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ページ番号:288752
掲載日:2026年10月23日
Q 永瀬秀樹 議員(自民)
全国的に保育士不足が続く中、東京都に隣接する県南地域では、公定価格の地域区分の格差が保育士の確保と定着に深刻な影響を及ぼしています。令和8年1月の保育士の有効求人倍率は、全国3.88倍に対し、川口4.63倍、浦和13.68倍でした。また、県南10市の保育事業者への聞き取りでは、令和3年から令和7年までに転職した常勤保育士1,839人のうち、東京都への転職は349人、約19パーセントに上ります。全施設を網羅した統計ではありませんが、都県境を越えた人材流出が継続していることを示す重要な資料です。
一方、国は令和9年度の見直しで、地域手当の準拠を基本に新たな補正ルールを設ける方向で検討することとされています。国が本年4月に依頼した保育所等の公定価格の地域区分に関する調査に対し、県は、国家公務員の地域手当の準拠から脱却し、保育士の東京都への流出や地域の実情を反映して、隣接自治体間の格差を解消するよう求めています。
さらに、補正ルールで対応するのであれば、本県の地域区分を東京都より高くすべきと回答しています。県内市町村からも、県境を越えた隣接自治体間に格差を生じさせないことや、各自治体が独自の賃金上乗せで格差を埋める制度は適切でないとの意見が出ています。これは、個々の市町村の財政力に委ねるのでなく、国の制度に、生活圏、通勤圏と人材流出を反映するよう求める共通の問題提起です。
また、本年8月24日、知事と東京都に隣接する県内12市は、介護報酬について、国家公務員の地域手当の準拠からの脱却と、通勤・経済圏、人材流出の反映を国へ要望しました。介護と保育は制度が異なりますが、人材確保のため、実態に合わない地域区分を見直すという政策原則は、保育にも一貫して適用する必要があります。
私は、平成30年6月定例会以来、この問題を繰り返し取り上げてきました。同定例会では、格差が解消されるまで市町村への賃金補助など積極的な財政支援を求める決議が可決されています。しかし、都県境特有の賃金格差を直接埋める県の支援はいまだ実現していません。
そこで、知事に伺います。
第1に、県が回答した本県を東京都より高くする補正とは、県内のどの地域と東京都のどの地域を比較し、どの程度の水準を想定したものでしょうか。転職状況や実際の賃金差、東京都の独自支援を踏まえた算定根拠を示し、国の改定案が示される前に、知事自ら具体案を提示することが重要と考えます。いつ、どのように国へ働き掛けるのか。また、補正だけで格差を解消できない場合、地域手当の準拠そのものの見直しを国にどう求めるのか、あわせて伺います。
第2に、国の改定案が示された段階で、都県境の公定価格の差、保育士の賃金差や東京都への転職状況を照らし、改定後も残る格差を県はどう見積もるのでしょうか。格差が残ると見込まれる地域については、国に引き続き是正を求めるとともに、対象と期間を限った賃金支援を県独自に検討すべきです。国による格差是正までの対応について、知事の考えを伺います。
A 大野元裕 知事
令和6年人事院勧告における地域手当の率が保育の公定価格に適用された場合、県南部の自治体を中心に、東京都との格差がこれまで以上に拡大もしくは逆転が生じるなど、保育士の県外流出加速化の可能性が高いと懸念をしています。
また、本県に隣接する東京都では、税源偏在による潤沢な財源を活用し、保育士確保を推進するため、既に高く設定されている公定価格に加え月額給与上乗せをはじめとした保育士等への処遇改善を実施しています。
さらに、東京都では保育料の無償化や「こども誰でも通園制度」を独自に拡大し、保育所等への利用ニーズと保育士の必要性をこれまで以上に高め、近隣県の保育士の流出を招いていると考えており、本県の保育士確保に支障をきたしています。
その一方で、税財源の偏在に専ら起因する財政力格差により、不公正にも埼玉県を含む近隣県は東京都と同様の措置を講じることが実質上不可能な状況に置かれています。
東京都と隣接する県南部の自治体では多く見られる東京都への就業者は、一般的には勤務先の東京都の保育所等ではなく、居住地の保育所等にこどもを預けると認識しており、真に保育士を必要としているのは本県であります。
このような観点から、今回国が令和6年人事院勧告における地域手当の率に準拠しつつ、補正ルールで対応するのであれば、少なくとも東京都と隣接する自治体においては、保育士流出の実績に合わせて設定されるべき、すなわち、現状においては東京都の地域区分以上の水準になるべきと国に申し上げたものでございます。
次に、転職状況や実際の賃金差、東京都の独自支援を踏まえた算定根拠を示し、国の改定案が示される前に知事自ら具体案を提示することが重要と考えるがいつ、どのように国に働き掛けるのかについてであります。
私は、国に対し要望する際、ただ単に要望事項を申し上げるのではなく、例えば、川口市と隣接する足立区の令和7年度における平均所得を比較すると川口市の方が上回っているといった具体的データをお示ししながらお話をしています。
また、令和8年4月の黄川田仁志前内閣府特命担当大臣への要望時には、東京都が独自に先ほど申し上げたような保育士確保策等が実施できるのは、東京都への不公正な税源偏在による税収の集中に裏打ちされた潤沢な財源によるものであり、この税源偏在の問題を解決しない限り、東京都の保育士確保に有利な状況は継続し続けると指摘をさせていただいております。
国家公務員の地域手当に準拠する限り、保育の公定価格に地域の平均所得など様々な観点は加えられず、地域の実情が反映されない結果、本県と隣接する東京都との間で不公正かつ不合理な格差は生じ続けます。
私は、このような事象を解消するためには、保育の公定価格の地域区分の設定に当たり、国家公務員の地域手当に準拠するという考え方からそもそも脱却をし、居住地の平均所得など様々な根拠に基づき地域区分の設定を根本から見直す必要があると考えます。
今回、国は令和6年人事院勧告における地域手当の率に準拠しつつ、新たな補正ルール等を設ける方向性で検討していると承知しますが、地域手当に準拠する制度そのものに異議を唱える立場からすれば、国の改定案が示される前に見直し案を提示し、国の方向性を暗に認めることが適切とは考えません。
引き続き、国に対して、本県のみならず共通の課題を抱える他の自治体とも連携しながら、様々な機会を捉え、保育の公定価格の抜本的見直しを強く要望してまいります。
次に、補正だけで格差を解消できない場合、地域手当への準拠そのものの見直しを国にどう求めるのかについてであります。
繰り返しになりますが、私は保育の公定価格の地域区分の設定に当たっては、国家公務員の地域手当に準拠するという考え方から脱却し、様々な観点から地域区分の設定を根本から見直し、隣接する東京都との格差を解消するべきであり、そもそも補正ルールの創設などによる対処療法的な対応はすべきでないと考えております。したがって、補正ありきで要望をすることは考えておりません。
引き続き、国において居住地の平均所得など様々なファクトに基づき、保育の公定価格の地域区分設定を根本から見直すべきであると、国に対し働き掛けを行います。
次に、国の改定案が示された段階で、都県境の公定価格の差、保育士の賃金差や東京都への転職状況を照らし、改定後も残る格差を県はどう見るのかについてであります。
現在、国が基本方針として示しているのは、令和6年人事院勧告における地域手当の率に準拠しつつ、他の自治体への通勤者率の高さなどを勘案し、新たな補正ルール等を設ける方向性で検討を進めるとともに、現状の地域区分より全国的な地域区分の差が縮小する方向で検討をすることのみであり、現時点において、改定後に格差が残るのか否かを含め、本県として、その格差を見積ることは困難であります。
次に、格差が残ると見込まれる地域については、国に引き続き是正を求めるとともに、対象と期間を限った賃金支援を県独自に検討すべきであり、国による格差是正までの対応につき、どう考えるのかについてであります。
先ほど答弁したとおり、今後格差が残ると見込まれる地域を想定することは困難であります。
また、東京都と隣接する自治体への影響が大きい中、議員御指摘の賃金支援や、東京都が実施する補助等と同等の措置については、税偏在等の根本的問題が解決されない限り対応は難しく、保育士の処遇改善は、国の責任において、公定価格そのものの水準を適切に見直すことで実施されなければなりません。
また、県独自の給与の上乗せ補助を行ったとしても、保育士の給与はそれぞれの保育所等で給与体系が異なっており、必ずしも保育士の処遇改善に結び付かず、異なる給与体系の中に溶け込んでしまう可能性が高いと認識しています。
県といたしましては、保育の公定価格が本県の実情を踏まえて改善されるまでの間は、国に継続的に要望を実施するとともに、保育士本人に確実に届く支援として就職準備金貸付など県独自の保育士の処遇改善策を継続し、実施してまいりたいと思います。