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掲載日:2023年12月12日

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土地分類調査報告書(青梅)

目次

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序文

国土狭少、天然資源に乏しい条件下で、多くの人口を擁するわが国は、従来跋行的な集約度の高い土地利用が行われ、社会経済的に高密度の社会が形成されつつある。今後も大きな変貌を伴う発展が予想されるが、この点に関しては、本来人間と自然との調和を考慮して、人間のための豊かな環境を創造しながら、地域を発展させる方向の施策を講ずべきである。そのためにはあらゆる角度から総合的に国土の実態を把握し、その地域の自然的社会経済的特性を生かした合理的効果的な開発、保全のための土地利用計画を策定する必要がある。
国土調査法ならびに国土調査促進特別措置法に基づく土地分類基本調査は、自然的条件のうち、土地の基本的性格を形成している地形、表層地質、土壌の3要素をとりあげ、その各々について調査基準、精度、縮尺を統一して調査を行い、その結果を相互に有機的に組み合せる事によって、実態を正確に把握し、土地をその利用の可能性により分類し、もって土地利用計画策定の一助とするものである。
本図幅は、行政的利用の可能性が大きく、かつ自然条件の基準地的性格を持つ地域と考えられるので、広く関係者に利用されることを切に望むものである。
ここに資料の収集調査、図簿の作成等に御協力を頂いた各位に深く謝意を表する次第である。

昭和47年3月

経済企画庁総合開発局長

岡部 保

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まえがき

1.本調査は経済企画庁が建設省国土地理院、通産省地質調査所、農林省林業試験場、農林省農業技術研究所に支出委任して行ったもので、その事業主体は、経済企画庁である。

2.本調査成果は、国土調査法施行令第2条第1項第4号の2の規定による土地分類基本調査図および土地分類基本調査簿である。

3.調査に当たり、基準とした作業規程準則は、下記のとおりである。

  • 地形調査作業規程準則(昭和29年7月2日総理府令第50号)
  • 表層地質調査作業規程準則(昭和29年8月21日総理府令第65号)
  • 土じょう調査作業規程準則(昭和30年1月29日総理府令第3号)

4.調査の実施、成果の作成関係機関および関係担当者は下記のとおりである。

調査の実施、成果の作成関係機関および関係担当者

総括・企画

調整・編集

経済企画庁総合開発局

技官

山崎寿雄

林田正直

川上哲三

企画連絡

東京都首都整備局企画部(計画部総合計画課)

 

 

 

埼玉県農林部農地課

係長

河井昭二

 

主任

斉藤好司

 

(係長

小鮒重雄)

地形調査

建設省国土地理院

建設技官

細井将右

鶴見英策

鈴木美和子

表層地質調査

通商産業省地質調査所

通商産業技官

黒田和男

神戸信和

森 和男

木野義人

佐藤 茂

岡 重文

 

宇野沢 昭

土じょう調査

 

安藤高明

(主として山地・丘陵地)

農林省林業試験場

農林技官

橋本与良

松井光瑤

小島俊郎

八木久義

(主として台地・低地)

農林省農業技術研究所

農林技官

小山正忠

山田 裕

田村英二

三土正則

加藤好武

協力

東京都関係各課

 

 

東京都農業試験場

 

 

五日市分場

 

東京都水道局村山・山口貯水池管理事務所

 

図幅内関係市町

 

 

埼玉県関係各課

 

 

埼玉県農業試験場

 

 

〃 林業試験場

 

 

図幅内関係市町村

 

 

(参考)

土地分類基本調査図幅(既刊)

1.国土調査法に基づくもの(昭和37年度まで)

水沢(岩手県)、湯殿山(山形県)、前橋(群馬県)、宇都宮(栃木県)、寄居(埼玉県)、鰍沢(山梨県)、四日市(三重県)、津山西部(岡山県)、熊本(熊本県)、鹿屋(鹿児島県)以上10図幅

2.国土調査法および国土調査促進特別措置法に基づくもの(昭和38年度から)

白老(北海道)、八戸(青森県)、仙台(宮城県)、秋田(秋田県)、郡山(福島県)、水戸(茨城県)、八日市場(茨城県・千葉県)、長岡(新潟県)、石動(富山県・石川県)、金沢(石川県)、福井(福井県)、飯田(長野県)、長浜(岐阜県・滋賀県)、磐田掛塚(静岡県)、五条(大阪府・奈良県・和歌山県)、竜野(兵庫県)、米子(鳥取県・島根県)、三次(広島県)、防府(山口県)、川島(徳島県・香川県)、丸亀(香川県)、西条(愛媛県)、高知(高知県)、佐賀(福岡県・佐賀県)、諫早(佐賀県・長崎県)、宇佐(大分県)、宮崎(宮崎県)

以上27図幅
合計37図幅

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総論 (1対50,000)

青梅

1 位置

位置:「青梅」図幅は、関東平野の西部、関東山地の東辺に位置し、図幅の大部分(2月3日強)は、東京都であって、残りの北部が埼玉県に属している。
経緯度的位置は、東経139゜15′~139゜30′、北緯35゜40′~35゜50′の範囲である。
図幅全域の面積は、418.053平方キロメートルである。

図1. 行政界図(JPG:91KB)

行政区界:本図幅の行政区界は、東京都においては、16市4町1村、埼玉県は4市1町からなり、国立、国分寺、立川、昭島、東大和、武蔵村山、福生の7市、瑞穂、羽村、秋多の3町は、全域、小平、東村山、所沢、入間の4市の大部分、八王寺、府中、日野、青梅4市の約半分、東久留米、小金井、飯能、狭山、清瀬5市、五日市、三芳の2町、日の出村の一部を包合している。(図1参照)

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2 地形概説

本図幅の地域は東京付近の台地西北部に位置する。青梅付近を頂点として扇状地状に広がる台地は図葉中約60%の面積を占めている。
秩父山地につながる阿須山丘陵地・加住丘陵地と台地中に孤立する狭山丘陵地はすべて多摩面に属する典型的な波状丘陵地で標高は80~200mにおよぶ。
丘陵地はかなり開析され原面は殆んど失われかけているが、切峰面(500mの谷理図)に現れる丘陵背面に近く、東に緩く傾斜している。
この丘陵地の成因は多摩川の前身が古東京湾の三角州をつくり、土地の隆起によって陸地となったもので、その後断層運動や侵食作用によって狭山丘陵が孤立したものである。
丘陵の地質は第三系の三浦層群を基盤として不整合に沖積世の礫層が堆積し、その上部に多摩ロームがのっている。
青梅付近を扇頂として扇状に広がる台地の中で最古のものは金子台地、所沢台地である。この台地は下末吉面で丘陵地を切り削って砂礫層が堆積して形成されたものである。
台地の形成時期は横浜市鶴見区下末吉を模式地とする下末吉面(下末吉海侵時-約10万年前-に波蝕ならびに堆積によって形成された海成面といわれている)に対比され海成層ではないが同時代に形成された扇状地性の堆積面である。砂礫層上部には整合に火山灰(下末吉ローム)がのっている。
狭山丘陵地の北部と南部に発達する武蔵野台台地の大部分は武蔵野面で加住礫層を切って砂礫層が重なり、形成された扇状地性の堆積面である。その上部には火山灰(武蔵野ローム)がのっている。砂礫層(青梅礫層)の形成時期は5~10万年前といわれている。
武蔵野台地は樹枝状の浅い開析谷によって開析されているが、ほぼ平坦面である。この台地の最高所である南側の玉川上水付近には下末吉面が残存している。
青梅市を頂点として扇状に広がる立川台地は立川面、青柳面、拝島面それ以下4段の河岸段丘からなっている。
立川面は青梅礫層を切って立川礫層(2~3m)が堆積して形成された面で、立川ロームをのせている。本図葉中最も広い面積を持つ。台地面は所々に浅い谷や地を発達させているがほぼ平坦な面である。立川面の背後の崖は明瞭であるが、三ツ木-砂川付近では不明瞭になっている。多摩川の右岸、秋川沿いにも青柳面(秋留台地)が発達している。
青柳段丘~拝島段丘形成の時代は約2万年前ヴィルム氷期の後半のもっとも寒冷な時期であり、拝島両形成時代にはもっとも海面が低下していたといわれている。立川ロームの最上部は青柳段丘形成中からその直後にかけて降下したものとされている。
青柳段丘・拝島段丘は多摩川の河床礫で形成されたもので前者には砂質ローム(青柳ローム)が覆っている。

図2. 切峯面図(JPG:72KB)

拝島面以下の段丘は断片的に河岸段丘として発達している。最も新しい段丘と谷底平野との比高は1~2m程である。
立川崖線下に発達する青柳面以下の段丘はそれぞれ崖によって明瞭に区分される。
多摩川、北浅川はせまい谷底平野をつくっている。多摩川の中流部であるこの地域は勾配が急なため自然堤防の発達がよくない。多摩辺、谷保付近にわずかにみとめられるだけである。

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3 表層地質概説

本図幅地域は、東京市街地の西方に当り、山の手台地の連続である武蔵野台地がしだいに高度を増し、やがて丘陵地に移り変わり、さらに急速に高度を増して関東山地に変ろうとするその接点に位置する。地質学上からは、関東構造盆地の西の縁辺部にあって、図幅地域西縁部から地域外に広く、先鮮新世の各種の地層・岩石から構成される関東山地が広く展開している。
図幅地域西方の関東山地は、資料75)・25)によれば、古生界二畳系―石炭系、いわゆる秩父古生層といわれている地層からなる部分と、中生界三畳系・中生界ジュラ系、いわゆる鳥ノ巣層群と呼ばれているもの、および中生界のおそらく白亜系であろうとされている小仏層群が、N50゜~65゜Wの方面に相互に断層をもって接しながら配列している。それらの配置は、

雷電山古生層帯
二俣尾三畳紀層帯注
玉ノ内古生層帯
大久野三畳紀層帯
勝峰山古生層帯
五日市鳥ノ巣層帯
白丸古生層帯
氷川鳥ノ巣層帯
御前山古生層帯
小河内層群帯
小仏層群地帯

注 青梅市街地北方で、埼玉県地質図に記入されている三畳系は、今回の神戸の観察により、古生層となっている。

であって、本図幅地域内には、雷電山古生層帯が、多摩川より北側に主として、玉ノ内古生層帯が、多摩川から秋川にかけての山地に、五日市鳥ノ巣層帯が、秋川南側に、小仏層群地帯が、川口川および浅川流域の山地に露出している。地層はいずれも砂岩・ページ岩の互層を主としているが、これにチャート、輝緑凝灰岩を挟在し、さらに石灰岩が、鳥ノ巣層群や古生界の中に挟まれて、この中に化石が含まれていることが報告されている。
これらの秩父古生層・鳥ノ巣層群および小仏層群は、本表層地質分類では、石灰岩およびチャートの表現可能な大きさのものをのぞいて、砂岩・粘板岩互層として表現した。
以上の先新第三紀の地層にかこまれて、図幅地域外西方の五日市町を中心に、新第三紀中新世に堆積した地層が分布し、その分布の東縁が、本図幅地域の秋川沿岸にみられる。

地層は、五日市町層群と呼ばれ、資料13)と資料57)では、それぞれ別個に次のような名称で区分されている。

地層名称

資料13)

資料37)

T5

網代層

T4

横沢泥岩砂岩互層

T3

館谷泥岩層

T2

小庄砂岩泥岩互層

T1

幸神層

この中で幸神層と網代層は、主として礫岩から構成され、その他の地層は、大体地層名の示すとおりの構成となっている。
本表層地質分類は、資料37)を現地踏査により修正し、礫岩がち地層、砂岩泥岩互層およびページ岩がち地層に区分した。地層は全体として1つの向斜構造を呈しており、傾斜は、60゜~75゜と非常に急である。
以上の諸地層を不整合に被覆して、後期新第三系三浦層群が分布しているが、本図幅地域内での分布形態は関東山地から突出するいくつかの岬のような形態で、丘陵が孤出しており、基底面は、東に行くにしたがって、現河床面以下に急速に没していく。丘陵は、北から亜須山丘陵、草花丘陵、加住丘陵、川口丘陵と呼ばれており、さらに台地の中にとり残された島のような形状で狭山丘陵がある。地層は、基底礫岩をもって始まり、その上に厚い砂礫層が発達し、砂層、粘土層がその上位に成層するようになって、1部に凝灰岩層や泥炭~亜炭層が挟まれる。地層の名称は各丘陵ごとに異なっているが、本表層地質分類では、既存の地質図を、地層名どおりに読みかえて、礫がち地層・砂がち地層および泥岩に分類した。地層は全体として、当方に緩く傾斜している。
図幅地域東部に展開する台地と、丘陵の一部は、関東ロームに被覆されている。関東ロームは、最下部から多摩・下末吉・武蔵野・立川の各ロームに区分され、それぞれのロームは、上位のロームによって不整合に覆われている。この表層地質分類では、多摩ローム以上のロームで被覆されている部分を、ロームT、下末吉ローム以上のロームで被覆されている部分をロームS,台地あるいは、多摩川・秋川などの河岸段丘の中で、武蔵野ローム以上のロームで被覆されている部分をロームM、立川ロームで被覆されている段丘をロームTc,さらに立川ロームの上部10cm~20cmで被覆されている段丘をロームAlとして塗色した。山地および丘陵の表面は、通常武蔵野ロームあるいは立川ロームで被覆されている箇所が多いが、表層地質図上では、この分布は省略した。(図3参照)

図3. ローム層と段丘の関係(JPG:62KB)

関東ロームの下位には、それぞれ整合に堆積物が横たわり、この堆積物は、三浦層群あるいは先鮮新世の地層のうえに不整合にのっている。堆積物の中で最も古いものは、多摩ロームの下に位置しているもので、阿須山丘陵では豊岡礫層、狭山丘陵では芋窪礫層、加住丘陵では美根礫層と呼ばれている。この地層は、ロームTと密接に分布しているので、これを伴ってない場所のみを、表層地質図では、半団結の礫がち堆積物として表示した。
下末吉ローム、武蔵野ローム、立川ロームの下位に整合に重なる地層は、前期のロームS,ロームM,ロームTc、ロームAlに含めて塗色してある。なお、関東ローム中のどの部分があるか確認されなかった地区は、ロームHとして区分した。
多摩川・秋川・川口川・浅川などの川に沿う河岸段丘の中で、関東ロームによって被覆されないものの段丘堆積物は、半団結堆積物の中で礫がち堆積物として塗色したが、これらの厚さは、5m程度であるとされている場合が多い。
地域内の現河床堆積物は、多摩川・秋川をはじめとする諸河川に沿う狭い範囲に限って分布し、その大部分は礫がち堆積物である。丘陵を刻むごく短い平底谷の堆積物や、地域南西隅に見られるような現河床に対する後背湿地、あるいは段丘崖からの湧水を集める小さな河川に沿う部分に、泥がち堆積物があるが、これも、せいぜい2m以内で下位の礫がち堆積物あるいは基盤の地層に到達する。
山地の部分、あるいは段丘直下には扇状地あるいは崖錐が発達する。この大規模なものは、砕屑物として塗色した。
図幅地域のかなりの部分にわたる台地には、近年多数の深井戸が掘さくされ、かつその際に得られる地質柱状図や電気検層図が集積されることによって、地下の地質成層状態が詳細に判明するようになってきた。まず、地域内の丘陵を構成している三浦層群は、そのまま地下へ連続し、その中でも、とくに小宮砂層の上位にくる三沢泥岩層の基底部に特有の砂礫層や、その上位の連光寺互層中の礫に富む部分を追跡することによって、三浦層群が全体として東北東に傾斜していることが明らかになった。表層地質図に添えてある地質柱状断面図には、三浦層群の部分を、下部・中部・上部に分けて塗色してある。
以上、表層地質分類と、地質系統との対応を、表1.、表2.に示す。注

注 仏子粘土層と谷ツ粘土層との層位関係の詳細は、森和雄技官が精査中であり、追って報告される予定である。

表1. (JPG:104KB)表2.(JPG:75KB)

このような表層地質の状況下にあって、本図幅地域のかなりの部分を占める武蔵野台地は、比較的新しく開拓されたところであり、その歴史は、多くの書物に記されている。近年ようやく、東京市街地が極度に膨大した影響を受けて、新しい住宅地が進出し、また工場団地が建設され、その景観は急激に変化しつつある。また、周辺の丘陵地帯についても、宅地造成が進行し、また学校などの施設が進出して、同じような変化を見ることができる。したがって、地域における開発および保全に関する問題を取扱うにも、このような条件を無視することは出来ない。
本図幅地域の山地は、低いが山腹の傾斜は急であり、山腹をきざむ谷の出口には、大なり小なり、崖錐が発達している。このことは、集中豪雨時には、山くずれ、あるいは土石流の危険があることを示しており、そくに、地表付近は、関東ロームに被覆されていることにより、注意を要する。丘陵地でも、礫がち地層の部分に、いわゆる悪地地形と山麓部に崖錐が多く発達している特長が認められ、いずれも地層がきわめてもろく、侵食されやすい、すなわち、山くずれ、土石流が発生しやすいことを示している。なお、宅地造成に当っては、砂がち地層が比較的軟弱であることに、注意が必要である。
本図幅内の鉱産資源としては、石灰岩と亜炭を挙げることができる。しかし、石灰岩は、地域内では採掘済みの状況であって、大規模な岩体は、西の隣接図幅地域にあり、盛んに採掘されている。亜炭は、半団結の礫がち地層(飯能礫層)と泥岩(仏子粘土層)の中に挟まっているが、小規模で現在は燃料としては採掘されていない。
砕石は、団結堆積物の砂岩・泥岩互層(秩父古生層)の砂岩が利用されるが、これも大規模な未風化岩体は、うしろ西の隣接図幅地域内にある。砂利資源としては、飯能礫層および、青梅砂礫層が盛んに採掘されたが、後者については、土地利用上の問題もあって、採掘可能な量は、僅かとなっている。
温泉は、岩蔵温泉・網代鉱泉の2つが、古くから利用されている。また、深部の地下水を利用する立川温泉があるが、これは、東京市街地のものと、由来を同じくするものかも知れない。
本図幅地域で、自由面地下水が容易に取得できる場所は、主要河川に沿う低地や台地の縁に限られ、その他丘陵の麓に沿う部分に古くからの集落が分布しているのも、同じような理由による。台地地域の自由面地下水は、住宅地の進出に伴って利用されるようになったが、近年、急速に水位が低下し、地下水の利用対象は、被圧地下水に移っており、しかも井戸の本数、揚水量ともに著しく増加することによる障害も目立つようになった。台地地域の帯水層は大きく3つの分けられ、さらに各々が2~3枚の帯水層に区分されているが、全体として多摩川沿いで浅く、北東側に行くにしたがって深くなって行く。
本図幅地域内では、多摩川・浅川などの現河床に沿う低地では、地表付近から直ちに砂礫層に到達する。また武蔵野台地上でも、最大10mで、砂礫層に到達しこれが基礎地盤となっている。したがって、関東ロームが、鋭敏比が大きいという特長を充分把握すれば、地域内での地盤は、概して良好である。なお宅地造成に伴って、豪雨時における異常出水の問題が提起されており、武蔵野台地上の窪地の成因とともに、この方面についても注意が必要である。

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4 土壌概説

4.1.主として山地・丘陵地の土壌(林地土壌)

「青梅」図幅には、図幅中央部及び図幅西部に山地・丘陵地があるが、海抜高は300m以下であり、大部分が丘陵地で、山地は図幅の西北端と西南端にわずかにみられるに過ぎない。
これらの山地は秩父山地の東南端に位置し、古生層および中生層からなっており、尾根は痩せ、斜面は急で、その裾には小規模ながら麓屑面が発達し、本図幅のなかでは一番起伏量が大きい。
丘陵地はほとんど鮮新世の礫、泥などが基盤となっており、北から阿須山、草花、加住、狭山丘陵などと名づけられている。起伏量は小さく、丘陵頂部は鈍頂を呈し、凸形斜が多く、裾にはほとんど岩屑がたまっていない。この地域内には5ヶ所もゴルフ場があるが、いずれも丘陵頂部の緩斜面をたくみに利用して作られている。
これら丘陵地のうち加住丘陵の東半分は立川ロームに、狭山丘陵は全域が多摩ロームに覆われ、これらが土壌の母材となっている。これら火山灰、ことに立川ロームで覆われた地域は、丘陵地のなかでも殊に凹凸の少ない、ゆるやかな地形を呈している。
丘陵地が多摩川、秋川などに接しているところでは、河川による侵食のため急崖が形成され、山脚部には、岩屑が堆積している。これらの急崖は崩壊しやすく、土壌は極めて未熟である。
また、五日市町、日の出村の地内には小面積であるが、中新世の礫岩、負岩などからなる山地が、あたかも中・古生層の山地と丘陵にはさまれる様に出現しているが、地形は前記の山地に近い。
山地・丘陵地に分布する土壌は次のように分類される。

土壌の分類

土壌群

土壌統群

土壌統

岩屑土

岩屑性土壌

南郷統(Ngo)

未熟土

風化火山抛出物未熟土壌

堀之内統(Hnu)

褐色森林土

乾性褐色森林土壌

成木1統(Nrk-1)

 

 

平井1統(Hrl-1)

 

 

七国峠1統(Nkt-1)

 

褐色森林土壌

成木2統(Nrk-2)

 

 

平井2統(Hrl-2)

 

 

七国峠2統(Nkt-2)

 

 

滝山統(Tky)

岩屑性土壌の南郷統は、草花丘陵や加住丘陵が多摩川とか、秋川と接する部分に見られる。土壌は、急崖の上部で極めて浅く、麓屑部では深いが、いずれも未熟で層の分化は見られず、ほとんど円礫、砂で占められているようだ。崩積土のところではスギの造林も考えられるが常襲的な崩壊には注意を要する。
風化火山抛出物未熟土壌すなわち堀之内統は、狭山丘陵を覆う形で分布している。多摩ロームを母材としているが、厚く堆積した多摩ロームも、堆積後の削剥状況の相異により、厚さだけでなく土壌の性質も多少異なることが推察される。一般に土壌は極めて埴質であり、腐食の浸透は悪く、全土層は深いが、A層の発達はほとんどみられず、土層の分化はあまり進んでいない。土色が概して暗赤褐味を帯びているのが特徴である。
褐色森林土は乾性褐色森林土壌と褐色森林土壌の2統群を含み、土壌断面の特徴、土色、母材、堆積様式などにより7統に分類される。
乾性褐色森林土壌には、成木1統、平井1統、七国峠1統の3統が含まれる。成木1統は中・古生層の粘板岩、砂岩などを母材とする残積土壌で、分布の幅は狭く、林野土壌のBA,BBに相当する。生産力は低く、ほとんどがアカマツの混交した広葉樹林である。平井1統は、中新世の礫岩、砂岩などを母材とする残積土で、林野土壌のBBい相当するものが多い。
七国峠1統は鮮新世の円礫、粘土、砂などを母材とする残積土で、やせ尾根のものはBA,鈍頂のものはBB、BCに相当する土壌が多い。鈍頂の土は一般に堅密であり、落葉採取など人為の影響もあるためか、局部的には受触土の様相を帯びた土壌もみられ、著しいものではA層がほとんどなく、土壌はすこぶる浅い。生産力は極めて低く、大部分が広葉樹の矮林である。
褐色森林土壌には成木2統、平井2統、七国峠2統、滝山統の4統が含まれる。成木2統は中・古生層の粘板岩、砂岩などを母材とする崩積性の土壌で、成木1統に対応するものである。林野土壌のBD,BEに相当する土壌で、通気、透水性とも極めてよく、腐食は深くまで浸透し、壌土~埴質壌土質の、もっとも生産力が高い土である。スギの生育はすこぶる旺盛であり、本土壌の分布地位は「青梅林業」として古くから世に知られた林業地に属する。
平井2統は中新世の礫岩、砂岩などを母材とする崩積土で、平井1統に対応する。林野土壌のBD,BEに相当する土壌で、一般に壌土質のものが多く、A層、全土層とも深い、まれには立川ロームの混入している事もある。生産力は比較的高く、多くはスギ、ヒノキの造林地になっている。
七国峠2統は鮮新世の円礫、砂、粘土などを母材とする歩行土~崩積土で、七国峠1統に対応する土壌である。出現地域は丘陵地の凹型~斜面下部であるが、丘陵地は起伏量小さく、凸型~上昇斜面が多いため分布は狭く、ことに崩積土はすくない。林野土壌のBD(d)、BDなどに相当するが、一般に土壌はしまっており、成木2統、平井2統にくらべ、生産力は低い。なお、滝山統とか堀之内統など火山灰で覆われた地域の斜面下部には、基岩の風化物と火山灰の混合物からなる土壌が認められるが、ここでは七国峠2統に包合した。本土壌統のところは、まれにスギの造林地も見られるが多くはコナラを主とする広葉樹林になっている。
滝山統は立川ロームを母材とする土壌で、母材の性質を反映してか微砂質のものが多い。大部分が一次堆積の土壌で、凹型斜面には崩積性の土壌がみられるが、分布は狭い。落葉採取の影響もあるためか、前者は一般にA層がうすいが、後者ではやや厚くなっている。一般に土壌構造の発達は悪く、土はつまりがちである。この土壌は林野土壌のBD(d)、BDに相当し、生産力は中庸で、現在林地となっているところは上木にアカマツの混じった、コナラ、クヌビなどの広葉樹薪炭林となっているが、崩積土のところではスギの造林もしばしば見られる。
「青梅」図幅内の山地、丘陵地は地形の面からいくつかの地域に分類されているが、土壌の分布は地形や地質との関連性が高く、更に火山灰の堆積状態の影響も見られる。
すなわち、大部分の地域には褐色森林土が分布し、比較的起伏量の小さい島状の狭山丘陵と、阿須山丘陵の東端には多摩ローム(旧期ローム)からなる極めて埴質な風化火山抛出物未熟土壌が分布している。
これらのうち、隣接の五日市図幅に続く中・古生層山地では、尾根筋にBA,BBなどの乾性褐色森林土が分布しているが分布面積は狭く、斜面の大部分はBD,BEなどで占められている。これにくらべ武蔵野にはり出した丘陵地では凸型斜面が多く、乾性の褐色森林土が広く分布し、適潤性土壌の分布は狭い。
中・古生層の山地と丘陵にはさまれた中新世の礫岩、砂岩からなる山地は、地形も両地域の中間であり、土壌の分布も同様の傾向が見られる。
前記の丘陵地のうち、加住丘陵の東半分は起伏量が著しく小さく、斜面はゆるやかで、谷の浸蝕があまりみられず、立川ローム(新期ローム)が厚く堆積しており、土壌には甚だしい乾燥がみられず、BD(d)、BDなどが大部分をしめている。立川ロームからなる土壌は上記のほか、丘陵地の頂部平坦面や、山脚部に点在し、出現しているが、土壌は加住丘陵東半分の地域のものと同じようである。

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4.2.主として台地,低地地域の土壌(農地土壌)

本図幅内における台地,低地地域は多摩川と阿須山(加治)丘陵問に東に向って広がる広大な武蔵野台地の西端部,平井川と秋川にはさまれる秋留台地および秋川,多摩川右岸の加住丘陵をきる谷地川,北浅川沿いの比較的小規模の台地などの台地群,並びに多摩川とその支流および霞川,入間川沿いの低地群によって構成されている。台地上の土壌は主としてそ菜畑として利用され,またとくに狭山丘陵以北の地域では茶の栽培がひろく行なわれているが,都市近郊で交通の便がよいので,急速に宅地化が進んでいる。低地土壌は狭山丘陵周辺の谷戸田を除いてはいずれも排水のよい乾田で,水稲作が行なわれているが,これも畑と同様宅地化などによって急激に減少しつつある。
本地域内に分布する土壌は断面形態,母材,堆積様式などにもとづいて,つぎの5土壌群,11土壌群統もに大別され,これらはさらに37の土壌統に細分される。

土壌の分類

土壌群

土壌統群

土壌統数

黒ボク土

厚層黒ボク土壌

5(3)*

 

黒ボク土壌

6(4)

 

多湿黒ボク土壌

1

 

黒ボクグライ土壌

2(1)

褐色森林土

褐色森林土壌

4(4)

褐色低地土

褐色低地土壌

3

 

粗粒褐色低地土

6(1)

灰色低地土壌

粗粒灰色低地土壌

4

 

灰色低地土壌

2

 

細粒灰色低地土壌

2

グライ土

細粒グライ土壌

2

*( )内の数は青梅図幅で新たに設定された土壌統の数。

黒ボク土

一次あるいは二次堆積の火山灰または火山灰が主体をなす母材より生成発達した土壌で,腐埴の集積が著しく,軽しょうで,保水性,通気性が大きくまたリン酸の吸収固定力がきわめて大であるといった特有の断面形態並びに理化学性をもつ土壌である。本図幅内ではもっとも分布面積が大きい土壌群で,主要農耕地となり主としてそさい畑,茶園などとして利用されているが,また一部は桑園,果樹園栗,なし,水田,牧草地などとしても利用されている。
本地域に分布する黒ボク土の母材は富士系の火山灰に由来するものである。この火山灰は洪積世の末期から沖積世初頭にかけて数次にわたって降下堆積した火山灰層の累層からなる。これらの累層は上部から立川ローム,武蔵野口ーム,下末吉ロームからなりこれら一連のロームは下末吉面とされている高位台地においてそろってみられる。また狭山丘陵には下末吉ロームより古い多摩ロームが比較的浅い位置に出現している。狭山丘陵上またはその山麓部,柳瀬川沿いの段丘上には多摩ロームを直接母材とする土壌がみられるが,大部分の平坦な台地上では,黒ボク土の直接の母材は立川ローム,とくにその上半部の上部立川ロームであり,武蔵野ローム,下末吉ロームが母材となる土壌はほとんど見られないようである。.
上位台地(下末吉面),中位台地(武蔵野面),狭山丘陵以南の下位台地(立川面)の黒ボク土では最表層部に約30cm程度の黒褐ないし暗褐色の多腐埴層がみられる。この多腐植層は農耕地は耕転によって撹乱され均一化されているが林地などでは暗褐色のAu層と,A11層より明度の低い黒褐ないし黒色のA12層に分化しているのがみられる。図幅外になるが調布市深大寺の同じ形態を示す鉄面のA12層の腐埴では5040±100年B.P.(Gak1084)の14C年代が得られている。黒ボク土では腐植の14C年代はその腐植層を構成する火山灰の降下年代にかなり近い値を示すことよりみると,A12層の母材となる火山灰は明らかに沖積世になってからの降下物であり,おそらく縄文前期頃の降下物であろうと推察される。国分寺市東端部の耕地の黒ボク土のAp層では,2620±100年B.P.(Gak731)の値が得られたが,これは未耕地のA12層とそれより若いA11層が混合したことによって低下したものとみられる。
高位台地,上位台地,中位台地および狭山丘陵以南の下位台地上の平坦面にみられる黒ボク土の母材は風積火山灰であるが,青梅市,瑞穂町,羽村町から入間市,狭山市の不老川沿いの下位台地(立川面)には,黄褐色ローム中に細小円礫を含むいわゆる再積性火山灰に由来する黒ボク土がひろく分布している。また秋留台地南半部,東青梅などの下位台地縁辺部には礫を含む厚層黒ボク土の分布がみられるが,とくに秋留台地の礫質の厚層黒ボク土壌は,黒ボクと礫との無淘汰な堆積状況からみて,土石流様の堆積様式が想定される。
本図幅内にみられる黒ボク土では,腐植含量,腐植層の厚さ,礫の有無その他の形態的特徴および堆積様式の相違にもとづいて14の土壌統を設定した。すなわち,厚層黒ボク土壌に属すものとして瀬谷統(厚層多腐植),東青梅統*(厚層多腐植,礫あり),諏訪統*(厚層多腐植,礫質),長貫統(厚層腐植),羽村統*(厚層腐植,礫あり)の5統,黒ボク土壌としては皆瀬統(表層多腐植),福生統*(表層多腐植,礫あり),荒幅統*(表層腐植,粘~強粘質,多摩ローム),北原統*(表層腐植),水野統*(表層腐植,礫あり),大野原統(表層腐植,礫層あり)の6統,多湿黒ポク土壌として深井沢統(厚層腐植,斑紋あり),黒ボクグライ土壌として霞川統*(弱グライ),岩屋谷統(強グライ)の2統を設定した。以上のうち*印を付した11統は本図幅において新たに設定されたものである。

褐色森林土

褐色森林土は湿潤気候下の森林植生下で,主として火山灰以外の材料を母材として生成発達した土壌で,一般にA層の発達が悪く明るい(B)層をもつ。塩基は流乏し,比較的酸性が強い。本図幅内では主として丘陵地に分布しているが,下位および低位台地の一部に分布し現在農耕地として利用されている褐色森林土も若干みられるので,丘陵地の褐色森林土とはわけてここでとりあげた。
八王子市小宮町の下位台地には強粘質で土層の厚い適潤性の褐色森林土(大草統)が,また多摩川上流,平井川,秋川,浅川沿いの火山灰の影響のない低位台地には土層のうすい礫質の褐色森林土(恩方統)がみられ,そ菜畑,果樹園(栗)などとして利用されている。
また秋留台地の北半部および青梅市の多摩川沿いの下低位台地上には火山灰の混入した母材にする褐色森林土が分布し,そ菜畑,桑園などとして利用されている(秋留統,千ケ瀬統)。

褐色低地土

沖積低地の河川沿いの高水敷,白然堤防,低位段丘上などに分布し,基色が黄褐色を呈する排水良好ないし過良の土壌である。土性は一般に粗く,または浅い位置から礫層の出現するものが多いが,ときには粘質で厚い土層をもつこともある。
本図幅内では多摩川,浅川,秋川,川口川,平井川,小木曽川,山入川,成木川,霞川,入間川沿いの高水敷,自然堤防,氾濫平野,沖積段丘上などに少面積ずつ点在する形をとり,普通畑あるいは水田として利用されている。土性,礫層の出現位置,マンガン結核の有無など形態の相違にもとづいて,新戒統(粘質),大内統(粘質,マンガン結核あり),三川内統(壌質,マンガン結核あり),飯島統(砂質),長崎統(砂質,斑紋あり),外城統(粘質,30~60cm以内より砂礫層),井尻野統(30cm以内より砂礫層,斑紋あり),美山統(壌質),八口統(30~60cm以内より砂礫層,斑紋あり)の9統が設定された。

灰色低地土

谷底平野,氾濫平野などの沖積低地に分布し,主として水田として利用されている土壌で,下層土の基色が灰色ないし灰褐色を呈し80cm以内にはグライ層をもたず,種々の形態の斑紋またはときには結核をもっている。
本図幅内では多摩川沿いの氾濫平野および多摩川の支流や柳瀬川,霞川,入間川などに沿う谷底平野にそれぞれ少面積ずつ分布がみられ,いずれも水田として利用されている。本図幅内にみられる灰色低地土は,土性,土色,礫層の出現位置,マンガン結核の有無などの形態的相違にもとづいて,金田統(灰褐,粘質),多多良統(灰褐,粘質,マンガン結核あり),佐賀統(灰色,強粘質,マンガン結核あり),藤代統(灰色,粘質),善通寺統(灰褐,壌質,マンガン結核あり),加茂統(灰色,壌質),栢山統(灰褐,30cm以内より礫層),追子野木統(灰色,壌~砂質,30~60cm以内より礫層)の8統に細分される。

グライ土

地下水位が高く排水のよくない条件下で生成される土壌で,80cm以内にジピリジル反応の顕著なグライ層をもち,泥炭層,黒泥層,腐植質火山灰層などをもたない土壌である。
本図幅内ではこの種土壌の分布はきわめて少なく,わずかに柳瀬川,霞川沿いの谷底面に東浦統(強グライ,粘質,斑紋あり),狭山丘陵の東部および北部の狭少な谷底面に西山統(強グライ,粘質)がみられるにすぎない。本土壌は水田として利用されてきたが,現在では生産調整田として休耕状態にあるもの,また完全に耕作放棄されているものがかなり多いようである。

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地形各論(1対50,000)

青梅

建設省国土地理院 建設技官 鈴木 美和子

1 地形細説

1.1.山地(1)

本山地は秩父山地の東麓にあたる。図葉内の面積は30.24平方キロメートルである。
図葉の左上端の山地は古生層の砂岩、粘板岩から構成される。この山地は標高260~300mの頂部を持ち、山頂緩斜面はなく稜線は瘠尾根を呈する。山頂から山麓にかけて直線型の斜面が卓越し、傾斜も30°以上のものが多く、とくに青梅の北側に広く分布する。谷密度は100以上で最高215/平方キロメートルである。
草花丘陵、加住丘陵の西方にある中新統からなる地域も山地に分類した。
この地域は前記の山地にくらべるとやや丸味を帯びた山頂部を持つ。山腹部に尾根型斜面が比較的多く認められる。山麓部はおおむね急斜面で直線的に谷に突入する。山地を侵食して発達した谷底平野にはGt4面がみとめられ、低地面との比高が1~2mである。

1.2.丘陵地(2)

1.2.1.阿須山丘陵地(2a)

多摩川の左岸、青梅北東部を西端として東へ細長くのびる丘陵地。図葉内の面積は24.90平方キロメートル。
七国峠付近の標高226.0mを最高点とする200m程度の定高性のある丘陵地で,やや丸味を帯びた稜線がつづいている。丘陵上に多摩ロームは殆んどのせておらず、八高線のかねこ駅の北側、金子坂峠付近にわずかに残っているにすぎない。
丘陵地の地質は基盤岩類を不整合に覆って飯能礫層が堆積し、仏子粘土層が整合に重なる。その上部に富岡礫層が不整合に被覆している。
豊岡礫層が明瞭に露出している金子坂峠付近での観察によると、礫は主に秩父系の硬砂岩、砂岩、チャートで、最大30×20cm、一般には1~10cmの亜円礫、円礫からなり、よく水磨され分級も良好である。
入間川の右岸、仏子付近によく露出している飯能礫層は、白灰色の粘士層の下部に黄褐色の砂礫層があり、砂、粘土で充填されている。礫は砂岩、チャート、粘板岩等で最大40X30cm、一般に10~5cm、石英閃緑岩の巨礫がくされ礫となってあらわれている。豊岡礫層にくらべると礫の比率が高く、大礫が目立ち、風化が非常に進んでいる。
丘陵中、豊岡礫層が厚く堆積していると思われる頂部には山頂平坦面が発達する。また西方、標高160m前後の山頂部付近まで飯能礫層が露出していると思われるところでは谷の侵蝕もすすみ、山頂から山麓まで急斜面をつくっている。特に入間川に面した仏子付近では40°以上の急崖を呈し崩壊をおこしている。
丘陵の分水界は著しく南に偏っている。丘陵全般に斜面は直線型が多いが、分水界の南の斜面は特に直線型の斜面が卓越している。その前面には傾斜の急な扇状地性および崖錐性の段丘が発達している。
丘陵の東部にはGtI面が残存している。

1.2.2.狭山丘陵地(2b)

台地中に孤立する紡錘形をした丘陵地。面積は37.41平方キロメートル。
地質は洪積統の狭山層からなる。秋山層は上部より苧窪礫層、谷ツ粘土層、三ツ木礫層の3部層に区分される。
この丘陵は多摩面に属し、多摩ロームが30mの厚さを持ち諸丘陵地中最も厚い。
荒畑付近では多摩ローム(Tl)中の上部の層準が認められた。茶褐色粘土質ロームの中に6~7枚の浮石層が挾在する。上部より赤黒い浮石層、その下部に2枚の白い明瞭な浮石層、その問隔は約1.0mで各々の浮石層は約20cmの厚さを持っている。そして茶褐色のローム層2.0m、白色浮石層40cm、茶褐色ローム層1.4m、白い雲母まじりの浮石層約60cmがつづいている。
またユネスコ村付近では多摩ローム(T1)の下部の層準が露出している。上部より1.0m付近に浮石層15cm、茶褐色ローム層20cm、燈色の浮石層60cm、茶褐色ローム層5m、白い浮石層60cm、茶褐色ローム層3mの下部に礫層がつづいている。
礫層は芋窪礫層とよばれ、狭山層の最上部にくるもので、多摩川南部に存在する御殿峠礫層に相当する。
丘陵を構成する礫層は砂岩、粘板岩、泥岩からなり、ローム質の砂によって充項されている。ユネスコ村付近で観察した礫は最大25cm、一般に5~1Ocmの円礫、亜円礫からなり、全般に風化が著しく黒っぽい色を呈し、くされ礫もまじっている。
西南部三ツ木付近での礫層の上限の標高が150m、中部ユネスコ村付近で約100m、南東部廻田町付近では約60mとなっている。また荒畑付近の露頭から上限の標高を判断すると約50mあたりと考えられ、地層は北東に緩く傾いていると思われる。
丘陵地の高度は100~200m、開析は他の丘陵地と比較すると進んでおらず全般に緩斜面が多い。丘陵背面には平坦面が広く残存し、定高性があり、部分的にGtI面をのせている。
丘陵の西部と東部では様相が異なり、西方では谷密度40~100、起伏量が50~90m、20°~30°の急斜面が存在するのに対し、東方では谷密度20~40、起伏量10m以下で非常に小さく、急斜面は殆んどない波状形の緩斜而で形成されている。
丘陵は柳瀬川およびその支流によって幅広く侵蝕され、その谷は西方にのびる。谷を堰き止めて狭山湖、多摩湖の貯水池が立地する。

1.2.3.草花丘陵地(2c)

多摩川の左岸、秋父山地の東麓に接する丘陵地。丘陵背面は東に緩く傾斜し、西方のニツ塚付近で標高346m、東方の草花ゴルフ場付近で標高203mを示している。面積は14.83平方キロメートル。
丘陵の上面は鮮新統を切った侵蝕面で、礫層(犬荷田礫層)からなり洪積層の発達はない。
礫層は阿須山丘陵地に存在する飯能礫層、加住丘陵地に存在する加住礫層に対比され大荷田礫層とよばれ、円礫、亜円礫の秩父古生層由来のチャート、ページ岩、砂岩等からなっている。最大礫25×20cm、一般に3~5cmが多く、分級は良くない。南部の加住礫層に似ているが、それよりも礫の比率が高く、粒度も大きい。また北部の飯能礫層とくらべると巨礫は目立たない。
さきにのべたように、この丘陵地の背面は、大荷田礫層の侵蝕面であることから多摩ローム層、下末吉ローム層の存在は認められない。山頂部や斜面などに断片的に立川ローム層が薄くかぶっているだけである。
丘陵全体が急斜面で形成され、開析はすすんでいる。主稜線はややとがって、平坦面は少ないが、枝分れしている短かい稜線では、やや丸味を帯びた尾根型斜面がみとめられる。谷密度は90以上、最大で143/平方キロメートルで比較的西方が高い。また起伏量も100~199で丘陵中最も高い数字を示している。
丘陵は30°以上の斜面が比較的多く、特に多摩川に接した東の斜面は40°以上の急崖をなし崩壌の跡も認められる。比較的山頂緩斜面の多い東部草花付近では頂部を削ってゴルフ場に利用されている。
主要な開析谷には谷底平野が発達し、ニツ塚付近の山頂部を中心として放射状にのびている。幅300~500mの谷底平野にはGt4面が発達し、麓屑面や扇状地も認められる。Gt4面は谷底面との比高が1~2mで、麓屑面、扇状地とともに畑地や集落として利用されている。

1.2.4.加住丘陵地(2d)

本地形区は図葉の左下、西北西~東南東に細長くのび、25,39平方キロメートルの面積を有する丘陵地である。
丘陵の地質は鮮新統の三浦層群(加住礫層、小宮砂層)上に不整合に堆積した洪積統の美根礫層からなる。
丘陵中西部の背面は鮮新統の侵蝕面上に多摩ローム層がおおい、T1面に対比され、東部では美根礫層上に多摩ローム層がおおってT2面をつくっている。
中犬目付近で観察した加住礫層は砂岩、チャート、粘板岩からなり最大15cm、一般に3~5cmで礫の比率も小さく、巨礫がない。美根付近では黄褐色の粘土質砂層の中に小礫を含んだ美根礫層が認められた。
丘陵地の標高は120~250mで定高性を持っている。丘陵背面は東に緩く傾斜しているが、美根礫層が被覆している付近ではいくらか傾斜変換線が見受けられる。
丘陵地の開析は進み谷密度は90/平方キロメートル以上、最高240/平方キロメートルで丘陵中最も高い。
丘陵地の東方と西方では様相が異なり、西方の加住礫層で構成されている地域は急斜面が多く存在し、谷も深くくいこんでいる。特に秋川に面する斜面は30°以上の急斜面を呈し、その前面には大規模な崖錐が発達している。また急崖をなす秋留橋より西方付近の地域は崩壌の跡が認められる。
東方の美根礫層で被覆された丘陵地は山頂緩斜面が多く分布し、山腹・山麓緩斜面も存在する。谷密度は西方にくらべると高いが侵蝕の初期のものが多く小起伏面を作る。
丘陵全体に被覆する関東ローム層の最上部立川ローム層は東方の山頂部には認められるが西方にはない。西方では侵蝕が進んだため流失したのであろう。
丘陵地の東端にはGt2面(多摩2面)が残存する。Gt2面は狭い山頂緩斜面となっている。
丘陵地の中央を西北西~東南東に切って侵蝕した谷底平野はGt4面が発達し谷底平野面は殆んどない。

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1.3.台地(3)

1.3.1.金子台地(3a)

本地形区は図葉の北部に位置する。北は阿須山丘陵地、南は立川台地に限られ、西-東-北に弓状にのびる地域である。図葉内の面積は25.00平方キロメートル。
台地面の標高は西端の野上付近で180m。北部の図郭付近で90m、西-東-北に緩く傾いている。台地の勾配は両端が10×10-3、中部が3×10-3、中央部が非常に緩い。
台地面は下末吉面に対比され、この面をGt2面とした。
台地構成層は扇状地性の砂礫層からなり、その上部に関東ローム層がのっている。その厚さは約10mあり、立川ローム層、武蔵野ローム層、下末吉ローム層で構成されている。立川ローム層、武蔵野ローム層の厚さが約5m、下末吉ローム層が約5mである。
低地面との比高は約10m、台地面の横断形は中央部がややくぼむゆるやかな起伏を持ち、浅い谷や凹地が認められる。
霞川北部、小谷田、高倉付近にもGt2面がみられる。Gt2面の段丘崖下にはGt3面以下の段丘が付着している。扇町屋ののっている面は露頭の観察によってGt3面とし、西方の藤橋付近の面も扇町屋付近の面との連続性が認められるので、Gt3面とした。
この地域は狭山茶で知られる茶の生産地である。

1.3.2.所沢台地(3b)

狭山丘陵の北側に位置し、東西に細長くのびる台地、図葉内の面積は12.41平方キロメートルである。
台地構成層は山の手砂礫層で、その上部に下末吉ローム層が覆っている。
図郭外東方2km本郷付近の露頭の観察によると山の手砂礫層は褐色の5~8cmの分級のよい礫から構成されている。上部より褐色ローム層2m、東京浮石層、その下部にクラック帯、褐色ローム層2m、黄色い浮石層、褐色ローム層1.2m、その下部に山の手砂礫層がつづいている。礫層の下部には粘土層が認められ砂礫層の基底から地下水が湧き出している。
台地面は60~110mの標高を有するGt2面である。勾配は5×10-3で東にゆるい傾斜を示す。低地面との比高は25m前後である。台地面上は幅広い浅い谷で刻まれている。台地面中3分の1の面積を占める浅い谷は台地面と緩斜面によって境され、1~4mの比高を持っている。

1.3.3.日野台地(3c)

多摩川の右岸、加住丘陵地の東端に接する台地、図葉内の面積は7.70平方キロメートルである。この台地をGt2面とした。
標高ほほ100mを有するGt2面は、低地面との比高30mを示している。
台地はかなり深い谷底平野に刻まれ同時に台地面上には浅い谷が発達している。全体として起伏の大きい面であるが、工場などの建設によって人工的に平坦化されている。
Gt2面の西北部にはGt3面以下の小規模な段丘が付着している。また多摩川に面する段丘崖下には比較的面積の広いGt4面が発達し、わずかな比高で低地との境をつくっている。
日野台地は日野礫層で構成され、その上部には関東ローム層(下末吉ローム層)をのせている。ローム層の厚さは9~16m、多摩平付近では立川ローム層約4m、武蔵野ローム層約6m、下末吉ローム層約6mとなっており、他のGt2面と比べると最も厚いローム層でおおわれている。

1.3.4.武蔵野台地(3d)

狭山丘陵地をはさんで北部と南部に存在する。いずれも西方の南中野および三ツ木付近を扇頂として扇状地状にひろがる台地で図葉内の面積は81.14平方キロメートルである。
扇頂部の標高120m、4×10-3の勾配で東にゆるく傾いている。北端、南端は崖および斜面によって境され、とくに南緑を画する段丘崖線を国分寺崖線とよんでいる。国分寺崖線は砂川付近にはじまり南東につづく高さ10m前後の崖である。砂川付近以西は崖がなくGt3面との境を不明瞭にしている。
台地面上は樹枝状に、幅広い浅い谷や凹地が発達し、ゆるやかな波状を示している。
台地面と浅い谷の比高は約2~5mである。Gt2面の構成層は青梅礫層とよばれる洪積世の堆積層で、その上部に関束ローム層がおおっている。砂礫層の厚さは3~5mで主に大、小礫からなり砂がちの層である。
ローム層の厚さは5~9m、南部の国分寺付近では9mで厚く、北部の所沢市付近では6mになり北部にいくにしたがって厚さを減じている。
台地の南側にあたる玉川上水付近の等高線はもっとも東にはり出し、周囲の面にくらべるとやや高くなっているのがわかる。岡重文他(1971)によれぱ、武蔵野台地のほぼ稜線に当る玉川上水付近では、ローム層の厚さは全体で10m前後、上部より褐色ローム層7m、東京浮石層、褐色ローム層3m、その下部に下末吉ローム層に属するクリヨートカン浮石層に対比される浮石層が見出され、その結果小原台面に対比している。
以上から玉川上水付近のやや高い地域6.98平方キロメートルの範囲をGt2面とした。

1.3.5.立川台地(3e)

図葉東端の青梅を扇頂として扇状地状に広がる台地。図葉内の面積は111.94平方キロメートルで26%を占め図葉中最も広い。立川台地中最高位の段丘をGt4+面とし、それ以下の段丘をGt4面とした。
Gt4+面の標高は扇頂部の青梅付近で200m、図郭右端で53m。勾配は8×10-3でGt3面より急である。
Gt4+面を構成する物質は青梅礫層を水平に切って立川礫層が堆積し、その上部は立川ローム層がおおっている。
瑞穂町の凹陥地の露頭によると、上部から立川ローム層1.3m、立川礫層約3m、青梅礫層7.0m+が認められた。立川礫層は礫の比率が非常に高い。最大15m、3~5cmが卓越する円礫と亜円礫で粗砂によって充填されている。礫の分級もよく河流の向きに沿った堆積をしている。立川礫層の下部の青梅礫層は礫の大きいのが目立つ。最大30x25cm、一般に8~10cmの亜円礫からなり細砂で充項されている。礫は扇状地性の堆積物である。立川礫層と青梅礫層の境はあまり明瞭でない。
立川ローム層は全体的に1.3~1.5mの厚さで黒色帯を挾んでいる。また長岡長谷部以西と下藤沢付近にはローム層中に1~2cm程の礫を含んでいる。
台地面上をきざむ浅い谷は、比高1~2m程の小規模なものでGt4面にくらべて密度が小さい。扇状地の延長に従ってのびている。扇頂部青梅付近はやや平坦であるが東部にいくにしたがって起伏を生じ緩やかな波状を呈している。
三ツ木-砂川間のGt3面と浅い谷に囲まれた幅500m~2kmの範囲は周囲のGt4+面よりやや高く、1~2mの比高をもつ。この地形面は,三鷹市入間町中原(旧北多摩郡神代村大字入間字中台)を模式地とする中台面に対比されるものとも考えられる。
この地域でおこなった簡易ボーリングによればローム層の厚さは宿の南側で1.5m、平租台付近1.3m、村山団地南側で1.5mあり、立川面のローム層厚とほぼ一致する。
中台面の模式地である三鷹市入問町中原付近の武蔵野面(Gt面)、中台面(Gt3面)、立川面(Gt4+面)のローム層の厚さはそれぞれ、9.0m、5.5m、4.0mである。また三ツ木-砂川付近の武蔵野面(Gt3面)、三ツ木-砂川ののる面(Gt4+)、立川面(Gt4+面)のローム層の厚さはそれぞれ、5.0m、1.5m、1.3mとなっている。
両地域の中問の面を1としてローム層の厚さの割合をみると、三鷹市入問町中原付近は1.6時1分:0.7となり、三ツ木-砂川付近では、3.3時1分:0.9となる。以上、中台面が、武蔵野面および立川面に対する割合からみると三ツ木-砂川の面は立川面に近いことがわかる。
以上ローム層の厚さから考えて三ツ木-砂川ののる面は中台面よりも立川面に相当するとした方が妥当である。
Gt4+面の南側の崖下には小規模な段丘が数段発達している。これらの段丘をGt4面とした。Gt4面のうち最高位の面は、立川の南東国立市青柳を模式地とする青柳段丘である。青柳段丘は、国立市青柳より北部の羽村町五ノ神、昭島市上川原付近にも分布する。
3地域とも立川面と同じ向きに傾斜を持った勾配7×10-3の平坦面である。谷底面との比高は国立市谷保で約6m、昭島市柴崎町約8m、中神では約13mあり上流へ比高を増している。立川面との比高は国立市、立川市で5~7.5m、昭島市で10m、羽村市五ノ神付近で3~6mあり、中央部に大きく、東方、西方に収斂する。
青柳段丘の構成層は青柳段丘礫層であり、その上部に砂質ロームである青柳ローム層をのせている。青柳付近の露頭によると、淡褐色の青柳ローム層が約60cmあり、その下部に砂礫層が露出している。付近の武蔵野礫層に比べると礫の比率は小さく砂の量がはるかに多い。礫は最大6×8cm、一般に3~1cmの、円礫である。固結度は低い。熊野神杜付近では青柳段丘礫層の基底から地下水が湧き出している。
青柳段丘面の下位には拝島段丘面が分布する。羽村町加美~昭島市宮沢町で立川面および青柳面の前面崖下に分布し、立川面、青柳面との比高は約15m、約5mである。勾配は8×l0-3で、立川面、青柳面と同方向に傾斜している。拝島段丘は最大海退時かまたはそれに近い時代と考えられ、拝島段丘以下の天ケ瀬面、千ケ瀬面、河原面等はそれよりも新らしい沖積段丘である。
拝島段丘面の構成物質を熊川付近の露頭でみると、上部2mが礫からなっていて最大20×10cm、一般に5~8cmの平たい円礫が砂によって充填され、固結度が低い。西方の中神付近の崖下では東方のそれよりも礫が大きく最大30cmあり礫の量も多い。礫層は熊川より西方では現在の河床よりも大きい巨礫を含むが東方ではその数も少な<なり礫も小さくなる。下位の沖積段丘との比高が5~6mで崖および斜面によって境されている。谷底面との比高は東端の中神町で7m、直接河床にのぞむ福生町熊川では9mの崖をつくっている。青柳、拝島の両面上には幅のせまい比高1m程の浅い谷がきざまれ、台地面の傾斜に従って発達している。
沖積段丘(上位面より天ケ瀬面、千ケ瀬面、河原面、田端面とよばれている。)は青梅から拝島町にかけて多摩川沿いに分布している。この地域の沖積段丘は谷底面との比高が上流程大きくなっている。拝島付近の天ケ瀬面は4~5mであるが、青梅付近になると20m以上になる。また最も低位の田端面でも4~5mの崖によって低地面との境が明瞭である。青梅付近の多摩川右岸沿いにも青柳面以下の段丘が発達し、左岸の段丘とよく対応する。駒木野、上長淵、下長淵の山麓に接した部分には扇状地性の台地が発達している。

1.3.6.秋留台地(3f)

本地形区は北側を草花丘陵地、南側を加住丘陵地に限られた面積113.93平方キロメートルの台地である。Gt4面に属する。
西方の五日市線むさしますこ駅付近は標高177.0m,東方二宮神杜付近で標高135.0mを示し,勾配10×10-3で東にゆるく傾いている。図葉中最も急勾配をもつ台地である。低地面との比高は中央部で約30m。
台地を構成する物質は砂礫層で黄褐色の砂質ローム層を約1m程のせている。この砂質ローム層は青柳面の砂質ローム層と対比できる。
また図1の段丘縦断面図でわかるように,秋留台地は青柳段丘に連続していることがわかる。
以上,秋留台地は構成物質,ローム層,台地面の連続性から青柳面に対比される台地と考えられ,秋留台地の最上位面をGt4面とした。
また砂礫層を覆う砂質ローム層は青柳ローム層と同質のものと思われる。台地表面には1~2cm程の小礫が認められる。特に西方の増戸付近では小礫を含むシルト層が厚さ1m前後堆積しており,東方にいくにしたがって厚さを減じ,五日市線にしあきる駅北側では25cm位になる。
ローム層の上部を覆う小礫まじりのシルト層は,非常にやわらかく新らしい物質である。おそらく青柳ローム層が堆積したのち,西方の山地から土砂が供給され堆積されたものではないかと思われる。従って東本宿付近から五日市線むさしひきだ駅を結ぶ線の以西はより新しい地形面と考えることができる。これより以東では小礫まじりのシルト層が堆積した個所としない個所がある。後者は地表面の小起伏のうちやや高い個所が埋め残されたものであろう。
青柳段丘面は地表面の傾斜に従う浅い谷がみられる。南側の沖積段丘面との境には幅の広い比高約2~3mの浅い谷が発達している。
平井川北部の松山,草花などの集落がのっている地域も青柳段丘面に対比される。
青柳段丘面崖下には3~4段の沖積段丘が発達している。崖および斜面によってその境は明瞭であるが,最下位の沖積段丘面は低地面との比高が少なく境はあまり明瞭でない。

図1. 多摩川・秋川段丘縦断面図(JPG:46KB)

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1.4.低地(4)

1.4.1.多摩川低地(4a)

青梅図葉に含まれる多摩川は,ほぼ中流部にあたる。多摩川は青梅付近では台地を切って流れ,宮地付近から谷底平野をつくる。国立市谷保付近でその幅は最も広く2kmを示している。
低地面の表面物質は150cmの検土杖によると宮地付近で地表面より90cmまで暗灰色の砂混りシルト、90~115cm小礫を含む砂、それより下部は黄褐色の砂礫となっている。また立川市富士見町では地表面より115cmまで暗灰色の砂混りシルト、115cm~135cm小礫を含む砂、それより下部は砂礫となる。小礫を含む砂は下流部程厚くなる。また上記の堆積層の下部は径5~10cmの礫からなるN値の高い砂礫層である。地下水は極めて低い。
国立市谷保付近では地表面から円礫層下限までの厚さが15mあり,それより上流部でも9m堆積している。
多摩辺付近より下流部には自然堤防が散在する。また旧河道もみとめられる。

1.4.2.北浅川低地(4b)

青梅図葉の左下の北浅川が流れる低地、図葉内の面積は13.83平方キロメートル。
北浅川は八王寺市街地付近で多摩川の支流の浅川に合流する。そして多摩川に注ぐ。北浅川の両岸には段丘が発達している。そのうち左岸側の台地は低地面との比高4~5mを持ち勾配8×10-3で厚さ4m以上のローム層がのっているのでGt3面とした。このGt3面と同標高を持つ段丘面が北浅川の右岸にも存在するが、その面の上部にはローム層がない。
北浅川の左岸下恩方町付近の標高150mを有する面は低地面との比高が6あり、3~4mの崖を持っているが、最上部にはローム層はなく主として砂岩、ページ岩の角礫による砂礫層である。台地を構成する物質は新しいものであり沖積時代に形成されたものであろう。おそらくこの台地面上に堆積した関東ローム層が、山地からの土砂によって洗流されその上部に土砂が扇状地状に堆積したものと考えられる。
大楽寺町付近には比較的広い面積のGt4面が存在する。神戸付近を扇頂部とする扇状地状に発達し、その勾配は8×10-3である。低地面との比高は1~2mでその境はあまり明瞭ではない。台地西方の山地から流れてくる川が台地面上を深く刻んで流れている。台地面上は起伏の少ない平坦面である。

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2 地形分類と開発及び保全との関係

2.1.地形と土地災害との関係

多摩川の災害の中で特に大きなものは1907年(明治40年)8月,同9月,1910年(明治43年),1914年(大正3年)である。なかでも明治43年の洪水はほとんど全域にわたって氾濫し、最大の被害を与えた洪水といわれている。多摩川治水事業は、明治43年の大洪水を契機に河川改修工事が行なわれた。また上流に小河内ダムが完成してからは被害も殆んどない。しかし多摩川の河床の低下が著しいことから,堤防,橋脚の洗堀による決壊に被害も考えられないこともない。また,平井川,谷地川,野川などの丘陵地と武蔵野台地から流れこむ中小河川は溢水氾濫をおこした(昭和33年9月狩野川台風に伴う集中豪雨により発生した)が,通水断面の不足以外の原因として蛇行部や道路,鉄道などが河水の流れを阻止するように河谷を横断する部分,崖地崩壌土砂によって河道を閉塞された部分があげられている。
中小河川の溢水氾濫を防ぐため充分な河川改修を行なうことが必要であり,低地帯については丘陵地や台地からの雨水が流れて集水しやすい地域となろう。とくに旧河道については冠水の危険地帯であると考えられる。
本図葉中もっとも広い面積を占める台地面は急な斜面および崖によって囲まれている。関東平野の台地の崖はやわらかなローム層からなっているところが多い。集中豪雨に伴い局地的に発生する崖くずれは台地の縁辺部でしばしば発生している。最近の崖くずれの大きなものとして千葉県東部(成田層群の砂層上に約2.4mのローム層がのっている)の崖くずれがある。集中豪雨(1971.9)によって崖くずれが多発し段丘崖下の家屋はつぶされ,田畑は埋められその被害は大きい。また横浜市(ローム層4~6m)のように都市化がすすんでいるところでは台地縁辺部を切取って宅地造成が行なわれその部分に特に被害が多い。本地域も段丘崖の多くがローム層からなっており,前例にみられるように崖くずれが多発する危険を充分に含んでいるものと考える。
崖くずれの原因として,a)赤土は透水性が良く,土中に水分を含みやすいこと,b)その下部に不透水性の粘土層があると,土の中の水圧が側方に土圧として置換されることc)地下水はローム層より下層の砂礫層に滞水し、その下部にある粘土層の上で湧泉になって滲出していることがあげられている。台地面上は侵蝕を受け浅い谷が発達し,比高5mの個所もある。浅い谷の下流部に盛土をするとその上流部は後背湿地化し,雨水がたまり冠水の危険を生じる。
本図葉内の丘陵地はいずれも新らしい砂礫層の地質で構成されている。阿須山丘陵地の入間川に面した斜面、草花丘陵地の満地隧道付近の斜面,加住丘陵地の秋川に面した斜面には崩壊の跡が空中写真で判読される。市の資料によると満地隧道付近は豪雨の都度崩壊を生じている。本丘陵地の砂礫層は崩壌の発生しやすい礫がちの半固結堆積物で,山頂,山腹,山麓が緩斜面の地域では斜面が安定しているため崩壊は生じにくいが,急斜面の地域についてはその危険度は高い。前記にあげた崩壌の発生個所をみると30°以上の斜面を有している。また人工的に切り削った法面には雨裂を生じた上部の土砂が崩れて下部に堆積している。

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2.1.地形と開発との関係

都心から35km内外の近距離に位置する本地域は東京のめざましい膨張によって,人口や都市の施設が西部へも進出し、都市化がすすんできている。平坦な台地は本地域の50%余りを占め立川,所沢など大規模な市街地が発達している。また最近になって既成市街地の新規立地の限界と地価の高騰の要因から住宅,工場等の郊外へのスプロール化を生み,これによって都市近郊の環境が悪化し自然景観が急速に破壊されつつある。郊外の丘陵地や台地周辺の急傾斜地,浅い谷,低地などの住宅化は比較的安価で求められるため土地の条件を無視して発展している。つまり丘陵地の宅地造成化である。草花丘陵地東方のゴルフ場北側の斜面を切取って宅地造成されたところがある。しかしこの宅地造成は土砂くずれがおきたために途中で放置されたままになっている。この地域の斜面は30°以上の急傾斜で崩壊の跡もみられるところである。この急傾斜地を切取って宅地造成が行なわれ、しかも造成後の傾斜角は20°近くにも及んでいる。表3にもあるように崩壊地は急傾斜地に発生している。丘陵地を開発するさいは雨水排除施設はもちろんのこと、地形条件を充分に考慮した開発が必要であろう。
国立市谷保の低地に砂利採取跡を埋めて住宅等が建てられている。また台地上の瑞穂町村山団地の南側(いずれも立川段丘)にも深い砂利採取跡があり,徐々に埋められている。埋土された地域は地盤がゆるく不等沈下の恐れがあり、地震に対しては災害の危険度が高いと考えられる。
表2,3をみると台地の崖くずれが多発している。本地域には段丘崖が発達し,その周辺に家屋が建っている。とくに都市化のすすんでいるところでは崖の部分に宅地造成(立川市,国立市の国分寺崖線に多い)が多くみとめられ,崩かいを起しやすくしている。
台地上は蔬菜畑や平地林の宅地転用化がすすみ、狭小な住宅が密集し街路,公園などの公共用地が不十分なままに都市化が進展している。
台地上の土地利用の配置は都市化を発展させる上にもっとも重要なことである。
また秩序ある都市化をおこなうためには公共施設の整備が必要であろう。
本地域は,丘陵地,台地,低地の地形の配置から,自然環境に恵まれており,その特色を生かし,都市化を進展させて行くことを考えると,地形条件からは,障害となるものは少ないと云えよう。

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3 付表

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4 資料

  • 福田 理・高野貞(1951):東京都青梅町東北方阿須山丘陵の地質。地質学雑誌、Vol.57、No.674
  • 羽鳥謙三・寿円晋吾(1958):関東盆地西縁の第四紀地史(2) 狭山・加住丘陵の地形と地質。地質学雑誌、Vol.64,No.753
  • 寿円晋吾(1966):多摩川流域における武蔵野台地南部の地質(1)地学雑誌Vol.75,No.4
  • 岡崎セツ子(1967):立川段丘西端部ローム層の厚さの分布とその堆積状態。Vol.40、No.4
  • 岡 重文・宇野沢昭・黒田和男(1971):武蔵野西線に沿う表層地質。地質ニュース
  • 皆川紘一・町田端男(1971):南関東の多摩ローム層層序。地球科学Vol.25,No.4
  • 寿円晋吾(1965):多摩川流域における武蔵野台地の段丘地形の研究。地理学評論Vol.38,No.9
  • 国土地理院(1967):水害予防対策土地利用条件調査報告書
  • 貝塚爽平(1958):関東平野の地形発達史。地理学評論Vol.31,No.2
  • 国土地理院(1971):東京および周辺地域土地条件調査報告書および土地条件図
  • 東京都(1967):大地震、風水害における地すべり崖くずれに関する調査
  • 関東ローム研究グループ(1965):関東ローム 二宮書店
  • 貝塚爽平・町田 貞・太田陽子・阪口 豊・杉村 新・吉川虎雄(1963):日本地形論
  • 貝塚爽平(1966):東京の自然史 紀伊国屋書店
  • 堀口万吉(1968):日曜の地学 築地書館
  • 藤本治義(1953):日本地方地質誌関東地方 朝倉書店
  • 地学団体研究会(1969):日本の第四紀
  • 三土知芳(1932):7万5千分1地質図(八王子) 地質調査所
  • 東京都首都整備局(1968):東京都土地利用現況図(三多摩)

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5 Summary

Geomorphological Land Classification

"Ome"

(Summary)

The area covered by this quadrangle is located in the west of Tokyo. More than a half of the area is occupied with terrace surfaces. The margin of the Chichibu Mountains and hilly areas exist on the left of the quadrangle. Lowlands lie mainly along the Tama River. 
The area is divided into four main landform areas, 1) Mountains 8% , 2) Hills 25%, 3)Terraces 60% IV) Lowlands 7%

1) Mountains

The mountainous areas on the left edge of this quadrangle is the marginal parts of the Chichibu Mountains which are composed of sedimentary rocks of the Upper Palaeozoic (Chichibu system) and the Lower Mesozoic cra and of the Middle Miocene epock.

2) Hills

In front of the Chichibu Mountains, there exist three hilly areas,  Azuyama, Kusabana and Kazumi Hills. They are composed of the Miura group of the Pliocene epock, unconformably overlain by horizontal Pleistocene (leposits and Tama loam (Volcanic ash beds). The summit level is considered to be the filltop of the Pleistocene deposits. Flat surfaces, Gt I , are preserved at limited areas in these hills. They are correlated to the Tama I or 2surface in Tama Hills by tephrochronological studies.
In the middle of the quadrangle, there lies an isolated hilly area named Sayama Hills. Flat surfaces (Gt I ) are observed on the summits.

3) Terraces

The terraces in this quadrang1e are classified into four surfaces in age. (Gt2, Gt3, Gt4+, GtlV.
Gt2surface, which is correlated to the Shimosueyoshi surface, is found as Kaneko Terrace, Tokorozawa Terrace and Hino Terrace, and also in Musashino Terrace, gently descending eastward. Kaneko and Tokorozawa Terraces are former fans formed by the Tama River.
Gt3surface, which is correlated to the Musashino surface, is mainly distributed in the northeast and southeast of Sayama Hills. It is also a former fan formed by the Tama River and gently descends eastward to reach the Tokyo Bay. Gentle shallow valleys are distributed in places upon the terrace surface. 
Gt4+ surface, which is correlated to the Tachikawa surface, exists mainly between Kaneko Terrace and Sayama Hills, and between Sayama Hills and the Tama River. It is the largest surface in the quadrangle. The gradient of its longitudinal profile is larger than that of Gt3.
Gt4, which includes all terrace surfaces younger than Gt4+ is distributed along the Tama River, the Aki River and other small rivers. The highest terrace among them, named the Aoyagi surface, is covered by a thin ash bed but other ones are not. The highest surface in Akiru Terrace, which is located between the Hirai River and the Aki River has been considered to belong to the Tachikawa surface but accordingto the ash bed and continuity of the surfaces the researcher concludes that it belongs to the Aoyagi surface.

4) Lowlands

Narrow lowlands are distributed alongthe Tama River, the Aki River, the Kitaasakawa River and other small rivers in the hills. The longitudinal profile of the Tama River's lowland is gentler than that of Aoyagi and Tachikawa surfaces.

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表層地質各論(1対50,000)

青梅

通商産業省地質調査所

通商産業技官 黒田和男
〃 神戸信和
〃 森 和男
〃 木野義人
〃 佐藤 茂
〃 岡 重文
〃 宇野沢 昭
〃 安藤高明

 

1 表層地質細説

1.1.未団結堆積物

1.1.1.礫がち堆積物

本図幅地域で礫がち堆積物としたものは、多摩川本流・平井川・秋川・川口川・浅川その他の小河川に沿って狭く分布する低地の表面にある現河床堆積物、およびこれらの河川に沿って発達する最低位の段丘表層を覆っている段丘堆積物である。現河床堆積物は、福島橋上流では、厚くてもせいぜい5m程度とみられ、ボーリング資料中に、表面から厚く砂礫が発達するように記述してあるのも、表面からほぼ10mの間で、“洪積層”あるいは先第四紀の地層に移るものと思われる。段丘堆積物についても、資料不足であるが、その厚さはせいぜい5mくらいであろう。

1.1.2.泥がち堆積物

この図幅で,泥がち堆積物としたものは,地域南西隅で多摩川本流に沿う自然堤防の後背湿地表層を構成しているもの,国分寺崖線南側の谷に分布するものがある。しかし,この厚さも,大部分は1m程度で,その下には礫がち堆積物に移ってしまう。また,狭山丘陵を刻む小さい谷の表層を構成しているものも,資料不足であり,多くは土壌図を参照して区分したものである。

1.1.3.砕屑物

この表層地質分類では,国分寺崖線をはじめとし,多摩川本流に臨む段丘崖直下には,大なり小なり砕屑物が認められるが,これらはすべて省略し,地域西南部の秋川右岸側,および浅川の流路に沿って,空中写真上からも読み取ることのできる顕薯な土石流堆積物等を記入した。

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1.2.半固結堆積物

1.2.1.礫がち地層

本図幅においてこの表層地質分類に入れたものは,後期新第三系三浦層群ないしは上総層群に相当する地層の基底部を構成し,山地の周辺に露出している一連の地層であって,阿須山丘陵においては飯能礫層,草花丘陵においては大荷田礫層,加住丘陵・川口丘陵においては加住礫層と呼ばれているものである。さらに,狭山丘陵における三ツ木礫層も,この一連の地層に含められている。また三浦層群相当層のうえに不整合でのってくる阿須山丘陵の豊岡礫層,狭山丘陵の芋窪礫層,加住丘陵の美根礫層も,礫がち地層として同じ表層地質分類に入れたが,前者のグループはTn,後者のグループはDの記号で,この図上では区別するようにした。
新第三紀の区分に入れた上記の礫層は,大礫を主体とする比較的よく固結した淡褐色の礫層で,マトリックスは火山砕屑物に富む砂や粘土である。地層の中には,厚さ1~2mの凝灰質の砂層や粘土層をはさむ事が多く,場所によっては,厚さ5mぐらいの凝灰岩層をはさむことがある。礫は一般によく円磨されている。礫種は,現在の多摩川のものとほとんど変らないが,地域によって若干の差がみられ,たとえば大荷田礫層には石英閃緑岩の大礫が目立ち,飯能礫層には,チャートや珪岩の礫が多い。
この図には表現していないが,加住丘陵では,砂がち堆積物のうえに三沢泥岩基底に特有の礫層がある。礫は径10cm以下で,大きな礫を含まず,風化礫や三浦層群由来の半固結の砂岩や泥岩を含むことで特徴づけられている。
洪積層の礫がち堆積物の区分に入れたものは,黄褐色の礫が同色の砂で埋められているもので,その間に砂層や凝灰質粘土層を挾んでいることがあり,豊岡礫層に相当するものの礫種は,硬砂岩・砂岩・チャートおよび粘板岩であって,石英閃緑岩はほとんど認められない。芋窪礫層も同様であって,全般に風化がいちじるしく,礫もきわめて脆いという特長をもっている。
美根礫層の全部と芋窪礫層の大部分は,後述する火山性岩石のロームSと密接に関係しており,図幅地域西部のロームSの分布域は,この礫層の分布と一致している。

1.2.2.砂がち地層

この図幅で砂がち地層としたものは,三浦層群の中の小宮砂層である。この地層は,黄灰色無層理の細砂で,水磨きれた小礫や凝灰質粘土~シルトのうすい挾みをもち,全体としては,偽層の発達は余り著しくない。
国立~府中問の段丘堆積物の基底には,小礫を含む砂層が僅かに露頭としてあらわれていることが報告されている。

1.2.3.泥岩

この図幅で泥岩としたものは,三浦層群中の仏子粘土層および谷ツ粘土層である。この地層は,主として雲母片に富んだ凝灰質のシルト~粘土で,厚さ2.5m以下のレンズ状の礫層をしばしば挾んでいる。礫は,よく水磨された小礫ないし大礫で,礫の間を褐色の砂が埋めている。仏子粘土層の下半部には,厚さ20cm~70cmの亜炭層および薄い泥炭層がそれぞれ数枚挾まれている。
立川市富士見町の段丘の崖には,青灰色~黄灰色の粘土~粘土質泥層で,時に凝灰質の薄層をはさんだり,砂礫層をはさんだりすることがあり,これは,三沢泥岩層とされている。また,国分寺市,小金井市の武蔵野台地(M面)の崖の最下部に,凝灰質の砂泥互層からなり,これに礫を点在的に,あるいは層をなして挾む地層がある。これは連光寺互層中の泥質部に対比されている。

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1.3.固結堆積物

1.3.1.礫岩がち地層

本図幅でこの表層地質分類に入れたものは,五日市盆地に分布する新第三系中新統最上部とされている礫岩層である。主として礫岩からなるが,部分によっては,砂岩・泥岩互層および緑色砂岩が挟在する。下部では,径3~5cmのチャート・砂岩・粘板岩の角礫および第三系起源の泥岩などの礫からなり,上部に行くにしたがって礫の大きさを増し,径20~50cmの巨礫をまじえるようになる。岩体のかたさは,加住礫層と比較して,風化部分ではほとんど変らないので,両者の識別は一見因難であるが,新鮮な路頭では,明瞭に区別される。

1.3.2.砂岩・泥岩互層

この表層地質分類は,秩父古生層・鳥ノ巣層群・小仏層群を読みかえたものと,五日市盆地の中新統の中で,T4あるいは横沢砂岩泥岩互層を読みかえたものとの2つがあり,前者はM,後者はP.Tnの地質時代区分で区別してある。
第三紀層のものは,淡青緑色ないし淡褐色の中粒砂岩と,珪質の泥岩の互層からなり,砂岩は部分的に緑色砂岩となり,粗粒の礫質砂岩を混えることもある。
小仏層群は,主として黒色粘板岩と砂岩との互層である。本図幅地域内では,その層相は一様でなく,場所によって異なるが,大体粗粒砂岩・硬砂岩・砂岩頁岩互層・チャート・粘板岩層の厚い互層で,北より南へ行くにしたがって,砂岩に乏しくなる。
砂岩は,灰色ないし青灰色を呈し,中粒であるがしばしば粘板岩の角片を含む。また,粘板岩は,灰黒色または黒色で板状の剥理をもっているが,一般にこれらは10~30cmの互層を形成している。なお川口川に沿う地区では,この砂岩・泥岩互層は千枚岩質になっている。
鳥ノ巣層群は,砂岩・頁岩・チャートの互層で,この中にレンズ状の石灰岩が挾まれており,増戸南方の谷では,加住礫層の中の暗礁として分布しているものもある。小仏層群とは断層で接するが,両者とのかたさの差はほとんど認められない。

1.3.3.泥岩がち地層

この表層地質分類には中新統五日市町層群の中のT2、あるいは館谷泥岩層とされているものがこれに当る。岩相は,主として泥岩からなり,僅かに層理が認められる。風化面では暗褐色であるが,新鮮な面では,暗灰色ないし黒色を呈し,このかたさに於て,先中新世の固結堆積物とは,明瞭に区分できる。

1.3.4.チャート

チャートは,秩父古生層の中にも,鳥ノ巣層群の中にも挾まっており,通常暗灰色で,薯しく堅硬である。小さなレンズ状の岩体はすべて省略し,ここでは,比較的厚いものだけを示した。

1.3.5.石灰岩

石灰岩は,秩父古生層・鳥ノ巣層群両者の中に,レンズ状の岩体として挾まれ,通常,暗灰色を呈する。化石を含むなどの特長からその分布はよく摘出されており,本表層地質図でも多少,その分布は誇張して示した。
玉ノ内北方の岩体は,かつて採掘されたことがあり,現在は,採掘跡がその規模を物語っている。この品質や延長については,詳細な調査が必要であろう。

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1.4.火山性岩石

1.4.1.ロームT

ロームTは,阿須山丘陵,狭山丘陵,および加住丘陵に下位の礫層とともに分布しており,整合に重なる下位の礫層も,この表層地質分類に含めた。
狭山丘陵では,厚さは東部で30mに及び,西に行くにしたがってしだいに薄く(10m)なり,最西端では侵食されて,下位の芋窪礫層だけが残っている。岩相は,灰褐色~黄褐色で,全体に粘土化が進んでおり,乾燥した露頭では割れ目が発達し暗褐色~灰褐色である。厚さ20cm~70cmの黄白色・白色・灰色等の浮石層が14層あり,いずれも多摩ローム(T1ローム)の鍵層になっている。また,ローム層全体に,浮石・岩片が多く入っており,とくに浮石や岩片が密集している箇所も少なくない。T1ロームの最上部は,黒褐色~暗褐色のコーヒーかす状の部分が特長的に発達し,また,割れ目の発達した暗褐色のロームもある。鉱物組成は,角閃石・磁鉄鉱・長石を主としているが,黒雲母の密集した浮石層(八王子雲母層と呼び,また三つ組浮石層の上部浮石とも呼んでいる)や,褐色ローム層の中に黒雲母のまじっている箇所もある。
阿須山丘陵の北東端には,豊岡礫層の上方に,風化したロームが,約7mの厚さで堆積しているが,この中に2層の白色浮石層を挾み,全体に著しく粘土化して分布している。このロームは,いちおうT1ロームの1部とみたが,狭山丘陵のT1ロームとの対比は,まだ出来ていない。
加住丘陵の東端では,ロームが美根礫層に整合に乗って分布しており,この厚さは約11mである。岩相は,褐色~黄灰色~灰褐色で粘土化がいちじるしく,浮石・岩片が多量に入っており,鍵層となる浮石層は,3枚認められる。このロームは,模式地のT2ロームと対比されている。鉱物組成は,角閃石・長石が多く,磁鉄鉱・赤鉄鉱・石英がそのほかに含まれ,また下部には,黒雲母が浮石やローム中に入っているのが特長的である。
さらに加住丘陵では,このT2ロームの上に不整合に厚さ約10mの土橋ロームが乗っている。岩相は,黄褐色~灰褐色で粘土化が著しい。鍵層となる浮石層は3枚あり、いずれも澄色で,上部の浮石層は厚さ約20cm,他の2枚は5cm前後である。また,局部的に浮石・岩片が密集し,これは霜降りロームと呼ばれている。鉱物組成は,上位から中位にかけては紫蘇輝石が最も多く,ほかに普通輝石・磁鉄鉱・樫欄石・長石などがある。土橋ロームの上には,下末吉ローム等によって,不整合に覆われている場合がある。
川口丘陵の北斜面には,河岸段丘状にT2ローム以上のロームが分布しているが,このロームは黄褐色で粘土化が進んでいる状態から,ロームTと塗色したものである。

1.4.2.ロームS

本表層地質図でロームSに塗色した箇所はいずれも,下末吉ローム以上の関東ロームをのせている所である。
図幅地域北部の金子台地,所沢台地および南西隅に近い日野台地では,下末吉ロームの全層が下位の礫層を整合に被覆している。岩相は,褐色でやや粘土化が進み,3枚の浮石層がこの中に挾まれている。下位の黄燈色浮石層はパッチ状になっているが,日野台地では6cm位の厚さをもち,金子台地,所沢台地では薄い。中位の紫灰白色で粘土化した浮石層は,黒雲母の入っている特長的な浮石層で,所沢・金子両台地では厚さ10cmぐらいあり,日野台地では薄い。鉱物組成は,紫蘇輝石・かんらん石を主とし,普通輝石・長石・磁鉄鉱があり,角閃石は僅かに認められるだけである。下末吉ロームの上には,不整合に武蔵野および立川ロームがのっており,各台地におけるロームの全層厚は,日野台地で15m,所沢・金子両台地では10m前後である。なお,地形面区分からいえば,金子台地,所沢台地,日野台地は,下末吉面(S1面)に対比されている。
図幅地域南西隅の,川口丘陵北斜面には,ロームの厚さと段丘面の高さから,S1面に対比される段丘があり,これもロームSに区分し塗色した。
図幅地域北縁の,阿須山丘陵と金子台地との問にはさまれた河岸段丘状の台地では,下末吉ロームの中の中部浮石層(Pm-1浮石)が礫層の直上に堆積している。台地上の関東ロームの厚さは7.5mで,その下部にある下末吉ロームは,全体的に粘土化が進んでいる。地形区分上から,この台地は,成増面(S2面)に対比される。
図幅地域南東隅に近く,玉川上水と西武国分寺線とが交叉する付近の掘さく現場で,下末吉ローム中の上部浮石層(クリヨーカン浮石)より上方のロームがあり,これに不整合に武蔵野ローム以上の関東ロームが乗っている露頭が観察された。なお,下末吉ロームは整合に下位の礫層を覆っている。ロームは,基底部を除いて,あまり粘土化していない。この点におけるロームの厚さは10m+で,地表から8~8.5mまでは,武蔵野・立川ロームである。地形面分類上,この台地は,三浦半島の小原台面に対比されるが,なお,模式地を埼玉県新座市野火止の野火止面(S3)にも比較され,その本図幅地域内における西の境界線はまだ明らかでない。

1.4.3.ロームM

本表層地質図で,ロームMと分類した箇所は,台地の中で武蔵野ロームおよび立川ロームをのせているところである。
図幅地域の中央部から東部にかけての一帯のロームは,褐色で,下限近くに黄褐色の浮石(東京浮石)がパッチ状にあり,最下部には灰褐色の粘土化したロームがある。武蔵野ロームの上部には,黒色のクラック帯があり,鉱物組成は,多い順から・斜長石・かんらん石・紫蘇輝石・磁鉄鉱・普通輝石となり,角閃石がまれに含まれる。全体として,ロームの厚さは8m前後で,武蔵野ロームがその中の4mを占めている。地形面分類からいえば,この部分は,武蔵野ローム全層が礫層のうえに整合にのっているM1面である。
この地域とは別に,M1面を削った小さな谷の崖線に沿って,不明瞭な河岸段丘状に,5m~7mの層厚でロームがあり,かつ礫層の直上に東京浮石が堆積しているところがある。この部分は,地形面分類上からは,M2面に対比されるが,本表層地質図幅には,とくにこの区分はされていない。

1.4.4.ロームTc

ロームTcとして分類した箇所は,立川ローム全層だけが下位の礫層に整合に乗っている部分である。立川ロームの岩相は,褐色~明褐色で2~3層の黒色帯を挾んでいるが,粘土化していない。一般にサラサラした感じのロームで,鉱物組成は,多い順かかんらん石・紫蘇輝石・普通輝石・磁鉄鉱・赤鉄鉱があり,石英や弔閃石はほとんど含まれていない。この部分でのロームの厚さは,一般に西で薄く(11.0~1・8m)東にむかって厚く(2.5m)なっている。また,青梅付近の露頭では,下位の礫層の表面に凹凸があって0.5m~2.0mの範囲でロームの厚さが変化する。府中市では,立川ロームの厚さは2.5m前後である。なお地形面分類では,立川面(Tc面)に入れられる。

1.4.5.ロームAl

国立市青柳の段丘を模式地とし,立川ロームの最上部10~20cmぐらいが,礫層の上にのっている部分を,ロームA1として,この分類に入れた。青柳段丘は,多摩川の河岸段丘として認められている。
秋留台地の北半表層を構成する物質は,ロームまじりの礫層であって,とれもロームAIに入れた。

1.4.6.ロームH

本図幅地域内をはじめとするいわゆる“武蔵野台地"上には,丘陵地帯に源を発する浅い谷が刻まれている。地域内には,阿須山丘陵の南を境する霞川,狭山丘陵に源をもつ不老川,柳瀬川の源流部,狭山丘陵の南側を東流する黒目川の源流部,あるいは,空堀川や野川の源流部も,台地を僅かに刻む平底谷を伴っている。これらの平底谷の底は,現河床より1~2m高く,その表面は,火山灰起源の表土から構成されている場合もあれば,火山灰と小円礫の混合物から構成される場合もあり,その全容を把握することは著しく困難であるので,これはロームHとして一括し,表層地質図上に区分を行なった。
ロームHは,いちおう未区分の地形面となるが,拝島面あるいは青柳面に比較される場合が多いと考えられる。なお,黒目川源流部の掘さく現場では,M1面を刻む平底谷は,Tc面と同じ構成をもっていることが確認されている。 

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2 表層地質分類と開発及び保全との関係

2.1.山くずれ・地すべり

本図幅地域内では,先鮮新世の固結堆積物からなる山地と,半固結堆積物からなる丘陵地帯とでは,山容が異なり,それぞれに特有の山くずれ状況を呈している。
山地地帯では,稜線の比高は小さいけれども,傾斜は急であって,山腹を刻む小さな谷の出口には,土石流に由来する崖錐堆積物が発達している。とくに,図幅地域南西部にはこの傾向が著しい。この事は,集中豪雨のような異状気象の折には,多くの山くずれが発生する危険性のあることを示している。
丘陵地帯では,礫がち地層が多摩川・秋川の流路に面するところで,悪地地形を呈するが,その山麓部に崖錐堆積物が発達し,また砂礫の排出も薯しい。とくに草花丘陵・加住丘陵では,礫がち地層の基質の部分がかなり風化しており,豪雨時に土砂の排出が多いと予想される。砂がち地層や泥岩の場合には,比較的斜面は安定であるが,丘陵地全体は,新期ロームに被覆されている関係上,新期ロームと半固結堆積物の境界をすべり面とするような山くずれが発生しやすい。
段丘崖に沿う部分は,その崖はもともと,側刻作用により生じたものであり,とくに礫がち地層が露出し,あるいは泥岩の露頭がみられる場合には,いちおう危険と思われる。とくに,近年は台地上に新しく住宅地などが形成される関係上,降雨が地中に滲透する度合いが減少し,そのために豪雨時に地中に滲透できない水があふれ,急崖に達してそこに落水型の崩壊を生じている例がある。
なお,新第三紀の固結頁岩がち地層は,風化すると砕けやすく,玉の内地区では,本図幅地域に隣接して,地すべり防止指定区域がある。

2.2.亜炭

図幅地域北西部の阿須山丘陵を構成する半固結礫がち地層(飯能礫層)および泥岩(仏子粘土層)の中には,しばしば植物の破片を多数含む泥質の部分があり,時に20~70cmの厚さの亜炭を挾むことがある。この亜炭は,青梅市富岡地区で東京炭礦として採掘された事があり,飯能市阿須地区では,現在も武蔵野炭礦の名称で,主として工業用原料として採掘されている。

2.3.砂利

本図幅地域内の丘陵を構成する半固結の礫がち地層は,陸砂利賦存の可能性があるが,実際に加住礫層・大荷田礫層については一般に風化が著しく,飯能礫層の一部が,鉄道に沿った地域において大規模に採掘されているに過ぎない。さらに,芋窪礫層・豊岡礫層については,礫の風化は粘土にまで達しており,骨材としての利用価値はない。
武蔵野台地西縁に近い瑞穂町・羽村町では,地表を被覆する関東ロームの厚さが1m程度ということもあって,しかも水位が低く,地表下20mぐらいまで採掘されている。この稼行対象となっている砂礫層は,大部分青梅砂礫層とされているものである。礫の種類としては,砂岩・チャートが多い。
2・3の砂利採集地点における観察結果を抜すいして第1図に示す。

図 1.(JPG:114KB)

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2.4.温泉

本図幅地域内の温泉には大きく2つの種類がある。1つは,先鮮新世の岩盤中から湧出するもので,岩蔵温泉・網代鉱泉がこれに当り,古くから浴用として利用されている。他のものは,立川温泉がこれに当り,台地上から深井戸を掘って,含有成分の多い地下水を利用するものである。
次に温泉の分析表を掲げる。

表 1,表 2(JPG:69KB)

2.5.地下水

本図幅は地域内では,おもな河川に沿う低地,あるいは丘陵に沿って地表水の取得が容易な箇所を除いて,台地地域はその開拓の歴史にもよく知られているように,地下水の採取の困難さに伴なって,比較的近年まで林地あるいは畑地として利用されるに過ぎなかった。しかし,近年は,東京市街地の西部近郊として急激な都市化が進行しつつあり,これに付随して,各種の用水の水源を地下水に求めた結果,多くの深井戸が掘さくされ,しかもこの数は急増してその実態をとらえるのは,非常に困難である。
しかし,多くの深井戸については,最近,地下地質の状態を知る鍵となる地質柱状図,あるいは検層図が記録されているので,これらを多数集積して,とくに武蔵野台地の地下水の状況がよく知られるようになって来た。その1例として,資料63)で総括された結果を以下記述してみる。
資料63)では,本図幅地域および東方隣接地域で,比較的連続性に富む帯水層を,A1~A8の8層に識別した。そうして,各帯水層の下底面には,いくつかの顕著な谷地形が指摘され,いずれも武蔵野台地の北東部に向かって,収斂する形で延びていること,各帯水層の下底面の傾斜をみると,全般に下位のものほど急で,上位のものほどゆるくなること,各この谷地形は非常に類似しており,その形成に関しては共通の素因が関係していることが推察されていることを挙げている。

帯水層の特性は
A1~A2:帯水層の産水能力が著しく劣り,加えて揚水量に対して溜養量が少ないので,地下貯溜の減少が続き,地下水位の一方的な低下が目立つ。
A3~A4:帯水層の割には,地下水位の低下ならびに変動が少ないが,水位は全体として継続的に低下している。
A5~A7:地下水位の低下・変動ともに著しいが,その回復率は前者に比較してはるかに大きい。地下水位の低下は,季節ごとの地下水の補給・採取の比率が変化するためと解釈される。
ということを報告している。
武蔵野台地の自由面地下水については,昭和10年代にも,当時としては非常に詳細な研究がなされているが,本調査実施当時に,膨大な資料が集積されつつある。資料9)では武蔵野台地の自由面地下水について,武蔵野面における地下水面の形態は,立川面・沖積面に比較してやや複雑で小起伏に富み,これは,ロームの部分的な粘土化によって生じたものと考えている。地下水面上では,やはり谷の形が認められるが,降水に伴う地下水位の上昇は,谷の部分において鈍く,屋根の部分では顕著であることが認められ,ボーリング資料等から検討すると,地下水面が谷になる部分は,基盤が凹部であって,その上に粗粒の段丘礫層が堆積しているか,または段丘礫層下に,砂ないし砂礫層が分布する地域と良く一致するという。
表3は主な地点における地下水の化学成分である。
なお,本図幅地域およびその東方隣接地域での主要帯水層の分布を,資料63)から抜いて,図2に示す。

2.6.地盤

地域内は,すでに表層地質各説の項でも述べたように,山地・丘陵地・台地の各地域は多少とも関東ロームによって被覆されており,地盤の性状は関東ロームの厚さによって支配されているとみても,ほぼ誤りはない。
閑東ロームに被覆されない低地,あるいは河岸段丘では,表上を除いて直ちに砂礫層が出現し,礫の大きさは径2cmから10cm,またはそれ以上に達するものが多い。また,後背湿地に当るところでも,表層部を除いて砂礫層となる。したがって,支持地盤としての条件は最良である。
関東ロームに被覆される台地では,ローム層の厚さは,本表層地質分類によってほぼその状況を知ることが出来る。一般に関東ロームのN-位は,3~5の場合が最も多いが,地質柱状図の最下部付近で,下位の砂礫層に移り変るところでは粘上化していることが多く,N-値も1~2となる。稀にN-値が6以上を示すことがあっても,そのような範囲はごく僅かである。
台地地域では,各方面でよく知られている関東ロームの工学的特性によって,中程度の造物の基礎は,その下位の地層に求めなければならない。本図幅地域内では,関東ロームの下位には砂礫層が出現する場合が普通で,多くの試験結果でも,ここでN-値は50以上,又は測定不能となる。したがって,通常の基礎地盤としては,ほぽ充分であろう。
立川市・昭島市およびその周辺の地下には,小宮砂層に相当する砂がち地層が,約5mあらわれる。このN-値は,浅いところで,15~25,深いところで25~35となっている。また,国分寺市から府中市にかけて,地下浅所に泥岩があらわれる箇所があり,N-値は40~50である。
多摩ロームの性質については,資料が少ないために詳細はわからない。ボーリング地質柱状図ではN-値5~8のローム質粘土と記載されている場合が多い。本図幅地域内の特異な地盤としては,羽村町・瑞穂町などの主として,ロームTcの区分に入る箇所での砂利採取跡を埋戻した地盤や宅地造成の場合の盛土地盤があり,小規模の建築物を作る場合,盛土の材料や深さなど事前の観察が必要である。
とくに,大地震の場合には,埋戻し跡,とくに採掘跡地の境界部に大きな地割れが発生しやすい。また,自然の地盤でも,ロームHとその周辺の表層地質区分との境界付近は,地割れの発生等に対する注意が必要である。

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3 資料

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  • 2) 地質調査所(1962):地質調査所化学分析成果表 2(地下水・1951~1961),地質調査所報告,No.196
  • 3) 地質調査所(1966):50万分の1地質図幅「東京」(第2版)
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  • 5) 福田 理・鳥羽謙三(1952):武蔵野台地の地形と地質・・・東京都内の地質4,自然科学と博物館,Vol.19,pp.171~191
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  • 10) 細野義純(1970b):武蔵野台地における帯水層の性状に関する調査資料,消防研究所技術資料,No.3
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  • 15) 藤本治義(1933a):関東の地質(改訂5版)
  • 16) 藤本治義(1939):埼玉県仏子に発見した象牙化石,博物雑,Vol.35,,pp.14~16
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  • 23) 藤本治義・羽鳥謙三(1966):狭山丘陵の地形と地質,東京都北多摩文化財総合調査報告,第2分冊,pp.209~220
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  • 64) 新藤静夫(1969):武蔵野台地の地下地質,地学雑,Vol.78,No.7,pp.449~470
  • 65) 新堀友行・羽鳥謙三・成瀬 洋(1970):関東平野の地下地質,第2報,関東平野中央部の洪積層,資源研彙報,No.73,pp.30~36
  • 66) 杉原重夫(1971):武蔵野台地北部の地形・地質,地理学会春季木会巡検資料
  • 67) 鈴木康司(1962):南関東西縁地域の第四系の層序および地質構造発達史の研究-五日市盆地における“下部洪積統"・の層序学的意義・資源研彙報・Nos・56~57・pp.1~11
  • 68) 鈴木 敏(1888):20万分の1地質図幅「東京」並同説明書,地質調査所
  • 69) 高木善三郎(1944):青梅町西北方に於けるPseudomonotis Ochoticaの発見とその付近の地質(雑報)・地質雑・VoL51・No・609・pp・196~198
  • 70) 田瀬則雄・小沢保臣(1971):所沢の地下水-特に宙水について-,ハイドロロジー,No.4,pp.15~19
  • 71) 立岩巌ほか6名(1955):30万分の1関東地方地質図
  • 72) 東京農地事務局計画部(1962):昭和36年度畑地帯深層地下水調査,入問台地地区調査報告書
  • 73) 束木竜七(1933):徴地形論,岩波講座地理学
  • 74) 東京都(1953):秩父多摩国立公園の地質
  • 75) 東京都経済局(1963):東京都の地質付西多摩郡地質図・南多摩郡地質図
  • 76) 東京都土木技術研究所(1966):東京都路床土調査図集-4(三多摩地域編)
  • 77) 東京都土木技術研究所(1968):北多摩幹線排水路流域地下水調査報告書
  • 78) 東京都農業試験場(1957):東京都多摩川水系流域土壌区分図
  • 79) 東京都農業試験場(1960):東京都中・西部谷戸田地区土壌区分図
  • 80) 東京都農業試験場(1964):西多摩地域畑地土壌生産性分級図
  • 81) 東京都首都整備局(1964):三多摩地域地下水利用可能量調査報告書(1)北多摩郡
  • 82) 通商産業省化学工業局,工業技術院地質調査所(1961):骨材拠点開発モデル調査報告書(昭和44年度骨材賦存量調査報告)
  • 83) 矢部長克(1927):秩父及五日市の新第三紀層・地質雑・VOl.84・No.406・pp.307~320
  • 84) 矢嶋仁吉(1935):武蔵野台地の地下水・陸水学雑誌,Vol.5,N0.4,pp・125~136
  • 85) 矢嶋仁吉(1936):秋留台地の地下水,陸水学雑誌,VoL.6,No.4,pp.169~177
  • 86) 矢嶋仁吉(1941):東京府久留米村付近の地下水と聚落立地の研究,地理評,Vo1.17,N0.11・pp.867~890
  • 87) 吉村信吉(1939a):昭和13年に起った武蔵野台地地下水の渇水及び大増水,地理評,Vol.15・N0.3,pp.165~187
  • 88) 吉村信吉(1940a):所沢町東方武蔵野台地の地下水,特に宙水と浅い窪地の成因,聚落立地との関係,地理評,Vo1.16,No.2,pp.145~169
  • 89) 吉村信吉(1941):所沢町付近の地下水と聚落の発達,1,2,地理評,Vol.17,No.1,pp.1~13・No.2,pp.124~138
  • 90) 吉村信吉(1943):所沢町北東上富に於ける地下水の変化,陸水学雑誌,Vol.13,Nos.2-3,pp.55~62
  • 91) 吉村信吉・古川啓爾(1940):所沢町東方和田原・愛宕山の聚落発達,特に宙水との関係,地理学,Vo1.8,N0.10,pp.761~772,No.11,pp.953~961
  • 92) 吉村信吉・増沢譲太郎(1948):武蔵野台地の地下水の水温と水素イオン濃度,資源研彙報,No.12
  • 93) 脇水鉄五郎(1918):五日市の第三紀層と洪積層,堆質雑,Vol.25,N0,300,pp,470~471

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4 Summary

Subsurface Geological Survey

"Ome"

(Summary)

The area is geologically situated on the southwestern marrgin of the Kwanto tectonic basin, central Japan, and comprises southeastern marrgin of the Kwanto mountainland, western part of the Musashino upland and a few hillswhich are located between mountainland and uplands.
The Kwanto mountainland is composed of Pre-Pliocene consolidated sediments, trending in NW-SE direction. The sediments are named Permo-Carboniferous Chichibu system (or Chichibu Paleozoic formations), Jurassic 'Torinosu group and Cretaceous Kobotoke group. They are in contact with faults each other. Main constituents of Pre-Pliocene sediments are alternation of sandstone and shale. Small lenticular bodies of limestone and chert are intercalated. Miocene sediments, comprise consolidated accumulations of conglomerate, sandstone and shale, are also distributed in small area. They are divided into conglomerate, alternation of sandstone and shale and shale-rich sediments in this subsurface geological map. 
Hills are composed of Pliocene Miura group, which overlies above-men-tioned Pre-Pliocene sediments with unconformity. The group gently inclines eastwards, and composed, of semi-consolidatedisediments such as conglomerate, sandstone and mudstone. In this subsurface geological map, the group is classified into gravel-rich formation, sandstone-rich formation and mudstone-rich formation based on its lithologic facies.
Terrace deposits, recent fluviatile deposits and talus deposits are distributed in narrow belts along main rivers such as the Tama-gawa, Aki-kawa, Asa-kawa, etc.
Surface of uplands and terraces is covered with so-called Kwanto loam beds. They are subdivided into Tama loam, Shimosueyoshi loam, Musashino loam and Tachikawa loam in ascending order. In this map, Kwanto loam beds and associated terrace deposits are subdivided into Loam T, Loam S, Loam M, Loam Tc, Loam A1 and Loam H. In general cases, Musashino and Tachikawa loams cover all over the mountains and hills, but they are neglected in this map.
This lignite seams are intercalated the semi-consolidated sediments, and worked in small scale for raw materials of industrial use.
Aggregate and crushed stone are quarried from sandstone and limestone of Paleozoic sediments. Semi-consolidated gravel-rich sediments are also quarried for aggregate.
Many aretesian wells are distrivuted in areas except for mountains.Three groups of aquifers are distinguished in this area. They are correlated to lower part of the Miura group, middle and upper part of the Miura group and Pleistocene formation concealed with the Kwanto loam beds.

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土じょう各論(1対50,000)

青梅

農林省林業試験場 農林技官 小島俊郎
八木久義
農林省農業技術研究所 農林技官 山田 裕
田村英二
三土正則
加藤好武

1 土壌細説

1.1.主として山地・丘陵地地域の土壌(林野土壌)

本図幅内の山地および丘陵地に分布する土壌は断面形態の特徴,母材,堆積様式などの相違により,次のごとく三土壌群,四土壌統群,九土壌統に区分された。

土壌細説

土壌群

土壌統群

土壌統

岩屑土

岩屑性土壌

南郷統

未熟土

風化火山抛出物未熟土

堀之内統

褐色森林土

乾性褐色森林土壌

成木1統

平井1統

七国峠1統

褐色森林土壌

成木2統

平井2統

七国峠2統

滝山統

1.1.1.岩屑土

1.1.1.1.岩屑性土壌

この土壌群は主として加住丘陵及び草花丘陵の北縁部が,多摩川本流並びに秋川による侵蝕を受けた岸の部分に分布する。場所の違いにより砂や礫の混含率に多少の相違はあるものの,いずれも鮮新世の中・小礫及び砂等を母材とした土壌であり,また土壌は極めて未熟で断面の特徴にもあまり相違はみられなかったので,ここでは土壌の細分はおこなわなかった。

南郷統(Ngo)

加住丘陵では,滝山城跡を中心に西は高月部落から東は拝島橋までのびた多摩川沿いの崖部に,秋川沿いでは秋留橋を中心に東西に長く分布している。草花丘陵では満地付近の丘陵末端部に分布し,阿須山丘陵では武蔵野炭鉱背後の崖に小面積ながら分布がみられた。
崖の上部は削剥が薯しく基岩の露出が認められ,下部では削剥された礫,砂などが堆積している。土壌は層の分化があまり見られず極めて未熟であるが,崩積性の土壌では水分の供給,排水も良好でありスギの造林も可能である。しかし,現在も侵蝕は進んでおり,土地利用上は充分な注意が望まれる。

代表断面(地点番号No.8)
位置東 京都秋多町字引田
海抜高175m 傾斜 35° 方位N40°E
地形・地質 第三系丘陵地・麓屑面
母材・堆積様式 円礫・砂,崩積
林況 スギ30年生林。樹高13m,地表はタマアジサイが優先
L スギの落葉粗に堆積
1 0~15cmにぶい黄褐色(10YR5/6),腐植に富む壌土,大中小円礫富む,弱度の軟粒状及び粗粒状,粗密度粗,ねばり弱,半乾,小根富む,2層との境界判然
2 15~40cm 黄褐色,(10YR5/6),腐植を含む砂土~砂質壌土,大中小円礫頗る富む,構造なし,粗密度中,ねばり零,湿,大中小根含む,3層へ漸変
3 40~70cm+ 黄渇色(10YR5/6),腐植に乏しい砂土,大礫頗る富み,小中礫富む,構造なし,粗密度中,ねばり零,湿,小根まれ

1.1.2.未熟土

1.1.2.1.風化火山抛出物未熟土壌群

本土壌統群は,極めて風化の進んだ多摩ロームを母材とした土壌で,狭山丘陵の西部を除く大部分の地域と,阿須山丘陵の東端部で海抜高が140m内外の丘陵頂部平坦面に分布する。
多摩ロームは地域により上部或は下部ロームが見られるが,いずれも極めて植質でありここでは一括した。また本土壌統群は崩積性の土壌は分布が少なく,土壌の断面形態にも明確な差が見られないので,土壌は細分しなかった。

堀之内統(Hnu)

この土壌は暗赤褐味を帯びた極めて埴質な土壌で,腐植の浸透は著しく悪く,全土層は深いが土層の分化は不明瞭である。
乾燥の影響はさほど見られず,概ね弱乾生~適潤性土壌に包含されよう。
本土壌の分布するところは,古くは農用林として薪炭材の採取や落葉の採取も行なわれたというが,現在では大半が東京都の水源林として保存され,アカマツを上木としたコナラ,クリ,シデ等を含む天然林となっている。しかし,私有地ではここ数年来都市化の影響による開発が急速に進んでいる。天然生木や点在するヒノキ造林木の生育状況は中庸である。

代表断面(地点番号No.23)
位置 埼玉県所沢市字上山口
海抜高 150m 傾斜 20° 方位 N70°W
地形・地質 第三系丘陵地・丘陵頂部緩斜面
母材・堆積様式 多摩ローム
林況 ヒノキ20年生林,樹高7m
L コナラ・ネジキ等広葉樹の落葉粗に堆積
1 0~2cm暗褐~極暗褐(7.5YR2.5/3),腐植に富む埴質壌土,弱度の微粒状構造,粗密度頗る粗,ねばり中,半乾,小根富む,菌糸臭強し,下層との境界は明
2 2~22cm 暗褐~褐色(7.5YR3.5/4),腐植を含む埴土,上部に弱度の堅果状構造,粗密度密,ねばりやや強,半乾,小中根含む,下層へ漸変す
3 22~43cm 暗褐色(7.5YR3/4),腐植に乏しい埴土,壁状,粗密度密,ねばりやや強・半乾,中根あり,下層へ漸変す

4 43~63cm 褐色(7.5YR3/6),腐植に乏しい埴土,壁状,粗密度中,ねばりやや強,半乾,小根まれ,下層へ漸変す

5 63~80cm十 褐色(7.5YR4/5),腐植に乏しい埴土,壁状,粗密度中,ねばりやや強,半乾,小根まれ

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1.1.3.褐色森林土

1.1.3.1.乾性褐色森林土壌

本図幅内においては,この土壌群は山地丘陵地域の山頂部や尾根などあ地形的に比較的乾燥しやすい場所に分布する。主として母材の相違により次の統に区分された。
成木1統 古生代及び中生代の砂岩・粘板岩・頁岩などを母材とする砂質壌土ないし,埴質壌土
平井1統 第三系中新世の砂岩・泥岩・礫岩等を母材とする壌土
七国峠1統 第三系鮮新世および第四紀の円礫・砂・粘土などを母材とする砂質壌土ないし壌土

成木1統(Nrkl)

本図幅内においては図幅の西端に,北から阿須山,草花・加住丘陵のそれぞれ西縁に接してわずかずつ出現する秩父古生層および中生代小仏層山地の山頂部や尾根筋に巾狭く分布している。
青梅市北部の成木・黒沢附近は本図幅内では一番広く,かつ標式的な分布が認められる。本土壌統の分布する地域は比較的急峻な山地地形を呈し,本図幅内では一番起伏量が大きく,斜面は長く,尾根筋は痩せている。
一般に斜面は浅く,母材の違いにより砂質壌土から埴質壌土まである。林野土壌のBA型,BB型に相当するものが多い。海抜高が300m以下の低い土地であり,カシ,シイなどの常緑広葉樹が多く,上木にはアカマツが生立しているが,生育はよくない。

代表断面(地点番号No.19)
位置 青梅市入谷井
海抜高 315m 傾斜20° 方位W
地形・地質 秩父古生層山地 巾の狭い尾根上の緩斜面
母材・堆積様式 粘板岩・砂岩,残積
林況 ヒノキ35年生林,樹高10m,上木としてアカマツの天然生木あり,林床にはヒサカキ,コウヤボウキ多し。
断面形態
L 1cm ヒノキ,アカマツ,広葉樹などの落葉
F 2cm
H 2cm
A 0~5cm 暗褐色(10YR3/4),中・小角礫に富む,腐植に富む砂質壌土,微粒状ないし粗粒状構造発達,粗密度粗,ねばり弱,半乾,中・小根に富む,菌糸臭強し,B層境界は明
B 5~25cm 黄褐色(10YR5/6),大・中角礫に富む,腐植に乏しい砂質壌土,粗密度中,ねばり弱,半乾,中・大根服務,B-C層との境界は明
B-C:25~60cm+ 黄褐~明黄褐色(10YR5.5/6),大礫頗る富む,腐植に乏しい砂質壌土,粗密度中,ねばり弱,半乾,小根あり

平井1統(Hri1)

本図幅においては秋留団地の西端に位置し,小面積で出現する第三期中新世の砂岩・泥岩・礫岩を母材とする地域の山頂や尾根筋に分布する。本土壌統の分布地域は一般に海抜高が低く斜面は中・古生層山地ほど急ではなく,尾根筋もさほど痩せておらず,鈍頂もみられる。
土壌は一般に浅く,砂質な土壌からやや埴質なものまでみられる。褐色森林土のBB,Bc型土壌に相当するものが多い。本統のところは殆んど天然生林となっており,アカマツ,モミ等の下にカシ,シイ等の常緑樹が優占しているが,アカマツの生育は七国峠1統の地域よりかなり良い様である。

代表断面(地点番号No.38)
位置 東京都西多摩郡日の出村王の内
海抜高 240m 傾斜 10° 方位S70°W
地形・地質 第三系中新統低山地,ゆるやかな尾根筋
母材・堆積様式 五日市層泥岩,円礫岩,残積
林況 ヒノキ80念生林,樹高11m,ヒノキ造林地なるも放置されたためアカマツ(樹高13m)を上木とする天然林状である。
断面形態
L 2cm広葉樹・アカマツ等の落葉
F 1~2cm 上記の腐朽葉密に堆積
A 0~10cm 暗褐色(10YR3/4),腐植に富む壌土,小円礫含む,堅果状構造発達,粗密度中・ねばり弱・半乾・中・小根富む,最上部にM層レンズ状に認められる,下層との境界は明
B 10~33cm 褐色(10YR4/6),腐植に乏しい壌土,中小礫含む,弱度の堅果状構造・粗密度中,ねばり中,半乾,大・中・小根含む,下層との境界は明
B-C:33~60cm+ 黄褐~明黄褐色(10YR5.5/8),腐植の極めて乏しい砂質壌土,腐朽礫に富む,粗密度中,ねばり弱,半乾,根系まれ

七国峠1統(Nkt1)

本図幅内の丘陵地は,図幅中央に島状に残る狭山丘陵も含め,基盤は第三紀鮮新世から洪積世にかけて堆積した円礫・砂等の半団結堆積物からなっている。本統はこれら丘陵地のうち,表層に多摩ローム,立川ローム等火山灰の堆積が見られる地域を除いた大部分の屋根筋や凸形斜面に広く分布する。
一般に山頂緩斜面が多いが,枝尾根の中には谷の侵蝕作用が著しく,尾根が痩せており,土層の極めて浅いものも認められる。林野土壌のBC型土壌に相当するものが多いが,一部にBB,BA型土壌などもある。
本地域は近年都市開発の影響を受け,学校,住宅,霊園,ゴルフ場などの造成が極めて急激に進みつつあり,現在,残存林分は上木にアカマツを含む広葉樹低木林として放置されている。本地域は里山のため,古くから薪炭材の供給や落葉採取など農用林として利用され,かなり強度な人為の影響があったものと惟察される。
本統においては,標準的なものと土層の極めて浅いものと二断面を記載しておく。

代表断面(地点番号No.27)
位置 埼玉県入間市字仏子
海抜高 135m 傾斜10° 方位S60°W
地形・地質 第三系鮮新世丘陵 瘠尾根頂部
母材・堆積様式 飯能礫層
林況 アカマツを主とする天然生低木林,樹高4m,生育極めて不良
断面形態
L 1cm アカマツなどの落葉
F 1cm± アカマツ,広葉樹の腐朽葉
A 0~5cm にぶい黄褐色(10YR4/3),腐植にやや冨む壌土,中・小円礫含む,微粒状及び堅果状構造発達,粗密度粗,ねばり弱,乾,小根に富む,白色菌糸含む,下層との境界は明
B 5~18cm 褐色(10YR4/6),腐植に乏しい壌土,大・中小円礫富む,弱度の堅果状構造,粗密度中,ねばり弱,半乾,中・小根含む,下層との境界明
C 18~50cm+ 橙~明黄褐色(7.5~10YR6/8),壌土,大・中円礫頗る富む,粗密度中,ねばり弱,半乾,根系まれ

代表断面(地点番号No.12)
位置 東京都青梅市長淵
海抜高 260m 傾斜25° 方位S30E
地形・地質 第三系鮮新世丘陵地,丘陵頂部緩斜面
母材・堆積様式 大荷田礫層,残積
林況 コナラを主とする落葉広葉樹林(林令約12年),樹高7m
断面形態
Ao 特別な発達なく,コナラなどの落葉粗に堆積
A 0~8cm 暗褐色(10YR3/3.5),腐植に富む壌土,大・中円礫含む,堅果状構造発達,粗密度中,ねばり弱,半乾,小根に富む,下層との境界は明
B1 8~30cm 褐~黄褐色(10YR4,5/6),腐植を含む,壌土,大・中円礫含む,弱度の堅果状構造発達,粗密度中,ねばり弱,半乾,中・小根含む,下層へ漸変
B2 30~60cm+ 黄褐色(10YR5/6),腐植に乏しい壌土,大・中円礫富む,粗密度中,ねばり弱,半乾,根系まれ

1.1.3.2.褐色森林土壌

山地・丘陵地の全域に分布するが,山地では分布面積がかなり広く,丘陵地では火山灰母材のものを除きかなり分布が狭い。一般に谷筋の凹斜面や平衡斜面の中・下部など,比較的水分条件に恵まれた位置に分布し,土壌は深く,腐植が深くまで浸透し,林地としての生産力は高い。なお加住丘陵の東半部では立川ローム(新期ローム)を母材とした土壌が斜面の形態を問わず広く分布していたが,凸形斜面でも乾燥要因を表わす形態は余りはっきりせず,ここでは一括して本土壌群に含めた。
本土壌群は主として母材の違いにより,次の4統に区分された。

成木2統 古生代及び中生代の砂岩・粘板岩・頁岩などを母材とする壌土ないし埴質壌土
平井2統 第三系中新世の砂岩・泥岩・礫岩・などを母材とする壌土
七国峠2統 第三系鮮新世および第四紀の円礫・砂などを母材とする壌土ないし埴質壌土
滝山統 立川ロームを母材とする微砂質ないし埴質壌土

成木2統(Nrk2)

成木1統の分布地域に出現する崩積土である。秩父古生層,小仏層の砂岩・粘板岩などを母材とする砂質壌土ないし埴質壌土で,林野土壌のBD・BE型土壌に相当する。一般に土層は深く,層内には角礫を多く含み,通気・透水性とも極めて良好で,腐植は深くまで滲透し生産力は高い。大部分がスギ・ヒノキの造林地となっているが,生育は良好であり,周辺には優良造林地が多く,「青梅林業地」と呼ばれる地域に属する。

代表断面(地点番号No.2)
位置 東京都八王子市上川町戸沢
海抜高 230m 傾斜35° 方位N30°E
地形・地質 中生代低山地,麓屑面
母材・堆積様式 小仏層砂岩・粘板岩崩積
林況 スギ20年生林,樹高13m,林床はタマアジサイが優占
断面形態
L スギの落葉粗に堆積
A1 0~10cm 暗褐色(10YR3/3),腐植に富む埴質壌土,中・小角礫に富む,軟粒状及び塊状構造発達,粗密度粗,ねばり中,半乾~やや湿,小根含む,下層との境界は明
A2 10~43cm 暗褐色(10YR3/3),腐植に富む植質壌土,小角礫に頗る富む,軟粒状構造発達,粗密度中,ねばり中,やや湿,小・中根あり,下層との境界は明
B 43~85cm+ 褐色(10YR4/4),腐植を含む埴質壌土,中・小角礫富む,塊状構造認む,粗密度中,ねばり中,やや湿,小・中根あり

平井2統(Hri2)

平井1統の分布地域に出現する崩積土である。中新世の砂岩・泥岩・円礫岩等を母材とする壌土ないし埴質壌土で,林野土壌のBD(d)~BD型土壌に相当する。一般に土層は深く,腐植の滲透も良好である。本図幅内では分布面積は狭い。
斜面中・下部はスギ・ヒノキなどの造林地が多いが,凸形斜面ではモミやアカマツを主とする天然林となっている事が多い。

代表断面(地点番号No.31)
位置 東京都西多摩郡日の出村平井
海抜高 200m 傾斜30° 方位S
地形・地質 中新統低山地,凸形斜面中部
母材・堆積様式 五日市層泥岩・円礫岩,歩行
林況 モミを主とする天然生林
断面形態
L 2cm モミ・広葉樹等の落葉粗に堆積
A 0~20cm 暗褐色(10YR3/4),腐植に富む埴質壌土,中・小円礫含む,粗粒状および塊状構造発達・粗密度粗・ねばり中,半乾,中・小根に富む,下層との境界は明
B 20~65cm+ 黄褐色(1OYR5/6),腐植に乏しい埴質壌土,中・小円礫含む,弱度の塊状構造,粗密度粗,ねばり中,半乾,小・中根あり

七国峠2統(Nkt2)

おもに七国峠1統の分布地域に出現する崩積土壌である。大部分が鮮新世から洪積世にかげて堆積した円礫・砂などの半固結堆積物の風化したものからなっているが,凸形緩斜面に多摩ローム,立川ロームなどの火山灰が堆積している地域の斜面下部では,上記基岩の風化物と火山灰の混合物が土壌母材となっているものが見られる。ここでは本土壌統に含めた。一般に上層の深い壌土ないし埴質壌土が多い。林木の生育は七国1統よりはるかに良好であるが,里山のためかあまり針葉樹の造林は行なわれておらず,ほとんどが広葉樹を主とする薪炭林であり,成木2統や平井2統の地域と異なり粗放た経営形態がとられている。
ここでは基岩の風化物を母材としたものと,これに火山灰の混合したものの2断面を記載した。

代表断面(地点番号No.9)
位置 東京都西多摩郡秋多町菅生
海抜高 280m 傾斜32° 方位N40°E
地形・地質 第三系丘陵,凸形斜面中部
母材・堆積様式 鮮新統礫層,歩行
林況 コナラを主とする広葉樹林(約25年生林)生育中庸
断面形態
L 2~3cm コナラの落葉粗に堆積
A1 0~10cm 暗褐色(10YR3/3),腐植に富む埴質壌土,中・小円礫に富む,塊状構造発達,粗密度粗,ねばり中,半乾,小根富む,下層との境界は明
A2 10~24cm 暗褐~褐色(10YR3.5/4),腐植にやや富む埴質壌土,大・中円礫に富む,塊状構造あり,粗密度中,ねばり中,半乾,中・小根富む,下層との境界は判
B 24~70+ 褐~黄褐色(10YR4.5/6),腐植に乏しい埴質壌土,大・中円礫に富む,腐朽礫含む,粗密度中,ねばり中,半乾・中・小根含む

代表断面(地点番号No.26)
位置埼玉県入間市上谷町貫
海抜高 130m 傾斜25° 方位N60°W
地形・地質 第三系丘陵,凹形斜面下部
母材・堆積様式 円礫・砂・火山灰などの風化物
林況 コナラを主とする広葉樹林
断面形態
A0:特別な発達なし
A 0~13cm 黒褐色~暗褐色(10YR3/2.5),腐植に富む埴質壌土,小円礫あり,塊状及び軟粒状構造,粗密度粗,ねばり強,半乾,中・小根あり,下層との境界は判
B1 13~30cm 褐色(7.5YR4/4),腐植を含む埴質壌土,中・小円礫含む,弱度の塊状及び軟粒状,粗密度中に近し,ねばり強,半乾,小・中根あり,下層へ漸変
B2 30~70cm+ 褐色(10YR4/4),腐植を含む埴質壌土,中・小円礫含む,壁状粗密度中,ねばり強,半乾,小根まれ

滝山統(Tky)

立川ローム等新期火山灰を母材とした土壌で,本地域内では主として加住丘陵の東半部を占めているが,このほか丘陵頂部の緩斜面や山腹下部の緩斜面に点在する。なお立川ロームは本図幅内の山地丘陵地においては,南西端の加住丘陵周辺に分布が広く,ことに美根礫層や小宮砂層を基盤とする地域では厚く被覆している。しかし,北の草花,阿須山,狭山などの丘陵ではほとんど点状に分布が認められる程度である。
滝山統は,立川ロームが風積あるいはそれらが2次堆積したものを母材とした土壌で,分布地域は起伏量が極めて小さく,斜面は緩やかであり,乾燥型の土壌はほとんどみられない。大部分が林野土壌のBD(d)~BD型土壌に属する。一般に残積性の土壌は腐植層が浅く崩積性のものは腐植層が深い傾向にある。土性は壌土~埴質壌土が多く,土色は暗色味を帯びている。土壌の構造は他母材のものにくらべてわかりにくい。里山のため他の丘陵地の地域と同様ほとんどがアカマツを混交した広葉樹の薪炭林となっているが,アカマツの生育はやや良好であり,尾根筋ではアカマツ天然林もみられ,またまれに崩積面にはスギ林もみられるが生育は中庸である。

代表断面(地点番号No.20)
位置 東京都八王子市犬目町下犬目
海抜高 190m 傾斜30° 方位W
地形・地質 第三系丘陵,斜面中部
母材・堆積様式 立川ローム,歩行
林況 コナラ,クリ,シデ等を主とする広葉樹林(林令約15年)
断面形態
L 2cm 広葉樹の落葉粗に堆積
A1 0~10cm 黒褐~暗褐色(7.5YR2.5/3),腐植に富む微砂質壌土,弱度の塊状~堅果状構造,粗密度粗,半乾,小根富む,下層との境界は明
A2 10~23cm 暗褐色(7.5YR3/3),腐植にやや富む,徴砂質壌土,弱度の塊状~堅果状構造あり,粗密度粗,ねばり弱,半乾,小根含む,下層へ漸変
B1 23~53cm 暗褐色(7.5YR3/4),腐植を含む埴質壌土,粗密度中,ねばり中,半乾,小根あり,下層へ漸変
B2 53~90cm+ 褐色(7.5YR4/4),腐植に乏しい埴質壌土,粗密度中,ねばり中,半乾,小根あり

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1.2.主として台地・低地地域の土壌(農地土壌)

1.2.1.黒ボク土

1.2.1.1.厚層黒ボク土壌

瀬谷統(Sey)

この土壌は厚い黒色の多腐植火山灰土層をもつ黒ボク土である。腐植層(A層)の厚さは60cm以上であるが,本地域では1m以上の場合が多い。腐植含量は10~15%程度である。土性はおおむね壌質であるが,ときには下層が粘質となることもある。土層中に礫を含まない点で東青梅統と異なる。
本図幅内では主として立川,武蔵野,下末吉面などの上位~下位台地上の浅い谷底および凹地に分布し,そ菜畑または茶園として利用されている。

代表断面
地点番号 12
所在地 埼玉県入問市北野
地形・地質 台地上の浅い谷底,洪積層
標高 90m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,崩積
土地利用 畑
断面形態
第1層(Ap) 0~55cm 腐植にすこぶる富む,黒褐(7.5YR2/2),L,粒状構造,ち密度9,可塑性中,粘着性中,根を含む,半乾,層界,平坦判然。
第2層(A12) 55~100+cm 腐植にすこぶる富む,黒褐(7.5YR2/2.5),SiL,ち密度15,可塑性強,粘着性中,根を含む,半乾。

東青梅統(Hgo)

黒色で多腐植質(腐植含量10%以上)の厚いA層をもつ再積性の厚層黒ボク土壌である。断面にはふつう小円~半角礫を含んでおり,この黒ボクが水による再堆積を経たことを物語っている。ただし礫が多くなり礫質のものは諏訪統として分離される。本図幅で新設した。
青梅市東方に分布が広く,羽村町,福生市,昭島市にも出現するが,いずれも多摩川沿いの下位面辺縁部に帯状に分布し,河川の営力による運積を示している。礫の存在を除けば厚層黒ボク土(風積式)と形態的にほとんど変りなく,利用上の間題点も共通的と考えられる。

代表断面
地点番号 13
所在地 東京都青梅市師岡792
地形・地質 低位台地(立川面),洪積層
標高 180m 傾斜 平坦 
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 普通畑(ジャガイモ)
断面形態
第1層(Ap) 0~20cm,腐植に富む,黒褐(7.5YR3/1),L,軟粒状構造,小円礫あり,ち密度19,半乾,根含む,層界明瞭。
第2層(A12) 20~37cm,腐植にすこぶる富む,黒色(7.5YR3/1),L,マツシブ,砕易で軟粒状にこわれる,小円礫あり,ち密度20,半乾,根あり,層界判然。
第3層(A13) 37~90cm,腐植にすこぶる富む,黒色(7.5YR2/1),L,マツシブ,砕易で軟粒状にこわれる,小円礫あり,ち密度21,半乾,根あり。
第4層(B) 90+cm 腐植を含む,褐色(7.5YR4/5),CL,マツシブ,半乾。

諏訪統(Suw)

黒色で多腐植質(腐植含量10%以上)の厚いA層をもつ礫質な厚層黒ボク土壌である。断面は小~大円・半角礫にすこぶる富み,その間を多腐植質で軽しょうな黒ボクが埋めている。本図幅で新設した土壌統である。
秋留台地南部および八王子諏訪町の下位面および低位面にかなり広く出現する。黒ボクと礫の無淘汰な堆積状況からみて,土石流様の堆積様式が想定され,ふつうの氾濫堆積とは考えにくい。普通畑として利用されているが,より広汎な利用のためには除礫が望ましい。

代表断面
地点番号 14
所在地 東京都八王子市諏訪町
地形・地質 下位台地,洪積層(?)
標高 150m 傾斜 平垣
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 普通畑(トウモロコシ)
断面形態
第1層(Ap) 0~18cm,腐植にすこぶる富む,黒色(7.5YR2/1),L,軟粒状構造,小円~半礫含む,ち密度5,半乾,根含む,層界明瞭。
第2層(A12) 18~50cm,腐植にすこぶる富む,黒色(7.5YR2/1),L,マツシブで容易に軟粒状に崩れる,小円~半角礫富む,多孔質,ち密度18,半乾,根あり,層界明瞭。
第3層(2A13) 50+cm,腐植に富む,黒褐(7.5YR2.5/2),CL,小円~半角礫にすこぶる富む礫土,半乾,根あり。

長貫統(Ngn)

この土壌は再積性の火山灰を母材として生成発達した厚層黒ボク土壌である。一般に25~35cmの腐植にすこぶる富み,黒色ないし黒褐色を呈するA層に続いて厚い極暗赤褐色の腐植に富むA12層が出現し,1m以内に褐色火山灰土層がみられることはまれである。本土壌は礫を含まず,土性は壌質である。本図幅内においては武蔵村山市から東大和市,東村山市にかげて,および所沢市下富の台地内の主として浅い谷に帯状に分布するほか,秋多町草花の下位~低位台地,八王子市大谷町から日野市にかけてのほぼ上位台地に主にみられ,畑地として利用されている。

代表断面
地点番号 15
所在地 東京都武蔵村山市残堀
地形・地質 下位台地,洪積層
標高 125m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,崩積
土地利用 畑
断面形態
第1層(Ap) 0~25cm 腐植すこぶる富む,黒褐(5YR2/2),L,細粒状構造,ち密度13,可塑性弱,半乾,層界平垣判然。
第2層(A12) 25~65cm腐植富む,極暗赤褐(5YR2/4),L,弱度細粒状構造,小孔あり,ち密度18,可塑性中,半乾,層界平垣判然。
第3層(B) 65~100+cm 褐色(19YR4/6),CL,細スコリアあり、小孔あり,ち密度20,可塑性強,半乾。

羽村統(Hmr)

この土壌は水積性の火山灰を母材として生成発達した厚層黒ボク土壌である。A層の厚さは60cm以上で,その腐植含量は5~10%程度である。土性は壌質で,細小円~半角礫を含んでいる。A層の下には一般に黄褐色を呈するB層がみられるが,この層の土色は風積性火山灰に由来する土壌と異なり彩度が若干低くなり,礫が含まれている。またときには腐植層下に礫層が出現することもある。本図幅内では羽村町,昭島市,秋多町の多摩川,秋川に沿う低位から下位台地にかけての縁辺部に主に分布し,畑地として利用されている。

代表断面
地点番号 16
所在地 東京都西多摩郡羽村町羽ケ上
地形・地質 下位台地,洪積層
標高 165m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 畑
断面形態
第1層(Ap) 0~25cm腐植富む,黒褐(5YR2/2),L,粒状構造,ち密度13,可塑性弱,半乾,層界平坦判然。
第2層(A3) 25~65cm 腐植富む,極暗赤褐(5YR2/4),小半角礫あり,L,細孔あり,ち密度19,可塑性中~強,半乾,層界波状明瞭。
第3層(B) 65~100+cm 褐色(10YR4/4),CL,ち密度16,可塑性強,半乾。

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1.2.1.2.黒ボク土壌

皆瀬統(Mns)

この土壌は比較的平坦な台地上において,風積性火山灰を母材として生成発達した黒ボク土に属し,黒色ないし黒褐色を呈する多腐植質のA層および下部に粘質で黄褐色のB層をもつことを特徴とする。
A層は厚さ25~50cmで林地,未墾地ではA11、,A12,A13,またはA3層に分化し,とくにA12またはA3層で黒色味が大となっているが,耕地ではこれらの層は一般に耕転によって撹乱,平均化され,またごぼうなどが栽培されるところではA層とB層との不規則な混合さえもみられる。
本図幅内においては主として上位および中位台地上の平坦面,また狭山丘陵以南の下位台地上の平坦面にそれぞれひろく分布し,主要畑作地帯となっている。一部林地(薪炭林,アカマツ林・ヒノキ林など)として残されているが,大部分はそ菜畑として利用され各種のそ菜栽培が行なわれている。狭山丘陵以北の入間台地では茶の栽培がとくに盛である。

代表断面(1) (農耕地)
地点番号 17
所在地 東京都東犬和市芋窪
地形・地質 台地,洪積層
標高 105m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,風積
土地利用 畑
断面形態
第1層(Ap) 0~27cm 腐植にすこぶる富む,黒褐(5YR2/2),L,,状構造,ち密度10,可塑性中,粘着性中、半乾,層界不規則明瞭。
第2層(B21) 27~40cm 腐植を含む・褐色(7.5YR4/4),CL,ち密度17,可塑性中,粘着性中,半乾,層界平坦漸変。
第3層(B22) 40~100+cm 褐色(7.5YR4/5),CL,上部に赤褐(2.5YR4/5)の細風化浮石あり,ち密度19,可塑性強,粘着性中,半乾。

代表断面(2) (林地)* *本断面の調査は林業試験場によって行なわれた。
地点番号 18
所在地 東京都青梅市藤橋字霞
地形・地質 台地,洪積層
標高 165m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,風積
土地利用 林地,アカマツを交えた広葉樹天然生林(林令25年)
断面形態
第1層(A0) 特別な発達なし。
第2層(A11) 0~9cm 腐植にすこぶる富む,黒色ないし黒褐(7.5YR2/1.5),SiL,軟粒状および塊状構造,粗密度粗,粘り弱,半乾,小根富む,層界判然。
第3層(A12) 9~20cm 腐植にすこぶる富む,黒色ないし黒褐(7.5YR2/1.5),L,粗密やや粗,粘り弱,半乾,小根含む,層界漸変。
第4層(A13) 20~31cm 腐植にすこぶる富む,黒色(7.5YR2/1),砂岩角礫をわずかに含む,L,粗密度中,粘り弱,半乾,根系あり,層界明瞭。
第5層(A-B) 31~45cm 腐植に富む,極暗褐(7.5YR2/3),CL,粗密度中,粘り中,半乾,根系まれ,層界漸変。
第6層(B) 45~90+cm 褐色(7.5YR4/4~5),CL・粗密度中・粘り中・半乾,根系まれ。

福生統(Fus)

この土壌は水積性の火山灰を母材として生成発達した黒ボク土壌である。A層は25~50cmで腐植にすこぶる富み,黒色ないし黒褐色を呈している。B層は一般に黄褐色を呈するが,水の影響によってその彩度は風積性火山灰に由来する皆瀬統に比してやや低くなる頓向がみられる。土性は粘質で,細小円礫ないし半角礫を含んでいる。A層の土性はやや粗く壌質となっている。75cmまたはそれ以下に礫層が出現する場合があるが,このようた例はとくに瑞穂町,羽村町に多くみられる。本図幅内では青梅市東部から瑞穂町,羽村町,福生市にかけての下位および低位台地に主として分布するほか,立川市砂川の下位台地上にも小面積みられる。畑地として利用されている。

代表断面
地点番号 19
所在地 東京都西多摩郡瑞穂町箱根ケ崎
地形・地質 下位台地,洪積層
標高 140m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 固結堆積岩,水積
土地利用 畑
断面形態
第1層(Ap1) 0~12cm 腐植すこぶる富む,黒褐(5YR2/2),L,ち密度9,乾,層界平坦漸変。
第2層(Ap2) 12~30cm 腐植すこぶる富む,黒褐(5YR2/2),L,ち密度12,乾,層界波状明瞭。
第3層(A3) 30~75cm 暗褐(7.5YR3/3),小円礫あり,CL,細スコリアあり,ち密度18,半乾,層界平坦漸変
第4層(B) 75~100+cm 褐色(7.5YR4/4),小円礫あり,CL,細スコリアあり,ち密度17,半乾。

荒幡統(Ara)

この土壌は古い火山灰を母材として生成発達した黒ボク土で,腐植に富むA層,黄褐色粘質のB層をもち,後述の北原統と類似の形態をとっているが,母材となる火山灰の風化がより進み,若干重粘となり,燐酸吸収力がやや低くなるなど,理化学性の点で北原統とは明らかに異なっている。
A層は25~50cmで黒色~黒褐色を呈しているが,腐植含量は土色から感じられるより多く,一般に5~10%程度である。B層の土色は北原統などに比べるとやや彩度が低くなっている。B層の土性はCL~LiCである。
本図幅内では狭山湖の東方,柳瀬川の下位および中位台地に主として分布している。これにつづく上位面にみられる堀之内統は同一母材(多摩ローム)に由来する土壌とみられるが,A層の発達不十分なため風化火山抛出物未熟土として分類されている。荒播統は主に畑土として利用されているが,生産力は比較的高い。

代表断面
地点番号 20
所在地 埼玉県所沢市荒幡
地形・地質 高位台地,洪積層
標高 77m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,風積
土地利用 畑
断面形態
第1層(Ap) 0~22cm 腐植に富む,黒褐~極暗褐(7.5YR2/2.5),L,中度粒状構造,ち密度12,半乾,層界平坦判然。
第2層(A12) 22~50cm 腐植に富む,黒褐(7.5YR2/2),CL,弱度塊状構造,ち密度21,半乾,層界不規則明瞭。
第3層(B)50~100+cm 褐色(7.5YR4/4),CL,中度塊状構造,細孔含む,ち密度22,半乾。

北原統(Kth)

この土壌は比較的平坦な台地上において,風積性火山灰を母材として生成発達した黒ボク土で,厚さ25~50cm程度,黒褐ないし暗褐の腐植に富むA層をもつ粘質の土壌である。
A層の腐植含量は皆瀬統の場合より若干低く5%以上,lO%以下である。皆瀬統とは本質的に同じ生成過程をとるものであるが,A層の厚さがわずかながらうすいため,耕転によるB層との混合で,その含量が低下したものとみられる。ごぼうなどの深根性作物の栽培がひろく行なわれていることもあって,A層下に腐植層と黄褐色のB層との機械的混合層がみられる場合が多い。
本図幅内では主として所沢市から狭山市,三芳町にかけての上位台地,入問市狭山台の飛行場跡地の一部,入問市の西端部桂付近の上位台地ならびに立川市,国分寺市,国立市の境界部の下位台地に分布がみられ,そ莱畑,茶園などとして利用されている。

代表断面
地点番号 21
所在地 埼玉県所沢市北岩岡
地形・地質 中位台地,洪積層
標高 67m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,風積
土地利用 畑
断面形態
第1層(AP) 0~34cm 腐植に富む,極暗褐(7.5YR2/3),L,粒状構造,ち密度13,半乾,層界平坦判然。
第2層(AB) 34~56cm 腐植を含む,極暗褐(7.5YR2/3)と褐色(7.5YR4/6)の混合,CL,細小孔含む,ち密度17,半乾,層界不規則判然。
第3層(B) 56~100+cm 褐色(7.5YR4/6),CL,細小孔含む,ち密度19,半乾。

水野統(Mzn)

この土壌は比較的平坦な台地上において,火山灰の二次堆積物(水積性)を母材として生成発達した堆植に富むA層(厚さ25~50cm)をもつ粘質な黒ボク土である。
ほぼ全層にわたって小中円礫を含んでいる。75cmまたはそれ以下に小中大円礫よりなる礫屑または礫にすこぶる富む層の出現することもある。B層の土性はすべてCLである。 B層の土色は風積性火山灰に由来する北原統に比して若干彩度が低くなる傾向をもっているようである。本土壌統は再積性火山灰に由来し礫を含む土壌統としてさきに長浜図幅地区で設定した関ケ原統の一部に類似するとみられるが,火山灰の特性は本統においてより強く保持されているようである。
本図幅内では狭山市から入間市にかけての下位台地,瑞穂町箱根ケ崎,昭島市拝島の多摩川沿の下位台地に分布し,主としてそ菜畑・桑園・茶園などとして利用されている。

代表断面
地点番号 22
所在地 埼玉県入問市上藤沢
地形・地質 下位台地,洪積層
標高 95m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩・水積
土地利用 畑
断面形態
第1層(Ap) 0~29cm 腐植に富む,黒褐(7.5YR2.5/2),細小円礫をわずかに含む,L,ち密度10,半乾,層界平坦判然。
第2層(A12) 29~44cm 腐植に富む,黒褐(7.5YR2.5/2),小円礫を含む・CL・ち密度8,半乾,層界不規則判然。
第3層(B) 44~100+cm 暗褐~褐色(7.5YR3.5/4),小中円礫を含む,CL,ち密度17,半乾。

大野原統(Onh)

暗褐色の堆植質(腐植5~10%)な表層をもつ,礫質な黒ボク土壌である。断面は小~大円・半角礫に富む。下層土は彩度の高い風化B層をもたず,暗褐~にぶい褐色の礫質なB層をへて一般に未風化礫層に移行する。
秋留台地東部の下位台地上に出現するほか,青梅市の多摩川南岸の下位台地上にも
見出される。本図幅西部の下位台地面には諏訪統とともに礫質な黒ポク土の分布が広い。諏訪統と同様土石流様の堆積様式が堆定される。
本土壌統名は「寄居」図幅の下位台地上に分布する礫質な黒ボク土に由来する。

代表断面
地点番号 28
所在地 東京都西多摩郡秋多町野辺七辻
地形・地質 下位台地,洪積層
標高 135m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 普通畑
断面形態
第1層(Ap) 0~35cm,腐植に富む,黒褐(5.0YR2/2),L,軟粒状構造,未風化中円,角礫富む,ち密度17,半乾,層界漸変
第2層(B) 35+cm 腐植を含む,黒褐(7.5YR3/2),CL,マツシブ,未風化中円礫すこぶる富む,ち密度20,半乾。

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1.2.1.3.多湿黒ボク土壌

深井沢統(Fki)

粘質な厚層黒ボク土壌に由来する水田土壌である。水稲栽培による特徴的形態変化は1)作土下の土層の鉄,マンガン斑の形成,2)スキ床の発達,3)軟粒状構造の破壌と,塊状構造の発達,4)湿潤化等に現われている。本土壌統では表面下80cm以内にグライ層はあってはならない。
秋留台地の東縁(秋多町野辺ふきん)および八王子市を流れる川口川に沿う低地に分布する。

代表断面
地点番号 24
所在地 東京都西多摩郡秋多町野辺字下田
地形・地質 低位台地,洪積層(?)
標高 125m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(Apg) 0~15cm 腐植に富む,褐灰~黒褐(10YR3.5/1),L,オリーブ黒(5Y3/1)のグライ斑富む,管状・膜状斑あり・小円礫含む・ち密度15・湿・層界明瞭。
第2層(Bcg1) 15~21cm, 腐植に富む,黄灰(2.5Y4/1),L,膜状・糸状斑鉄富む,中度細塊状構造,小円礫含む,ち密度25,湿,層界明瞭
第3層(Bg2) 21~29cm ,腐植を含む,褐灰(10YR4/1),CL,糸根状斑紋富む・ベンチジン反応++,塊状構造,小円礫富む,ち密度22,湿,層界判然。
第4層(Bg3) 29cm, 腐植に富む,黒褐(10YR3/1),CL・糸根状Mn斑あり・ベンチジン反応++,極弱塊状構造,小・中円礫富む,ち密度20,湿。

1.2.1.4.黒ボクグライ土壌

霞川統(Kam)

黒ボク土(ふつう再積性の)に由来する,細粒質の弱グライ水田土壌である。土性は粘質・強粘質を一括する。同じ黒ボクに由来する強グライの岩屋谷統とは,地下水によるグライ化作用が相対的に弱く,グライ層が深い位置にある点で異なる。したがって断面上部には水稲耕作の形態への反映(溶脱集積による斑紋形成,構造の発達など)がみられ,これが本図幅でこの土壌を岩屋谷統から分離させた大きな理由である。
青梅市東北部の霞川に沿う低地が主な分布地帯である。

代表断面
地点番号 25
所在地 東京都青梅市藤橋74
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 165m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩・水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(ApG) 0~16cm,腐植に富む,黄灰~黒褐(2.5Y3.5/1),CL,ジピリジル反応++,ち密度9,湿,層界明瞭。
第2層(A12g) 16~29cm,腐植含む,暗黄灰~黒褐(2.5Y3.5/2),不鮮明糸根状あり,中度塊状構造,ち密度18,湿,層界明瞭。
第3層(Bg1) 29~50cm, 腐植含む,黒褐(2.5Y3/1),LiC,管状・糸根状斑富む,ベンチジン反応十,中度塊状構造,ち密度18,湿,湧水面50cm,湧水はジピリジルに弱く呈色,層界漸変。
第4層(Bg2) 50~80cm,褐(7.5YR4/6),LiC,管状・糸根状斑鉄含む,管状糸根状Mn斑含む・ベンチジン反応++,中度塊状構造,ち密度17,潤。
第5層(G) 80+cm,灰~灰オリーブ(5Y4/1.5),LiC,ジピリジル反応+++,潤。

岩屋谷統(IWy)

この土壌はほぼ全層が黒色の腐植質火山灰土層からなるが,地形的関係で排水が悪く全層または断面の主要部分が顕著なジピリジル反応を示す黒ボクグライ土壌である。
土性は一般に粘質であるが断面下部に強粘質土層の出現することもある。G層中に膜状,斑状,糸根状斑などを含むこともある。
本図幅内では,所沢市北野の中位台地をきる浅い谷底,および狭山丘陵南麓部の狭少な谷底などに少面積分布し,主として水田として利用されているが,一部では盛土して桑園として,あるいはそ菜畑として利用されているところもある。

代表断面
地点番号 26
所在地 埼玉県所沢市北野
地形・地質 台地上の浅い谷底,洪積層
標高 93m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,崩積
土地利用 水田
断面形態
第1層(ApG) 0~19cm 植に富む,黒色~黒褐(10YR2/1.5),L,ジピリジル反応きわめて顕著,ち密度6,湿,層界平坦明瞭。
第2層(G1) 19~70cm 腐植に富む,黒色(10YR1.8/1.5),CL,中度塊状構造,細孔含む,斑状・膜状・糸根状斑含む,ジピリジル反応顕著,ち密度14,湧水面20cm,層界平坦判然。
第3層(G2)70~100+cm 褐灰~灰黄褐(10YR4/1.5),LiC,ジピリジル反応顕薯,

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1.2.2.褐色森林土

1.2.2.1.褐色森林土壌

大草統(Oks)

洪積段丘に分布する強粘質な適潤性の褐色森林土であって,火山灰の影響は認められない。八主子市小宮町の下位面(立川面)に局所的に出現し,そ菜畑として利用されている。

代表断面
地点番号 27
所在地 東京都八王子市小宮町
地形・地質 下位台地(立川面),洪積層
標高 95m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 そ菜畑(きゃべつ)
断面形態
第1層(Ap) 0~18cm, 腐植を含む,黒褐(7.5YR3/1.5),CL~LiC,中~細塊状構造,ち密度24,半乾,層界明瞭。
第2層(B1) 18~42cm, 暗褐(7.5YR3/4),LiC,弱塊状構造,構造面やや皮膜認める,粗孔隙富む,ち密度22,半乾,層界漸変。
第3層(B2) 42+cm, 暗褐(7.5YR3/4),LiC,弱塊状構造,粗孔隙富む,ち密度20,半乾。

恩方統(Ogn)

全層または30cm以内より以下礫質である段丘面の褐色森林土である。礫は円・半角小中礫を主とし,間を填める細土は壌質ないし粘質が多い。多摩川上流,平井川,秋川,浅川に沿う火山灰の影響のない底位面(青柳面とそれ以下の段丘面)に出現する。野菜畑,果樹園(栗)などに利用されているが,礫の存在による障害が目立ち,とくに深根性作物には適さない。なおこの地形面は宅地化が進んでいる。

代表断面
地点番号 28
所在地 東京都青梅市友田4丁目
地形・地質 低位台地,洪積層
標高 150m 傾斜 北へ2°
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 サツマイモ畑
断面形態
第1層(Ap) 0~17cm,腐植含む,にぶい黄褐(10YR4/2.5),SL,軟粒状構造,細小円礫頗る富む,半乾,層界判然。
第2層(B1) 17~45cm,にぶい黄褐(10YR4/2.5),SL,マツシブ,細小円礫土,半乾,層界判然。
第3層(B2) 45+cm, にぶい黄褐(10YR4/3),SL,マツシブ,小・大円礫土,半乾。

秋留統(Akr)

黒ボク土の混入の明瞭に認められる粘質の褐色森林土である。断面は黒褐色を呈し,黒ボク土の混入は明瞭である。しかしその一方黒ボク土に特徴的な軟粒状構造,ないし軟粒状構造に崩れやすい性質を欠き,土塊は堅くかつ重く,優勢な粘土鉱物種がアロフェンではないことを推察させる。ふつう細小礫が見出される。遷移亜型の概念を持込めば,褐色・森林土の黒ボク土的亜型に当たる。
平井川,秋川にはさまれた秋留台地(下位面=立川面)にその分布が広いが,八王子市弐分方町,日野市の台地辺縁部の低位面にも出現する。普通畑のほか,桑園・果樹園としても広く利用されている。

代表断面
地点番号 29
所在地 東京都西多摩郡秋多町雨間字早道場
地形・地質 下位台地(立川面),洪積層
標高 155m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 普通畑
断面形態
第1層(Ap) 0~20cm,腐植に富む,黒褐(7.5YR3/1.5),CL,粒状および塊状構造,ち密度15,湿,根富む,層界判然。
第2層(A12) 20~36cm,腐植に富む,黒褐(7.5YR3/1),CL,細塊状構造,ち密度22,湿,根含む,層界漸変。
第3層(A13) 36~70cm,腐植に冨む,黒褐(7.5YR3/2),CL,塊状構造,ち密度22,湿。
第4層(2BC) 70+cm, 腐植を含む,褐(7.5YR4/3),SCL,マツシブ,湿。

千ケ瀬統(Sng)

黒ボク土の混入の明瞭に認められる礫質の褐色森林土である。礫の間を埋める細土は黒褐色で,黒ボクの混入は明瞭であるが,比較的硬い粒状~小塊状構造が発達し,黒ボク土に特徴的な軽しょうな軟粒状構造はみられない。同じ黒ボク土の混入のみられる秋留統とは礫質か否かで異なる。
青梅市の多摩川沿いにやや広く,また秋留台地の平井川沿いに細く帯状に分布する。

代表断面
地点番号 30
所在地 東京都西多摩郡日の出村平井
地形・地質 下位台地(立川面),洪積層
標高 170m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩・水積
土地利用 桑園
断面形態
第1層(Ap) 0~16cm,腐植含む~富む,黒褐(10YR3/2),SL,粒状および小塊状構造,小円~半角礫すこぷる富む,ち密度24
,半乾,根含む,層界判然。
第2層(A12) 16~45cm,腐植含む~富む,黒褐(7.5YR3/2),CL,粒状および小塊状構造,小円~半角礫すこぷる富む,ち密度24,半乾,根あり,層界漸変。
第3層(B) 45+cm,腐植を含む礫褐(7.5YR3.5/3)・CL・マツシブ,小円~半角礫富む,ち密度22,半乾,根なし

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1.2.3.褐色低地土

1.2.3.1.褐色低地土壌

新戒統(Snk)

谷底平野または沖積の段丘に分布する粘質な褐色低地土壌であって,火山灰の影響は認められない。砂質,壌質のメンバーとともに,もっとも頻出する褐色低地土壌である。八王子市の各地川沿いのせまい谷底および沖積段丘にもっぱら出現し,普通畑,桑園などとして利用されている。この流域には一部地下水の影響を受け,下層が灰色化し斑紋を生じたもの(粟野統)も出現するが図示は省略した。

代表断面
地点番号 31
所在地 八王子市小宮町
地形・地質 河岸段丘(沖積段丘),沖積層
標高 90m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 普通畑(キャベツ)
断面形態
第1層(Ap) 0~19cm,腐植を含む,黒褐(7.5YR3/2),CL,粒状,弱塊状構造,小円礫含む,ち密度15,湿,層界明瞭。
第2層(B1) 19~50cm,褐~暗褐(7.5YR3,5/3),CL,粒状・弱塊状構造,小円礫含む,隙に富む,ち密度19,湿,層界判然。
第3層(B2) 50+cm,褐~暗褐(7.5YR3.5/3),CL~LiC,弱塊状構造,小円礫含む,孔隙富む,ち密度21,湿。

大内統(Ou)

この土壌は下層土が黄褐色を呈し,マンガン結核をもつ粘質の褐色低地土である。
本図幅内では所沢市上山口およびその東部の狭少な谷底ならびに入問市寺竹付近の霞川沿岸の低地に分布し,主として水田,また一部畑として利用されている。

代表断面
地点番号 32
所在地 埼玉県所沢市山口陳鐘
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 85m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 水田(休耕)
断面形態
第1層(Apg) 0~18cm,腐植を含む,暗褐(10YR3/3),L,糸根状斑あり,ち密度10,半乾,層界平垣明瞭。
第2層(Bg1) 18~29cm 灰黄褐(10YR4/2),CL,弱度塊状構造・糸根状,雲状,膜状斑富む,ベンチジン反応+,ち密度17,半乾,層界平坦判然。
第3層(Bg2) 29~95cm 黒褐~暗褐(10YR2.5/3),CL,糸根状斑あり,点状斑富む,ち密度19,半乾。
第4層(G) 95+cm グライ層。

三川内統(Mik)

この土壌は下層土が黄褐色を呈し、マンガン結核をもつ壌質の褐色低地土である。作土は一般に灰色化している。土性はL~SLで,ときに円礫,半角礫を含むこともある。
本図幅内では飯能市下畑の小曽木川沿いに局部的に分布がみられるにすぎない。水田として利用されている。

代表断面
地点番号 33
所在地 埼玉県飯能市下畑
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 110m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩・水積
土地利用 水田(休耕)
断面形態
第1層(Apg) 0~19cm 腐植を含む,黄灰(2.5Y4/1),L,糸根状斑あり,ち密度11,半乾,層界平坦判然。
第2層(Bg1) 19~39cm 黄灰~暗灰黄(2.5Y4/1.5),小中円礫,半角礫含む,L,糸根状斑富む,ち密度16,半乾,層界平坦明瞭。
第3層(Bg2) 49~44cm 暗灰黄(2.5Y4/2),小中円礫,半角礫含む,L,マンガン結核すこぶる富む,ち密度21,半乾,層界平坦判然。
第4層(2B) 44~100+cm 褐色~にぶい黄褐(10YR4/3.5),小中円礫をわずかに含む,SL,ち密度20,半乾。

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1.2.3.2.粗粒褐色低地土壌

飯島統(Iij)

この土壌はほぼ全層が黄褐色で砂質の層からなる粗粒褐色低地土壌である。本図幅内では福生市志茂,昭島市宮沢町,立川市柴崎町,八王子市滝付近の多摩川沿いの高水敷と自然堤防上の一部にかけてそれぞれ狭小な面積で分布し,畑地として利用されている。

代表断面
地点番号 34
所在地 東京都昭島市宮沢町谷下前
地形・地質 高水敷,沖積層
標高 85m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 畑
断面形態
第1層(Ap) 0~20cm にぶい黄褐(10YR4.5/3),LFS,ち密度13,半乾、層界平坦判然。
第2層(B) 20~100+cm にぶい黄褐(10YR4.5/3)および灰黄褐(10YR4.5/2)の混合色,LFS,ち密度11,半乾。

長崎統(Ngs)

砂質な褐色低地(水田)土壌である。断面下部の砂質で充填の粗な厚い褐色の土層で特徴づけられる。マンガン点状斑はあってもなくてもよい。一般に下層土は単粒状で,高次の構造は発達しない。これに反し表層土の灰色化,鉄・マンガンの溶脱-集積層の分化,鋤床の発達はきわめて明瞭に認められる。礫質,壌質のメンバーと共に褐色低地(水田)土壌の代表的なものである。
八王子市高月,日野市,昭島市等のいずれも多摩川現沖積面に小面積ずつ点在する。過良な透水性のため水管理が問題になる水田である。

代表断面
地点番号 35
所在地 東京都日野市日野
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 70m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(Apg) 0~17cm ,腐植含む・オリーブ黒(5Y3/1),L,グライ斑あり,管状斑鉄含む,ち密度14,湿,層界明瞭。
第2層(Bcg1) 17~24cm, 灰(5Y4/1.5),L~SL,雲状斑鉄富む,糸根状斑鉄あり,弱塊状構造,小・中円礫含む,ち密度21,湿,層界明瞭。
第3層(Bg2) 24~36cm, 灰(5Y4/1.5),LFS,Mnが砂面を汚染,ベンチジン反応++,単粒状構造,小・中円礫富む・ち密度15・半乾,層界漸変。
第4層(C) 36+cm, 砂礫そのものの色,LFS,単粒状構造,小・中円礫富む,ち密度15,半乾。

外城統(Toj)

厚い礫層をもちその上端が30cm以内に現われる粗粒褐色低地土壌である。礫層上の土層および礫間をうめる細土の土性は問わないが,風化による鉄の遊離のために褐色を呈している必要がある。
図幅西部の丘陵・山地を刻む小河川(浅川・川口川・平井川,小木曽川,成木川)沿いの現および古沖積面には美山統とともに礫質な褐色低地土が頻出する。なおこの土壌統には下層土が未風化の砂礫そのものの色を示す低地も含めたが,これらは発達未熟な低地土として分離するのが適当かもしれない。
一般にそ菜畑として利用されているが,礫の存在,低い保水性,貧弱な塩基状況など物理的,化学的障害は大きい。

代表断面
地点番号 36
所在地 東京都八王子市西寺方
地形,地質 谷底平野,沖積層
標高 173m 傾斜 平坦
母材および推積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 普通畑(サツマイモ)
断面形態
第1層(Ap) 0~18cm, 腐植を含む,暗褐(7.5YR3/3),CL,弱塊状構造,未風化細小礫すこぶる富む,半乾,層界判然。
第2層(B) 18~42cm 褐~暗褐(7.5YR3.5/4),CL,マツシブ,細~大円・半角礫すこぶる富む,半乾,層界判然。
第3層(2C) 42+cm,砂礫そのものの色, CoS,単粒状構造,細~大円・半角礫よりなる砂礫層,半乾。

井尻野統(Ijr)

礫層が表面から30cm以内に現われる褐色低地(水田)土壌である。礫質な褐色低地土(外城統)を先行土壌とし,その特徴を下層土に残している水田土壌で,表層における溶脱層,集積層の分化,鋤床の形成等は一般に著るしい。下層土は褐色を呈していることを特徴とするが本図幅内では未風化の砂礫そのままの色を呈しているものが大部分である。したがって発達未熟な低地土に由来する水田土壌として分離するのが適当かもしれないが,その一点はこんごの間題とした。
多摩川に沿う沖積低地に広く分布するほか,図幅西部の山地,丘陵地を流れる川口川,秋川,平井川,小木曽川沿いの低地水田地帯はほとんどが井尻野統に属する。過良な透水性のため水管理が問題になる水田土壌である。

代表断面
地点番号 37
所在地 東京都青梅市富岡2丁目
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 115cm 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(Apg) 0~17cm, 腐植を含む, 灰(5Y4/1), L, 酸化沈積物なし, 小円礫含む, ち密度17, 湿, 層界明瞭。
第2層(Bcg1) 17~25cm, 灰(5Y4/2),L,糸根状,雲状斑鉄すこぶる富む, 塊状構造, 小円礫富む, ち密度20, 湿, 層界明瞭。
第3層(2Bg2) 25~42cm, 暗灰黄(2.5Y4/2),SL,マンガンが砂礫面を被覆して沈澱,ベンチジン反応++,単粒状構造,細~大円礫よりなる礫土,半乾,層界漸変。
第4層(2C) 42+cm, 砂礫そのものの色,LS,酸化沈積物なし,単粒状構造,細~大円礫よりなる礫層,半乾。

美山統(Miy)

表面から30~60omの範囲内から礫層の出現する粗粒褐色低地土壌である。礫層上の土層は壌質な土性をもつ。図幅西部の山地・丘陵地を流れる小河川,山入川(八王子市),小木曽川,成木川(青梅市)の谷底平野に分布しており,普通畑として利用されている。

代表断面
地点番号 38
所在地 東京都八王子市美岬
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 200m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 普通畑(トウモロコシ)
断面形態
第1層(Ap) 0~23cm, 腐植含む,灰黄褐~にぶい黄褐(10YR4/2.5),L,半角礫富む,ち密度6,半乾,層界判然。
第2層(B1) 23~59cm,にぶい黄褐(10YR4/3),SL,マツシブ,小半角礫含む,ち密度13,半乾,層界判然。ち密度13,半乾,層界判然。
第3層(2B2) 59+cm, にぶい黄褐(10YR4/3), SL,マツシブ, 中・半角礫すこぶる富む,ち密度12,半乾。

八口統(Ytg)

この土壌は30~60cm以内から(砂)礫層が出現する粗粒褐色低地土壌である。
本図幅内では入間市万亀の入問川沿いにごく少面積であるが分布がみられる。この地域の土壌では礫層上の土層の土性は壌質で,作土および次表層は灰色化しその下部に鉄・マンガンの沈積がみられる。主として水田として利用されているが休耕田がかなり多いようである。

代表断面
地点番号 39
所在地 埼玉県入問市万亀
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 80m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 草地(旧水田)
断面形態
第1層(Ap) 0~20cm 腐植を含む,暗灰黄(2.5Y4/2),細円礫をわずかに含む,L,ち密度6,半乾,層界平坦明瞭。
第2層(A12) 20~28cm 暗灰~暗灰黄(2,5Y4/1.5),細小円礫をわずかに含む,L,糸根状斑あり,ち密度13,半乾,層界平坦明瞭。
第3層(Bg1) 28~32cm 暗灰黄~オリーブ褐(2.5Y4/2,5),細小中円礫を含む、L,糸根状斑すこぶる富む,ち密度18,半乾,層界平坦明瞭。
第4層(Bg2) 32~45cm 暗褐~にぶい黄褐(10YR3.5/3),小・中円礫を含む、SL,マンガン結核すこぶる富む,ち密度14,半乾,層界平坦判然。
第5層(2C) 45~60+cm 粗砂および細小中円礫よりなる砂礫層。 

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1.2.4.灰色低地土

1.2.4.1.細粒灰色低地土壌

金田統(Kan)

この土壌は沖積低地にあって下層土の基色が灰褐色を呈し,マンガン結核をもたない粘質の細粒灰色低地土壌である。一般に礫を含み,60cm以下に礫層が出現する場合もある。
本図幅内では昭島市福島町、中神町の多摩川沿いの氾濫平野に小面積分布し,水田として利用されている。

代表断面
地点番号 40
所在地 東京都昭島市福島町豆口
地形・地質 氾濫平野,沖積層
標高 80m 傾斜 平坦
母材および・堆積様式 非団結堆積岩,水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(Apg) 0~18cm 腐植含む,灰色(5Y4/1),CL,不鮮明雲状斑あり,ち密度12,湿,層界平坦明瞭。
第2層(Bg1) 18~30cm 灰黄褐(10YR4/2),小・中円礫あり,CL,糸根状,雲状斑富む,弱度塊状構造,ち密度23,湿,層界平坦判然。
第3層(Bg2) 30~50cm 灰黄褐(10YR4.5/2),CL,不鮮明雲状斑あり,ち密度19,湿,層界平坦判然。
第4層(2B) 50~100+cm 灰黄褐(10YR4.5/2),SCL,湿。

多多良統(Ttr)

この土壌は下層土の基色が灰褐色を呈し,マンガン結核をもつ粘質の灰色低地土である。
表層は一般に灰色であるが,ときには周辺の影響によって黄褐色を呈することもある。表層の土性はL~SL,下層土はCLであるが,ときには強粘質土層をはさみ,また60cm以下ではあるが礫層の出現することもある。排水は比較的良好であるが,作土内にグライ斑,また作土直下にうすいグライ層のみられることもある。
本図幅内では入間市花ノ木,立川市中神町,日野市上屋敷などの谷底平野に少面積分布し,水田として利用されている。

代表断面
地点番号 41
所在地 埼玉県入間市花ノ木
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 125m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(Ap) 0~13cm 腐植を含む,暗褐(10YR3/3),L,雲状斑あり,ち密度18,半乾,層界平坦判然。
第2層(AG) 13~21cm 灰黄褐~黒褐(10YR3.5/2),細小半角礫含む,CL,糸根状斑あり,ジピリジル反応顕著,ち密度12,湿,層界平坦明瞭。
第3層(Bg) 21~100+cm 灰褐~褐色(10YR4/2.5),CL,雲状斑含む,点状斑富む(とくに上半部に多い),ち密度17,湿,41cmに湧水面がみられたがこれは一時的のものとみられる。

佐賀統(Sag)

この土壌は下層土の基色が灰色を呈し,マンガン結核をもつ強粘質の灰色低地土である。
本図幅内では所沢市天王前,日野市宮付近の谷底平野に小面積みられるにすぎない。水田として利用されているが,所沢市天王前のこの土壌はほとんど耕作放棄されている。

代表断面
地点番号 42
所在地 埼玉県所沢市天王前
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 35m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 草地(旧水田)
断面形態
第1層(Apg) 0~19cm 腐植を含む,暗灰黄(2.5Y4/2),CL,糸根状斑雲状斑わずかに含む,ジピリジル反応あり(グライ斑),ち密度13,湿,層界平坦明瞭。
第2層(Bg) 19~100+cm 黄灰~暗灰黄(2.5Y4/1.5),LiC,雲状斑,管状斑含む,マンガン点状斑含む,ち密度17,80cm付近にグライ斑あり。

藤代統(Fjs)

この土壌は全層あるいは下層土の基色が灰色を呈し,マンガン結核をもたない粘質の細粒灰色低地土壌である。下層土には構造の発達はみられない。断面中に礫を含み,50~60cm以下で壌質の層へ移行する場合が多い。また約70cm以下に礫層が出現することもある。
本図幅内では八王子市宮下町・加住町・梅坪町の谷地川沿いの谷底平野とこれに接する低位台地上の一部に,また国立市谷保の多摩川沿いの氾濫平野にそれぞれ小面積ずつ分布し,水田として利用されている。国立地区での水稲収量は360~420kg/10aである。

代表断面
地点番号 43
所在地 東京都国立市谷保下之下
地形・地質 氾濫平野,沖積層
標高 60m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(Apg) 0~14cm 腐植含む,褐灰(10YR3.5/1),CL,ち密度12,半乾,層界平坦明瞭。
第2層(A21g) 14~25cm 褐灰(10YR3.5/1),CL,不鮮明雲状斑あり,ち密度22,半乾,層界平坦判然。
第3層(Bg1) 25~50cm 灰色(5Y4.5/1),小円礫あり,SiCL,雲状斑すこぶる富む,ち密度20,半乾,層界平坦判然。
第4層(Bg2) 50~100+cm 暗灰黄(2.5Y4.5/2),FSL,湿。

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1.2.4.2.灰色低地土壌

善通寺統(Znt)

この土壌は沖積低地にみられる下層土の基色が灰褐色を呈し,マンガン結核(点状斑)をもつ壌質の灰色低地土壌である。一般に約60cm以下で砂質の層へ移行する。本図幅内では国立市谷保の多摩川沿いの氾濫平野に出現するのみで分布面積は狭小である。水田として利用されている。水稲収量は360~420kg/10aである。

代表断面
地点番号 44
所在地 東京都国立市谷保峡之下
地形・地質 氾濫平野,沖積層
標高 60m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(Apg) 0~12cm 腐植含む,黄灰(2.5Y4/1),L,ち密度14,半乾,層界平坦明瞭。
第2層(Bg1) 12~22cm 灰色(5Y4/1),L,糸根状・雲状斑含む,ち密度21,半乾,層界平坦判然。
第3層(Bg2) 22~60cm 灰黄褐(10YR4,5/2),SL,不鮮明雲状斑すこぶる富む,マンガン点状斑あり,ベンチジン反応+,ち密度21,半乾,層界平坦判然。
第4層(2B) 60~100+cm にぶい黄褐(10YR4.5/3),LFS,湿。

加茂統(Km)

マンガン結核をもたない壌質の灰色低地(水田)土壌である。生成的には壌質な灰色低地(水田)土壌のうち相対的に湿ったグループを想定している。日野市万願寺付近の多摩川の自然堤防の後背部に局所的に出現するのみである。ふきんは重金属汚染(とくにCd)が進行し,代表地点も水田作を停止している。

代表断面
地点番号 45
所在地 東京都日野市万願寺97
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 65m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩・水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(Apg) 0~18cm, 腐植を含む,灰~オリーブ黒(5Y3.5/1),L,膜状斑鉄あり,ち密度19,湿,層界明瞭。
第2層(Bg1) 18~31cm, 灰~オリーブ黒(5Y3.5/1),CL,糸根状斑鉄富む,弱塊状構造,小円礫あり,ち度22,湿,層界明瞭。
第3層(Bg2) 31~51cm, 灰(5Y4/1),L,糸根状斑鉄あり,雲状斑鉄富む,ベンチジン反応+,マツシブ,小円礫あり,ち密度19,湿,層界漸変。
第4層(Cg) 51+cm, 灰(5Y4/1),SL,糸根状斑鉄あり,マツシブ,小円礫あり,ち密度16,湿。

1.2.4.3.粗粒灰色低地土壌

栢山統(Kay)

この土壌は30cm以内から(砂)礫層の出現するきわめて有効土層の浅い粗粒灰色低地土壌である。砂礫層土の上層は灰褐色で礫を含み,壌質ないし粘質で,斑紋の発達がみられる。本図幅内では羽村町羽,福生市福生・熊川,国立市谷保の多摩川沿いの氾濫平野,旧河道に分布するほか,飯野市前原の入間川沿いの谷底平野に出現する。水田として利用されている。

代表断面
地点番号 46
所在地 東京都西多摩郡羽村町羽
地形・地質 氾濫平野,沖積層
標高 130m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩・水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(Apg) 0~15cm 腐植含む,褐灰(10YR4/1),細小円礫含む,CL,ち密度15,半乾,層界平坦明瞭。
第2層(Bg) 15~26cm 褐灰(10YR4.5/1),小・中円礫含む,SCL,糸根状.膜状斑含む,弱度塊状構造,ち密度22,半乾,層界平坦判然。
第3層(Cg) 26+cm 褐灰(10YR4.5/1),小・中円礫すこぶる富む礫層,SCL,糸根状斑あり。

追手野木統(Okk)

この土壌は30~60cm以内より(砂)礫層の出現する壌~砂質の灰色低地土である。
本図幅内では飯能市の入間川左岸にごく少面積分布し水田として利用されている。この地帯の追子野木統では土性は壌質で,礫層直上部にマンガン結核の集積が顕著にみられる。

代表断面
地点番号 47
所在地 埼玉県飯能市阿須
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 85m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(Apg) 0~16cm 腐植をわずかに含む,黄灰(2.5Y4/1),L,雲状斑わずかにあり,ち密度14,半乾,層界平坦判然。
第2層(Bg1) 16~28cm 黄灰~暗灰黄(2.5Y4/1.5) 細小円礫わずかに含む,L,糸根状斑・膜状斑すこぶる富む・ち密度20,半乾,層界平坦明瞭。
第3層(Bg2) 28~41cm 暗灰黄(2.5Y4/2.5), 細小中円礫含む,礫,マンガン結核富む,ち密度22,半乾,層界平坦明瞭。
第4層(C) 41~60+cm 粗砂,細小中円礫よりなる砂礫層。

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1.2.5.グライ土

1.2.5.1.細粒グライ土壌

東浦統(Hgs)

この土壌は全層グライ層または作土直下よりグライ層が出現し,斑紋はもつが構造の発達はみられない粘質なグライ土である。
本図幅内では所沢市山口の柳瀬川沿いの谷底および入間市木蓮寺,寺竹の霞川沿いの谷底平野に小面積分布がみられるにすぎない。

代表断面
地点番号 48
所在地 埼玉県所沢市山口町谷
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 50m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 水田
断面形態
第1層(Apg) 0~20cm 腐植を含む,暗褐~褐色(7.5YR3.5/3),SiL,湿,層界平坦明瞭。
第2層(BG) 20~30cm 暗灰黄(2.5Y4/2),CL,糸根状班含む,ジピリジル反応顕著,湿,層界平坦判然。
第3層(G1) 30~46cm 暗灰黄(2.5Y4/2),CL,紋紋なし,ジピリジル反応顕著,湿,層界平坦判然。
第4層(G2) 46~60cm 暗灰黄(2.5Y4/2),CL,管状斑含む,ジピリジル反応顕著,湿,層界平坦明瞭。
第5層(G3) 60~100+cm 暗灰黄(2.5Y4/2),CL,斑紋なし,ジピリジル反応顕著,湿。

西山統(Nsh)

この土壌は全層グライ層または作土直下よりグライ層が出現し,斑紋,構造のないグライ土である。
本図幅内では狭山丘陵の東部および北部山麓郡の狭少な谷底面に分布し,水田として利用されている。

代表断面
地点番号 49
所在地 埼玉県所沢市天王前
地形・地質 谷底平野,沖積層
標高 50m 傾斜 平坦
母材および堆積様式 非固結堆積岩,水積
土地利用 旧水田
断面形態
第1層(Apg) 0~10cm 腐植を含む,暗褐(10YR3/3),CL,雲状斑含む,ジピリジル斑わずかにあり,湿,層界平坦明瞭。
第2層(G) 10~100+cm 腐植を含む,泥炭をわずかに含む,黄灰~暗灰黄(2.5Y4/1.5),CL,ジピリジル反応顕著,潤。

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2 土壌分類と土地利用

1.1.主として山地・丘陵地地域の土地利用(林野土壌)

本地域はおもに丘陵地からなる,東京近郊の里山で,古くから農用林として経営され,薪炭材あるいは落葉の供給源となって来た。しかし近年は近郊都市開発の影響で,丘陵地の開発がいちじるしく進み,住宅地,学校,ゴルフ場などの造成が行われている。従って現在は放置されたままの林が多く,林業的な取扱いのなされている処は極めて少ない。
一方,本図幅内では狭いが,図幅の西端から,西に隣接する五日市図幅内には,中・古生層の山地が広がり,「青梅林業」と呼ばれる有名林業地があり,杉を中心とした集約的な林業経営が行われている。林地の生産力は高く,9割以上が造林地になっているという。これら中・古生層山地は一般に生産力は高いものの,地形が急峻であり,土壌は流亡し易い。したがって林地の取扱いには十分な注意が必要であり,大面積の皆伐や全幹集材などの方式を避け,土壌の地力維持をはかる様考慮することが肝要である。
丘陵地内の森林に関しては,今後市街地の拡大に伴い,自然保護や公園緑地の面から,また土地保全の面からも問題になる事が予想される。この地域の取扱いにあたっては,大局的な地域計画の立場から検討を進める事が望ましい。
以下,各土壌統ごとに,土地利用について述べる。

岩屑性土壌

南郷統で一括されているこの土壌のうち,斜面上部急崖地のものは土壌が極めて浅く,極端な場合には基岩の露出が見られ,植物は岩にはりついていると思われる程である。現在も谷の侵蝕に伴う崩壌が漸進の状態にあるので,土地保全の面から治山対策を充分にすべきであろう。また斜面下部の崩積土のところは,スギの生長も良好で生産力はかなりあるが,皆伐をさけ,土砂の流出を防ぐなど,土地利用に注意をはらう必要がある。

風化・火山抛出物未熟土壌

堀之内統,この土壌は分布が狭山丘陵と,阿須山丘陵の東端に限られている。古くは周辺部落の農用林として経営されて来たが,現在は都心への交通の便も良いので,恰好な住宅地として開発に目覚ましいものがあり,狭山丘陵の東半分および阿須山丘陵内での分布地域はほとんど住宅地,遊園地などになっている。
西半分は,村山,山口の水源地があるため,池の周囲は東京都の水源林になっており,保安林として景観が保たれている。今後は更に水源林だけでなく,周辺部をも含め,自然休養林あるいは森林公園として計画的な取扱いを進めて行く必要があろう。

乾性褐色森林土壌

成木1統はほとんどすべてアカマツ・広葉樹などの天然林となっているが,一般に瘠せ尾根で幅狭く,土壌は浅く,人工造林に不適当である。保護樹帯として残し,一般施業から除くのが望ましい。
平井1統は分布面積は比較的狭いが,鈍頂で,概して土層深く,条件が許せばヒノキ,アカマツの造林が考えられるが,生育にはそれほど期待出来ない。
七国峠1統は丘陵地地域の凸形部に広く分布し,土層は堅密で,稀には深いものもあるが一般に浅く,生産力は低い。現在はアカマツ,広葉樹などの林となっているが,開発が著しく,住宅,学校,ゴルフ場などが造成されつつある現状からみて,土地保全あるいは自然保護もしくは防風効果などを考慮し,経済的な施業は二義的なものとして取扱うべきであろう。

褐色森林土壌

成木2統は土層が深く湿潤であり,通気,透水とも良好で生産力は高く,スギの植栽には最も適している。ただし斜面が急であり,土壌の流亡が起こり易いので,施業にあたっては土地保全,地力維持などの配慮が必要である。
平井2統も成木2統と同様に土層は深く湿潤で,スギ,ヒノキの造林に適する。

七国峠2統

スギ,ヒノキの造林地が稀に見られるが生育は中庸である。大部分が広葉樹林として取扱われている。凹形斜面の下部では土壌条件も比較的良好であるが,一般に土がしまっており,通気,透水性ともやや劣る。

本土壌ならびに七国峠1統の分布地域は現在いちばん開発の対象となっている所であり,局部的にはスギ,ヒノキの造林も考えられるが,一般には経済林としてより,むしろ土地保全に重点を置き取扱うべきである。

滝山統は加住丘陵の東半分に分布しており,従来はアカマツ林,あるいは広葉樹薪炭林として経営され,落葉採取も行われて来た。現在は八王子の市街に一番近く地形がゆるやかなため,住宅地,学校などの造成が最も烈しい地域である。今の速度で開発が進むと,森林がほとんど失われる恐れがある。しかも火山灰は水を含みやすく,豪雨の折には急斜面はくずれやすい。開発にあたってはこれらの事に充分たる考慮をはらう必要がある。

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1.2.主として台地・低地地域の土地利用(農地土壌) 

本図幅内の台地および低地地域の農業は,畑作を中心として行なわれ,水稲作は多摩川その他の河川沿いの狭少な沖積低地においてわずかに行なわれているにすぎない。
河川沿いの沖積低地に分布する土壌は褐色低地土と灰色低地土であるが,比較的土性が粗く,浅い位置から砂礫層の出現する排水良好ないし過良な土壌が主体をなしている。またこれらの土壌では作土のうすいものが多く生産力は比較的低い方である。例えば国立市の栢山統,善通寺統,藤代統などの褐色低地土,灰色低地土地帯における水稲収量は360~420kg/10aであるといわれている。この種の土壌では一般に水持ちがわるく,また肥料の保持力も低いものが多いので,収量の向上をはかるためには,土壌改良を行なうことが必要である。施肥改善の日野試験地の成績では珪酸石灰反当50貫施用区でかなりよい結果が得られている。このような本質的な改良を行なわない限り,肥料は分施が必要となり,肥培管理にかなりの労力を要する。このように生産性が低いこと,労力不足などと合わせて交通至便な条件下にあることもあって,近時急速に住宅地,学校,グランドその他の公共団地として転用される傾向にある。現在立川市の多摩川沿いの低地はほとんど改変され,福生市の栢山統として図示した地帯はこれまで水田として利用されてきたが,現在ではすべて耕作放棄されており近く埋め立てられて転用されることになっている。このような傾向は本図幅内低地のほぼ全域にわたって一般的にみられることで,丘陵地間の狭少な谷底面にある谷戸田などのような立地条件のわるいところを除いて,比較的早い時期に改変されることになろう。狭山丘陵内の柳瀬川沿いにみられるグライ土地帯でも耕作放棄されている水田が多い。
台地上の土壌は主として黒ボク土,一部褐色森林土からなり,主として普通畑として,また一部は茶園,桑園,果樹園などとして利用されている。主要畑作物は陸稲,麦類,そ菜ではかんしょ,ばれいしょ,ごぽう,にんじん,大根などが多く,これらについで白菜,ほうれんそう,きゃべつ,うどなどの栽培が行なわれている。栽培作物は土壌の種類との間には明らかな関係はみられないが,地域的には若干の特徴があるようである。ごぼうは入間,砂川などにおいてとくに力がいれられ,入間ごぼう,砂川ごぼうなどとして関西方面へ多量の出荷が行なわれてきた。うどは小平でかなりひろく作られている。また以上の一般作物のほかに主として狭山丘陵の北部を中心とし,瑞穂町,青梅市にかけて茶の栽培がひろく行なわれている。土壌が非常に軽しょうで風蝕をうけやすい黒ボク土であることと合わせ,この台地一帯では風蝕がかなり強いので茶は茶園以外にも普通畑の周囲に植えられ,防風垣としての役割も果している。台地も低地と同様宅地化,工業団地の造成などで耕地面積は漸減しつつあるが,茶の栽培面積はむしろ増加の傾向にある。入問市では普通作物と茶にさらに畜産,園芸をも加えた多角経営が行なわれている。
しかしながら立川をはじめ各市の市街地周辺地区は,都心からも近く交通が便利になってきたため急速に宅地化が進み,この地域の農業は,都市近郊農業というよりさらに進んだ都市農業とでもいうべき特殊な形態に転換するすう勢にある。農業公園の設立,植木,苗木,盆栽などの販売センター,馬場,作り売り,青田売り方式のレジャー農園その他種々の新構想が関係方面でだされており,今後はこのような線に沿って急速に形を変えていくものとみられる。

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3 資料

  • 1) 羽鳥謙三・寿円晋吾(1958):関東盆地西縁の第四紀地史 地質学雑誌752
  • 2) 福田 理・高野 貞(1951):東京都青梅町東北方阿須山丘陵の地質 地質学雑誌674
  • 3) 関東ローム研究グループ(1964):関東ローム
  • 4) 国土地理院(1970):1/25,000 八王子,土地条件図
  • 5) 東京都(1958):昭和33年度民有林適地適木土壌調査報告書
    〃 :昭和40年度 〃
  • 6) 東京都経済局(1963):東京都の地質
  • 7) 東京都農業試験場:施肥改善事業調査試験報告,多摩川水系流域地区(1957),中西部谷戸田地区
  • 8) 東京都農業試験場:地力保全基本調査成績書(1960,1961,1962,1963,1967,1968)
  • 9) 鴨下 寛・小島道也・山田 裕ほか:農耕地土壌型調査第3報東京都,農研報B-11(1961)
  • 10)埼玉県農業試験場:地力保全基本調査成績書(1952,1953,1965,1969)
  • 11)岡崎セツ子:立川段丘西端部のローム層の厚さの分布とその堆積状態,地理学評論,40,211~219(1967)

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4 Summary

Soil Survey

"Ome"

(Summary)

l:50,000 "Ome" sheet lies between E 139'15' to 139'30', and N 35"40' to ~35'50'. About one-fourth of this sheet is occupied by mountainous and hilly region, about one-tenth by lowland region, and the rest by upland region Tachikawa, the largest city in this sheet, is main city in western part of Tokyo prefecture. 
Soil survey of this area was made on the Soil Survey Standard Regulation, Fundamental Land Classificaticn, National Land Survey Law.
Mountainous and hilly region were surveyed in summer of 1971 by the members of Government Forest Experiment Station, Tokyo. Upland and lowland region were surveyed in autumn of 1971 by the members of National Institute of Agricultural Sciences. 
Tokyo. The soils of this area are primarily divided into 1. soils which are mainly found on mountainous and hilly region, 2. soils which are mainly found on upland region, 3. soils which are mainly found on lowland region. The soils in this sheet are classified in to soil series based on the profile ,charadferistics, parent materials, modes of sedimentation and so on, as stated in Soil Survey Standard Regulation.

1. Soils mainly found in mountainous and hilly region

This region is divided into three regions of Palaeozoic and Mesozoic mountainous region, Miocene mountainous region and Pliocene or Diluvial hilly region. Hilly region is divided into four hills of Asuyama, Kusabana, Kasumi and Sayama which are consisted of semi-consolidated sediments.
Natural vegetation of these regions belonging to the temperate zone are composed mainly of Cycrobaranopsis, Quercus, Pinus, Shiia, Castanea, Acer and Alnus spp. But, hilly region has been changed into residential area with vety high speed.
The morphological, phisical and chemical properties of these soils are greatly influcnced by these parent materials.

The soils of this region are classified into the fcllowing 3 groups, 4 series groups and 9 soil series.

 Soil group

 Series group

 Soil series

Lithosol

Lithosolic soils 

Nango series (Ngo)

Regosol

Weathered volcanogeneous regosols

Horinouchi series (Hnu)

Brown forest soil

Dry brown forest soils

Naruki I series (,Nrk 1)

Hirai 1 series (Hri l)

Nanakunitoge 1 series (Nkt 1,)

Brown forest soils 

Naruki 2 series (Nrk 2) 

Hirai 2 seris (Hri 2)

Nanakunitoge 2 series (Nkt 2)

Takiyama series (Tky)

(1) Lithosol

Nango series(Ngo) is distributed on the edge of, northern or eastern part of Kusabana and Kasumi hills. this series is a immature soil and is usually covered by naturaly generated broad leaved trees or bushes but at lower part of slope Cryptomeria stands are found rarely.

(2) Weathered volcanogeneous regosols

Horinouchi series (Hnu) is distributed on Sayama hill and easternpart of Asuyama hill. This series is consisted of Tama loam (old volcanic ash). The color of soil is reddish dark brown and texture is heavy clay. This is usually covered by Quercus. Castanea. Alnus, Acer and Pinus. But the vegetation of eastern part is drastically changed by home construction.

(3) Brown forost soil

(3.1) Dry brown forest soils

Dry brown forest soils are distributed, on ridges and convex parts of the moutains ahd hills. Usually the area of this soils is covered by natural pine forest or natural broad leaved iorest.
Naruki I series (Nrk 1) which is distributed on the mountain ridges and, convex parts of Palaeozoic and Mesozoic mountains, has thick Ao layer, well developed loose granular, granular and nutty structures and color of 10 YR.
This is usually covered by naaturally generated Pinus, Quercus, Shiia, and Cycrofaranopsis spp but growth of trees is poor
Hirai I series (Hri 1) which is distributed on the mountain ridges and convex parts of Miocen region, has thick Ao layer, well developed granular and nutty structure. This is covered naturally generated Pinus. Quercus and Cycrobaranopsis.
Nanakunitoge I series (Nkt 1) is distributed on convex parts of Asuyama, Kusabana and Kasumi hills. This series is a residual soils, which is derived from Pliocene gravel, sand and clay. Usually soil horizon is very thin and this soil is covered naturally generated Pinus, Quercus and other species but growth of trees is very poor.

(3.2) Brown forest soils

Brown forest soils are distributed on the concave slopes of mountainous and hilly region. These soils which have thick A and B horizon, are modrately and slightly wet brown forest soils.
Naruki 2 series (Nrk 2) which occupies the slopes of Palaeozoic mountains, has thick A horizon, crumb and blocky structures. This soil area is occupied plantation of Cryptomeria and Chamaecyparis. The growth of trees is very good.
Hirai 2 series (Hri 2) occupies concave slopes of Miocene mountain and the vegetation is converted into plantation of Cryptomeria and Chamaecyparis. The growth of trees is good. 
Nanakunitoge 2 series (Nkt 2) distributed on the concave slopes of hilly region, is derived from Pliocene gravel, sand and day or mixed material with ash. The soil horizon is thick but compact and has blocky structure. Usually this series is covered by naturally generated Quercus, Castanea, Alnus and other species but Cryptomeria stands are found rarely.
Takiyama series (Tky) which is consisted of Tachikawaa loam (new volcanic ash), occupies the eastern part of Kasumi hill. Usually this soil has a thin A horizon and color of 7.5YR. The tetxure of soil is silty or loamy and the development of soil structure is slight.
This series is covered by naturally generated Pinus, Quercus, Castanea and Alnus spp. But this area hras changed into residential area with high speed .

お問い合わせ

企画財政部 土地水政策課 総務・国土調査担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 本庁舎2階

ファックス:048-830-4725

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