トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成23年度情報公開審査会答申 > 答申第170号「特定学校法人に対する補助金に関する文書の一切」についての部分開示決定(平成24年2月20日)
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掲載日:2024年4月4日
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答申第170号(諮問第220号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が平成23年2月18日付けで行った、「○○学校に対する補助金に関する文書の一切(児童生徒を○○学校に通学させていることを理由とした児童生徒ないしその親族等に対する補助金については、これを含むものとする)」を部分開示とした決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
2 異議申立て及び審議の経緯
(1) 異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成22年12月23日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、次の開示請求を行った。
○○学校に対する補助金に関する文書の一切(児童生徒を○○学校に通学させていることを理由とした児童生徒ないしその親族等に対する補助金については、これを含むものとする)(以下「本件開示請求」という。)
(2) これに対し実施機関は、本件開示請求に対する公文書を次のアからカまでに掲げる文書と特定した。
その上で、実施機関は、平成23年2月18日付けで次のとおり公文書部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、申立人に通知した。
(3) 申立人は、平成23年3月1日付けで、実施機関に対し、本件処分の取消しを求めて異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
(4) 当審査会は、本件異議申立てについて、平成23年10月26日に実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けるとともに、開示決定等理由説明書の提出を受けた。
(5) 当審査会は、平成23年11月11日に実施機関の職員から意見聴取を行った。
3 申立人の主張の要旨
申立人が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 法人代表者の印影について
印影は、法人の対外活動にとって重要な意義を有するものであるが、本件印影が秘密に管理されているかどうかについては、何ら明らかにされていない。
また、本件の印影が非公開とする以外にない印影に該当するのだとしても、理事長の氏名等のほかの文字と重なった部分についてまで印影があるということで理事長の氏名等の一部が非公開とされている箇所があるが、そのような処置が必要なのか大変疑問である。
(2) 小科目及び小科目に係る記載事項について
特定の法人の財務内容に関する事項であることは否定しないが、教育機関が高度な公共性を有することに鑑み、詳細を明らかにすることが必要である。
入学を希望する児童生徒や保護者等にとっては、財務内容の公開の度合いの低い学校については、財務情報へのアクセスは容易ではない。しかし、誰も倒産しそうな学校に入学させたいと思う保護者はいないのである。財務情報の公開については、各学校の自主的取組に任せようという考え方も一部にあるようであるが、それでは一部の私立学校に対して財務情報を全面的に非公開とする裁量を与えることになる。
現状としては、学校選択の際に基本的な情報が不足しており、判断材料に欠く事態が起きている。私立学校は、積極的に公開している学校もあるが、あまり財務情報の公開を積極的に行わない学校もあり、取組に大きな差が出ている。
教育機関の財務情報は、高度な情報公開がなされなければ、財務上の問題に起因して入学後に学校運営が成り立たなくなるなどの不測の事態を、児童・保護者は事前に計算した上で学校を選択する機会が奪われることとなり、その結果、子どもたちの学習権が突如脅かされ、教育を受ける権利に反する事態に陥ることが考えられる。
近年は、少子化の影響で、各学校法人の財務状況が徐々に悪化してきている一方で、その情報が破綻の日に至るまで何ら明らかにされないということも多く、生徒たちは、いつもと同じように学校に来ても、その学校にはもはや立ち入ることすらもできなくなっているというような事態が現実に起きているのである。このように、在学契約を履行する主体が倒れてしまった場合、子どもたちの学習権は保障されず、他の学校への突然の転入学を強いられるなど、学習環境のみならず、その子どもたち一人ひとりの人生に加わる悪影響というのは、きわめて深刻なものになりかねないのである。
そういった意味では、学校の財務の現実というのは、幅広く公にされなければならぬものであるというほかない。したがって、非公開を維持するとしても、相当な中身を伴った非公開の理由付けがなされなければ、納得することができない。
また、県は毎年当該学校に約1000万円程度の税金を投入している。よって、県民としては当然、学校の財務内容の適正性を確認する必要があるところである。とりわけ本件の学校は、学校の敷地等が整理回収機構により仮差押えをされたとの報道もある状況であり、その財務内容は、特に県民からの関心が高い内容である。
(3) 預金口座に係る記載事項について
預金口座は重要な意義を有するものではあるが、預金口座の開示によって当該法人にいかなる不利益が生ずるのか、何ら明らかにされていない。
4 実施機関の主張の要旨
実施機関が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 法人代表者の印影について
(2) 小科目及び小科目に係る記載事項について
(3) 預金口座に係る記載事項について
5 審査会の判断
(1) 本件開示請求について
申立人は、学校法人○○○○○○(以下「特定学校法人」という。)に対して実施機関が交付した補助金に関する文書の一切を開示請求した。
実施機関は、私立学校運営費補助金交付要綱(以下「交付要綱」という。)に基づき、特定学校法人に対して経常的経費の一部を補助していることから、補助金に係る交付申請から補助金額の確定に至る一連の事務手続において収受及び作成した、本件対象文書1から3まで、ほか3文書を対象文書と特定した。
本件対象文書1は、特定学校法人が補助金の交付を受けるために補助金等の交付手続等に関する規則(以下「規則」という。)第4条の規定に基づき実施機関に提出した文書であり、交付要綱第7条の規定により、事業計画書、消費収支計算書、消費収支予算書及び専任教員調査書・専任職員調査書・生徒数が添付されている。
本件対象文書2は、実施機関からの補助金内定通知を受け、特定学校法人が実施機関に対して補助金の支払いを求めるために提出した文書である。
本件対象文書3は、特定学校法人が規則第13条に基づき実施機関に補助事業の完了を報告した文書である。
ほか3文書は補助金の内定、交付決定、確定について実施機関が特定学校法人に通知した文書である。
(2) 本件処分について
実施機関は、本件処分において「法人代表者の印影」、「小科目及び小科目に係る記載事項」及び「預金口座に係る記載事項」を条例第10条第2号に該当するとして、「共済組合員番号、最終学歴、給与の内訳、交通費を除く給与額、年齢、勤務年数に係る記載事項」を条例第10条第1号に該当するとして不開示とした。
しかし、申立人は「共済組合員番号、最終学歴、給与の内訳、交通費を除く給与額、年齢、勤務年数に係る記載事項」の不開示について異議を申し立てていないことから、これについて当審査会は判断しない。
(3) 法人代表者の印影について
法人の代表者である理事長の印影は、契約締結や各種届出等において使用されるなど、法人の対外活動において重要な意義を有するものであることから、法人内部で適正に管理されているのが一般的である。申立人は、印影が秘密に管理されているか明らかでないと主張しているが、特定学校法人の経営する教育施設の入園及び入学案内資料やホームページ等、誰もが容易に入手可能な情報の中に印影を確認することはできない。よって、特定学校法人が相手や目的を問わず印影を公にしていると判断する理由はない。印影は、文書全体の真正さを示すなど重要な機能を有する上、悪用されるおそれがあるなど、開示することにより当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、条例第10条第2号本文に該当する。
さらに、人の生命、健康、生活又は財産を保護するなど、本件において印影を開示する特段の事情もないことから、実施機関が法人代表者の印影を条例第10条第2号に該当するとして不開示としたことは妥当である。
なお、申立人は、理事長の氏名のうち印影と重なっている部分が不開示となっていることは疑問であると主張する。しかし、そもそも印影は全体で一つの意味を有する情報であることから、一般的に、不開示とする場合にはその全体を黒く塗る。本件処分においても同様の方法をとったことから、理事長の氏名と重なった部分が結果として黒く塗られたものであり、特段不合理な事務処理とはいえない。
(4) 小科目及び小科目に係る記載事項について
ア 学校法人会計基準について
特定学校法人は、法第64条第4項の規定に基づき設立された準学校法人である。一方、学校法人会計基準(以下「会計基準」という。)は、私立学校振興助成法第4条第1項又は第9条の規定により、国や地方公共団体から経常的経費について補助金の交付を受ける学校法人が会計処理を行う場合に従わなければならない基準である。よって、法令上、会計基準は準学校法人である特定学校法人に適用されるものではない。しかし、実施機関によれば、特に補助金の交付を受ける準学校法人については、会計基準に準じて会計処理をすることが望ましい旨指導しているとのことであり、現に、特定学校法人は会計基準に従い計算書類を作成している。
会計基準第2条は、会計処理を行い、計算書類を作成する際の原則として、真実な内容を正確かつ明りょうに表示することを義務付けている。さらに、消費収支計算書等の計算書類に記載する勘定科目として、大科目並びにその内訳である中科目及び小科目を示しているが、このうち小科目については適当な科目を追加し、又は細分することができるものとしている。
イ 財務情報の公開について
学校法人が公共性を有する法人としての説明責任を果たし、関係者の理解と協力をより得られるようにしていく観点から、法第47条の規定により、学校法人は財産目録、貸借対照表、収支計算書、事業報告書及び監査報告書を各事務所に備えて置き、在学者その他の利害関係人から請求があった場合には正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならない。当該規定は法第64条第4項により準学校法人に準用される。当該規定に違反して書類の備付けを怠り、又は記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をしたときは法第66条第4号の規定により罰則の対象となる。
文部科学省高等教育局私学部長通知(「私立学校法の一部を改正する法律等の施行に伴う財務情報の公開等について(通知)」(平成16年7月23日付け16文科高第304号))によれば、閲覧の対象者である利害関係人の例としては、
のほか、当該学校法人の設置する私立学校に入学を希望する者については、当該学校法人において、入学する意思が明確に確認できると判断した場合等には、利害関係人に該当するとしている。さらに、法により閲覧請求権が認められる者以外の者に対しても、各学校法人の判断により、積極的な情報公開の観点から、柔軟に対応することが望ましいとされている。
ウ 条例第10条第2号該当性について
上記イのとおり、法の規定による財務情報の公開は、利害関係人と特定学校法人が閲覧を認めたものに限られる。
一方、公文書開示請求は、条例第7条の規定により、特定学校法人の意思にかかわらず何人も行うことができる。そのため、開示・不開示の判断に際しては、特定学校法人の公共性と、情報を開示することによって生じる特定学校法人の不利益を比較衡量することとなる。
法人の財務情報は、法人の経営状況や経営戦略を示すものであり、開示することにより当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものである。よって、法人自らが公表している場合を除き、本来、保護されるべき情報であると考える。
実施機関は、小科目及び小科目に係る記載事項を除き財務情報を開示しているが、これは教育施設を経営する特定学校法人の公共性を考慮したものと考える。一方、実施機関が不開示とした小科目は、収入及び支出の内容を説明する詳細な内訳であり、上記アのとおり、学校法人が独自に追加又は細分することができるものである。そのため、小科目及びその金額を開示することにより、特定学校法人がどのように収入を得ているか、どのような資産運用をしているか、どのような経費を節減し、何に経費を投入しているか等、法人の経営状況や経営戦略を具体的に明らかにすることとなる。よって、特定学校法人の公共性を考慮してもなお、法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものであり、条例第10条第2号本文に該当する。
さらに、人の生命、健康、生活又は財産を保護するなど、本件において小科目及び小科目に係る記載事項を開示する特段の事情もないことから、実施機関が条例第10条第2号に該当するとして不開示としたことは妥当である。
エ 条例第12条該当性について
申立人は、開示を求める理由として、特定学校法人の教育施設の敷地が仮差押えをされていることを主張している。そこで、条例の規定により保護される利益に優越する、開示すべき公益上の必要性の有無について検討する。
特定学校法人の敷地が仮差押えをされていること、実施機関が平成22年度から特定学校法人に対する補助金を凍結していることについては、新聞報道等によりすでに公知の事実となっている。また、特定学校法人の従業者や債権者、特定学校法人が経営する教育施設の在学者等、特定学校法人の経営状態に直接利害関係を有するものは、上記アのとおり、法の規定により財務情報の閲覧が可能である。よって、上記ウのとおり条例第10条第2号に該当する小科目及び小科目に係る記載事項を、なお公にする公益上の必要性があるとは認められないため、条例第12条の規定により裁量的に開示をする必要はない。
(5) 預金口座に係る記載事項について
特定学校法人の取引先金融機関名、口座番号及び口座名義は、補助金の受入れや授業料の納入等のため、特定学校法人が自らの意思で限定した相手に開示している内部管理情報である。また、開示することにより悪用されるおそれがあるなど、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、条例第10条第2号本文に該当する。
さらに、人の生命、健康、生活又は財産を保護するなど、本件において預金口座に係る記載事項を開示する特段の事情もないことから、実施機関が条例第10条第2号に該当するとして不開示としたことは妥当である。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
管野 悦子、田代 亜紀、田村 泰俊
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成23年10月26日 |
諮問を受ける(諮問第220号) |
平成23年10月26日 |
実施機関から開示決定等理由説明書を受理 |
平成23年11月11日 |
実施機関から意見聴取及び審議(第一部会第68回審査会) |
平成23年12月13日 |
審議(第一部会第69回審査会) |
平成24年1月27日 |
審議(第一部会第70回審査会) |
平成24年2月20日 |
答申(答申第170号) |
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