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掲載日:2023年12月12日

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土地分類調査報告書(野田)

目次

序文

回復期に入ったといわれる日本経済ではありますが、長引く石油不安や、物価高騰、国・地方財政の硬直化等々、現下の社会経済環境は極めてきびしい状況であります。こうした中で、地理的に東京都に隣接している本県は、社会的にも大きな影響を受けており、なかでも人口の急激な増加に伴う住宅地等の開発が、ともすれば秩序ある都市計画を困難なものにし、住みよい環境づくりや、有効な土地利用に混乱をもたらしております。こうした事態に対処するためには、自然的立地条件を前提とした土地の有効利用を図る必要があります。
このたび、関係各位のご協力のもとに「野田」(埼玉県内)図幅の土地分類基本調査が完成いたしました。しかし、本図幅は、埼玉・千葉・茨城の三県にまたがる関係上、各県が各々の県域を調査実施し、三県が協力して地図を一図幅にまとめ、国土庁国土調査課の指導のもとに印刷したものであります。
この資料が、県土の自然環境の保全と、秩序ある発展のために十分役立ち、有意義に活用されることを希望いたします。

昭和55年1月

埼玉県企画財政部長関根秋夫

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まえがき

  1. 本調査の事業主体は埼玉県で、国土庁土地局国土調査課の指導のもとに、国土調査費補助金をもって実施した
  2. 本調査の成果は、国土調査法施行令第2条第1項第4号の規定による土地分類基本調査図及び土地分類基本調査簿である。
  3. 調査の実施、成果の作成機関及び担当者は次のとおりである。

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総論

1位置及び行政区画並びに面積

位置

「野田」図幅は関東平野の内陸部、埼玉県のほぼ東に位置し、茨城県、埼玉県、千葉県の各一部を包合する。経緯度は、東経139゜-45′~140゜-00′、北緯35゜-50′~36゜-00′の範囲であって、図幅内の県内面積は194.51平方キロメートルである。

行政区画

「野田」図幅内の県内行政区画は、春日部市、岩槻市、越谷市、川口市、草加市、八潮市、三郷市、北葛飾郡庄和町、松伏町及び吉川町よりなる7市3町である。

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2人口

本県の人口は、昭和54年2月1日の推計値5,240,163人となり、昭和50年10月1日国勢調査4,821,349人以降3年4ヶ月で418,814人増加した。このような人口増加の原因について見ると、本件の地理的・社会経済的要因を背景として、住宅団地の進出、工業団地の造成等による社会人口の増加が主導となっている。

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3地域の特性

1自然的条件

(1)地勢

「野田」図幅内の県内分は西部の194.51平方キロメートルの地域で、東は南流する江戸川によって千葉県と境を接している。江戸川沿い東北部に一部下総台地が存在するほかは、中川低地に属する水田地帯で、利根川、江戸川を水源とする用水に恵まれ、排水も綾瀬川、元荒川、古利根川、庄内古川(中川)と数多くあり、県東部の穀倉地帯を形成している。

(2)気象

本県の気象は、いわゆる表日本型で、冬は乾燥して晴天が多く、日中北西季節風が強く吹き、夜から朝にかけての冷え込みが厳しい。夏は南東の季節風は弱く、日中の最高気温はかなり高くむし暑く、夕方雷雨が多い。
平野部では9月に最も雨が多く(山地では雷雨のため8月に最も多い。)年降雨量は1,400mmくらいである。気温は平野部で12℃(年平均)くらいで山地では海抜100mにつき0.5℃ずつ低くなっている。

(3)気象災害

本県の気象災害は夏を中心に発生し、10月から3月までは非常に少なくなっている。発生する度数の最も多いのは雷雨によるもので、全被害の半数に近い。そのうち半数くらいは降雹を伴っての被害である。しかし災害高からいえば台風による風水害が全被害の80%くらいをしめることになる。本県では凍災害も重大な災害となっている。

2経済社会条件

(1)道路

図幅内県内分は、ほぼ中央部より西側の区域であるが、都心から東北地方を結ぶ国道は4号と4号バイパスがほぼ並び、常磐高速自動車道(予定)が東北方向に走っている。主要県道は葛飾吉川松伏線が南北に、越谷野田線が東西に走っている。

(2)鉄道

図幅内県内分については国鉄武蔵野線が南部を東西方向に、私鉄東武伊勢崎線が南北に、野田線が北部を東西に走っている。

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3就業人口

県内の産業別人口の比率は県南地域の住宅地化、工場地化の影響を強く受けて農業従事者が減少したことが原因となり、第1次産業人口率が低下して第2次及び第3次産業の伸展が著しい。
この地域においても徐々にであるが、同様の傾向を示している。市町村の産業別人口の構成は次表のとおりである。

4土地利用

本県における土地利用の状況は、人口増加にともなう宅地需要と経済社会的要因による工場用地等の必要から農地の転用をうながしており、かい廃農地の面積は毎年約1,500haにのぼっており、その用途別指向をみると昭和35年には全県として住宅用地と工場用地が相半ばして約80%を占めていたが、住宅用地が漸増し昭和47年以降は5対1の比率となり、工場用地の大幅な落ち込みをみせている。
地域的にみると市部では大規模工場の進出や住宅団地の建設等が顕著となっており、かい廃面積が大きく、町村部では交通至便の一部を除いては、分家の宅地化あるいは農業用施設が主となった自律的なものが多い。また県南部から外延的に拡大する都市化の傾向を受けた地価の高騰が、地域の土地利用体系に影響を及ぼしている。その状況は次表のとおりである。

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4主要産業の動向

1農業

都心から20~35km圏に位置する本地域の農業は農用地の80%を水田が占めているため、稲作に依存する現状である。このため現在も稲作への志向が強く、これと結びついた施設園芸(きゅうり、なす)、白菜、ねぎや養鶏、畜産の複合経営が行われ、団地化、組織化が推進されている。特に川口市付近を中心とする植木は全国的に有名である。
しかし、一部の地域では都市化による影響を受けて、農地のかい廃、農業労働力の流出、営農意欲の低下等農業の発展に好ましくない現象も生じ、用水の汚濁や地盤沈下も非常な悪影響を及ぼしつつある現状である。

2商業

各市町村別の商圏は行政単位別に、あるいは鉄道駅別に形成されているが、伝統的なローカル色の強い商圏と、東京に近いために東京への流出も多い。

3工業

川口市においては古くから鋳物産業とこれに付随する諸工業が盛んであり、また春日部市の木製品、装備品の製造、ワラ工業、岩槻市の人形製造とともに全国的に著名である。このほか草加工業団地(106ha)、草加八潮工業団体(88ha)がそれぞれ昭和40年及び43年より操業を開始し、県東部における工業の中核を形成している。

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5開発の現状と方向

本図幅(県内分)は東京より20~35kmの範囲にあり、都心からの交通網も良く発達していることにより、首都に集中する人口・産業の影響は大きく、従来自然環境に恵まれた主として農業地域であった本地域は、農業人口の減少と農地の転用を招き、土地の分散的虫食い状態による混乱した都市化が展開されている。このため今後は、さらに伸びることが予想される都市化の現象をふまえ、自然環境の保全と地域の自然的・経済的・文化的条件との調和に配意しつつ、生活環境と農業・商工業との均衡ある発展を図ることを目標に、計画的に土地の利用ができるようにしたい。これらの目的を達成するため、次の施策が昭和55~56年度に市町村土地利用計画として樹立されるので、今後は地域の調和のとれた開発が期待されている。

  1. 都市的土地利用が主体となった地域については、都市機能の整備、住環境の保全整備をはかる。
  2. 優良農用団地は土地生産力も高く、営農意欲も旺盛な地域であることにより、ほ場条件の整備により首都圏農業として、農用地の高度利用とあわせて緑地機能化をはかる。
  3. 住工混在地区は適地に工場用地を指定整備し、これらの地域への誘導を図る。

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各論

1地形分類図

「野田」図幅地域は関東平野の中央部に位置し、西に北足立台地、東に庄和台地が発達する間に、平坦な中川低地が広く開けている。この地域の地形分類図は現地調査航空写真、経年的な地形図問の比較研究などからまとめられた。本地域の南西部に発達する北足立台地鳩ケ谷支台では南西から北東へ18m前後から10mへと地形面が漸次下がっている。中川低地に臨む台地縁辺部はI0mから急速に5mへと下がる急崖が発達している。一方、本地域の北東部には野田台地の西方延長部の庄和台地が位置しており、この台地の高度面は東から西へ14.3m~5.6mへと漸次低くなり、緩い斜面をもって中川低地に接している。
鳩ケ谷支台の台地は北足立台地片柳支台(「大宮」図幅)から分化したもので、4m以上の厚いローム、下位に砂層・粘土層をもち、台地面上は東西性および南北性の谷地田により開析されて、凹凸がみられる。庄和台地は4m以上のローム、下位に砂層・粘土層が発達し、層序構成の上から両台地は対比される。
低地は北西部で高く標6.2m、南東の三郷市で低く2mとなる。また中川水系の氾濫原である。低地の微地形は目然堤防、被覆砂丘などにみる高まりで後背湿地および湿地面より1~5mの比高差をもって発達している。これらの地形特徴は西から綾瀬川・元荒川・古利根川(下流では中川)・荘内古川・江戸川などの諸河川およびそれらの支流が現在まで何回となく流向を変え、蛇行し、広大な氾濫原の背後に自然堤防や砂丘を、溢流した背後には残存湿地帯を広く形成した。とりわけ、本地域の低地は綾瀬川・元荒川・古利根川により主として支配された。それは河川が北西→南東に幾回となく蛇行した際に、蛇行は春日部市銚子口と越谷市南荻島を結ぶ線からその南、吉川町吉川と草加市弁天町を結ぶ線区間で極大に達し、0.5Kmの波長に対し、その3倍の最大振巾を形成するまでに発達した。従って、自然堤防は曲線的に発達し、越谷市袋山や久伊豆神社近傍でその形態を見ることができる。
本図幅は地形特性の上から、下記の地形区分に分類した。台地が低地に臨む川口市安行藤八付近では人工的に改修され、未分化のようにみえる所もある。ここは、東南性の谷地田の出口にあたり、台地にアバットした砂礫堆積物が発達している所である。この堆積物は砂礫堆(洲)と考えることもできるが、ここでは綾瀬川氾濫時による台地に付着した自然堤防と見なした。低地は河川の開析程度と氾濫原分布域を主として分類されている。ここでは下記の分類が認められる。

1台地

1-1北足立台地鳩ケ谷支台(Ia)

隣「大宮」図幅に主部があり、その東方延長部が本図幅内に位置する。この台地は東方の綾瀬川に対し、直線的な崖を形成し、これに直交する谷地田は川口市戸塚および安行藤八にあるが、その他は目立った開析小谷はない。しかし、台地内では安行慈林・安行吉岡において南北性の谷地田がそれぞれ発達し、それらは隣「東京西北部」図幅の鳩ケ谷市本町方面に発達している。
平坦な台地面には東京方面に大口の出荷を求める大規模な植木会社が林立する他市街地・寺社が分布する。

1-2庄和台地(Ib)

嶋ケ谷支台より幾分低いが平坦な安定した高度面をもつ。台地上は北西と南西側が荘内古川により解析されている関係上、数条の開析谷は荘内古川に直交する方向に発達し、そこに谷地田を形成している。最大の谷地田は庄和町風早より南方の吉岡方面の南北方向に1.4km程発達している。本台地の東方は江戸川の人工的改修工事が行われた所であるが、そのために、野田台地の主部から分割されている。庄和台地上の松伏町築比地にある東方への開析小谷および千葉県野田市清水公園にある西部の開析谷から判断すれば、現江戸川流域は古い時代からかなり開析が進んだ状態にあったことが推察される。築比地の寺の境内裏には貝塚と縄紋土器が遺跡としてある他、本台地上には東武野田線の南桜井駅周辺に商店街・新興住宅が発展している。

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2低地

2-1中川低地(2a)

本低地は北北西より南南東方面に開け、北足立台地の東縁と野田台地の西縁に境されて広がる。両台地間にはさまれた中川低地の最大巾は14kmである。そこには西から綾瀬川・元荒川・古利根川・荘内古川の旧流路跡とそれをふちどる曲線的な自然堤防が良く発達し、後背湿地が広い。中川低地の西より1月3日の付近に陸羽街道(国道4号線)および東武鉄道が走り、市街地が広がる。また、広い後背湿地は水田に利用されている。しかし、都市化が進んできた今日では市街化区域が拡大し、市街地に発展していきつつある。この傾向は八潮市では八潮団地・三郷市ではみさと団地が代表的である。

3砂丘

3-1春日部砂丘(3a)

中川低地を形成した中心的な古利根川は上流より多量の中~粗粒からなる石英砂を運搬し、蛇行の著しい箇所にそれを堆積した。この砂丘は隣「水海道」図幅から本図幅までの南北約2.3kmと続くもので、古利根川に沿って分布する砂丘の南限にあたる。砂丘上には松林が繁り、被覆砂丘に属する。森川(1970)は春日部砂丘以南にも石英砂を主とした砂質堆積物を砂丘とみなし、松伏町赤岩まで確認した。今回の私達の調査ではこれらの堆積物は春日部砂丘程明瞭な砂丘ではなく、自然堤防を形成する堆積物と見なした。

(埼玉大学松丸国照)

文献

  • 石居企救男他7名(1973)地力保全基本調査「埼玉県北埼玉地域、地力保全調査研究報告no.p-1-4,2maps.
  • 松丸国照(1975)埼玉県平野部の地質(その1)-とくに県東部の地下地質の概要-、埼玉大学紀要教育学部(数学・自然科学)vo1.23,p.61-69
  • 森川六郎(1970)埼玉県東部の地質と地下水,文部省特定研究(水文学)107pp.1map.
  • 埼玉県(1974)土地分類基本調査「熊谷」(国土調査)52pp.,7maps.
  • 埼玉県(1975)土地分類基本調査「鴻巣」(国土調査)51pp.,7maps.
  • 埼玉県(1978)土地分類基本調査「高崎・深谷」(国土調査)53pp.,7maps.

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2表層地質図

関東平野は第三紀鮮新世・第四紀洪積世以降(両時期の境界は古く算定され、180~200万年になった)から地質時代をとおして、撓曲性の造盆地運動の影響を受けている。そのため、本地域でも顕著な厚さの第四紀層が堆積している。造盆地運動の中心地は研究者間で異なり、その中心地を栗橋あるいは春日部各周辺域にしている。本調査は今日まで数100本のポーリング資料および台地の洪積層と低地の沖積層の現地踏査、既存の資料、文献などに基づいて行われた。地下地質は浅井戸から洪積-沖積層問の境界を「大宮」・「鴻巣」各図幅で行われた基準で適用し、N値10以上の地層に求めることにした。この地層はよくしまった半固結状の礫層になる場合が多い。N値10未満の地層は軟弱であり、しかも暗色系腐植泥土の存在および有楽町海進時の貝化石の産状があるため、沖積層とした。洪積世-沖積世境界は微化石の特徴、その他の産出化石および放射性同位元素による時代などにより、環境変遷と時代をより明確にする調査研究から求められるべきである。
本調査地域に分布する地層およびポーリング・コア柱状図などから地質層序は第1表のとおりである。また、本図幅地域と他地域との対比はN値、電気検層図、貝化石層準、浮石-火山灰物質含有層準、ストレーナの位置などから求めた。これらの資料に基づいて、岩相変化の著しい第四紀層間の対比を行い、岩相の大まかな堆積層サイクル・特牲を検討し、洪積層の層序を下位へ東京層、埼玉層上部・中部・下都各部層、古利根層とした。

1未固結堆積物

1-1泥質堆積物

本堆積物は後背湿地においては灰~灰褐色を呈する泥質堆積物であり、表層腐植層はごく表層の10cm層厚に限られる。1m内外には灰色、酸化沈積物をもつ泥質層であり、江戸川沿いの吉川町平方新田では酸化沈積物帯に砂質泥が発達している。湿地においては、泥質堆積物は灰色を呈し、ヨシ・マコモを母材とする糸根状および模状物を主とする表層腐植層を最大26cm層厚程度をもち、その下位に泥炭~黒泥層が数m発達している。
開析谷地田では庄和台地の西縁部にあって、表層全層はヨシ・マコモを母材とした移腐植層となり、黒色を呈し、泥炭層が厚い。また、台地上の谷地田から供給されたローム質層をときどき挾有している。台地上の谷地田においては黒色泥炭層がよく発達し、ロームをよくとりこむ築比地では灰褐~黒色を呈し、泥炭層をもたず、かわりに腐植層が全体として発達している。

1-2砂泥堆積物

本堆積物は現諸河川の河原および旧河川の流路跡に発達し、灰~灰褐色を呈し、表層に腐植層、その下位に酸化沈積物をもつ砂混じり泥質堆積物からなる。旧流路跡地でとりわけ表層腐植層がよく発達する所は越谷市根郷周辺域に見られる。

1-3砂質堆積物

本堆積物は自然堤防地帯と被覆砂丘において顕著に発達する。前者は主として、灰褐色を呈し、ときに洪水時にオーバーフローした際に導入された貧弱な腐植層を表層にいただき、その下位に酸化沈澱物をもつ砂質層から構成されている。元荒川の蛇行で顕著な越谷市花田では灰褐色を呈し、壌質および粘質を示す土性をもっている。庄内古川および古利根川沿いの吉川町南広島および吉川町吉川においては黄褐色を呈し、強粘質の土性をもつ酸化沈澱物を1m以上も含有する砂質層が発達している。一方、後者は石英砂を豊富に、火山砕屑物質をもつ砂質堆積物であり、黄褐~淡褐色を呈している。

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2半固結-固結堆積物

2-1粘土質層

粘土質層は関東ローム(武蔵野ローム)下の下位に発達するうぐいす色の粘土層、その下位に斜交層理を示し、火山砕屑物質をともなう青灰色細~粗粒砂層が数cm、10cm層厚程度あり、その下位に再び粘土層が発達する。川口市安行周辺域および築比地周辺域でもローム下に粘土質層が発達している。ローム直下の粘土層は町田(1973)によれば、川口粘土層と呼び、それを武蔵野台地下の板橋粘土層に対比される。しかし、松丸(1975)は上記の川口粘土層下の岩質に対しては大宮市方面に向うと砂層に移化し、また、川口粘土層も欠けているため、ローム下の地層はいわゆる東京層の砂層と区別できないとした。従って、うぐいす粘土層以下の砂層は東京層に相当する。これは鳩ケ谷支台の安行および庄和台地、築比地にわずかに露出している。

2-2東京層

関東ローム下の砕屑物質からなる洪積統の岩相であり、本層の最上位層準の砂層は上述のローム台地崖下に露出する。東京層と埼玉層との境界は春日部市宮本町付近で-57mと推定される(松丸,1975)。新堀他(1970)によれば、本層の基底は下末吉海進のさいの基底面ということであり、G4礫層を鍵層とみなしている。
このG4層は春日部市付近では-70mにおかれている。森川(1970)によれば、春日部市上水道4号井付近で東京層の基底を-55mにおいた。本層の基底は各研究者間で異なっている。これはボーリング柱状図問の対比が大きな誤差を引きおこしている。
東京層は森川(1970.1972)によれば、下位へ山手砂礫層・徳丸層・東京礫層(新堀他,1970,のG4層相当層)の各部層からなる。各部層の岩相は砂層を中心とした砂礫層(山手砂礫層)下末吉海進の際の海棲貝化石・サンドパイプの遺物のある粘土および砂層(徳丸層)礫および砂の混じった砂礫層(東京礫層)からなる。

2-3埼玉層

本層は3枚の基底礫岩の発達の上から上・中・下部各部層に分類される(森川,1970.1972;松丸,1972.1975).本調査地域でみると、春日部市幸松小学校下では上部層基底は-112m(新堀他,1970,のG7層に相当する),中部層の基底は-170m(木野・1965,の久喜Gs-1号井に対比すれば第1帯水層基底の淡水・海水各層境界付近の砂層に相当する)。越谷市前谷では、上部層基底は-96m、中部層基底は-150m、下部層基底は-304.5mであり、その下位は古利根層のシルト・砂層の互層が発達する。越谷市上組では上部層の基底は東武線蒲生駅付近下において、上部層基底は一95m、中部層の基底は-160mになっている。従って、埼玉層は全体として、春日部市から草加市方面に向うにつれて、層厚はしだいに薄くなる傾向がみられる。
越谷市宮田~二子曾根付近では埼玉層中部層にあたる-120~-145m間に浮石質砂層が、また、埼玉層下部層にあたる-330~-350m間には浮石質砂層あるいは浮石・軽石層が、-400~410m間に軽石まじり粘土層がそれぞれ発達している。
前者は下末吉期、後2者は多摩期の火山活動期の産物に推定される。従って、本図幅地域の層序は、所沢・新座試錐(森他,1974)と第1表のような対比が考えられる。

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3火山性岩石

3-1関東ローム

関東ロームは俗に赤土と呼ばれる火山灰層であり、北足立台地鳩ケ谷支台(大宮台地とも呼ばれる)および庄和台地上に発達する。本層は前老の台地上では川口市安行から安行領家問の露頭において、層厚4~4.5mをもち、下位に青灰色を基調とし、ときに、褐色・黄掲色・灰白色を呈する粘土層(層厚3m)を被覆する。後者の台地上でも、関東ロームは層厚4mで、同色同質粘士層上に重なっている。
洪積世時代に関東地方では多摩・下末吉・武蔵野・立川の4ローム層が分布したが、本調査地域では東京軽石層の鍵層を下部に挾有する武蔵野・姶良火山ガラスをもつ立川の2ローム層が発達している。武蔵野ローム下の粘土層には中位層準に下末吉ローム層中唯一の黒雲母を含む軽石層(御岳火山第一軽石層、層厚5~6cm)が存在している。そのため、この粘土層は下末吉期の水中堆積物とみなされるものである。このことは、当時、本域が水域であったことを示している。また、御岳第一軽石層は安行の露頭では黄白~白色を呈し、粘土化が進んでいる。この下末吉期の粘土層は川口粘土層と呼ばれたり、武蔵野台地の板橋粘土に対比されることから、板橋粘土層とも呼ばれる。本粘土層下には2m程度の砂層が発達し、東京層(埼玉県、1973,p・18-19)の最上位層準に相当する。
川口市安行付近の鳩ケ谷支台の崖で観察すると、武蔵野・立川の2ローム層は下位より上位へ色調が褐色→黄褐色→淡黄褐色と漸移的に変わり、淡黄褐色ローム層中には赤禍色のスコリアが混在している。また、重鉱物組成の上でも上位へ、かんらん石の比率が減少し、逆に、しそ輝石・普通輝石の増加が漸移的に認められる。
従って、上記2ローム層の岩相上の識別が難しい。町田(1973)は両層を区別するのに東京軽石層を使用するか、立川ロームの上限下1m付近に認められる層厚50cmの黒色帯を使用して便宜的に分けることの可能性を述べている。

(埼玉大学松丸国照)

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4地質に関連した事項

4-1越谷瀑布線

中川低地下のボーリング・コアの対比を詳細に行うと、帯水層(ストレーナの入っている地層)が落差を持って落ちこむ線が推定される。地下水面の勾配が大きく、そこに瀑布状あるいは急流状をなす線が地下水瀑布線(貝塚、1964)と呼ばれる。この線は春日部市さいかつ橋と越谷市天獄寺を結ぶNNW-SSE方向の直線である。この線を越谷瀑布線(仮称)と呼ぶ。これに直交する草加市中根浄水場-吉川町中曾根間では、浄水場の地下―106mの砂礫層が越谷瀑布線を越えると、中曾根~三輪野江の地下-184mに存在する砂礫層へと落ちこんでいく。
この瀑布線は浦和水脈(蔵田、1962)が古利根地下水脈に流入しているものと見ることができる。従来、浦和水脈は荒川低地下を川口・赤羽方面に流下するものと考えられていたが、むしろ、中川低地下の古利根地下水脈下に流入している公算が大であろう。また、この瀑布線は森川(1967,1970)の古利根構造線の北方域に位置するものであるかも知れないが、これに関しては今後の調査研究に待ちたい。

文献

  • 石居企救男他7名(1973)地力保全基本調査「埼玉県北埼玉地域、地力保全調査研究報告、no.14,p.1-4,2maps
  • 関東ローム研究グループ(1964)関東ローム、築地書館、378pp.2maps
  • 木野義人(1965)埼玉県久喜付近の地下地質と深層地下水-久喜Gs-1芳井試掘に関連して-地調月報、vol.16,no.5,p.1-15
  • 松丸国照(1975)埼玉県平野部の地質(その1)-とくに県東部の地下地質の概要-、埼玉大学紀要教育学部(数学・自然科学)、vol.23,p.61-69.
  • 町田瑞男(1973)武蔵野台地北部及びその周辺域における火山灰層位学的研究、地質雑誌、vol.79,p.167-180
  • 森和雄他4名(1974)埼玉県新座市・所沢市の試錐とそれに関連する地表および地下地質・地調月報、vol.25,p.1-17.
  • 森川六郎(1970)埼玉県東部の地質と地下水、文部省特定研究(水文学)107pp.,1map.
  • 埼玉県(1974)土地分類基本調査「熊谷」(国土調査).52pp.,7maps.
  • 埼玉県(1975)土地分類基本調査「鴻巣」(国土調査).51pp.,7maps.
  • 埼玉県(1978)土地分類基本調査「高崎・深谷」(国土調査).53pp.,7maps.
  • 新堀友行他2名(1970)関東平野の地下地質第2報、資源研彙報、no.73,p.30-36.

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3土壌図

1土壌の概要

本図幅、埼玉県部分の台地は、図幅左下端に位置する北足立台地嶋ヶ谷支台と、江戸川に接して位置する庄和台地である。両台地には、いずれも火山灰母材の土壌が分布する。黒ボク土壌の面積が最も広いが、厚層黒ボク土壌もあり、谷地田や低地との境界には、多湿黒ボク土壌や、黒ボクグライ土壌などが分布する。耕地として、黒ボク壌、厚層黒ボク土壌は畑、樹園地、多湿黒ボク土壌は畑、水田の両方に、また黒ボクグライ土壌は水田となっている。
低地は図幅埼玉県部分の広大な面積を占める中川低地であるが、江戸川、中川、古利根川、元荒川などの主要河川が走り、多数の中小河川が分岐している。流路は変遷をうけ、低地の土壌の分布も複雑である。各河川に沿ってひろがる自然堤防には、褐色低地土壌、灰色低地土壌があり、畑、宅地利用が主となっている。氾濫原では泥炭、黒泥土壌の分布が広大で、次いでグライ土壌である。氾濫原における灰色低地土壌の分布面積は小さい。これらの土壌はおおむね水田である。林地土壌は、北足立台地、庄和台地上の黒ボク土壌と、図幅左上端の春日部砂丘上の乾性褐色森林土壌であり、いずれも面積的には広くない。図幅埼玉県部分の林地土壌の生産力は、黒ボク土壌で高く、次いで灰色低地土壌、乾性褐色森林土壌の順である。尚、市街化地等の未調査地及び人工造成などにより耕地利用の不可能な部分については未区分地(I)として表示した。
本図幅、埼玉県部分の土壌は13土壌統群24土壌統に区分された。

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2土壌細説

2-1台地の土壌

(1)厚層黒ボク土壌

大竹統(ot)庄和台地に分布する。風積性火山灰土壌で、全層の腐植含量は7%前後である。台地上の凹地に周辺土壌の表土が移動堆積したものと考えられる。分布面積は大きくない。

(2)厚層多腐植質黒ボク土壌

太田ケ谷統(og)北足立台地、鳩ケ谷支台に狭小面積分布する。生成条件は大竹統と類似するが、全層の腐植含量高く、黒に近い褐色の土色を有する点で区別される。

(3)黒ボク土壌

大山統(oy)江戸川に沿った庄和台地上に分布する、風積性火山灰を母材とする林地土壌である。Ao層のうち3~5cmの土層の下に、2~3cmのF層が幾分発達している。A1層は黒乃至暗褐色で腐植に富むが、厚さは10cm以下であまり厚くない。A2層は暗褐色で厚さ50cm程度であり、堅密度はかたり緻密である。下層のB層は、褐乃至にぶい黄褐色で、粘質であり、A2層との境界は明瞭である。土層全般に黄褐系である。林相は、天然性のアカマヅとコナラ、エゴノキ等を主とする落葉樹との混交林が多い。また、これらの森林は人家の屋敷林や、神社や寺院の境内林となっている。境内林には、スギ、ヒノキの人工造林地も少なくない。林地としての生産力は中程度である。

桶川統(0w)

北足立台地鳩ケ谷支台に分布する最も典型的な武蔵野の平地林の土壌である。Ao層では、L層は比較的厚いが、F層は1~2mであまり厚くない。A1層の下に暗褐色の腐植に富んだA2層があり、厚さ30~6Ocmで、褐色のB層に、急変する。
この統は、台地上の位置、とくに凹地、斜面下部等では腐植の滲透度が高く、A層の厚さも70cmをこえ、厚層黒ボク土壌の美園統(Ms)に該当するものもあるが、面積的にも狭少で点在しているので、この土壌統に含めた。

冑山統(Kb)

北足立台地鳩ケ谷支台、庄和台地に、広く分布する。風積性火山灰土壌で、表土の腐植含量7~8%で壌質であり、黒褐色を呈する。この腐植層は50cm前後まであり、次層は腐植含量3%ぐらいの褐色層となり、壌質である。この層は漸移層とみられるが、その層厚は場所により区々であり、時にこの層が数cmに満たない場合、あるいは50cm以上に及ぶこともある。下層は黄褐色のいわゆる心土となり、一般に粘質である。畑地として利用されている。生産力は中庸である。

(4)多湿黒ボク土壌

西大久保統(Nio)鳩ケ谷支台が、低地に接する部分に、やや大きな面積分布する。また同台地の谷地田にも存在する。水積による二次堆積火山灰土壌と推定される。土色は全層暗褐乃至黒色であり、腐植含量は10%を超える。低湿地であり、断面に斑鉄が認められる。水田利用もあるが、畑利用される場合もある。その場合は、サトイモ、ショウガ等の好湿作物の栽培、或いは、花木の育苗がなされることが多い。

(5)黒ボクグライ土壌

三ツ木統(Mtu)鳩ケ谷支台庄和台地の谷地田の土壌であるが、庄和台地の低地との境界部には比較的大きな分布がみられる。主として、火山灰の二次堆積物を母材とし、表土は壌質である。地下水位は高く、下層はグライ化している。周年湛水する場所もある。下層は泥炭の出現をみる。水田であるが、生産力は劣る。

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2-2低地の土壌

(1)褐色低地土壌

榎戸統(En)古利根川沿辺の自然堤防上に点在する林地土壌で、コナラ、クヌギ、シデ類等の広葉樹林又は、マダケ、モウソウダケ等との竹広混交林地となっている。Ao層はL層・F層とも薄く、腐植に富んだ黒褐色のA1層はlOcm程度で、灰褐色乃至にぶい黄褐色のA2層に急変する。A2層の厚さは20~40cmで褐~灰褐色のB層に移行する。全層、砂~砂壌質である。林地としての生産力は、地下水の高低に支配されるが、一般的にはあまり高くない。

新戒統(Si)主として、古利根川沿辺の自然堤防に分布する。層序の変化に乏しく、全層腐植含量3%以下であり、壌質である。土色はF層で若干明るくなるが、褐色である。物理性は良好であり、生産力は高い。

(2)細粒灰色低地土壌

平塚統(Htu)江戸川、元荒川付近の後背湿地、河原などにみられる。表土、次層とも腐植を欠く、強粘質な土壌からなり、土色は黄灰で明るく、斑鉄に富む。一般に、柱状構造が発達し、地下水位は低く、典型的な乾田に属する。麦等の裏作は可能であり、生産力は高い。

下樋遣川統(Shy)各河川沿辺或いは氾濫原に点在する自然堤防に分布する。表土、次層いずれも強粘であり、平塚統より幾分土色は褐味を帯び、構造の発達は明瞭でない。畑または陸田として利用されている。

(3)灰色低地土壌

沢木統(Swk)吉川町、三郷市の後背湿地、湿地に小面積ずつ存在する。表土は壌質で灰色であるが、次層では若干粘質となり、褐味を増す。全層腐植を欠くが斑鉄を含み、マンガン結核の認められることがある。水田として利用されている。

清水統(S)主として、吉利根川沿辺の自然堤防に分府する土壊である。表土は壌質~粘質にわたるが、壌質であることが多い。腐植を欠く、(5%以下)である。下層では粘質な傾向をもつが、強粘の場合は少ない。全層に酸化沈積物(斑鉄、マンガン斑)を含む。構造はあまり発達していない。畑または陸田として利用されるが、生産力は比較的高い。

(4)細粒グライ土壌

伊佐沼統(Isa)主に、江戸川沿いの湿地に散在する。全層粘~強粘質の土壌で、地下水位は高く、湧水面は50cm以内にあり、グライ化している。グライ層には斑鉄等酸化沈積物は全くないか、または僅かに黄褐色管状斑が認められることもある。強湿田となっている。

山田統(Ya)低地の各地の後背湿地に比較的大面積分布する。全層粘~強粘な土壌からなり、50cm以下でグライ化している。伊佐沼統より地下水位の低い所での土壊である。水田利用されているが、裏作は可能であり、生産力は比較的高い。

(5)グライ土壌

片柳統(Ky)元荒川、中川に接する後背湿地にみられる土壌である。表土は壌質であり、下層は強粘質となる場合もある。50cm前後から下層にグライ層がある。水田として利用され、山田統と同様裏作は可能である。

(6)粗粒グライ土壌

上笹塚統(Ksz)江戸川に接する後背湿地に小面積存在する。表土は壌質~粘質であるが、下層は砂質で、50cm以下でグライ化している土壌である。

赤沼統(Ak)中川沿いの湿地旧河道に、局部的に分布している。層序的には上笹塚統と類似し、グライ層の位置が上がり、50cm以内からグライ層となったものである。強湿田である。

(7)低位泥炭土壌

鯨井統(Ku)低地の各地に比較的大きな面積散在する。一般に全層強粘な土壌であるが、次層では壌質のこともある。下層50cm以下で泥炭層が出現し、グライ化している。裏作可能地である。

下八ツ林統(Syb)中川、綾瀬川の湿地に広大な面積を占める。鯨井統より泥炭層の出現位置は高く50cm以内から泥炭層となる。地下水位は高く、泥炭層はグライ化しているとみられる。強湿田である。

小沼統(Kon)鳩ケ谷支台に接する後背湿地に分布する。表土は火山灰土壌の影響を受け腐植含量は5~lO%の黒褐色壌質土壌である。下層50cm以内から泥炭層となり、グライ化している。水田となっているが、生産力は低い。

(8)黒泥土壌

花和田統(Hw)伝右川沿辺及び図幅中中川下流域内後背湿地、湿地に分布する。全層、おおむね強粘質土壌であり、50cm以内から黒泥層となる。黒泥層の下に粘~強粘なグライ化した土壌の出現することもある。地下水位高く、湿田であり、裏作利用には困難が伴う。

下狢統(Smu)中川に接した湿地に、小面積存在する。おおむね表土、次層とも壌質であり50cm以下より黒泥層となる土壌であり水田利用されている。

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2-3砂丘地の土壌

(1)乾性褐色森林土壌

山下統(Ys)春日部砂丘上に狭長に分布する、林地土壌である。Ao層のうちL層は2~3cmであまり厚くないが、その下部には厚さ3~5cmのF-H層が発達し、暗褐色である。A1層は、F-H層よりもやや淡い暗褐色を示し、厚さは4~5cmである。A2層も暗褐色で厚さ8~1Ocmで、褐色のB層に急変する。全層砂質(中砂)である。植生は、天然生のアカマツ林や、これとコナラ、シデ類等の落葉広葉樹との混交林となっている。F-H層が発達し、菌糸網の散見されること、及び土層層位の明瞭であること等から、かなり乾性の土壌であることが認められる。林地としての生産力は低い。

埼玉県農業試験場秋本俊夫
埼玉県林業試験場野村静男

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4傾斜区分図

地形分類図から明らかなように、本調査図幅の地域は低地と台地からなっている。低地の標高は3~10m、台地のそれは5~17.7mである。低地は西より綾瀬川・元荒川・古利根川・荘内古川・江戸川(旧太田川および荘内古川の流路)諸河川により開析されている。台地はこれらの河川にのぞむ谷地田内の谷などにより開析されている。このことにより、本地域は平坦な地形になっている。そのために全体として地形起伏が少なく、傾斜区分は3°未満が圧倒的である。3°以上の傾斜地を観察でき、計測することができる箇処は低地と台地が接触する崖、台地と谷地田との接触崖、砂丘崖、河道沿いの傾斜面などである。しかし、河道沿いには人工堤防河道の改修工事、灌漑工事など人為的な手が加わっている箇処が多い。これらの場所では局所的には急傾斜になっているが、原地形の傾斜の特性を表現しているものとは言えない。本図ではそれらは除かれている。ここでは、大宮・鴻巣両図幅の場合と同様、水平距離50m以上に対する平均傾斜角を求めて表現した。中川低地と鳩ケ谷支台との境界では一般傾斜は3°~8°の緩傾斜および8°~15°とややきつくなる傾斜を示す面とがある。前者は川口市戸塚より長蔵新田、川口市安行より安行領家を経て東貝塚の間に発達している。後者は戸塚以北、長蔵新田、安行の密蔵院、東貝塚より安行小山問などに発達している。鳩ケ谷支台では、各所に谷地田が発達しており、3°~8°傾斜区分は川口市立山、西立野、安行慈林・安行吉岡近傍に、8°~15°傾斜区分は川口市西福寺、赤山近傍にそれぞれ認められる。
中川低地と下総台地との境界では、北葛飾郡庄和町より松伏町築比地にかけて、3°~8°および8°~15°両傾斜区分が認められる。前者は庄和町米島、中野の吉岡・新田、築比地の中より本田にかけての区間に発達している。後者は本田に小分布する。
砂丘崖は古利根川による河畔砂丘の崖であり、春日部市小淵の島組にある。ここでは、3°~8°の傾斜区分が認められる。河道沿いの傾斜面は古隅田川左岸、春日部市最勝院にあって、その傾斜区分は3°~8°である。
本図幅の傾斜の頻度分布をとれば、面積的に、3°以上の傾斜区分は全体の1月18日にあたり、5.6%にすぎない。このように、この地域は全体として非常にゆるい平坦面からなる。そのため、低地では水田や市街地、台地では畑作地、植林地、市街地として高度に利用されている。

(埼玉大学松丸国照)

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5水系及び谷密度図

本来、水系と谷密度値とは相関性が高いという傾向があるが、本地域では水系は農業用水、灌漑用水、排水路など河川改修が行われてきたために、真の谷密度値は消され、改修後の流路に沿う谷密度値が認められる。しかし、大半は両者の相関性は高く、主要河川水系の綾瀬川・元荒川・古利根川(中川)・荘内古川・江戸川などでは分岐した支流も含めて、谷密度値は高くなっている。
作業規程により算出し、求めた数値をみると本地域ではO~24まであり、9~15が大半を占め、谷密度は頻度としては良好である。これは地形分類図の上からみられるように、起伏量が小さい割には諸河川、人工的河川改修と排水路建設の数に起因する。
谷密度の一定方眼内の数値から、Oは台地上と低地の後背湿地の平坦面にみられ、9以上は河川域と谷地田内の河川改修域に多く集計されている。また、諸河川・農業用水・排水路の交差・分岐する川口市九左衛門新田、吉川町、松伏町赤岩、同金杉、越谷市平方付近では20以上の谷密度値が得られている。

(埼玉大学松丸国照)

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6利水現況図

(河川)

本区域は、本県東部に位置し、全域が関東平野に属す平地であります。降水量は、越谷で日降雨量305ミリメートル(昭和33年9月26日)を記録しているが、年平均降雨量は、1250ミリメートル程度であり、県内ではやや少ない地域に属しております。
ほぽ全域が低平地であり、かつては良好な水田地帯が広がっておりました。しかし、経済成長に伴う宅地開発等により、東武線沿線の草加市、越谷市、春日部市を中心に開発が進み、現在では江戸川と中川にはさまれた大場川筋の低地及び中川と東武線にはさまれた低地が水田地帯となっております。これら水田へ灌漑している用水としては、八条用水、二郷半用水、四ケ村用水、須賀用水、金野井用水があります。
飲料水は、庄和町新宿新田地内に庄和浄水場があり、江戸川から取水し、最大使用量350,000立方メートル/日を、本区域のうち春日部市、越谷市、松伏町、吉川町、庄和町へ供給しております。
工業用水は、草加市柿木地内に柿木浄水場があり、中川から取水し、最大使用量190,000立方メートル/日を草加市および八潮市の一部に供給しています。

(農業水利)

首都に近く、開発による農地の壊廃が進み、農業用水の汚濁と地盤沈下の進行による用排水施設の被害が著しい地域である。用水は中川を境に利根川系と江戸川系に大別されるが、利根川系がほぼ安定しているのに対し、江戸川系は河床低下により、十分な取水が出きなくなっているほか、排水は全域的に中川流域低平地のため良好でない。今後農業振興地域は用排水改良を中心とする土地改良事業で対処していくが、それ以外の地域はいずれ都市化されるまでの問、さまざまな問題を抱えていくことになり、何らかの対策が待たれる地域である。

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7防災図

本区域は、地質的には、庄和町の市街地を除くと、全域が第4紀沖積層で低平地となっております。
治水上は、東側を江戸川の堤防で守られており、西に向って大場川、中川、大落、古利根川、新方川、元荒川、綾瀬川、伝右川と中川水系の河川が集中するところであります。
中川は、排水能力が0.35立法メートル/S/平方キロメートルと小さな河川であり、かって降水は、広域に広がる水田に貯留され、中川への流入量は、比較的少なかった。ところが経済成長に伴う宅地開発、施設整備等により、水田が盛土、舗装され、家や道路ができ、水田が従来保持していた保水機能を失い、降水が直接河川へ流入することになります。このため河川への流入量が増加する等、洪水に対する危険性が増加しております。
このように中川流域の河川は、本川の流過能力が小さく、又下流の東京都にあってもその流過能力の確保が困難な状況にあります。このため、建設省では、三郷市に三郷放水路を施工し、中川から江戸川へ最大170立方メートル/s、大場川から江戸川へ最大30立方メートル/sの洪水調節が可能となりますが、現在は100立方メートル/sのポンプが設置され、洪水調節を行っております。
中川流域の各河川は、中川の流過能力の確保を待って漸次改修されていきます。本図葉の重要水防区域は、中川の場合、河積が少ないこと及び堤防高が不足していることであり、新方川の場合、河積が少ないことであり、綾瀬川の場合、河川が少ないこと及び堤防高が不足していることを示すものであります。
冠水区域は、想定浸水区域の分類は地形、標高及び既往の洪水時における浸水状況時を考慮してきめたものであって、降雨量は、既往の降雨継続時間から考えて、1.5日間雨量を対象とし、大河川破堤及び局地的な高位地については考慮しておりません。

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土地利用現況図

本地域の土地利用は中川低地の農業を中心とした水田耕作地と集落の形態の基本的な配置が現在も残存している。しかし、交通機関の発達とともに、この基本的な配置はくずれようとしており、とりわけ、東武伊勢崎線、東武野田線及び武蔵野線に沿う各駅周辺域では都市化が進み、大規模な住宅団地が進出している。従来の集落地域である陸羽街道沿い(国道4号線)、綾瀬川・元荒川・古利根川・中川・荘内古川沿いでも市街地化が拡大し、住宅団地・工業団地それに県営水上公園(しらこばと)が進出している。
本地域は東京都心に近接した位置を占め、交通機関の発達とともに、着々と都市化・工場建設が進んだ。草加バイパス・環状道路・高速道路の建設と建設中があり、都市化と工業化の土地利用はスピード・アップの傾向にある。そのために、水田耕地は現在減る傾向にあり、とりわけ、県南の草加市では著しい。
普通畑は自然堤防沿いに利用されており、ゴルフ場は江戸川の河川敷に設けられている。一方、台地上では鳩ヶ谷支台において、市街地よりも広葉樹を主とした樹木・植木栽培地が分布し、庄和台地では南桜井駅周辺の市街地から都市化の変化・住宅団地の進出、駅周辺の郊外では普通畑・広葉樹林が分布する。

(埼玉大学松丸国照)

お問い合わせ

企画財政部 土地水政策課 総務・国土調査担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 本庁舎2階

ファックス:048-830-4725

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