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掲載日:2024年3月26日
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答申第3号(諮問第3号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が平成13年8月1日付けで行った、「産業廃棄物運搬実績報告書(平成11年度(株)○○○)及び産業廃棄物処分実績報告書(平成11年度(株)○○○)」(以下「本件文書」という。)の部分開示決定のうち、本件異議申立てに係る排出事業者並びに受託者の名称及び住所について、開示と判断したことは妥当である。
2 異議申立て及び審査の経緯
(1) 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成13年7月5日、埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し開示請求のあった、「産業廃棄物運搬実績報告書(平成11年度(株)○○○、(有)○○○○)及び産業廃棄物処分実績報告書(平成11年度(株)○○○、(有)○○○○)」のうち、本件文書の報告者である。
(2) 本件文書は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」第14条(平成12年6月厚生省令第101号により削除)の規定により、実施機関に提出された文書である。本件文書には、報告者である株式会社○○○の代表者の印影のほか、○○○が収集運搬及び処分した産業廃棄物の種類、排出事業者の名称、住所及び受託量並びに中間処理後の産業廃棄物の受託者の名称、住所等(以下「事業者情報」という。)が記載されている。
(3) 実施機関は、条例第10条第2号ただし書を適用して、事業者情報について開示決定を行うのが適当であると判断し、条例第17条第2項の規定に基づき、申立人に対し、平成13年7月10日付けの公文書開示決定等に係る意見照会書により意見書提出の機会を与えたところ、平成13年7月17日付けで申立人から開示に反対する旨の「公文書開示決定等に係る意見書」(以下「反対意見書」という。)が提出された。
(4) 実施機関は、申立人から反対意見書の提出を受けてもなお開示が適当と判断し、平成13年8月1日付けで、申立人に公文書開示決定に係る通知書を送付した。
(5) 申立人は、平成13年8月8日付けの異議申立書により、実施機関に対し、開示決定された部分のうち排出事業者並びに受託者の名称及び住所について開示すべきではないとして異議申立てを行った。
(6) 当審査会は、本件異議申立てについて平成13年8月14日付けで実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(7) 当審査会の本件審査に対し、実施機関から平成13年10月9日付けの「開示決定等理由説明書」の提出を、申立人から同年11月19日付けの「開示決定等理由説明書に対する反論書」の提出を受けた。
(8) 当審査会は、平成13年11月13日に、実施機関である○○環境管理事務所の職員から事情聴取を行った。
(9) 申立人は、平成14年1月22日に、口頭による意見陳述を行った。
3 申立人の主張の要旨
申立人は、本件文書の記載内容のうち、排出事業者並びに受託者の名称及び住所を不開示とするよう求め、その主な理由として以下の3点をあげている。
(1) 条例により、当該文書の開示請求をした者の名前又は法人名及び住所が開示されていない。従って申立人が損害を被った場合の責任の所在が確認できない。
(2) 条例には、開示を請求した者及びその関係者に対して行う損害賠償手続きが整備されていないので、損害賠償請求ができない。
(3) 開示された場合、開示請求者及びその関係者がお尋ねと称して取引業者(排出事業者及び受託者)のところに行く可能性がある。結果的に取引先に圧力がかけられ、取引先を失う等の営業妨害を受けるおそれがある。また、取引先の信用を失うおそれもある。
4 実施機関の主張の要旨
実施機関の主たる開示理由は以下の点にある。
(1) 産業廃棄物の不適正な処理による社会的影響は大きく、産業廃棄物の処理に係る排出事業者、収集運搬業者及び処分業者の責任を明確にし、適正処理を推進するためにも産業廃棄物処理に係る情報公開が求められている。
(2) 事業者情報の開示により、排出事業者と申立人の間の産業廃棄物処理委託の内容などが明らかになるが、申立人が産業廃棄物を適正に処理している限り、この開示が産業廃棄物処理の委託を阻害することは考えられない。
5 審査会の判断
(1) 本件文書には、申立人が収集運搬及び処分した産業廃棄物の種類並びに排出事業者の名称等の事業者情報が記載されている。
(2) 申立人の主張の主旨は、事業者情報が明らかになると、開示請求者及びその関係者が申立人の取引業者のところに行く可能性があり、結果的に競合する同業者との競争上の利益を害するというところにあると認められる。そこで、以下この点について検討する。
(3) 条例第10条第2号は、「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより当該法人等又は個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」については、原則として開示しないと規定している。
ここでいう「正当な利益を害するおそれがあるもの」とは、法人等の生産技術、営業、販売上のノウハウ、経営方針、経理、人事等の情報で、公にすることにより、法人等の事業活動等が損なわれると認められるもの及び公にすることにより法人等の名誉が侵害され、又は社会的信用若しくは社会的評価が低下するものを広く含むものと解される。
そして、「正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するか否かの具体的な判断については、当該法人等の営む事業の性質や社会的影響、当該事業を規律する関係法令の規定等により総合的に判断すべきであると考える。
(4) そこで、本件文書に記載されている情報が、条例第10条第2号に該当するか否かを検討すると、一般的に企業の営業に係る情報及び取引先に係る情報は、これが同業者に明らかとなった場合、同業者との競争上不利な立場にたたされることが想定されることから、事業活動が害されるおそれがある情報であると認めてよいと思われる。産業廃棄物処理業においても、事業者情報を開示することにより、同業者間の競争を激しくするなどの影響が生じる可能性がないとは言い切れないであろう。
しかしながら、産業廃棄物の不適正な処理による社会的影響は大きく、産業廃棄物の処理に係る排出事業者、収集運搬業者及び処分業者の責任を明確にし、適正処理を推進するためにも産業廃棄物処理に係る情報公開が求められているという事実を看過することはできない。産業廃棄物処理業は、事業の性質上、事業運営方法の如何によっては周辺住民の生活環境や自然環境に悪影響を与えるおそれがある事業であり、その事業に係る情報は、周辺住民はもとより社会的な関心の高い情報であると言える。
この点、特に埼玉県においては、平成11年2月の所沢産野菜のダイオキシン汚染問題等をきっかけに、産業廃棄物処理に係る情報の公開を積極的に進めている。産業廃棄物の適正処理のためには廃棄物の収集運搬業者及び処分業者の責任はもとより、排出事業者の責任も重要であり、事業者情報を開示することにより関係当事者の責任を明確にするとともに、処理過程の透明性を確保する必要があるというのがその理由である。この県の方針は社会的要請に合致するものと考えられ、収集運搬業者及び処分業者で構成されている県産業廃棄物協会に対しても事業者情報を公開することへの理解を求めている。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)」には、事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない(廃棄物処理法第3条第1項)と規定されている。そして、産業廃棄物の処理を他人に委託する場合には、知事の許可を受けた収集運搬業者や処分業者に委託しなければならない(同法第12条第3項)。
このように、排出事業者には法律に従って当該産業廃棄物を適正に処理する責任があり、委託した産業廃棄物が適正に処理されたことを確認する責任がある。また、産業廃棄物の収集運搬業者及び処分業者には、産業廃棄物処理基準に従って収集運搬、処分しなければならない義務がある(同法第14条第8項)。
上記のような産業廃棄物処理業の性質や当該業種をとりまく現在の社会状況、廃棄物処理法の規定、また、県の事業者情報に対する考え方等から総合的に判断すると、事業者情報は一般的な企業の取引先の情報とは異なるものであると考えられる。
(5) したがって、事業者情報を開示することにより申立人に不利益が生ずることがあったとしても、それは産業廃棄物処理事業者として受忍すべきものであり、条例第10条第2号本文に規定する「正当な利益」を害するとまでは言えないものと判断する。
(6) なお、申立人は、条例の規定により開示請求者の氏名又は名称が開示されないので、損害を被った場合の責任の所在が確認できない旨主張している。しかし、開示請求者の氏名については、個人情報であり、条例第10条第1号に該当し不開示となるものである。
また、申立人は、開示を請求した者及びその関係者に対して行う損害賠償手続きが整備されていないので、損害賠償請求ができない旨についても主張しているが、第三者が開示により得た情報を利用することによって、申立人が不利益を被った場合には、民事訴訟法の規定により訴訟を提起する等の手段を講じることが可能である。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成13年8月14日 |
諮問を受ける(諮問第3号) |
平成13年10月9日 |
実施機関より開示決定等理由説明書を受理 |
平成13年11月13日(第6回審査会) |
実施機関より意見聴取及び審議 |
平成13年11月19日 |
異議申立人より反論書を受理 |
平成13年12月27日(第7回審査会) |
審議 |
平成14年1月22日(第8回審査会) |
審議 |
平成14年2月19日(第9回審査会) |
審議 |
平成14年3月19日(第10回審査会) |
審議 |
平成14年4月22日(第11回審査会) |
審議 |
平成14年5月27日 |
実施機関に答申 |
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