トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成14年度情報公開審査会答申 > 答申第14号 「教職員の事故について(進達)(平成8年2月29日付け教市第1002号)」外8件の部分公開決定(平成15年1月16日)
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掲載日:2024年4月2日
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答申第14号(諮問第11号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県総務部公文書センター所長(以下「所長」という。)が、平成8年8月30日付けで行った以下(1)の公文書(以下「本件文書」という。)の部分公開決定のうち、(2)に掲げる部分については開示すべきである。
(1)公文書の名称
(2)開示すべき部分
本件文書1ないし5及び9中
2 審査請求及び審査の経緯
(1) 本件不服申立人(以下「申立人」という。)は、平成8年9月23日、埼玉県行政情報公開条例(昭和57年埼玉県条例第67号。以下「旧条例」という。)第5条第1項の規定に基づき、所長に対し「体罰報告書1996年1月1日から7月2日収受分(市町村教育課・高校教育課)」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
(2) 所長は、本件請求に対する行政情報を本件文書1ないし9と特定した上で、平成8年8月30日付けで部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、申立人に通知した。
なお、公開しない行政情報及びその理由は、別紙のとおりである。
(3) 申立人は、平成8年9月23日付けの審査請求書により、埼玉県教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、部分公開決定により公開しない行政情報とされた部分のうち、「自治体名」、「学校名」及び「(事件)年月日」について公開すべきであるとして、不服申立てを行った。
(4) 当審査会は、本件不服申立てについて平成13年9月11日付けで実施機関から埼玉県情報公開条例(平成12年埼玉県条例第77号。以下「新条例」という。)第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5) 当審査会の本件審査に対し、実施機関から平成14年2月8日及び13日付けの開示決定等理由説明書の提出を受けたが、申立人から実施機関の当該説明書に対する反論書の提出は受けていない。
(6) 当審査会は、平成14年7月18日に、実施機関の事務局である教育局の職員から事情聴取を行った。
なお、申立人は、当審査会に対する口頭による意見の陳述を求めていない。
3 申立人の主張の要旨
申立人は、公開しない行政情報とされた情報のうち、「学校名」、「自治体名」及び「(事件)年月日」について公開するよう求めるとともに、本件決定には非公開理由付記義務懈怠の瑕疵があるため、所長がなした本件決定は旧条例の理念と解釈を誤った違法・不当なものであり、本件決定は取り消されるべきであると主張している。
なお、申立人は、本件と同時期に諮問された職員の事故に関する報告書の部分公開決定に関する別の不服申立てにおいて反論書を提出し、同様の主張を行っているが、その要旨を引用すれば次のとおりである。
1 実施機関は、「学校名」の非公開理由につき、「個人識別情報」に該当するとしているが、「学校名」を個人識別情報に該当するかどうかで公開・非公開を判断することには大きな疑義があり、そのような判断は極めて安易なものといえる。また、基本的に「学校名」を明らかにして公開されなければ、県民の知る権利を保障することにならない。
2 行政機関の責任者(本件の場合学校長)によって作成された公文書は、原則的に作成者名を明らかにした形で公開されるべきである。公開された公文書が自治体のどの機関で作成・保有されているのかが分からなくては、記載内容の責任の所在が不明確で「不安定」になり、当該公文書の記載内容そのものの信憑性が疑われかねず、ひいては行政事務内容に対する県民の不信感を生みかねない。
3 「説明責任」の観点からも、原則的に「学校名」を公開しなければならない。学校教育の現状において、父母等関係者に対する説明責任は、第一義的には学校長にある。体罰という人権侵害事件についても、加害教員・被害生徒のプライバシーの保護を前提に、その発生原因と再発防止策を含め、学校長が説明すべきものである。
4 体罰報告書の「学校名」が被害生徒のプライバシー保護などを名目として秘匿・隠蔽されれば、体罰教員及び監督責任者としての校長は、体罰行為自体が保護されたと思いこみ、体罰に対する反省意識や責任意識が希薄になるおそれがある。
逆に、情報公開制度に基づき「学校名」が公開されてしまうと知れば、体罰教員や学校長は責任の重さをより強く自覚し、体罰横行に対する抑止的な効果を生むと考えられる。
5 たとえ「学校名」が公開されても、体罰被害を受けた児童生徒の特定可能性は相対的に高まるとはいえ、「識別され得る」とまではいえない。従って、「学校名」の公開が直ちに被害生徒のプライバシー侵害につながらない。
6 親や県民は、学校教育全般よりも個別の学校の実態に関心があり、この点からも、学校情報の公開の際には「学校名」の公開を伴わなくては、公開の意味が半減してしまう。
7 体罰報告書などの事件・事故報告書の「学校名」が公開されることによって、校長や教職員は、親・県民・教育委員会に対して一層の「緊張した気持ち」を持つようになる。また、親や県民の側にとっても、「学校名」が公開された形で事件・事故報告書を入手できれば、事実関係の正確性についてチェックすることが容易になり、事故後の学校側の対応・指導についても、それが適正かつ適切に行われたのかどうかについて意見することが容易になる。従って、報告書の「学校名」が公開されることによって、報告内容がより正確となり、事件・事故の再発防止に確実につながっていくはずである。
4 実施機関の主張の要旨
本件不服申立てに対する実施機関の主張の要旨は、次のとおりである。
(1) 旧条例第6条第1項第1号の該当性について
(2) 非公開理由付記義務懈怠の瑕疵について
(3) 体罰に係る事故報告書開示請求に対する現在の対応について
5 審査会の判断
(1) 答申するに当たっての適用条例について
新条例は平成13年4月1日に施行されたが、本件は旧条例に基づきなされた処分に対する不服申立てであるため、当審査会は、旧条例の規定に基づき本件不服申立ての検討を行う。
(2) 本件文書について
本件文書1ないし8は、平成8年1月1日から同年7月2日の間に、実施機関に提出された職員事故(体罰)に関する報告書であり、その内容は、教師の児童生徒に対する暴力行為の記録が記載されている。
また、本件文書9は、平成8年6月6日に、実施機関が当該職員に対する処分等についての意思決定を行うために作成した伺い文書であり、処分理由が記載された処分案、市町村教育委員会から実施機関への措置に関する照会文書等で構成されており、学校での教師の児童生徒に対する暴力行為の記録や事故を起こした教師の処分の内容等が記載されたものである。
(3) 旧条例第6条第1項第1号の該当性について
本件決定で公開しない行政情報とされた情報のうち、申立人が公開を求めたのは「学校名」、「自治体名」及び「(事件)年月日」であり、当該情報については、旧条例第6条第1項第1号本文に該当しないと主張しているので、この点について検討する。
旧条例第6条第1項第1号本文では、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」については、原則として公開しないと規定している。
本号は、個人のプライバシーを最大限に保護するため、個人に関する情報の内容のいかんを問わず、特定の個人が識別され又識別され得る限りにおいて、当該情報を原則公開しないことができるとするものであるが、ここでいう「特定の個人が識別され、又は識別され得る」とは、当該情報から直接識別できる場合のほか、当該情報のみでは識別できないが、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別され、又は識別され得る場合も含むものと解せられる。
実施機関は、「学校名」、「自治体名」及び「(事件)年月日」を公開すると、当該体罰事故報告の発生した学校の児童生徒や教師など一定の者は加害教諭や被害児童生徒などを識別することができるので、本号本文に該当すると主張している。
まず、「学校名」についてであるが、本件文書に記載されている情報のうち、被害児童生徒の学年、組などは既に申立人に公開されており、これらの情報に加え当該情報が明らかにされると、加害教諭や被害児童生徒の氏名を識別することができるものであると考えられ、本号の「特定の個人が識別され、又は識別され得る」ものに該当する情報であるといえる。
次に、「自治体名」についてであるが、当該情報は、本件文書の公開しない行政情報のうち「市町村教育委員会の名称」、「当該委員会教育長である者の氏名及び印影」並びに「文書記号」である。これらの情報は、公開することにより、事故が発生した学校の所在する市町村名が明らかとなる情報ではあるが、本件文書1ないし5及び9の場合は、当該市町村に複数の学校が存在することから、市町村名から当該学校ひいては事故に関係した特定の個人が識別され、又は識別され得る情報であるとは認められず、本号本文には該当しない。
次に、「(事件)年月日」についてであるが、既に公開されている被害児童生徒の学年、組などの情報に加え、市町村教育委員会の名称、当該委員会教育長である者の氏名及び印影並びに文書記号が公開された場合、さらに当該情報が明らかにされることにより、加害教諭や被害児童生徒の氏名を識別することができるものであると考えられ、本号の「特定の個人が識別され、又は識別され得る」ものに該当する情報であるといえる。
ただし、本件文書6ないし8については、県立高等学校で発生した事故に係る報告書であり、自治体(市町村)名が特定される他の文書と異なり、たとえ当該情報が明らかにされたとしても、加害教諭や被害児童生徒の氏名などを識別することができるとまではいえず、本号本文に該当しないものと認められる。
(4) 非公開理由付記義務懈怠の瑕疵について
申立人は、本件決定には非公開理由付記義務懈怠の瑕疵があることから、取り消されるべきであると主張している。
旧条例第10条第4項では「実施機関は、公開請求に係る行政情報を公開しないことと決定したときは、その理由を記載した書面により、前項の通知をしなければならない。この場合において、公開しないことと決定した行政情報が一定の期間の経過により第6条第1項に規定する行政情報に該当しなくなることが明らかであるときは、併せてその該当しなくなる時期を記載しなければならない。」と規定している。この規定の趣旨は、公開等の決定について、慎重かつ合理的な判断を確保するとともに、非公開決定等が争訟の対象となる不利益な処分であることから、処分の内容を明確にし、それを請求者に知らせて争訟の便宜を図るためのものである。
具体的には、請求者がその通知だけから了知し得る程度、すなわち、非公開とされた情報が旧条例第6条第1項各号のどれに該当するのか、また、なぜ当該非公開条項に該当するのかを知ることができる程度に記載されていることが必要である。そこで本件決定についてみると、旧条例第6条第1項第1号に該当する理由として記載している内容は、当該条文とほとんど同じであるが、本件決定が部分公開決定であり、公開しない行政情報が個別具体的に記載されていること及び本件文書1ないし9が事故報告(体罰)に関するものであり、公開された情報から公開しない部分にどのような情報が記載されているかを概ね推定することができることから判断すれば、このような概括的な記載であっても、請求者は各非公開情報がなぜ旧条例第6条第1項第1号に該当するかを了知し得ると考えられ、本件決定を取り消さなければならない程度に理由付記の不備があるとまではいえない。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
別紙
ア 公開しない行政情報
イ 公開しない理由
個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るものであり、旧条例第6条第1項第1号に該当するため。
年月日 |
内容 |
---|---|
平成13年9月11日 |
諮問を受ける(諮問第11号) |
平成14年2月13,14日 |
実施機関より開示決定等理由説明書を受理 |
平成14年6月24日 |
審議 |
平成14年7月18日(第14回審査会) |
実施機関より意見聴取及び審議 |
平成14年8月2日(第15回審査会) |
審議 |
平成14年9月2日(第16回審査会) |
審議 |
平成14年10月4日(第17回審査会) |
審議 |
平成14年11月11日(第18回審査会) |
審議 |
平成14年12月19日(第19回審査会) |
審議 |
平成15年1月16日 |
実施機関に答申 |
氏名 |
現職 |
備考 |
---|---|---|
礒野 弥生 |
東京経済大学教授 |
|
遠藤 順子 |
弁護士 |
会長職務代理者 |
大森 彌 |
千葉大学教授 |
会長 |
田村 泰俊 |
東京国際大学教授 |
|
馬橋 隆紀 |
弁護士 |
|
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