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掲載日:2024年10月8日
Q 板橋智之 議員(自民)
死に向かうとき、人や動物は少しずつ食べなくなり、空腹やのどの渇きを感じなくなるそうです。これは、体が水分と栄養を必要としないことが理由とのことです。我が国の場合は、口から物が食べられなくなると当たり前のように点滴が始まり、周りの願いもむなしく、回復が見られません。特に、高齢者は人工栄養で生かされている寝たきり患者が多くを占めているのが現状であります。高齢者は、不快な人工栄養の管を抜こうとするとき、手を拘束されます。いわゆる身体抑制です。このような状況を本人が望むはずもなく、これを見た家族は戸惑うばかりです。家族としては、状態はともかく、できるだけ親を生かしてほしいと願い、医師もまた少しでも長く生きてもらうために全力を尽くす、こうした関係性で治療が続いていってしまいます。我が国は、残念ながら高齢者の終末期医療について本人の意思が反映されていない場合がほとんどではないでしょうか。
一方、欧米諸国ではここ20年から30年で終末期の延命治療は控えるようになったそうです。オーストリアのある医師は、「食べないことも高齢者の権利」と言ったそうです。点滴や経管栄養が行われることもなく、食べるだけ、飲めるだけ。自宅や施設で看護され、何も口にしなくなると二週間ほどで穏やかに最期を迎えるそうです。
アメリカ(米国)の介護施設のある責任者は、「家族は親が何も分からない状態で生き続けることを望まない。手袋がぼろぼろになったら手は守れないように、体がぼろぼろになったら魂は守れない。人間、楽しいとかうれしいとかが分からなくなっては、生きていても仕方がない。」と語ったそうです。
こうした背景を踏まえ、平成30年3月、厚生労働省はアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の概念を人生の最後の最終段階における医療ケアの決定プロセスに新たに盛り込みました。これは患者本人の意思を尊重するには、どのような最期を望むのかを本人と家族と医師が介護提供者などと一緒に、現在の病気だけでなく、意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うことや、意思決定ができなくなったときに備えて、本人に代わって意思決定をする人を決めておくことをいいます。
さらに、過日の9月16日、毎日新聞によりますと、「延命中止 意思確認に力点」という見出しで終末医療に対して自民党は抜本見直し、新たな法案の練り直しに着手するとのことでありました。ACPの概念には賛同するところですが、心と体に問題を抱えていない時点でのACPの作成に比べて、高齢者で介護サービスを受け始めた頃や終末期を迎えようとしている方のACPの作成には相当高いハードルがあると言えます。また、今年の2月定例会において西山議員の同趣旨の質問に対して、関係動画を作成し、県民の理解を深めていきたいとの答弁がありました。
そこで質問ですが、今年度の事業を踏まえて今後どのようにアドバンス・ケア・プランニングを普及啓発していくつもりなのか、保健医療部長に御見解をお伺いいたします。
A 本多麻夫 保健医療部長
人生の最終段階における医療・ケアを決定していくプロセスにおきまして、議員お話のアドバンス・ケア・プランニング、いわゆるACPの概念を活かしていくことは大変重要なことと考えております。
県では、3つの考え方を踏まえて、ACPの普及啓発を図っていく必要があると考えております。
1つ目は家族等ではなく、あくまでも本人の意思をもとに医療・ケアを提供することを基本とすること。
2つ目は本人の認知能力や意識レベルが低下した場合には、家族や友人など本人が信頼する人を含めて、方針を話し合って医療・ケアを提供していくこと。
3つ目は病状や体調の変化に合わせ、繰り返し本人の意思の変化を確認しながら、チームとして医療やケアを提供し続けることです。
まずはこうしたACPの考え方やノウハウを地域包括支援センターのケアマネジャー、在宅医療連携拠点のコーディネーター、看護師やかかりつけ医に周知しておくことが不可欠です。
多職種によるチームがACPを十分に理解し、本人に必要な情報を提供して本人の意思を確認の上、医療・ケアを提供していく体制を確保する必要があります。
議員御指摘のとおり、特に死期が近付いた段階でACPについて話し合うことは難しいことから、日頃から本人や家族に寄り添っているケアマネジャーによる支援が重要と考えます。
このため、ケアマネジャーが本人や家族にACPの考え方やノウハウをわかりやすく説明できるよう、医療的な視点を重視した研修を実施してまいります。
一方、県民のACPに対する理解を深め、病気になる前から人生の最終段階においてどのような医療やケアを望むのかを考える環境を整えていく必要があります。
このため、県医師会と協力し、ACPに関する動画を作成し、市町村や地域包括支援センターなどを通じて県民への普及啓発に努めてまいります。
また、人生の最終段階において、本人が延命治療よりも体の痛みや精神的な苦痛を取り除くことを優先してほしいと望む場合も多くあります。
このため、在宅を含め受け皿となる病院や施設における緩和ケアの充実が不可欠です。
緩和ケアの実施に当たっては、医療用麻薬の効果的な処方や副作用への対応、気持ちの落ち込みや孤独感などに対する適切で質の高いケアを提供する体制の整備が必要となります。
そこで、県は医師会と協力し、緩和ケアを実施するがん診療連携拠点病院の専門医が地域の医療機関、介護事業所に緩和ケアに関する助言や情報提供を行うなど連携体制を構築してまいります。
また、県のがん診療連携拠点病院である県立がんセンターが開催するセミナーや出張医療講演の場を活用し、県民向けに緩和ケアやACPの考え方などの情報提供に努めてまいります。
今後、本人の意向を尊重した医療やケアが実現できるよう、引き続き、関係団体や機関と協力し、県民が望む人生の最終段階の医療・ケアが提供できる環境の整備に努めてまいります。
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