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掲載日:2023年1月11日

埼玉新聞連載記事「持続可能な社会目指して」その1

難しい低炭素社会の実現

相互関連する3つの取り組み

気候変動による地球環境の危機は不気味なほど身近に迫っている。埼玉県では2007年、2008年と猛暑が続き、2007年8月に熊谷市では40.9℃と、わが国最高温度を更新している。また、2008年、2009年と局地豪雨に見舞われ、時間雨量100mmを超えることも珍しくなくなり、交通がストップしたり、浸水等の被害もしばしば起こっている。このような異常気象は世界的にみても、熱波、洪水、渇水、干ばつ、竜巻、暴風、氷河の融解、生態系の劣化などとして、多数報告されている。

このような危機に正面から対峙(たいじ)して、その解決を図らない限り、人間の社会の発展はあり得ない。そのためには、健全で恵み豊かな環境が、地球規模でも、身近な地域でも保全され、それを通して世界中の人々が幸せを実感できる生活を享受し、将来世代にも継承することができる持続可能な社会の形成が不可欠である。それには3つの取り組みが必要で、第1は浄化容量を超えない範囲内に汚れを少なくすること、第2は自然とヒトとの共生が保障されること、第3は資源の循環利用を計ることである。この3つはそれぞれ低炭素社会、自然共生社会、循環型社会とよばれ、<図>に示したように相互に関連し合っているが、最も実現が難しいと考えられているのが温室効果ガス(CO2)を世界全体で半減する低炭素社会である。

相互関連する3つの取り組み

京都議定書によれば、2008年~2012年の5年間で、わが国は温室効果ガス(CO2)6%削減(1990年比)が義務付けられているが、2007年総排出量13億7400万トンで9.0%増加しており、合わせて当面15%の削減が必要である。

低炭素社会が実現できれば、先に示したような気候変動による脅威はなくなり、20世紀前半の気候に安定するはずである。世界的に大きな問題を引き起こした食糧危機も解消されているであろう。また化石燃料の争奪によるエネルギーの安全保障の問題もなくなるであろう。そして世界全体として、次世代に夢と希望に満ちた美しい地球環境を安心して引き渡すことが可能になってくる。再生可能なエネルギーの利用が飛躍的に広がり、エネルギーも食料も地産地消で賄われる。3R(抑制、再使用、リサイクル)が徹底的に実施され、最終処分する廃棄物はほとんどなくなる。住宅やオフィスは最高の省エネルギーが施され、どこにでも公共交通機関(電車、電気バス、LRTなど)で出掛けることができるし、ほとんどの人が自転車を利用するようになる。自動車も走るが、化石燃料に頼らないものになる。

しかし、以上に示したような低炭素社会は、今の生活のままでは実現できるどころか、かえって気候変動の影響を加速化・深刻化させてしまい、その脅威はますます強まってしまう。わが国は2050年CO280%削減を長期目標としている。これは、1人年間2トン程度で、世界全体で半減したときの1人年間排出量に相当する。現在1人当たり年間排出量は、日本・英国10トン、米国20トン、中国3.9トンで、世界全体では米国と中国で40%程度を占め、わが国は4.2%である。

本年12月に、デンマーク・コペンハーゲンで行われるCOP15で中期目標が決まることになっている。政権交代したわが国は、排出権の国内取引市場の創設やCO2の「見える化」を図り、とりあえず2020年までに1990年比で25%削減を目標とすると公表している。埼玉県は2008年度に、2005年比ではあるが、2020年25%削減を目標に掲げている。

今回の環境シリーズでは、持続可能社会に向けた当センターでの調査研究や技術開発を中心に、20数回にわたって紹介することにする。

埼玉県環境科学国際センター 総長 須藤隆一

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