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掲載日:2020年3月31日
Q 村岡正嗣 議員(共産党)
障害者総合支援法施行から7年、障害児者家族の現状は、むしろ深刻さを増しています。いわゆる「4070問題」は、いまや50歳代の障害のある子供を80歳代の親が見る「5080問題」となっています。親亡き後、我が子はどうなるのか。行き場もなく、将来も見通せない。不安は広がるばかりですが、ではその先に「6090」はあり得るのか。あり得ません。「人生に疲れた」「親子心中をいつも考えてしまう」、こうした声まで聞こえる危機的状況と言えます。
障害児者の家族の一番の願いは、入所施設、いわゆる暮らしの場です。川口市に昨年4月に開所した入所施設では、定員40人に200人を超える応募で、多くの見学者が訪れました。体重が38キロしかない78歳の母親と60キロの50歳の息子との二人暮らしの方も、見学に来られたそうです。今、埼玉で入所施設を待ち望んでいる人は1,600人に達しています。
県は、これまで施設整備について「必要性は分かるが、国へ言っていく」との答弁を繰り返すにとどまっています。知事、せめて埼玉県として計画的に入所施設整備に踏み出していただきたいのです。5か年あるいは10か年の整備計画を作っていただきたい。それが生きる希望となるのです。そのためにも、当事者との協議検討の場を作っていただきたい。知事の答弁を求めます。
今年1月、埼玉県内の障害児者の家族、施設職員らによる暮らしの場を考える会と、県との懇談の場に同席させていただきました。懇談の席で、知的障害で障害支援区分六のダウン症の息子さんのお母さんが、こう話されました。御紹介します。
「入所施設には、専門性のある職員集団がいること、継続性があること、広い建物であること、働く場があること、そして地域とつながっていることなどの役割があると思いますが、それらが組み合わされることで、大きな支援の力が生まれます。その支援があることで、障害があっても、ただ弱い人ということではなく、一人の人として、その人らしい自立の仕方で、その人らしい人生を築いていけるのではないかと思うのです。息子のことを考えたとき、恐らく自分の家族を持つということは難しいでしょう。そんな息子にとって、そこが仕事が終わったら早く帰ってきたい、みんなに会いたい、そして楽しいと思える場所だとしたら、そこはやがて第二の家庭、そして家族と呼べるものになるかもしれない。そうなったら、親として本望です。そのときには、心からこの自立を喜び、それまでずっと握り続けてきた我が子の手をようやく離してあげられるのではないかと思います。入所施設には、そんな大きな役割があると私は考えています。だからこそ、本当に必要で入れてあげたいと思っているのです。でも、その入所施設が足りません。入れる施設が周りにはありません」と、そのお母さんは訴えられたのです。
そして、そのお母さんは最後にこう言いました。「多くの親は愛する子のためなら、たとえ床をはってでも介護するでしょう。でも、それでいいのでしょうか。その姿は普通でしょうか。家族介護には、必ず限界が来ます。いま一度、そんな人たちの日々の暮らしを想像してください。いま一度、その実態に目を向けてください。」
知事、この声は一人の母親だけの声ではありません。障害児者の家族、関係者全ての声です。知事はこの声をどう受け止められますか。このお母さんに何とお答えになりますか。障害児者の家族の皆さんに「埼玉で暮らせて本当に良かった」と思える県政にしていただきたい。御所見をお聞かせください。
A 大野元裕 知事
入所施設の整備計画についてでございます。
国は、入所施設から地域生活への移行を積極的に推進する観点から、施設の入所者数の削減を図ることを基本方針としています。
このため、県が独自に入所施設の整備計画を策定することは、大変、難しい状況であります。
一方、強度行動障害や重複障害などの重い障害により、地域で暮らすことが困難な方々もおられます。
住み慣れた居場所を確保し、安心して暮らしていただくことが大事だと考えております。
県では障害者の入所施設が不足している実情を国に強く訴え、平成31年4月には県内に3カ所の入所施設を整備をいたしました。
今後も、地域での生活が困難な重度の障害者のため、必要な入所施設の整備を進めてまいります。
次に、当事者との協議検討の場を設けることについてでございます。
私は、障害者やその御家族から御意見をいただくことは、障害者のニーズを踏まえた施策を進めていくためにも、極めて重要と考えております。
これまでも、埼玉県自立支援協議会の委員就任を障害者の当事者団体の代表にお願いし、障害者の視点に立った貴重な御意見をいただいております。
引き続き、こうした場などを活用し、障害者やその御家族から御意見を伺いながら、地域の支援体制の整備に努めてまいります。
次に、「埼玉で暮らせて本当に良かった」と思える県政についてでございます。
障害のあるお子さんの行く末を心配される親御さんの思いは、私も強く受け止めております。
私は、障害があっても安心して暮らすためには、障害者の生活を地域全体で支える仕組みが必要と考えています。
そのため、障害者が困ったときの相談体制や、緊急時の一時受入れ先の確保、自立した生活に向けたグループホームの体験入所の仕組みなどを市町村と連携し、進めているところであります。
あわせて、必要な入所施設の整備を引き続き進めてまいります。
こうした取組により、障害があっても住み慣れた居場所で安心して暮らすことができ、誰一人取り残さない、日本一暮らしやすい埼玉県の実現を目指して全力で取り組んでまいります。
再Q 村岡正嗣 議員(共産党)
「計画を作っていくのは困難だ」という答弁もありまして、「しかし、必要な整備はしていく」と、こういう答弁もありました。そのことと、私の質問「当事者との協議検討の場を作っていただきたい」ということは一体のものなんですけれども、この「必要な整備はしていく」という場合の「必要」というのはどういうことなのかというふうになるんですけれども、昨年3カ所造られたというのは、正にそのとおりなんです。それで、その一つが川口です。土地・建物とも9億5,000万円です。市の補助も含めて補助が3億5,000万円で、6億円を事業者が用意しなくてはいけない。半分は一生懸命集めて、3億円は20年償還の借入れです。どの法人でもできるものではないんです。やはり手を挙げたところが、県として、必要として検討する対象になると思うんです。様々な事情がありますから、やはり当事者との協議検討の場がどうしても私は必要だと思います。
先ほど知事の答弁では、「意見を聞いていくということは大事だし、今までやってきたと。これからもやっていく」と、そのこと自体は結構なんですけれども、聞いていますと、既存の会議体というんですか、協議体というのか、既存の組織のところで当事者のお声を聞いていくというふうに私には聞こえたわけです。様々な当事者がいますから、もう少し幅広く様々な当事者・関係者の意見を聞くという、そういう意味の「聞く」ということにしていただきたいし、知事の答弁の真意はそういうふうに受け止めていいのかを確認させてください。
再A 大野元裕 知事
今、国としては入所施設について減らしていくということが基本方針であります。
その困難な中ではありますけれども、可能な限り、幅広く御意見を伺えるよう工夫をしていきたいと思っております。
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