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掲載日:2023年1月16日

埼玉新聞連載記事「自然との共生 埼玉の現状と課題」その21

2008年10月20日掲載

G8サミットを受けて

エコ社会形成へ直ちに行動を

今年七月に北海道洞爺湖畔で開催されたG8サミットは滞りなく終了し、環境と気候変動について大きな成果を挙げた。一部には、中国やインドのような新興国がG8の目標に合意していないこと、米国が依然として京都議定書の枠組みから脱退したままでいることなどがあり、地球温暖化対策が必ずしも国際的に前進したとはいえない、という厳しい意見もある。

しかしながら、第一には米国も含めてG8が長期目標として二〇五〇年までに温室効果ガスを半減することに同意し、これを気候変動枠組み条約の締約国(百九十カ国)とともに共有することを確認したことは、国際的に地球温暖化対策を進める第一歩を踏み出したことになる。

G8サミットは多数決で決めるのではなく全体合意が必要だが、これまで温暖化対策に消極的だったブッシュ大統領がCO2排出削減に前向きな姿勢を示したことは意義深いことであり、わが国が議長国として長期目標の合意を取りまとめられたことは、歴史に残るサミットではないかと考えられる。

次いでG8は、京都議定書に続く中期の国別総量目標を二〇〇九年頃に策定することを確認している。だが、CO2の大量排出国で構成されている主要経済国会合では、長期目標、中期目標ともに理解は示しているが合意はされていない。このことは、全ての国がCO2削減に向けて行動するにはまだ時間がかかることを示している。

このようにG8は成功裏に終了した。しかしながら、今年も昨年と同様に猛暑が続いた。そのうえ局地的な豪雨(今までではあり得なかった、時間当たり五十~百ミリメートルあるいはそれ以上の降雨)が頻発し、大きな被害をもたらしたところも多い。このため多くの国民は温暖化の影響の説明を受けるまでもなく、その恐ろしさを肌で感じるようになり、「地球はあと何年もつのだろうか、生きているうちに地球破滅の日が来るのだろうか」と不安を持つ人が多数現われている。

私たちが低炭素化社会に向けて行動を開始し、CO2排出量を年々減少させ、本当に二〇五〇年に半減させられれば、温暖化の影響は解消できるはずである。私たちがCO2削減に努力をすれば、二十~三十年は温暖化が進むが、CO2排出量の削減が早まればCO2のピークアウトも早くなり、影響も緩和されやすい。

CO2排出量を世界で50%ということは、わが国での対応は80%に相当する。言い換えれば二〇五〇年ではわずか20%排出が許されることになり、超低炭素化社会である。このような社会は現在のトレンドの延長線上にはないことが、容易に理解できる。低炭素化社会に向けた理念として、(1)カーボンミニマムの実現(2)豊かさを実感できる簡素な暮らしの実現(3)自然と共生の実現、などがある。

低炭素化社会は二〇五〇年に完成させるのではなく、二〇三〇年くらいにおおむね達成していなくてはならない。制度、法律、条令はもちろんのことわれわれのライフスタイル、ワークスタイルも変革しなければならない。例えば深夜化しているライフスタイルも早寝早起きに切り替える必要があろう。

G8サミットを受けて、わが国が当面対応すべきこととして例示したのが表1である。すぐに自分のできる事から始めるとすれば、今年の年賀はがきはカーボンオフセットにしたらいかがと思う。

このような低炭素化の対応のなかで循環型社会の基本である3R(削減、再使用、再生利用)を徹底させるとともに、自然との共生をもっと加速化させる必要があり、この3つの社会が合わさって持続可能な社会が形成される。埼玉県では、里川の再生に全県をあげて取り組んでいる。図1に示したように、子どもたちが元気で遊べる里川の再生によって里山と里海とを結ぶことが可能であり、持続可能な社会(エコ社会)の一里塚となると確信する。

G8サミットを受けてわが国が当面すべきことの表

表1 G8サミットを受けてわが国が当面すべきこと

豊かな里山・里川・里海を伝えるためにの図

図1 豊かな里山・里川・里海を伝えるために

埼玉県環境科学国際センター 総長 須藤隆一

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