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掲載日:2021年7月9日

令和3年6月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(八子朋弘議員)

児童養護施設出身者への支援について

Q   八子朋弘 議員(県民)

厚生労働省は、虐待や貧困などにより児童養護施設や里親家庭といった社会的養護で育った若者が施設などを離れた後、どのような状況にあるのか、全国実態調査を初めて実施し、4月30日、調査結果を公表しました。
その調査結果によると、社会的養護出身者の大変苦しい生活実態が浮かび上がりました。調査では、「現在の暮らしで困っていることや不安なことは」との問いに対し、33.6%が「生活費や学費のこと」と回答、また、月々の収支が「黒字」と答えたのは26.8%で、「赤字」は22.9%、「過去一年間に病院や歯医者を受診できなかった経験は」との質問に対し、2割が「あった」と回答し、その理由は、「お金がかかるから」が66.7%と最多でした。経済的に厳しい状況にあることが分かります。
調査の案内を届けられなかった対象者が全体の3分の2であることから考えると、現状はさらに厳しいことが予想されます。児童福祉法に基づき原則として18歳で自立が求められ、進学や就職を機に施設などを出る子どもが多いわけですが、経済的な問題にとどまらず、困ったときに頼れる大人が周囲におらず、孤立しているケースも多いはずです。何としても彼ら、彼女らを救済しなければならないと思います。
昨年の報道では、埼玉県が実施している民間アパートを借り上げて、進学者に安い金額で提供し、社会福祉士が相談に乗る事業が先進事例として紹介されていました。すばらしい取組だと思います。ほかにも出身者の居場所、交流場所、相談場所としてアフターケアを目的に開設されたクローバーハウス事業や、安定した生活基盤を築くため大学生等に貸付けを行う自立支援資金貸付事業等々、埼玉県は頑張っていると思いますが、県内には児童養護施設だけでも22か所があり、毎年約70名が施設を巣立っていきます。
厚生労働省の調査結果は、埼玉県にも当てはまるはずで、孤立を深めている社会的養護出身者が必ずいるはずです。そうなってくると、先ほど御紹介したとおり、埼玉県では様々な支援メニューを用意していますが、その利用率が大事なポイントになってくると思います。
事業の性格上、なかなか利用率は出しづらいとは思いますが、厚生労働省の調査では約20パーセントが「支援を受けていない」と回答しています。必要がなく受けていないのならいいのですが、そもそも3分の2の対象者に調査の案内が届けられなかった状況を考えると、せっかくの支援メニューも利用されなくては意味がありません。利用者を増やすため、どのようなアプローチを行っているのでしょうか。
また、特に自立支援資金貸付事業については、貸付けではなく給付にできないでしょうか。将来の返済の負担を心配して活用しない例が多いようであります。
そして、この質問の最後に、これら様々な支援メニューによって実際の進学率や仕事の定着率等はどのような成果が上がっているのかについても確認させていただきたいと思います。
以上、福祉部長の答弁を求めます。

A 山崎達也 福祉部長

児童養護施設出身者への支援メニューの利用者を増やすため、どのようなアプローチを行っているかについてでございます。
児童養護施設等の入所児童が施設を退所後、保護者からの支援が期待できない状況で進学や就職を継続していくことは大変な困難が伴います。施設退所後、自立の道を着実に歩むことができるようにするためには、県や関係団体が実施する様々な支援メニューに関する情報を、退所児童が求めればいつでも手に入れられる状況にあることが必要です。そこで、児童が施設を退所する際には、支援メニューや必要な相談先をまとめた冊子を必ず渡すようにしております。また、各施設に対して、施設退所後少なくとも3年間は継続して退所者の就労や就学状況を確認するとともに、メールや手紙などで定期的に連絡を取り支援メニューを伝えるなど、必要なサポートを行うよう依頼をしております。
さらに、出身施設を介さずに同じような境遇の仲間と気軽に交流したり、悩みを相談することができる、本県の施設出身者のアフターケアの拠点となる「クローバーハウス」を設置しています。この拠点の存在を含め、支援メニューについては、県のホームページを始め、県社会福祉協議会、クローバーハウスの運営団体などのホームページでも発信をしています。こうしたアプローチをしっかり行っていくことに加え、施設等関係者や利用者からも御意見を伺い、より利用がしやすい制度となるよう工夫を重ねるなど、支援メニューの利用者の増加を図ってまいります。
次に、自立支援資金貸付事業について、貸付ではなく給付にすることはできないかについてでございます。
国の制度設計のもとに、本県でも平成28年度から経済的基盤の弱い児童養護施設等の退所者に、家賃や生活費などを貸し付ける事業を行っており、令和2年度末までに150人の方が利用しています。この貸付事業は、週20時間以上の就労を5年間行うことにより返済が免除されることになっており、給付型に準じたものとなっております。
しかし、児童養護施設等の退所者は、虐待によるトラウマや何らかの障害を抱え、就労への不安がある方も多く、この事業を利用することを躊躇ことも考えられます。そのため、退所児童が安心して利用することができるように、他の都道府県と協働して、完全な給付型にするよう国に対して強く要望しているところでございます。
次に、様々な支援メニューによって、実際の進学率や仕事の定着率等はどのような成果があがっているのかについてでございます。埼玉県5か年計画では、児童養護施設退所児童の大学等進学率を平成25年度の13.9%から令和3年度に27.0%にすることを目標としています。
そこで県では、進学率を高めるために、児童養護施設の高校生の塾に要する費用や教材費、大学受験料を負担するなどの支援を行っており、直近の令和元年度の進学率は目標を上回る28.6%となっております。また、就職者の職場定着率を高めるため、県が委託している就労支援事業者が退所者からの悩み相談に丁寧に対応するとともに、職場訪問によるフォローアップをきめ細やかに行っております。
こうした取組により、退所後3年後の離職率は、調査を開始した平成26年度の退所者は53.5%でしたが、直近のデータでは47.2%となり初めて50%を下回りました。
今後も児童養護施設や民間団体と連携しながら、誰一人取り残すことなく、全ての施設出身者が希望を持って社会生活を送ることができるように積極的に取り組んでまいります。

 

  • 上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
  • 氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。 

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