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掲載日:2023年4月12日

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飲料水

水道は「清浄な水を豊富、低廉に供給する」ことを使命としています。厚生労働省は水道の長期的な政策目標の一つとして「全ての国民が安心しておいしく飲める水道水の供給」を掲げています。1887年、横浜に近代水道が誕生して以来、我が国の水道の普及率は、平成30年度末現在で、98.0%に達しています。ほとんどの国民が水道を利用できる昨今において、水道の蛇口をひねれば、国内どこででも、水道法の水質基準に適合した水を得ることができます。しかし、地域によっては必ずしも「安心しておいしく飲める水道水」が供給されているとは感じない現状があります。「安全でおいしく飲める水道水」とはどんな水でしょう?

 

安全でおいしい水の水質要件

安全でおいしい水であるためには、まず、人の健康を害するものであってはならず、しかも、味覚を損なうものであってはなりません。そのために厳しい基準が設けられています。すなわち、水道法の水質基準項目(51項目)、水質管理目標設定項目(27項目)、要検討項目(46項目)等の規制項目の基準値、目標値を満たしていることが必要条件です。これらの項目は水道水中に含まれている物質あるいは検出される可能性のある物質で、基準値や目標値を超過して含まれると、人の健康を害したり、味覚を損なったりする恐れがあるため、規制値が定められています。これ以外にも未規制の有害化学物質はたくさんあります。もし、それらが水道水中に検出され、健康被害を及ぼす可能性がある場合には、規制対象に加えられると考えられます。規制項目は、水道を取り巻く環境の変化に対応し、水道法水質基準の改正ごとに増えています。したがって、安全でおいしい水であるためには、規制項目を満たすことが必要条件になりますが十分条件ではありません。当研究所では水質基準項目、水質管理目標設定項目、要検討項目等の規制項目に関する検査を行っています。

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塩素消毒

水道水は衛生上必要な措置として塩素消毒を行うことが義務づけられており、給水栓における残留塩素濃度が、遊離残留塩素で0.1mg/L以上(結合残留塩素で0.4mg/L以上)保持するように定められています。水道水の塩素消毒は、かつて多数の死者をだしたコレラ、腸チフス、赤痢などの感染症を予防する目的で、100年以上前から行われてきました。その結果、現在ではそれらの感染症の流行はほとんど見られなくなっています。そのため、塩素消毒の重要性を実感できなくなっていますが、その役割の重要性は現在も変わっていません。塩素は消毒剤として優れているばかりではなく、水道原水中の鉄、マンガン、アンモニア態窒素の除去にも役立っています。でも、水道水の塩素消毒は利点ばかりではありません。塩素は水道水中の有機物質と反応し、微量ですが、トリハロメタン、ホルムアルデヒド、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロアセトニトリル等の消毒副生成物を生成するという問題点もあります。しかし、消毒副生成物の安全性には十分な配慮を払った基準が設けられていますので、私達が飲んでいる水道水では特に心配はいりません。

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埼玉県の水道

1. 水道の年間給水量、水道普及率の推移

埼玉県における人口、水道の年間給水量、普及率の推移を表1に示します。
埼玉県における人口は昭和40年では約301万人であったのが、平成元年には約631万人と、24年で約2倍に増加し、平成14年に700万人を超えました。人口の増加とともに、水道の年間給水量も増加し、昭和40年には1億3千万立方メートルであったのが、平成元年には8億2千万立方メートルと約6.5倍に増加し、平成30年には8億3千万立方メートルになっています。水道の普及率は昭和40年には61.7%(全国:69.7%)であったのが、平成元年には98.7%(全国:94.4%)に、平成30年には99.8%(全国:98.0%)に達しています。埼玉県における水道の普及率は、昭和45年以降、全国平均を上回っています。

表1 埼玉県における水道の年間給水量と水道の普及率の推移

年度

人口

給水量

埼玉県の普及率

全国の普及率

昭和40年

301万人

1億3千万立方メートル

61.7%

69.7%

昭和43年

350万人

2億2千万立方メートル

75.3%

76.9%

昭和45年

387万人

3億1千万立方メートル

81.1%

80.8%

昭和50年

482万人

5億立方メートル

91.8%

87.6%

昭和55年

542万人

6億立方メートル

95.7%

91.5%

昭和60年

586万人

7億2千万立方メートル

97.5%

93.3%

平成元年

631万人

8億2千万立方メートル

98.7%

94.4%

平成5年

666万人

8億9千万立方メートル

99.2%

95.3%

平成10年

689万人

9億立方メートル

99.4%

96.3%

平成15年

704万人

8億9千万立方メートル

99.6%

96.9%

平成20年

715万人

8億6千万立方メートル

99.7%

97.5%

平成25年 723万人 8億4千万立方メートル

99.8%

97.7%

平成30年 733万人 8億3千万立方メートル

99.8%

98.0%

2. 水源別年間給水量割合の推移

埼玉県における水源別年間給水量割合の推移を表2に示します。
埼玉県内には、水道の水源として、たくさんの深井戸があります。昭和40年には、水道の水源としての地下水と河川水(表流水・伏流水)の割合が約9対1の比率でした。地下水は人による汚染が少なく、浄水処理が河川水よりもはるかに容易で、年間を通して水温がほぼ一定なため、夏は冷たく冬は温かく、しかも、おいしく感じる水が多い等、多くの利点を有しています。しかし、地下水のくみ上げすぎは地盤沈下を引き起こします。埼玉県でもそれが原因と考えられる地盤沈下が起こり問題となりました。そのため、水道水源を地下水から河川水へと転換してきました。埼玉県では河川水を水源とする大規模な浄水場(県営水道)を建設し、昭和43年度から市町村の水道事業体へ、水道水の給水を開始しました。市町村の水道事業体は、県営水道から供給された水道水と自己水源を用いた水道水を住民に供給していますが、大部分は県営水道から供給された水道水です。現在、県営水道が5ヶ所(大久保浄水場、庄和浄水場、行田浄水場、新三郷浄水場、吉見浄水場)あり、これらの浄水場で、埼玉県の水道水の約四分の三をまかなっています。そのため、水道原水における地下水の占める割合が減少し、平成30年度では約2割程度となっています。

表2 埼玉県における水源別年間給水量推移

年度

地下水

河川水

県営水道

昭和40年

89.6%

10.4%

0%

昭和43年

80.4%

9.8%

9.8%

昭和45年

72.6%

9.3%

18.1%

昭和50年

45.7%

6.7%

47.6%

昭和55年

35.8%

4.8%

59.4%

昭和60年

35.1%

5.2%

59.7%

平成元年

31.6%

5.0%

63.4%

平成5年

25.4%

4.5%

70.1%

平成10年

23.0%

4.4%

72.6%

平成15年

21.5%

4.2%

74.3%

平成20年

20.3%

4.2%

75.5%

平成25年 21.2%

4.2%

74.6%

平成30年 21.3%

4.3%

74.5%

3. 水道水の水質

地下水を水源とした水道水の水質

地下水には、浅層水(浅井戸)、深層水(深井戸)、湧泉水などがあります。
一般的に浅層水、湧泉水は地表の影響を受けやすいため、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の濃度が高かったり、細菌などの汚染を受けている場合が多く見られます。深層水は地層をゆっくりくぐり抜けていく過程で浄化作用を十分に受けるため、細菌の検出率は少なく、水温や水質が安定しているため、水道水源に適しています。しかし、地下水は一度汚染されてしまうと、長い間浄化が難しく、利用できなくなったり、前述したように過度のくみ上げにより地盤沈下を引き起こすなどの問題点もあります。
埼玉県の南部、北部地域は良質な地下水であることが知られています。そのため、浄水処理過程において塩素注入量が少なくてすむので、トリハロメタン等の消毒副生成物が極めて少なくなっています。これに対して、県東部地域の深井戸は、塩化物イオン、鉄、マンガン、有機物、色度、アンモニア態窒素の濃度が高い傾向にあります。したがって、色度のもとになる鉄やマンガンの除去、アンモニア態窒素の除去のため、塩素注入量が県南、県北地域に比べて多くなっています。その結果、トリハロメタン等の消毒副生成物がそれらの地域に比べると多くなる傾向が認められています。しかし、水質基準を超えることはなく、健康に影響を与える濃度ではありません。

河川水を水源とした水道水の水質

一般に、河川の上流域では水質がよいものの、生活排水や工場排水などが流入する下流域では水質が悪くなります。河川水を水源とする浄水場は、地下水を水源とするそれよりも、規模の大きな施設が必要となります。河川水は天候により水量が左右されるため、水道水を安定供給するには、上流域にダムや貯水池が不可欠となります。河川水を水源とする浄水場は給水人口の多い都市部に適しています。
河川水を水源とした水道水で問題になることは、塩素臭、かび臭、突発的な薬品等による汚染等です。河川水の水質は、雨の少ない冬季や夏季の異常渇水時に、水量の減少により悪化してきます。水温は夏季に高く、冬季に低くなります。浄水場ではそれぞれに応じて対策を講じています。例えば、夏季の異常渇水で水量が少なく、水温が高く、トリハロメタン濃度が高くなることが予想される場合、浄水処理過程で活性炭を投入し、前駆物質となる有機物を取り除き、トリハロメタンの生成を抑制しています。また、上流の遊水池や支流で、かび臭の原因物質となる藻類が発生すると、活性炭を使ってかび臭を取り除く処理を行っています。

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水道水をよりおいしく飲むために

我が国では、蛇口をひねれば、国内のどこででも、水道法の水質基準に適合した安全な水道水を得ることができます。水道水は安全のために塩素消毒を行っていますので、時には塩素臭を感じることもあります。塩素臭が味を損なうと感じる方は、次のような工夫をすることにより、水道水をよりおいしく飲むことができると思います。

1. 家庭用浄水器を利用する

浄水器は、基本的に活性炭と中空糸膜を備えている構造であればよく、高価である必要はありません。活性炭は塩素臭、かび等の臭気、色度を取り除くことができます。活性炭と中空糸膜からなるカートリッジが新しいときはトリハロメタンも低減化することができます。また、中空糸膜により細菌、原虫、異物等をろ過することができます。浄水器を通した水は塩素がないので、殺菌作用がありません。そのため、保存しておくには不向きです。お茶を入れたときに塩素臭がすると感じる方には、浄水器を通した水の利用を勧めます。

2. 水道水を冷蔵庫で冷やして飲む

塩素臭が気になる方は、冷蔵庫で冷やして飲むことを勧めます。水は冷やしたほうがおいしく感じます。また、塩素の匂いを感じにくくします。反対に温度を上げると塩素臭が強くなります。水道水は塩素が含まれているので、冷蔵庫に1週間程度保存しても一般細菌が繁殖することはありません。

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お問い合わせ

保健医療部 衛生研究所 生活衛生担当

郵便番号355-0133 埼玉県比企郡吉見町江和井410番地1

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