について(例規通達)(平成14年3月25日付け埼例規第23号(交指)埼秘第4号(交指)(別表は違反(反則)行為の種別のうち速度超過に係る部分)」(以下「本件文書」という。)の部分開示決定のうち、本件文書中3の、検挙(告知)の対象とする行為が記載された部分については開示すべきである。その余の部分については、実施機関が不開示とした判断は妥当である。

2 審査請求及び審査の経緯

(1) 本件審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成14年5月2日、埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、「速度違反取締りの基準が分かるもの」の開示請求を行った。(以下「本件請求」という。)

(2) これに対し、実施機関は、本件請求に対する公文書を本件文書と特定した上で、本件文書の本文中、指導警告の対象とする行為及び検挙(告知)する行為の内容、及び別表の対象部分中、違反の態様の記述部分を、条例第10条第3号及び第5号に該当するため不開示とするのが適当であると判断し、平成14年5月24日付けで部分開示決定を行い、請求人に通知した。

(3) 請求人は、平成14年6月26日付けの審査請求書により、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「審査庁」という。)に対し、不開示とした部分を開示すべきであるとして審査請求を行った。

(4) 当審査会は、本件審査請求について平成14年9月4日付けで審査庁から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会の本件審査に際し、審査庁から平成15年10月15日付けの開示決定等理由説明書の提出を受け、請求人から平成15年11月19日付けの反論書の提出を受けた。

(6) 当審査会は、平成15年12月25日に、実施機関の職員から意見聴取を行った。

(7) 請求人は、平成16年1月27日に、口頭による意見陳述を行った。

(8) 当審査会は、平成16年8月6日に、実施機関の職員から意見聴取を行った。

3 審査請求人の主張の要旨

審査請求人が主張している要旨は、おおむね次のとおりである。

(1) 本来、自動車は道路を走行するとき、制限速度を守らなければならないが、実際の状況は制限速度以上の速度で流れている。逆に制限速度以内で走行すると実際の交通の流れの障害にもなり得る。自分自身の判断で交通の流れに沿って走っているつもりでも検挙されたりすることも考えられ、現行の速度取締り基準にあいまいさを感じる。

(2) 交通の流れを乱さない範囲でどこまでが指導警告なのか、どこまでが検挙(告知)なのか認識する必要がある。この基準が適正かどうか県民に問うことも必要である。

4 実施機関の主張の要旨

審査請求に対する実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。

(1)交通指導取締りについて

  • ア 交通指導取締りは、道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図り道路の交通に起因する障害を防止するための手段として行う活動であり、交通事故防止対策に即効性のある活動である。
  • イ 交通指導取締りに当たっては、違反の中でも特に交通ルールを敢て無視し、他のドライバーからみても取締りを受けることが当然と考えられるような飲酒運転、著しい速度超過、無謀な追い越し等の悪質・危険な違反や交通の流れに障害を及ぼす迷惑性の強い違反に重点を指向した取締りを実施しているところである。
  • ウ 中でも速度取締りは、適正な速度で走行させることにより、速度超過に起因する交通事故を防止することや、適正な交通の流れを乱す者を排除し、交通の流れの秩序化を図ることにより、交通の円滑を確保するとともに道路交通に起因する騒音、振動などの障害を防止することなどを目的としている。

(2)不開示とした理由について

  • ア 不開示とした情報は、道路交通法の違反行為者に対して、指導警告とするか検挙するかについての基準の具体的記述である。この基準を公開することは、基準の範囲内であれば違法ではないとの誤った認識や警察が違反を容認しているという誤解を招くおそれがあり、このことが違反を助長する結果につながり、道路における危険、交通の安全と円滑に対する障害が増大し、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあり、埼玉県情報公開条例第10条第3号に該当する。
  • イ さらに、これらのことは、警察法第2条、道路交通法等に基づいて行っている交通指導取締り業務に支障を及ぼすおそれがあり、埼玉県情報公開条例第10条第5号に該当する。

5 審査会の判断

(1)本件文書について
本件文書は埼玉県警察本部長が作成した通達文書で、記載されている情報は実施機関が行う道路交通法の違反に対する指導取締り業務に関する情報であり、実施機関が速度違反取締りをする際に実際に活用されている資料であると認められる。
本件文書に記載されている内容はおおむね次のとおりである。
1については、別表に掲げる行為を、直ちに検挙を行わず指導(告知)警告の対象とする旨の説明。
2については、1に定めるもののほか、直ちに検挙(告知)を行わず、指導警告の対象とする行為の内容。
3については、1及び2にかかわらず、検挙(告知)する行為の内容。
別表については、直ちに検挙(告知)を行わず指導警告の対象とするものについて、違反(反則)行為の種別とその違反の態様の具体的な記載。(なお、本件請求対象は違反行為の種別のうち速度超過に係る部分である。)
本件請求により実施機関が不開示とした情報は、上記のうち、1にかかる別表の対象部分中の違反の態様の記述部分、及び2のうちの直ちに検挙(告知)を行わず指導警告の対象とする行為の内容の記述部分(これらについて、以下「指導警告基準」という。)、3のうちの検挙(告知)する行為の内容の記述部分(以下「検挙基準」という。)である。

(2)条例第10条第3号(公共の安全等に関する情報)及び第5号(事務又は事業に関する情報)の該当性ついて

  • ア 条例第10条第3号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報として規定している。本号の趣旨は、地方公共団体の責務として、社会生活の基盤となる公共の安全と秩序を維持し、県民全体の利益を擁護するという観点から、公文書の開示による犯罪の誘発その他の社会的障害の発生を防止することにある。本号に該当する情報については、その性質上、開示又は不開示の判断に犯罪発生の予測など専門技術的判断を要すると認められることから、実施機関の第一次的な判断が尊重される。しかしながら、実施機関の裁量は無制限に認めらるものではなく、合理性を持つものとして許容される限度内のものでなければならない。
  • イ 条例第10条第5号では、「県、国又は他の地方公共団体の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を不開示情報として規定している。さらに、「次に掲げるおそれ」としてイからホにおいて、県等の機関が行う総ての事務又は事業の中で共通的に見られる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、公にすることにより、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的な支障を例示的に列挙している。そして、その典型例の一つとしてイにおいて、「監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」のある情報を掲げている。
    本号の趣旨は、県等の機関が行う事務又は事業の適正な遂行を確保することにある。したがって、「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、当該情報を公にすることによる利益と支障とを比較衡量した結果、公にすることの公益性を考慮してもなお、当該事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過しえない程度のものであることが求められる。この場合、「支障を及ぼすおそれ」は、単なる抽象的な可能性では足りず、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を生じることについて、法的保護に値する蓋然性が認められなければならない。
  • ウ 実施機関では、指導警告基準及び検挙基準について条例第10条第3号及び第5号に該当する旨主張しているので、以下、それぞれその該当性を検討する。まず、指導警告基準についてであるが、実施機関は、指導警告は違反を容認しているのではなく、違反と認めた上で指導しているものであると説明している。道路交通法違反については、指導警告基準が開示されると、違法ではあるが検挙されない範囲が明確となり、指導警告にとどまる範囲内での違法な行為が容易となり得る。また、検挙の対象とならない程度の交通違反が増加することが予想され、その結果、道路における危険や、交通の安全と円滑に対する障害が増大することが考えられる。このことは、道路交通法第1条に掲げられる、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする交通取締り業務の適正な遂行に大きな支障を及ぼすおそれがあると推察される。したがって、実施機関が、指導警告基準について、条例第10条第3号及び第5号に該当するとした判断には相当な理由があると認められる。
  • エ 次に、検挙基準についてであるが、実施機関は、指導警告基準と同様、検挙基準についても、これを開示した場合には、基準に該当する違反行為でなければ検挙されることはないとの誤った認識が生じ、違反を助長し、公共の安全や交通指導取締り業務に支障を及ぼすおそれがあると主張している。しかしながら、本件文書に記載されている検挙基準は、一般的で常識的な内容と認められ、特段、実施機関の主張するような支障が生じるとは考えられない。したがって、実施機関が、検挙基準を開示することによって、条例第10条第3号の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ、及び条例第10条第5号の交通指導取締り業務に支障を及ぼすおそれがあると判断したことには相当の理由があるとは認められない。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

審議の経過

年月日

内容

平成14年9月4日

諮問を受ける(諮問第36号)

平成15年10月15日

諮問庁より開示決定等理由説明書を受理

平成15年11月19日

審査請求人より反論書を受理

平成15年12月25日(第30回審査会)

実施機関より意見聴取及び審議

平成16年1月27日(第31回審査会)

審査請求人より意見聴取及び審議

平成16年4月21日(第35回審査会)

審議

平成16年5月24日(第36回審査会)

審議

平成16年6月14日(第37回審査会)

審議

平成16年7月14日(第38回審査会)

審議

平成16年8月6日(第39回審査会)

実施機関より意見聴取及び審議

平成16年8月20日(第40回審査会)

審議

平成16年10月1日(第41回審査会)

審議

平成16年10月15日

答申

埼玉県情報公開審査会委員名簿(平成16年10月15日現在)

氏名

現職

備考

礒野 弥生

東京経済大学教授

 

遠藤 順子

弁護士

会長職務代理者

大橋 豊彦

尚美学園大学教授

会長

田村 泰俊

明治学院大学教授

 

野村 武司

獨協大学教授

 

馬橋 隆紀

弁護士

 

(五十音順)

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