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ページ番号:21452

掲載日:2023年1月16日

埼玉新聞連載記事「自然との共生 埼玉の現状と課題」その2

2008年5月26日掲載

地球温暖化と埼玉の気温変化上昇

加速する気温上昇を止められるか

近年、極端な異常気象が頻発している。ミャンマーのサイクロン被害の死者・不明者は十三万人を超えるという。これまで四万人以上が熱中症で死亡した欧州の熱波(二〇〇三年)をはじめ、アメリカを襲った最大瞬間風速90メートルを記録したハリケーン・カトリーナ(二〇〇五年)。世界最大の水量をほこるイグアスの滝の枯渇(二〇〇六年)、毎年生じるようになった黄河の断流、国土の半分が浸水したバングラデシュの大洪水(二〇〇七年)、小麦価格高騰の原因の一つとなっているオーストラリアの大干ばつ等枚挙にいとまがない。これらは個々には温暖化の影響かどうか明確ではないが、異常気象が増加していることと、温暖化で生じると予測された内容とは完全に一致している。このような温暖化による気候変動を防ぐために二酸化炭素などの排出量を削減することは世界が合意しているが、その目標として、何度の上昇にとどめればよいかが今の最大の関心事である。昨春報告されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)4次評価報告書は、深刻な影響を回避するには産業革命以前と比べて2度から3度の気温上昇が限度と報告している。しかし、今のままでは二一〇〇年には最大6.4度の気温上昇が予測されている。

「たった6度か」と考える人がいるが、毎日の気温変動を考えれば、それもうなずける。しかし、地球全体の一年間の平均気温が6度上昇することの影響ははかり知れない。約一万年前に終わった氷河期の気温は現在より3度~6度低かっただけといわれる。今後、1度の気温上昇でアメリカ西部に新しい砂漠が出現する。2度上昇で世界中の珊瑚が絶滅し、ツバルなどの島々が水没する。3度上昇でアマゾンは乾燥したサバンナに、4度上昇すれば百年に一度の嵐が毎年襲う可能性が高いと予想されている。

現在までに既に地球全体の気温は一九〇〇年以降、既に0.74度上昇しており、しかも、年々上昇速度が加速している(図)。

このような地球温暖化を背景に埼玉県の気温も年々上昇を続け、昨年八月にはフェーン現象が加わって日本新記録40.9度を記録した。熱中症による死者が八人も出てしまった。

気象庁の記録によれば一九〇一年以降、熊谷は日平均値が2度、東京は3度上昇した(表)。銚子は1度、中小都市の気温上昇が1.1度であり、この、おおむね1度程度の気温上昇が日本における地球温暖化の影響と考えられる。それを上回る気温上昇は都市化によるヒートアイランド現象などの影響である。もっとも、都市の高温化の根本原因は地球の温暖化と同じである。都市は大量のエネルギー消費で建設、維持されており、大量の二酸化炭素排出を伴っているからである。違いは都市の高温化は排熱や地表面被覆の人工化などで生じる局地的現象であり、温暖化は自然の吸収量以上に排出された二酸化炭素が大気中に増加し、温室効果が高まることによる。少なくとも今後、埼玉や日本の気温上昇を止めることは日本の責務であり、日本の温暖化対策進展の指標となろう。

1901年以降の気温上昇の表

表 1901年以降の気温上昇
(中小都市の値は「気象庁異常気象レポート2005」より)

全球年平均気温の推移の図

図 全球年平均気温の推移
(「IPCC4次評価報告書掲載図」を基に改編)

埼玉県環境科学国際センター 自然環境担当 小川和雄

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環境部 環境科学国際センター 研究推進室 自然環境担当

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