ヤマメ成魚の放流時期と天然化
釣り対象魚として、ヤマメの成魚放流が盛んになっている。しかし、遊漁者からは、天然魚を釣りたいという要望も多い。そこで、放流後にヤマメ成魚の天然化に要する期間を検討した結果、禁漁直後の10月に放流すると、解禁日には、天然魚に近くなるという結果が得られた。
技術内容
- (1)ヤマメの増殖では、発眼卵放流や稚魚放流が行われているが、近年、増加する遊漁人口に対応して、養殖された成魚の放流が増加している。しかし、養殖魚は天然魚に比較して、色彩も薄く、体型も丸いなど、天然魚との違いも指摘されており、遊漁者からは、天然魚を釣りたいという要望が強い。
- (2)そこで、遊漁者の要望に応えるための放流方法を検討するため、放流後のヤマメ成魚が、天然魚に近くなるまでに要する期間を調査した。
- (3)試験は1991年度と1992年度に行い、試験河川は大滝村(おおたきむら)の入川(河川特設釣り場上下流の1.7km)とした。
放流魚は放流時期が遅くなるほど大きい物を用い、1991年度では平均体重で28~71g、1992年度では25~66gであった。
放流は1991年度は6月、8月、10月、12月、2月に、1992年度は9月、10月、11月、12月、2月に行い、各年度とも放流月が分かるように、色の異なるタグピン型の標識を背中に刺搾した。
- (4)解禁日の3月1日に釣獲された魚について、漁獲状況と天然化度を調査した。
解禁日の漁獲状況を表1に示したが、1991年6月0%、8月0%、1992年9月2.3%と、禁漁前に放流された魚は、採捕率が低く、解禁日の漁獲に貢献しない。
この理由として、禁漁日前の放流では、禁漁日までに多数の放流魚が漁獲されることも多く、また調査区域外にも流下したことが明らかとなっている。
また、漁獲率が高い放流月は1991年度は12月で64.0%、1992年度は10月で10.5%であった。
- (5)解禁日に釣獲されたヤマメ放流魚について、天然化度の評価を目視で調査した。
1991年度では10月放流魚が、体色、体型ともに天然魚に近く、12月放流魚は、体色のみが天然魚に近い結果であった。また、1992年度では9月と10月の放流魚で、体色が天然魚に近い結果が得られた。
- (6)これらの結果から、放流魚の天然化を促進し、かつ、解禁日の釣獲量を考慮するならば、ヤマメの成魚放流は禁漁日以降の10月が適期と考えられる。
具体的データ
適用地域
荒川、入間川水系の上流地域
普及指導上の留意点
- (1)成魚放流は多大な労働力を必要とするため、運搬の容易な河川に適する。
- (2)禁漁期間中の河川監視が容易であること。