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掲載日:2023年1月11日

埼玉新聞連載記事「持続可能な社会目指して」その22

自前の水源を持つ

増加する雨水利用施設

雨は大地に染みこみ、地下水となり、また川の水となり、豊かな自然環境が育まれる。私たちはこの水を農業、飲み水や生活用水、工場や商業施設などで使っている。ところが、街では屋根や舗装の進んだ道路には水は染みこまないため、浸透施設や透水性舗装がなければ雨は時として都市型洪水を引き起こし、使われずに速やかに下流域に排除されてしまう。

一方、使われる水道水の原水を100km以上も離れた上流の地域に求めることも少なくない。我が国の年平均降水量は約1700mmであり、世界の年平均降水量の約2倍である。しかし、人口一人当たりの年平均降水総量は約5100立方mであり世界平均の約4分の1である。貴重な雨水を有効に利用する方法はないのだろうか。

雨水を有効利用する施設は年々増加しており、埼玉県では2008年度に287施設に達している。大規模なビルでは屋根に降った雨を集め、トイレの洗浄水、散水用水、空調冷却水などに使っている。また、道路など地域に降った雨を地下の貯留施設に導き都市型洪水を防ぐとともに、噴水やせせらぎなど親水施設で使うこともある。雨水は使用用途に応じて適切な処理が行われるが、オゾンによる浄化・滅菌処理や特殊な充填材を用いたろ過処理など雨水処理に適した技術開発も進んでいる。

戸建て住宅では、雨水タンクを雨といに接続することで雨水利用ができる。タンクは200Lのもので、約4~9万円で販売されているものが多い。例えばさいたま市で屋根10平方mに降った雨水を全部集めるとすると、過去5年の平均月降水量は約120mmであるから月に1200L雨水が貯まる計算なる。実際は降水量には変動があるので必ずしも計算通りにはならないが、200L貯まれば平均的なジョーロ(7L)約28杯分に達する。この水は散水や洗車に使用することができる。

地域社会で雨水利用を進める利点は、自前の水源を持てることにある。離れた上流の水源地域が渇水の時あるいは災害で水道水の供給が停止しているとき、地域に貯めた水から生活用水の一部を補うことができる。また、水源が身近になることから、水資源に対する意識が高まり節水について考える契機ともなる。

県環境科学国際センターでも、雨水利用のシステム(図1)が稼働している。展示館の屋上(面積約1300平方m)に降った雨を集め、地下の貯水槽(容積約230立方m)に水を貯めている。雨水は沈澱、ろ過、滅菌処理をされたあと、生活排水を高度に処理した水と混ぜられ、トイレの洗浄水や草木への散水に使用されている。2009年度には、年間1349立方mの雨水を利用した。これは施設全体で必要な水量の約20%に当たり、大幅に水道の使用量を減らすことができた。

雨水利用を拡大するためには、水道水以外の水を使うことに対するひとりひとりの意識が重要である。2008年に内閣府により行われた「水に関する世論調査」によると(図2)、一度使った水を処理した水や雨水をトイレなどに使いたいとする者は86.4%にのぼっている。2001年の調査より増加しており、水道水以外の水を利用することへの抵抗感は減っている。一方、雨水貯留浸透施設の住宅への導入については、補助がなくても導入したい者は3.9%、一部でも補助があれば導入したい者は36%、全額補助があれば導入したい者は36.9%となっている。このことから、施設導入の可否については費用次第とみることができる。近年、自治体から施設の設置に補助金を交付することも増えており、雨水利用を促進している。埼玉県内では17の市町村で補助制度があるので、設置を検討してみてはいかがだろうか。

図1 環境科学国際センターの雨水利用システム
雨水利用のシステム

水に関する世論調査の結果グラフ
水に関する世論調査

埼玉県環境科学国際センター水環境担当 池田和弘

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環境部 環境科学国際センター 研究推進室 水環境担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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