トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成21年度情報公開審査会答申 > 答申第149号 「特定土地区画整理事業計画変更の事前協議打ち合わせ記録及び資料」等の部分開示決定(平成22年2月25日)
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掲載日:2024年4月2日
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答申第149号(諮問第189号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が平成21年5月26日付けで行った、別紙に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)の部分開示について、異議申立人が開示すべきと主張する部分を不開示とすることは、妥当である。
2 異議申立て及び審議の経緯
(1) 異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成21年5月12日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し次の開示請求を行った。
(2) これに対し実施機関は、上記アに係る公文書として本件対象文書を特定し、平成21年5月26日付けで次のとおり公文書部分開示決定を行い、申立人に通知した。
(3) 申立人は、平成21年6月9日付けで、実施機関に対し、本件処分の取り消しを求めて異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
(4) 当審査会は、本件異議申立てについて、平成21年6月24日に実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5) 当審査会は、実施機関から、平成21年7月14日に開示決定等理由説明書の提出を受けた。
(6) 当審査会は、申立人から、平成21年8月12日に反論書の提出を受けた。
(7) 当審査会は、平成21年9月24日に実施機関から意見聴取を行い、同日、申立人の口頭意見陳述を行った。
(8) 当審査会は、実施機関から、平成21年10月2日に、条例第10条第5号にも該当するとして、開示しない理由(以下「不開示理由」という。)を追加する旨の開示決定等補充理由説明書(以下「補充説明書」という。)の提出を受けた。
(9) 当審査会は、申立人から、平成21年10月19日に反論書の提出を受けた。
(10) 当審査会は、申立人から、平成21年11月16日に反論書の提出を受けた。
(11) 当審査会は、実施機関から、平成21年12月10日に意見書の提出を受けた。
(12) 当審査会は、申立人から、平成22年1月15日に反論書の提出を受けた。
3 申立人の主張の要旨
申立人が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 土地区画整理組合(以下「組合」という。)は土地区画整理法(昭和29年法律第119号)(以下「法」という。)に基づく公的団体であり、桶川市、県、国の補助金や負担金など公的資金が投入されている。この組合の再建計画は納税者にとっても重要な情報である。
したがって、これらの情報を非公開とすることは、これまでの運営責任を隠ぺいし、新たな税負担や組合員の負担を強いるための法的手続を有利に進めることとなり、断じて看過できない。
本件処分の理由として、「これらの情報を公開することで、当該法人の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害するおそれがあり」と述べられているが、具体的な権利、正当な利益、競争上の地位は存在せず、条例第10条第2号に該当しない。
(2) 本件組合の組合員の中には、賦課金によって負担を強いられる農業主もあり、生産手段を奪われる。市の財政が逼迫すれば、福祉の切り捨てが行われ、生活弱者の生活そのものに影響が及ぶ。したがって、法人情報として開示の判断に躊躇するものがあったとしても、条例第10条第2号ただし書の人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報に該当する。
(3) 打合せの内容を公開することで、本件組合との信頼関係を損なうということであれば、打合せ記録そのものを不開示とすべきにもかかわらず、不開示情報が金額などに限定されているのはどういうことか。
また、開示することにより、事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障の程度が「信頼性を失う」という漠然とした名目的なものでは、条例第10条第5号に該当しないと解する。
4 実施機関の主張の要旨
実施機関が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 組合施行の土地区画整理事業において県が行う事務は、法に基づく事業計画変更等の認可、縦覧に供された事業計画に対して提出された意見書の処理、組合事業に対する助言及び補助金の執行確認等である。
本件対象文書は、本件組合の事務を技術支援している桶川市職員が、事業の見直しや事業計画の変更内容を、本件組合の総会での審議や県への認可申請に先立ち、県担当者に対して説明したときの打合せ記録及び資料である。
(2) 本件処分において不開示とした情報を公にすることにより、保留地購入を予定している者が購入を躊躇する、金融機関との資金融資の調整に支障をきたす等により、本件組合の経営を悪化させるおそれがある。また、宅地販売において競合する民間事業者との競争上の地位を害するおそれや、誤った情報が公になることにより利害関係者に無用な混乱を与えるおそれもあるため、条例第10条第2号に該当する。
(3) 本件処分において不開示としたのは、打合せ時点での不確定な情報や、今回の事業見直しの主要な部分である本件組合の財務状況、財務計画に関するものである。これらの情報を公にすることにより、本件組合及び他の組合との信頼関係を損ない、今後の組合に対する指導助言や円滑な認可事務に支障を及ぼすおそれがあるため、条例第10条第5号に該当する。
5 審査会の判断
(1) 不開示理由の追加について
実施機関は、本件処分において、当初、条例第10条第2号に該当するとしていたが、当審査会で行った意見聴取及び当審査会に提出した補充説明書等で、条例第10号第5号にも該当するとして不開示理由を追加した。
行政処分における理由の付記は、実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、不開示理由を開示請求者に知らせることによって、不服申立てに便宜を与えるために行うものである。そのため、不服申立てが行われた後に実施機関が不開示理由を追加したことは、情報公開制度の運用上、必ずしも適切なものとはいえない。
しかし、最高裁判所平成11年11月19日判決(公文書一部公開拒否処分取消請求事件)が示すように、不開示理由の追加は認められないものではない。また、当審査会において、追加された不開示理由について審議しないまま答申をした場合、実施機関が当該不開示理由により再度部分開示決定を行う可能性も考えられる。
そのため、追加された不開示理由についても異議申立人に反論の機会を与え、条例第10条第2号と第5号の双方について審議を行った。
(2) 組合施行の土地区画整理事業について
本件区画整理事業は、組合施行の土地区画整理事業である。
法第3条第2項は、土地区画整理事業を施行することができるものとして組合を規定している。組合は法人であり(法第22条)、7人以上が共同して定款及び事業計画を定め、都道府県知事の認可を受けることによって設立する(法第14条)。土地区画整理事業の施行地区内の宅地について、所有権又は借地権を有する者はすべてその組合の組合員となり(法第25条)、定款の変更、事業計画又は事業基本方針の変更、借入金の借入及びその方法等については、総組合員で組織する総会の議決事項となっている(法第31条)。
都道府県知事においては、縦覧した事業計画に対して提出された意見書の審査(法第20条)、組合設立や事業計画の認可(法第21条)、定款又は事業計画変更の認可(法第39条)、組合に対し報告若しくは資料の提出を求め、必要な勧告、助言若しくは援助をする(法第123条)、組合の事業又は会計の状況の検査(法第125条)等の規定がある。
また、本件組合に対しては、施行地区を管轄する桶川市が、法第75条の規定に基づき技術的支援を行っている。
(3) 本件対象文書について
本件区画整理事業は昭和62年度から行われているが、近年の土地価格の下落や補助金の減少により収入が減る一方で、事業の長期化により支出が増えていることにより、事業費不足の状況にある。本件対象文書は、この事業費不足の解消のために事業計画を変更するに際して、本件組合の事務を代行している桶川市職員が県担当者に相談及び説明をしたときの内容を、県担当者が記載した打合せ記録と、当該打合せ時に桶川市職員が県担当者に提出した資料である。
前述のとおり、事業計画の変更を行うためには、組合の総会における議決や、都道府県知事の認可が必要であるが、事前の打ち合わせについて法は規定していない。実施機関の説明によれば、議決や認可の手続に手戻りがないように、事業計画の変更案が認可要件を満たすものか確認する意図で、桶川市職員が県担当者に対して、総会や認可申請の前に相談や説明を行っているとのことである。
このことから、本件対象文書は、法第39条に基づき事業計画変更の認可権限を有する実施機関が、当該権限の行使に先立って行った打合せに係るものであると判断される。
(4) 本件処分について
当審査会が確認したところ、本件対象文書には、事業費が不足していることの理由や不足額を補填するための方法、事業計画の変更案、県が打合せ時に指示した事項等が記載されている。
このうち、本件処分で実施機関が不開示とした情報(以下「本件不開示情報」という。)は2種類ある。1つは「本件組合の資金計画等に関する単価及び金額、構成比(開示決定日以前に認可した事業計画書のもの及び平成20年度までの補助金を除く)」で、具体的には「事業費の不足見込額及び内訳額」、「借入金及び利子の額」、「事業費及び資金計画の変更予定額」、「不足事業費の補填予定額及び負担割合」、「保留地処分金の予定額」、「賦課金の予定額」及び「現行計画の予測額」を不開示としている。もう1つは「本件組合と債権者に関する事項」で、債権者について記載されている部分を不開示としている。実施機関は、いずれについても条例第10条第2号及び第5号に該当すると主張している。
(5) 条例第10条第2号の該当性について
実施機関は、本件不開示情報を公にすることにより、本件組合の経営を悪化させるおそれ、宅地販売において競合する民間事業者との競争上の地位を害するおそれ、利害関係者に無用な混乱を与えるおそれがあることを主張していることから、当審査会は条例第10条第2号の該当性について検討する。
実施機関の本件不開示情報に係る判断は、例えば、本件区画整理事業が事業費不足であることを記載した文言は開示するが、それに対応する金額は不開示とするというものである。そのため、既に開示されている情報により、本件対象文書に記載されている本件区画整理事業の現状や事業費不足額の補填方法、打合せにおいて県が指示した事項等について、その内容の大半を知ることができる。また、本件不開示情報について、それに関わる開示情報と比較したときに、実施機関の主張する「当該法人の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害するおそれ」という点において明確な違いがあるとは認められず、このことについて実施機関の説明は具体的でない。さらに、本件区画整理事業は国、県及び桶川市からの補助金等も財源としており、健全な市街地の造成を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的としている法に基づく事業でもあることから、その施行者である本件組合は公共性の高い法人である。よって、実施機関においては、このような法人の性格についても考慮に入れた上で、本件法人における正当な利益の意義及びこれを害するおそれの有無について、慎重に判断するべきであったと考える。
なお、実施機関の説明によれば、本件組合に対して技術的支援を行っている桶川市は、本件対象文書と同種の公文書について、個人情報を除いて開示したとのことである。
以上のことから判断すると、本件不開示情報が条例第10条第2号に該当するという実施機関の主張は是認できるものではない。
(6) 条例第10条第5号の該当性について
実施機関は、本件不開示情報を開示することにより本件組合との信頼関係を損ない、事業の見直しに係る問題について率直な意見交換ができなくなるおそれがあること、さらに他の組合との信頼関係にも影響し、県の行う今後の組合の指導や認可事務に支障をきたすおそれがあることを主張していることから、当審査会は条例第10条第5号の該当性について検討する。
本件対象文書は、5(3)で述べたとおり、法第39条に基づく事業計画変更の認可の一環で行った打合せに係るものである。土地区画整理事業の運用について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4の規定に基づく国の技術的助言として策定された土地区画整理事業運用指針(平成13年12月国土交通省)(以下「運用指針」という。)には、「近年の組合事業においては、地価下落等の影響を受け、保留地処分がなかなか進まないほか、保留地売却による収入見込みが大きく減少するなど、事業経営の面からみて極めて厳しい状況にあるものもみられる。」、「組合施行の土地区画整理事業については、事業の認可にあたって、資金計画のうち保留地に関するものについて価格、規模、処分量等の観点について、周囲の宅地需要からみて適正なものであるか、十分精査するとともに、施行者が、常に経営意識、コスト意識を徹底し、事業費の圧縮、事業施行期間(投資回収期間)の短縮等、適切な事業運営に努めるよう、指導することが望ましい。」と記載されている。本件区画整理事業は事業費不足の状況にあり、運用指針に記載された趣旨の指導が県に求められていると解される。
また、本件区画整理事業において生じている問題について、正確で詳細な情報を収集することは、県が適切な指導を行い、また事業計画に関する認可の適正な判断を行う上で重要なことと考えられ、現に実施機関は、打合せを行うことにより、以後の本件組合に対する指導助言や事業計画変更の認可を円滑に行うことができると主張している。
現在県は、本件組合のみならず他の複数の組合に対する認可、勧告・助言・援助等の事務を継続的に実施しているとのことである。一般に、県が組合の情報を収集する打合せや事前相談の場において提供された情報につき、未だ不確定要素を持つ情報も含めて無制限にこれを公にすることとなれば、例えば、想定上の数値があたかも確定した情報であるかのような憶測を招くことをおそれ、今後、同様の場において組合側から任意に正確な情報を得ることが困難となる可能性も否定できない。
これらの観点から、組合施行の土地区画整理事業において、法に規定する県の役割が十分に果たせなくなるおそれがあるという実施機関の主張は、理解できるものである。
したがって、本件不開示情報は条例第10条第5号に該当すると認められ、実施機関が、申立人が開示すべきと主張する部分を不開示とすることは、妥当である。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
磯部 哲、加々美 光子、白鳥 敏男
別紙1 本件対象文書
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成21年6月24日 |
諮問を受ける(諮問第189号) |
平成21年7月14日 |
実施機関から開示決定等理由説明書を受理 |
平成21年7月23日 |
審議(第二部会第46回審査会) |
平成21年8月12日 |
申立人から反論書を受理 |
平成21年8月25日 |
審議(第二部会第47回審査会) |
平成21年9月24日 |
実施機関からの意見聴取、申立人の口頭意見陳述(第二部会第48回審査会) |
平成21年10月2日 |
実施機関から開示決定等補充理由説明書を受理 |
平成21年10月19日 |
申立人から反論書を受理 |
平成21年10月22日 |
審議(第二部会第49回審査会) |
平成21年11月16日 |
申立人から反論書を受理 |
平成21年11月26日 |
審議(第二部会第50回審査会) |
平成21年12月10日 |
実施機関から意見書を受理 |
平成21年12月17日 |
審議(第二部会第51回審査会) |
平成22年1月15日 |
申立人から反論書を受理 |
平成22年1月21日 |
審議(第二部会第52回審査会) |
平成22年2月18日 |
審議(第二部会第53回審査会) |
平成22年2月25日 |
答申 |
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