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掲載日:2023年12月12日

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土地分類調査報告書(十石峠・万場)

目次

  1. 位置及び行政区画
  2. 人口
  3. 地域の特性
  4. 主要産業の概要
  • 各論
  1. 地形分類図
  2. 表層地質図
  3. 土壌図
  4. 傾斜区分図
  5. 水系・谷密度図
  6. 利水現況図
  7. 防災図

序文

わが国の経済は、回復過程に入ったとは言え必ずしも順調ではなく、緩慢に回復が続いておりますが、輸出の先行き不安、企業経営の不振、物価の高騰、地方財政の危機等の問題を解消するために、なお前途は楽観できないと思います。

一方本県の人口は、昭和35年以降増こうの一途をたどり、今年1月には5百万人の大台を突破し、7月には5百6万5千人と、その人口規模は、北海道についで全国6位と躍進しております。

高度経済成長を背景とした開発の「ひずみ」は、様々な現象となって現れ、公害の発生や土地利用の混乱さらには社会資本整備の立ち遅れなどを招いておりますが県は「人間尊重、福祉優先」の目標を掲げ将来の県の望ましい姿を想定しながら県土の均衡ある整備を進めるために、計画的かつ効率的に県土の利用を図ることとしております。

このたび、関係各位のご協力のもとに「万場(埼玉県内)」図幅の土地分類基本調査が完成いたしました。この調査は地域の地形、表層地質、土壌等の土地条件や土地利用上の規制因子となる利水条件、土地保全条件等土地の性質を調査集録したもので、今後の県土利用に極めて重要な基礎資料であります。

自然の保全や人間性豊かな地域社会をつくるために、折角の調査資料を十分に活用されますよう希望するものであります。

なお本調査の実施にあたりまして、ご協力を賜りまた国土庁営林局、東京都、山梨県並びに本県の関係各位に対し心から謝意を表する次第であります。

昭和52年9月

埼玉県企画財政部長浅子義一

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まえがき

  1. 本調査の事業主体は埼玉県で、国土庁土地局国土調査課の指導を得て、国土調査費補助金をもって実施した。
  2. 本調査の成果は、国土庁作法施行令第2条第1項第4号の2の規定による土地分類基本調査図及び土地分類基本調査簿である。
  3. 調査の実施、成果の作成機関及び担当者は次のとおり(JPG:85KB)である。

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総論

1位置及び行政区画

位置「万場」図幅は、関東平野の内陸部、埼玉県の北西部の一部と、群馬県の一部を抱合する。

経緯度は、138゜45ʹ~139゜00ʹ、北緯36゜00ʹ~36゜10ʹの範囲であって、図幅内の県内地域の面積は、175.64平方キロメートルである。

行政区画は、神泉村、吉田町、小鹿野町、両神村、大滝村の2町3村である。

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2人口

本県の人口は昭和52年2月1日の推計値500万5484人となり、昭和50年10月1日の国調482万1349人、以降1.4ヶ月で500万人の大台を更新した。

このような人口増加の原因についてみると、本県の社会的、経済的要因を背景として、住宅団地の進出、工業団地の造成等による社会人口の増加が主導となっている。

第2表都心からのキロ圏別人口の動き(JPG:66KB)

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3地域の特性

1自然的条件

(1)地勢

この地域は天丸山から父不見岬を陵線とした山頂を県界とし、北側は群馬県に属して野粟沢、開物沢川、その他支派州がV字谷を板して神流川に向かって傾斜し、流れている。

陵線南側は本県に属し、石間川、吉田川、赤平川、薄川、中津川その他支派川がV字谷をなし、緩急おりまぜた傾斜をしながら荒川に向かって流れている。

又この地域は秩父多摩国立公園三県立上武自然公園に属し、原生林を含む森林地域であり、緑と白然の景観による風光明眉な地域である。

(2)気象

本県の気候はいゆる表目本式で、冬は乾燥して晴天が多く、日中北西季節風が強く吹き夜から朝にかけての冷えこみが厳しい。夏は南東の季節風は弱く、日中の最高気温はかなり高くなりむし暑く夕方雷雨が多い。

平野部では9月に最も多く(山地では雷雨のため8月に最も多い)。年降雨量は1,400mmくらいである。気温は平野部で14℃(年平均)くらいで山地では海抜100mにつき0.5℃ずつ低くなっている。

第3表気象記録(昭和50年)(JPG:59KB)

(3)気象災害

本県の気象災害は夏を中心に発生し、10月から3月までは非常に少なくなっている。発生する度数の最も多いのは雷雨によるもので、全災害の半数に近い。そのうち半数くらいは降ひようを伴っての被害である。しかし災害高からいえば台風による風水害が全災害の80%くらいをしめることになる。本県では凍災害も重要な災害となっている。

第4表気象災害回数(JPG:50KB)

2社会経済条件

(1)道路

図幅には、東京方面より国道299号、熊谷より140号が走っており、それらを結ぶ県道が縦横に走っている。将来は、140号の整備と甲府方面への延長によって、首都圏の放射、環状線としてネットワークへの参入をはたす。

(2)鉄道

図幅の鉄道は、熊谷方面から秩父鉄道が、敷設されており、輸送カの増強がみこまれている。

第2図道路・鉄道(JPG:58KB)

(3)就業人口

県内の産業別就業人口の比率は、県内地域の住宅化、工業化の影響を強く受けて農業従業者が減少したことが原因となり、第1次産業人口率が低下して第2次及び第3次産業の伸展が著しい。

この地城においても徐々ではあるが、同様の傾向を示している。市町村の産業別就業人口の構成は、第5表図のとおりであるが鉄道によらない交通機関に依存している町村部では、林業を中心とした第1次産業の人口率が高く鉄道沿線の市町村では第2次産業の伸展が目立ち、これと並行的に第3次産業人口の比率も高まっている。

第5表産業別就業人口構成(15才以上)(JPG:158KB)

(4)土地利用

土地利用形態は、山林、農耕地、その他、住宅地で、全面積に対し占める割合は、山林が75%とその大半を占め、農耕地17%、その他6%、住宅地2%となって、主として林を占める位置が大きい。

第6表土地現況面積(JPG:66KB)

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4主要産業の概要

1農業

本地域の農業は、山間農業の特長を生かした養蚕、きのこ、こんにゃく、そ菜、酪農と多種目にわたる生産が行われており、近年、養豚、肉牛肥育なども盛んになっている。又、農業の近代化を進めるため土地改良事業、農業構造改善事業を行い、ぶどう団地は新しい農業として注目されている。

2工業

工業では、伝統的な織物業が古くから行われている。又、県下では唯一の日窒鉱山があり、金銀銅をはじめ、亜鉛、マンガン、鉄など多鉱種が生産されている。

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各論

1地形分類図

「万場」図幅地域の主部は関東山地の北部一帯を占め、南東隅に秩父盆地が発達する。本図幅の地形の特性をみるのに、航空写真、5万分の1地形図「万場」を使用して、0.5kmの方眼をかけた切峰面図(第1図)をみると、山稜は全て、南から北へWNW-ESEからNW-SE方向を取り、山地間の水系もこれらに同調している。これは「寄居」図幅内の小鹿野町に向かって、山地、水系が収れんする位置形態を取っている。つまり、山地は秩父盆地に向かって、高度を、水系は谷底面を漸次減じているといえる。

関東山地と秩父盆地の境は切峰面図で読みてれるように、500m前後の高度で分割される。関東山地は起伏量から見ると、中起伏山地が全体の55.91%を占め、ついで、大起伏山地の33.17%、小起伏山地の5.33%の順になる。従って、「三峰」図幅にみるように、大起伏山地73.13%、中起伏山地26.42%、小起伏山地の0.45%よりは起伏量が小さくなっている。「万場」図幅最高所は両神山(1723.5m)で、1000mを越える山は両神山地(1d)、南天山地(1e)、三国山地(1f)に見るように、いずれも河原沢川の南に位置している。この地は、父不見山(1055.6m)、二子山地の二子山(1165.6m)が孤立的に分布するに過ぎない。また、城峰山地(1b)、父不見山地、二子山地は主として、500~800mの山地が大半を占める。

一方、秩父盆地では、盆地内部の産地最高所までは小鹿野町伊豆沢中郷西の海抜476.6mで、盆地内最低所は河原沢川・薄川合流点下流の赤平川氾濫原の海抜255mとみなされる。秩父盆地は周囲の古・中生層からなる山地とは西・北を断層ないし、不整合に区画された短形の構造盆地となり、第三紀層からなる。盆地内は赤平川及びその支流の河原沢川、薄川、小森川および吉田川が貫流して盆地床平野をつくっている。盆地床基盤及び堆積物は開析されているため、現在は起伏に富み、品ゆう(しなしゆう)山地、吉田・石間戸・小鹿野・四阿屋山・尾田蒔谷丘陵及び赤平川段丘などから構成されている。山地及び丘陵地の分類境界線は切峰面図の500m等高線付近の海抜高度にあたると思われ、表層地質の見地からは古・中生層及び第三紀層間の境界に置かれるのではなく、第三紀層内に求められている。この分類境界線は地形図上に、航空写真、現地調査で確認した地形的な差異および基盤岩類の露出状況などから判断して求められているが、やはり、不明瞭な箇所も存在する。本図幅地域は山地、丘陵地、段丘には火山灰の関東ローム層を一般に乗せている。

本図幅内の水系は主要河川がWNW-ESE方向と、NW-SE方向の2系統に分類される。前者は河原沢、薄川、小森川上流、広河原沢である。各河川はそれぞれ群馬県側の

叶山-二子山-牧ノ坂峠-白石山の山陵、海抜1207.1m一天理岳-海抜790.7m-戸蓋峠-海抜566.7mの山稜、海抜1532m-両神山-海抜1195.2mの山陵、天丸山-海抜1430m-海抜1479mの山稜-群馬県の諏訪山-海抜1658.1m-南天山-海抜1347.8mの山稜をそれぞれ分水嶺とし、各山陵の方向に主流を持って東流している。

後者は吉田川およびその支流、東から小川、女形川、長久保川、宮ノ入川、それに石間川である。缶河川は埼玉県・群馬県の境に位置する二子山-屋久峠-坂丸峠-父不見山-杉ノ峠-土逆峠および埼玉県の太田部峠のEW系の山嶺を分水嶺とし、ほぼこれに交差して南東流している。

上述のように2系統の主要河川の流向は表層地質と対周すれば明瞭であり、基盤岩類に支配されている。つまり、前者の河原沢川を中心にその南西部と北東部の分水嶺付近までは、中生層が分布し、しかもNW-SE方向に帯状して発達していること。また、中生層は古生層より侵食されやすいため、本図幅内の関東山地では一番河谷が進んでいる。一方、中生層以南では秩父古生層、とりわけ珪質岩がよく発達し、「三峰」図幅の古生層の岩相走向方向に調和して、WNW-ESE~NW-SE方向が支配的である。後者の各河川は秩父古生層(一部中生代の三畳紀層も含まれるが、層位学上の分布域は今後の課題である)、とりわけ、輝緑凝灰岩の分布が顕著であり、一般走向はNW-SE系で、地層傾斜が20゜~30゜と緩い地層からなる。

本図幅はは地形特陛から、分類単位を統一し、その地形性質によって地域性を示す上で、後述の地形区を設定後、各名称を記した。大地形区分としては関東山地と秩父盆地に2大別できる。前者は地殻変動に伴う隆起部で、後者は沈降部であると言える。大地形区分の内部は局地的性質、例えば河原沢川に沿う山中地溝帯に見られる沈降部の地質、父不見山南部及び塚山一帯の輝緑凝灰岩発達地域に見る地質および侵食営力などの関連要素によって区分される。関東山地では6つの山地地形区に分類される。各山地の境界は主要水系によって区分されるが、埼玉県・群馬県境に近づくにつれて、その区分は必ずしも明瞭ではなくなる。分類は下記の如くである。

  • 1関東山地
    • 1a父不見(てえみず)山地
    • 1b城峰山地
    • 1c二子山地
    • 1d両神山地
    • 1e南天山地
    • 1f三国山地
  • 2秩父盆地
    • 21a品ゆう(しなゆう)山地
    • 22a吉田丘陵
    • 22b石間戸(いさまど)丘陵
    • 22c小鹿野丘陵
    • 22d四阿屋(あずまや)山丘陵
    • 22e尾田蒔丘陵
    • 23a赤平川段丘

第1図切峰面図(上図)及び起伏量図(下図)(JPG:141KB)

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I関東山地

Ia父不見山地

広義の城峰山地に含める見方もあるが二子山、白石山の古生層は小森川以南の古生層と地形特性、例えば傾斜区分など類似しており、むしろ、父不見山地周辺地形と同一視できない。また、切峰面図の800m等高線は太,太田部峠と城峰山との間で閉曲線を作り、同一高度面は見られない。ここでは細分しく新しい山地名を設定した。

埼玉県・群馬県境の父不見山(1065.6m)を中心に、東は石間川、西は吉田川支流の宮ノ川によって境され、南は秩父盆地に接し北は神流川によって区割される。この山地は県境の屋久-坂峠-父不見山-杉ノ峠-土坂峠-塚山の分水嶺の山系と、それから南東にはり出す4本の「足」からなる。各「足」は石間川、小川、女形川、長久保川、宮ノ入川各河川によって区割される。山頂は一般に鈍頂であり、山腹斜面もゆるやかである。しかしく女形、杉ノ峠東、塚山などの珪質岩十硬砂岩発達域は部分的に鋭頂、しかも、山腹斜面は急である。主として、古生層からなる。山地内の集落は河谷に沿う小平地に分布し、耕地は山麓緩斜面を占める。

1b城峰山地

「寄居」図幅の城峰山地(1037.7m)の西部延長にあたる。西は父不見山地に接する。壮年期の城峰山の西側山腹にあたるため一大半が大起伏山地に属する。古生層よりなり南部は輝緑凝灰岩が中部には珪質岩が、北部には準片岩の発達が良い。また、神泉材向平では古生層と推定断層(跡食一金沢構造線にあたる。最近の神流川筋の研究では断層説をとらず、非変成岩一変成岩の連続説を考えている。ここでは推定断層にして置く)をはさんで、三波川緑片色岩が発達する。山地内の集落は父不見山地と同様、河谷に沿う平地に分布する。

1c二子山地

北は宮ノ入川で父不見山地と接し、南は河原沢川で両神山地と、東は秩父盈地と、西は志賀坂トンネル-二子山-屋久峠の埼玉県・群馬県境の分水嶺を越え、神流川によって区割される山地である。主稜はWNW-ESE方向へ、群馬県の叶山-本山地の二子山-白岩山-海抜644mと続く。直前3者は全山古生層の石灰岩からなり、山頂は鋭頂で、山腹斜面は非常に急で、切り立つ崖が発達している。石灰岩からは紡錘虫化石が産出し、石炭紀後期のFusulinella帯から、二畳紀中・後期のNeoschwagerina帯まで存在する。白石山以西は大半が大起伏山地に属し、それ以東は中起伏山地に属している。集落は宮ノ入川、河原沢川による谷底平野および山麓緩斜面沿い立地している。

1d両神山地

北は二子山地と、南は神流川-広河原沢によって南天山地と、東は秩父盆地とそれぞれ接し、北は埼玉県・群馬県境を越え、神流川によって区割される。河原沢川および薄川沿いの山地、山麓地城の中起伏山地を除けば大半は大起伏山地に属する。古生層からなり地形は急峻であり、清滝、昇竜ノ滝が発達している。本図幅中の最高峰両神山(1723.5m)は全山珪質岩よりなり、山頂は鋭頂、山腹斜面は非常に急で、切り立つ崖が存在する。両神山の西側には花崗岩質岩(石英閃緑岩、石英閃緑ひん岩)の貫入により、接触交代鉱床および熱水性交代鉱床がある。鉱山の発見は慶長年間であるが現在は日窯鉱業の秩父鉱山が谷所に鉱床を特っている。主な原鉱石は大黒鉱床(南天山地に属する)は銅鉱と硫化鉱の金属鉱種で、他の石灰鉱床(スカルン鉱床)は結晶質石灰石、両神鉱床は珪砂を探堀している。

1e南天山地

本地形区は広河原沢、神流川以北の両神山地、中津川以南の三国山地と接する。主稜は西隣「十石峠」図幅の諏訪山(1549m)から本山地の南天山(1478m)に続くNW-SE方向の山系からなる。大半が大起伏山地に属し、古生層、花崗岩質岩の貫入岩および秩父砿山の大黒鉱床、中津鉱床が本山地に発達している。

1f三国山地

三国山地は埼玉・群馬・長野3県境に位置する三国山を中心とした山地で、古生層からなる。本図幅の南西隅にある山地はこの三国山地の北端を占め、北は南天山地と接する。

2秩父盆地

21a品ゆう(しなしゆう)山地

秩父盆地内の山地で南隣「三峰」図幅内に南北にのびた品ゆう(しなしゆう)山(639m)の北側山麓が本図幅の南東端に接続している。品ゆう(しなしゆう)山地の地質は新第三紀、小鹿野町層群の砂岩、礫岩層からなり、新第三紀層の走向と山地の稜線方向は一致している。本山地は秩父盆地形成初期の侵食から回避された残丘的存在になっている。

22a吉田丘陵

秩父盆地の北酉部に位置し、WNW-ESE方向の主稜線を有する。吉田丘稜は赤平川段丘面に向うと、緩斜面を示し、一方、吉田川沿いの吉田町の載る段丘面、および対比面に向うと急斜面を呈する。赤平川に臨んでは小起伏山地、吉田川に臨んでは中起伏山地に相当する。従って、隣「寄居」図幅の吉田丘陵とは対立的な形態を呈する。吉田町と小鹿野町の境界が丘陵頂部を通り、340~500mの高度を有する。新第三系、小鹿野町層群の砂岩、礫岩、泥岩またはそれ等の互層からなる。

22b石間戸丘陵

石間戸丘陵は吉田川をはさんで、南の吉田丘陵と対州する位置にある。秩父盆地北縁の丘陵地で、城峰山地が高度を急に下げた南縁部を占める。本丘陵地は中起伏山地に相当しており、構成する地層は小鹿野町層群の砂岩、礫岩およびそれ等の互層、泥岩からなる。地層の走向は石間戸丘陵の発達と一致し東西にのびる。

22c小鹿野丘陵

小鹿野町、腰、上大塩野の西、海抜472.5mを丘陵地の最高度にいただき、北は河原沢川、南は薄川で区画される。両神山地が高度を急に減じた東縁部にあたり、両神山地に付着する小丘陵地塊である。小鹿野町層群の砂岩、沢岩互層、礫岩、砂岩互層などからなる。

22d四阿屋山丘陵

南隣「三峰」図幅の四阿屋山(772m)の東山麓に位置する丘陵で、本図幅でも、その北端が分布する。薄川を隔て、小鹿野丘陵と対局する位置にあたり、両神山地の東縁に付着する丘陵である。小鹿野層鮮の砂岩、泥岩、礫岩および、それらの互層からなる。

22e尾田蒔丘陵

尾田蒔丘陵は秩父盆地の中央部にあって、荒川および赤平川に区画された部分の丘陵地である。本図幅では南東隅に位置しており、尾田蒔丘陵の北西端を占める。丘陵地の地質は小鹿野町層群の砂岩、泥岩互層、礫岩、砂岩からなる。丘陵斜面は新第三紀の地層の傾斜方向に一致して、漸次東方へ緩斜面を作り、東方へ傾くケスタ地形が伊豆沢川をはさんで東西に発達する。

23a赤平川段丘

秩父盆地北西縁の赤平川に沿って、O.8~1.5kmの広い段丘面が発達する。赤平川の支流、石間川、吉田川、河原沢川、薄川、小森川、伊豆沢川に沿っても赤平川段丘面は連続する。段丘面上には小鹿野町の主要集落、主要道路、耕地が位置する。各支流の河谷の小平地、吉田町石間、沢口、上吉田、小鹿野町上飯田、伊豆沢、両神村大平、並木などでは段丘の大部分は上位段丘を占める。しかレ河原沢川、薄川の合流点下流付近、薄川と小森川の合流点付近では下位段丘の発達がある。上位段丘は一般に現河床との比高は1.60m以上になり、段丘崖では基盤岩を露出する岩石質侵食段丘に属している。下位段丘は一般に旧河道状の凹地が見られ、一時的火山質ロームを欠き、1~5mの厚い段丘砂礫層からなる。

(埼玉大学松丸国照)

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2表層地質図

本調査地域は関東山地の中・古生層と秩父盆地の新第三紀層からなっている。中生層は河原沢川をはさんで秩父郡犬木より北西の志賀坂面に発達する。この中生層は山中地溝帯と呼ばれる特殊な地質構造の中にあって、巾2~4km、全長は長野県南佐久町付近までの約40kmある。中生代白亜紀の礫岩、砂岩、粘板岩などの各眉からなる。古生層は山中地溝帯の南測では石舟層、両紳層が一般走向NW-SEを示し、北方へ傾斜する。一方北側では複雑で、神泉村で、跡倉一金沢構造線により、三波川変成岩と接している。緑色準片岩、黒色準片岩、石英片岩を主体とする柏木層群、上位に輝緑凝灰岩、暗灰色粘板岩、チャートからなる万場層群、最上位に硬砂岩、粘板岩、チャートとともに互層を形成する上舎田層群からなる。しかも3層群はゆるい褶曲構造を呈することが多く、一般傾斜角は20゜~30゜、ときに50゜になる。主要な構造線は先の跡倉一金沢線に直交するNE-SW系の断層が中・古生層に卓越するが秩父盆地の新第三紀層中には認められない。

秩父盈地の新第三紀層は牛首峠礫岩(基底礫岩)から始まり、白沙岩、富田泥岩と漸次上位に細粒化が認められる。基盤の中・古生層と不整合、断層で接し、礫岩がよい鍵層になって、各層の分類基準になる。全体的に化石は豊富で、Yoldoa,Lucinoma,Thyasira,Fulgorariaなどの貝化石、有孔虫、魚のうろこ、サメの歯、鮮虫、ウニなどを産する。

本地滅の地質系統表は第1表のとおりで、大半が秩父古生層からなる。

(1)未固結堆積物

本地域に分布する末固結堆積物は山頂、山腹の平坦面にロームが、山麓には岩石の二次的砕屑物などが分布している。段巳面には砂礫堆積物が発達する。

1-1砂礫・泥堆積物

石間、吉田、河原沢、薄川、小森各河川の河道の氾濫原の河床堆積物である。小~大礫の分級不良層、径10~15cmが多く、礫種はチャート、硬砂岩、粘阪岩、花崗質岩などからなる。

(2)半固結-固結堆積物

2-1礫

赤平段丘および対比面に発達する。表層の腐埴泥質層下は3~5mの厚さで亜円礫からなる段丘砂礫堆積物である。中礫が多く、礫種は古生層のチャート、硬砂岩、粘板岩、輝緑凝灰岩、花崗質岩からなる。

第1表本図幅及び周辺図幅の地質系統表(JPG:86KB)

(3)固結堆積物

3-1礫岩

牛首峠礫措を始め、小鹿野層鮮吉田層、桜井層の基底礫岩として発達する。亜角~亜円礫、小~中礫が多く、礫が上位層準へ細礫化のグレーデイングを示す。礫種は硬砂岩、チャート、粘板岩、輝緑凝灰岩、花崗質岩からなる。山中地溝帯では石堂・瀬林・三山各層に発達し、上位層ほど貧弱な発達となる。青灰色、径2~10cmの亜角~亜円礫、塊状を示す。礫種はチャート、砂岩、粘板岩の順に多い。

3-2砂岩

子の神砂岩を始め、小鹿野町層群各層に発達する。青灰色を呈し、風化して赤褐色となる。花崗質砂岩~石英砂岩が発達し、塊状~層理の明瞭なものまであり、斜交層理も場所によって顕薯である。鍵層として役立つ。

3-3緑色凝灰質砂岩

観音山および千鹿谷(ちがや)に分布する。緑色凝灰質砂岩、緑色凝灰質礫質砂岩、色細粒砂岩からなり、貝殻を含有。下部に古生層の粘板岩、輝緑凝灰岩の礫を、上部に緑色凝灰質粗粒砂岩、最上部に層理が良く発達する同質岩がくる。

3-4硬砂岩・砂岩

山中地溝帯の中生層に見られる花崗質砂岩、暗灰色を呈し中粒砂岩などが発達。場所によって斜交層理が発達。秩父古生層の石舟、両神、上吉田各層に良く発達する。一般に灰~青灰色を呈し硬質、細~中粒の石英砂岩からなる。

3-5泥岩

秩父盆地の新第三紀層に発達し、暗灰色、玉ねぎ状構造が各所で形成されている。貝を始め軟体動物の化石を含有。山中地溝帯の中生層では、とりわけ三山層に顕著であり、しかも新第三紀層の泥岩より硬質、所により、粘板岩となる。

3-6粘板岩・千枚岩

秩父古生層に発達、暗灰色を呈し、固結度が高い。層理を示すことが多い。千枚岩は神泉村の柏木層群に顕著に発達する。

3-7砂岩・泥岩互層

新第三紀層に発達し、一般に10~15cm厚の規則正しいフリッシュ型の互層からなる。砂岩は青灰色を呈し、石英砂岩が多くグレーデイングする。泥岩は暗灰色を呈し、風化に弱く、もろい。互層中には層内褶曲、層内断層が発達する。

3-8硬砂岩・粘板岩互層

秩父古生層に発達し、とりわけ石舟、上吉田各層に明瞭である。互層の形式は硬砂岩の主体のところ、粘板岩が主体のところ、有律互層を示すところなどがあり、いずれも、層理が明瞭なため、地質構造の解明に重要である。

3-9珪質岩

秩父古生層に発達。両神層、万場層群では特に顕著に発達。チャートが主であり、珪質粘板岩、千枚珪岩になると層理が明瞭であり塊状にならない。チャート中にはしばしばマンガン鉱床が胚胎している。

3-10珪質岩・硬砂岩互層

石舟、両神各層、上吉田層群に顕著である。粘板岩も挟在し、互層を形成する。珪質岩、硬砂岩の発達地域によく発達する。

3-11珪質岩・粘土岩互層

秩父古生層に発達し、珪質岩発達地域に明瞭である。互層の形式は珪質岩、粘板岩、硬質砂岩の3者からなり、礫砂岩を欠くことが多い。本互層は両神層、万場層群に発達する。

3-12石灰岩

日窒鉱山周辺地帯、二子山、白石山などに顕著に発達するほか、石舟層、万場層群ではレンズ状に小分布する。日窒鉱山周辺では花崗質岩併入にともなって、スカルン鉱床になり、大半が結晶質石灰岩になる。結晶質石灰岩は柏木層群にも見られる。石舟層、万場層群、二子山、白石山では紡錘虫化石が産出し、石舟層からは、Fusulinella,Tritisitesの石炭後期からMisekkina,Pseudfusulinaの二畳紀中期、万場層群の石灰岩からは、Neoschwagerinamargaritae、上吉田層群の石灰岩からはYabeina,Lepidolinaなどの紡錘虫が産出する事から、二畳紀中~後期にあたることが知られる。一般に灰白~暗灰色を呈する。紡錘虫化石のほか、軟体動物、海百合などの化石を産する。塊状を呈する。

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(4)火山性岩石

4-1輝緑凝灰岩

万場層群の主体をなし、他の秩父古生層より顕著に分布する。一般に濃緑色、暗赤色を呈し、火山灰砂、溶岩流など種々雑多な岩層からなる。塊状無層理と層理の発達したものとがあり、前者は三波石に酷似し、後者の風化したものは粘板岩に類似する。

4-2花崗質岩

日窒鉱山周辺に併にゅうしている。優白~灰白色を呈し、緑色のハツチが点在、石英閃緑岩ないし石英閃緑玢岩からなる石英閃緑岩体を構成する。ほかに、小規模な石英斑岩、玢岩などの岩脈が見える。

4-3輝緑岩

秩父古生層中には小岩体として認められる。小鹿野町日尾では粗~細粒の岩脈として発達。輝石、塩基性斜長石からなる岩石。

(5)変成岩

5-1緑色片岩

神泉村向平に見られる。緑色を呈し、原岩石は主として秩父古生層の変質した物が多く、塩基性火成岩、凝灰岩から変じた物まである。この結晶片岩の主成分鉱物は緑泥石、緑簾石、曹長石である。本岩は跡倉-金沢構造線によって、柏木層群と接する。

(6)地下資源

秩父山地では日窒工業の秩父鉱山が唯一の金属資源の鉱山である。現在はほとんど休山状態で、良質の結晶質石灰岩を稼行しているに過ぎない。最盛時には金・銀・銅・鉛・亜鉛、硫化鉄、鉄鉱マンガンの稼行を続け昭和33年には総出鉱量が100万トンに達した。

浮選精鉱の生産量と品位(昭和31年上期1ヶ月あたり)(JPG:61KB)

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3土壌図

(1)土壌の概要

本図幅はその大部分が山地である。図幅の西部及び北部は、秩父古生層のチャート、石灰岩、粘板岩、輝緑凝灰岩を母材として壮年期地形である。またこの図幅の中央部をほぼ北西~南東に3kmぐらいの幅で貫通している中生層の「山中地溝帯」といわれる地域があり、基岩は、礫岩、貢岩、砂岩及びこれらの岩石が複雑に互層をなしている。図幅の南東部は、新第三紀層の「秩父盆地」の西縁にあたり、第四紀の段丘、丘陵は、泥岩、砂岩である。山地土壌はこれらの岩石の風化物を母材とし、地形、気象、水湿状態、森林の取扱い等のちがいにより、いくつか異なった土壌に分類できる。

山地土壌のうち、古生層母材のものは、地形が急峻であり、海抜高も1,700~400mに及び、海抜高、地形、植生及び基岩の風化的性格等から、ポドゾル化土壌、乾性褐色森林土壌、褐色森林土壌、湿性褐色森林土壌、黒ボク土壌等に分類できる。ポドゾル化土壌は、ここでは海抜1,500m以上で、山頂、尾根筋、凸形斜面上部等の風衝地や、乾燥の影響を受けやすい所に出現し、タイプは、灰白色の溶脱層がはっきり見出せないが集積層のある林野土壌のPd3型土壌にあたるものが多い。これより標高の低い山頂、尾根筋、凸形鉦面の中腹~上部には乾陛褐色森林土壌、中腹には褐色森林土壌、山麓や凹形斜面の下制には湿性褐色森林土壊が出現する。

中生層の「山中地溝帯」の地域も、古生層の場合とほとんど同様に、山頂~中腹、山麓にかけて、乾性-適潤性-湿性の褐色森林土壌が対応して出現するが、一般に古生層のものよりやや腐植の浸透が少なく、埴質で緻密である。またこの地域と古生層地域北部の山頂緩斜面や平坦面には、ロームの黒ボク土壌、淡色黒ボク土壌の分布がみられるが、出現面積は広くない。

南東部の丘陵地、台地の土壌は、埴質、重粘な粘土を母材とし、乾性~弱湿性の褐色森林土壌で、通気、透水性、栄養状態等良好でなく、一般に林地としては生産性が低い。

また、「三峰」図幅に出現したものと同様に、古生層を基盤とした接触変質による石英閃緑岩、ホーンフコエルス等を母材とした土壌が、図幅の南西部に僅か出現している。この土壌も地形的にも古生層の中に包括され得るもので、古生層母材の土壌と大差はないが、乾性土壌はより乾性土壌に、湿性土壌はより埴質で、腐植の浸透が少ない傾向にある。

耕地土壌は、河岸段丘面にあるものと、河川上流の小谷底、及びその周辺緩斜面にあるものが主であるが、小面積、現河川沖積地にも分布がみられる。段丘面土壌は、段丘堆積物を母材とし、表層、下層とも腐植に乏しく、壌質が主である。細小の円または半角礫を含み、下層では礫含量を増し、礫土、あるいは礫層となる場合がある。ほとんど、畑地として利用されている。

小谷谷底、および緩斜面地の土壌は崩積あるいは、残積性で、母材は山地丘陵の基岩に由っているため区々であるが、おおむね腐植含量は少なく、壌質ないし粘質であるが、強粘質のものも存在する。表層は細小未風化、半風化の角礫、半角礫を含む。下層は半風化、の基岩、強粘質の基岩風化土壌となる場合、巨礫層となる場合などがある。主に畑地であるが、段丘と丘陵の境界で、狭小な水田もみられる。

現河川の沖積面の土壌は砂礫質土壌であり、畑利用されている。

(2)土壌細説

2-1山地の土壌

(1)乾性褐色森林土壌

中津統(Nk)秩父古生層の粘板岩、砂岩、チャート、輝緑凝灰岩、石灰岩を母材にした乾性の残積土で、山頂や尾根筋にせまく分布する。Ao層が発達し、F-H層下部またはH-A層上部に菌糸綱層(M層)があり、A-B層は腐植に乏しく、粒状構造で、B層との境界は判然としている。森林土壌としての生産力は低い。

大河原統(Ok)Nk統と同様、古生層の粘板岩等の岩石の風化物を母材とし、主として尾根筋や尾根に近い微凸斜面にせまく線状に分布する乾性形の残積土である。前のNk統よりやや水分環境の良好なところに生成されたもので、表層に菌糸綱層は認められないが、表層から下層にわたり堅果状構造や軟粒状構造が出現している。A層はやや腐植に富んでいるが浅い。スギの造林には適さない。ヒノキ、アカマツの造林は悪くない。

三田川統(Mt)「山中地溝帯」といわれる中生層の地層で、礫岩、砂岩、貢岩、泥岩、粘板岩あるいはこれらの互層から成る岩石を母材とし、山頂や屋根筋にせまく線状に出現する乾性型の残積土である。腐植に富む黒~暗褐色のA層はうすく、H-A層となることが多い。表層は粘状構造で、下層は明るい褐色である。表層に菌緑綱層を見出すこともある。アカマツ、モミ等が生育している。土壌生産力はあまり高くない。

小倉沢1統(Or1)図幅南西部南天山地で、石英閃緑岩が古生層を貫き、また接触変質を支えて種々の変質岩をつくっており、これらを基岩とする、急斜地、懸涯上部のせまい尾根筋に分布する乾燥形の残積土である。Ao層とくにFまたはF-H層が発達し、A層は腐植に富むが浅く、黄褐色のB層に急変する。ヒノキ、コメツガ等の天然性林が成立している。土壌の生産カは低い。

(2)褐色森林土壌

日野沢2統(Hi2)Nk統と同様、古生層の各種岩種を母材とし、あまり乾燥を受けない山頂緩斜面や鞍部をはじめ、山腹では凸形の急斜面や緩斜面など、ほぼ中庸の水分環境下に生成されたものである。黒~暗褐色を呈するA層は比較的深く、褐色のB層に漸変している。緩斜地のものは土層は深いが緻密であり、急斜面のものは腐植の浸透が多いが礫が多く土層は浅い。標高1000m以下ではスギ、ヒノキの造林に適する。土壌の生産カは高い。

川浦統(Kw)Hi2統と同様、古生層の岩石を母材とした適潤性の褐色森林土壌であるが、これよりもやや上部に出現し、より乾燥の影響の認められる土壌である。FまたはF-H層が堆積し、暗褐色のA層はうすく、B層は堅くしまり、腐植に乏しい。スギの生育はHi2統に劣る。ヒノキの生育は良好である。

三山統(Sn)Mt統と同じ中生層の「山中地溝帯」地域の礫岩、砂岩等を母材とする崩積土または一部歩行土で、斜面下部の凹形斜面あるいは沢沿いに出現する。A層はあまり厚くなく塊状構造で団粒構造は少ない。B層は黄褐~褐色で埴質であり堅い。古生層母材の褐色森林土壌に比べ、土壌の生産カはやや低い。

赤平統(Ab)Sn統と同じ山中地溝帯の礫岩等を母材とする歩行土または崩積土で、Snよりは水分供給のやや不良な広尾根、山腹中央部に出現している。斜面長が、他の中、古生層の地帯に比べ短いので、A層への腐植の浸透は少なく、層位も厚くなく、B層も褐~黄褐色で緻密であり、A層下部に堅果状構造の出現する場合が多い。

小倉沢2統(Or2)Or1統と同じ地域で、山頂から山腹にかけて出現する歩行土まだは一部は崩積土である。出現面積は僅少で、古生層母材のHi2統に比べA層の色がうすく、全層が埴質でやや固い。Hi2統よりもやや生産力が落ちる。

内手統(U)山間谷あいの緩傾斜地に、不偏的に分布する。崩積あるいは、残積土壌である。母材は古生層、中生層の堆積岩であり、表層腐植を欠き、壌質ないし粘質で、未風化、半風化の角礫を20~30%含み、地表下50cm以内で未、半風化の礫風あるいは岩盤となる。傾斜地のため、水蝕や養分の流亡をうけ易く、また耕土層が浅く、礫含量の高いことから、生産力は不良である。桑園、普通畑として利用される。

柴統(Sb)U統より幾分、緩やかな傾斜面、谷底の平坦部、山添いの段丘面に分布する。古生層および中生層母材の、崩積または残積性土壌である。細中粒の角礫、半角礫を含むが、下層1m以内に、礫層、岩盤が出現しない点で内手統と区別された。利用形態は内手統と同様である。

(3)湿性褐色森林土壌

日野沢3統(Hi3)Hi1統、Hi2統と同じ古生層の各種岩石を母材とし、沢筋、谷頭、沢沿いの凹形斜面に出現する崩積土で、適潤~弱湿性の水分環境下に生成されたため通気、透水性が良好で、栄養に富んでいる。普通Ao層を欠くが、標高の高いところのものは、しばしばL層及びH層(またはH-A層)が発違する。A層は深く腐植に富む暗色で、団粒状あるいは塊状構造となり、下層は塊状あるいは無構造で、やや灰色がかったB層に漸変する。理化学1生ともにすこぶる良好で、スギ、ヒノキに最適の土壌であり、生産カがきわめて高い。海抜高の高いところでは、シオジ、サワグルミ、カツラ等の有用広用樹の良好な生育が期待できる。

河原沢統(Kz)Mt統と同じ中生層の「山中地溝帯」地域で、礫岩等の岩種を母材とし、沢筋、谷頭、山麓凹形緩斜面等適潤~弱湿性の水分環境下に生成された崩積土であり、通気透水性が良く、栄養に富んでいる。古生層母材のHi3統に比べるとA層がやや浅く、全層がやや粘質か強いので、これよりも生産力がやや劣る。しかし、スギ、ヒノキの造林に適し、良好な生育が期待できる。

小倉沢3統(Or3)Or1統等と同じ石英閃緑岩、ホーンフェルス等を母材にし、斜面下部、沢沿い、谷頭、崖錐等の水環境のよいところに生成された崩積土である。表層は腐植に富み団粒状構造であり、下層は埴質が強く黄褐色~褐色でかなり堅い。古生層母材のHi3統に比べると生産力はやや劣る。

(4)黒ボク土壌

城峰統(Jo)山地の平坦地または尾根近くのゆるやかな斜面に保存されている火山灰を母材にした土壌である。この図幅では、群馬県境の志賀坂峠、二子山、坂丸峠、父不見山等に分布がみられるがあまり広くない。A層はすこぶる腐植に富んだ黒色で、黒褐色に漸変し、褐色のB層との境界は明瞭である。表層は軟粒状構造が発達するが、壁状となる場合が多い。以前にはカヤ場として利用されていたが、最近はヒノキ、スギ等の造林地と癒なっているものが多い。適潤~弱湿性のものは、土壌の生産力は低くない。

(5)淡色黒ボク土壌

宝登山統(Ho)Jo統と同様火山灰を母材とする土壌で、Jo統より海抜高の低い山頂緩斜面、平坦山腹等に保存されているが、中生層、古生層山地では、結昌変岩山地に比し出現面積は広くない。暗褐色のA層はあまり深くなく、B層は軽くて柔らかいが、下層はかなり緻密にしまっている。また、下部には基岩風化物に由来する土性の異なった土壌が出現することもある。Jo統と同様に腐朽浮石層や基岩細角礫を有することが多い。土壌の産力としては普通である。

(6)乾性ポドゾル化土壌

雁坂統(Kr)図幅西南部の標高1,500m以上の山頂、せまい凸斜面上部、突出した尾根筋等寒冷で乾燥を受け易い場所に生成される。この統は、林野土壌のPd3にあたる。Ao層が厚く堆積してスポンジ状を呈し、物理性が悪く、腐植の浸透したA層は浅く、赤褐色のB層からB-C層の基岩となる場合が多い。植生としては、シャクナゲ、アセビ、ヒメコマツ、コメツガ、カンバ類、シャラノキ、スズタケ等がみられ、地表にはコケ類、シダ類が生育している。この土壌の造林適木はなく、天然更新が行われている。

雲取統(Ku)Kn統と同じ標高の高い山地地域の尾根筋で、Kn統よりもつよくポドゾル化を受けた土壌である。この図幅では、南西部長野県境付近に小面積出現する。これは林野土壌のPd1またはPd2に相当する。Ao層とくにF層、H層が厚く堆積し、腐植の浸透したA1層の下に灰白色の溶脱層(A2層)があり、その下に集積層のB層がみとめられる。この土壌も造林適木はなく、天然更新が行われている。

(7)その他

岩石地(RL)固い石灰岩やチャートできわめて急峻な岩石地をつくっているところが少なくない。

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2-2丘陵地及び台地の土壌

(1)乾性褐色森林土壌

長尾根1統(No1)図幅南東部の「秩父盆地」の西縁部で、第三紀層の泥岩、砂岩及びこれらの互層のものを母材とし、盆地周縁部や丘陵の頂部から中腹にかけて分布する残積土または一部歩行土である。一般に土層は深いが腐植に乏しく褐色~黄褐色を呈し、表層には堅い堅果状構造や塊状構造があり、下層は壁状できわめて固くしまっている。スギの造林には不適で、アカマツ、ヒノキは生育できる。

小鹿野統(Og)No1統と同じ秩父盆地西縁の丘陵地及び段丘において、山頂の尾根筋に幅狭く分布している乾性の残積土である。No1統よりもさらに地形的に乾燥を受け易い環境下に生成されたものである。Ao層があり、A層またはH-A層の下部には外生菌根による菌糸綱が発達している。A層は細粒状構造で浅く、B層は固くしまっている。土壌の生産力は不良で、アカマツ林あるいはコナラ等の天然生広葉樹(雑木)林になっている。

(2)褐色森沐土壌

長尾根2統(No2)No1及びOg統と同じ秩父盆地周辺の丘陵地及び段丘において、主として斜面下部と歩行または崩落堆積土壌である。これは第三紀層泥岩、砂岩、礫岩等の岩石風化物を母材にして、中庸ないしやや湿りの環境下に生成されたものである。暗褐色のA層はやや深く、軟粒状構造が発達するが、下層は黄褐灰色を呈し壁状である。水分、養分にやや富むが、スギの成長はあまり良くない。ヒノキの成長は良好である。

贄川統(Nw)図幅西南部でNo2統と同じ第三紀層の段丘において、比較的開析の進んだ沢に沿った凹地、谷頭等に出現する崩積土である。一般にA層の色は暗褐色であまり固くないが、かなり厚く、AA-B層からB層に漸変することが多い。礫は少ないが細角礫に富むものもあり、埴質であるが透水性など良好で、第三紀層母材の土壌としては理化学性の良好な土壌で、生産力もかなり高く、スギ、ヒノキの成長は良好である。

蒔田統(Ma)第三紀層丘陵の裾から段丘上位にかけて分布する。5~8゜の傾斜地が多く、本図幅では尾田蒔丘陵の小森川沿い、丘陵の赤平川沿いに分布する。第三紀泥岩類を母材とするが、部分的に火山灰を混ずる場合もある。崩積または残積性の土壌で、表層は角礫、半角礫に富み、土性は粘質で、腐植を欠き、下層は礫含量が高まり、基岩の風化、半風化礫層となる。基岩風化物は強粘で黄褐色の酸化沈積物を含むことが多い。桑園、普通畑となっているが、生産力は中庸である。

飯田統(Id)尾田蒔丘陵から赤平川段圧に移る、和田附近及び伊豆沢沿いに分布する。Mi統の下位にあり、層序的には蒔田統の上に段丘堆積物母材の土壌が覆った形となっている。表層は細、小の円礫を含み、3%程度の腐植を含む壌質土壌である。下層は一般に粘質な第三紀層泥岩風化物からなり、角礫、半角礫に富んだ土壌となる。ほとんどが桑園である。

和田統(Wa)小森川と赤平川の合流点、薄川と小森川の合流点附近の各段丘に分布する。母材は非固結な段丘堆積物であり、表層は腐値含量2~3%の壌質土で、細、小の円礫を30%程度を含む、地表下40~50cmでは礫含量は60%を超え、礫土ないし礫層となる。桑園利用が約40%あり、その他は普通畑となっている。生産力は高くない。

(3)褐色低地土壌

釜の上統(Km)小森川と赤平川の合流のめ河川敷(河原)に小面積存在する。沖積土壌であり、全層腐植を欠く。表層の土性は壌質であるが、細~中円礫に富む。下層は砂質となり、礫含量も更に高まり、未風化大~巨円礫層となる場合が多い。桑園となっているが、耕地としては不良である。

(4)細粒灰色低地土壌

正永寺統(Sg)第三紀層丘陵に接する段丘面に帯状に分布する水田土壌である。本図幅では四阿屋山丘陵に接する赤平川段丘に小面積分布している。

第三紀層風化堆積物を母材とした強粘な土壌である。全層腐植を欠き、構造の発達は弱度、黄褐色班鉄が見られる。下層にはマンガン班も認められる。排水はおおむね不良であるがグライ層は出現しない。

土壌統一覧(1)(JPG:521KB)(2)(JPG:141KB)

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4傾斜区分図

関東山地には大きな起伏変化が発達しているため20゜以上の傾斜区分が適応する。一方、秋父盆地内はさほどの変化はない。しかし、解析が進んだ箇所は30゜未満の傾斜も局所的に存在する。

本図幅のランクで見ると、中間勾配の20゜~30゜未満が圧倒的であり、次いで15゜~20゜未満の山地が広い。15゜以下の緩傾斜は丘陵地、山腹、山麓緩斜面などに見られる。赤平段丘面および現河床面3゜未満の平坦面を形成する。一方40゜以上の急斜面は両神山、天理山、二子山、白石山周辺、神流川およびその支流の谷壁沿いに分布する。この他、二子山地、両神山地、南天山地には山陵線の各斜面に局所的に分布する。

「万場」図幅の傾斜区分図は一連の地形成長の過睡で、一方では地殻変動の影響、一方では各時代の表層地質の岩質素材、地質溝造の支配から導き出されたものを刻明に反映している。こういった地史的背景の産物であるから、上述のランクの分布は無映序になってはいない。本地城の古生層発達地或において見ると、二子山地以南と以北とでは地形全体の起伏が異なっているし、岩質の構成物質の量比が異なっている。前者は畦質岩、石灰岩発達地城であり、後者は輝緑凝灰岩発達地域である。従って、機械的な侵食は後者の方がはるかに大きいため、傾斜区分のランクは下がる。

河原沢川沿いの中生層は同河川を軸に複向斜構造が発達するため、両古生層発達地域から河原沢川に向かっての急傾斜が発達している。また第三紀層からなる秩父盆地では、古・中生層地城に比べ、侵食に弱いため、壮・老・年期地形を呈している。そのため、緩傾斜が多くなる。

(埼玉大学松丸国照)

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5水系・谷密度図

「万場」図幅内の水系は一般約には基盤岩とその構造に支配されている。つまり、関東山地内の主要河川が殆んど、秩父古生層の一般走向であるNW-SE、WNW-ESE方向に規制されている。また、古生層に狭まれ、河原沢川沿いの地溝帯に分布する中生層もやはり一般走向NW-SE方向に規制されている。しかし、主要河川の支流の局所的な蛇行は基盤岩の支配よりも断層、褶曲による地質構造の支配を受けていることが多い。

これに関しては表層地質図との対照で読みとれる。二方、秩父盆地内の水系は第三紀層の堆積状態に支配されている。吉田川、小森川、伊豆沢川は第三紀層の走向にほぼ一致している。また、秩父盆地内に流入する主要河川のうち、飯田から小鹿野町磐若方面に南東流する河原沢川-赤平川はNW-SE方向を向き、第三紀層の一般傾斜方向にあたる。しかし、この流向は小鹿野町観音山から南東の巴川に至る観音山-巴川構造線(森川、1968)の裂線方向に一致するもので、第三紀層の走向がNS~EWに局曲する構造に大きな影響を与えたであろうと見られるため、その影響が大きいと思われる。

谷密度は作業規程によって算山した値であり、この値を見ると、関東山地、秩父盆地とも類以した谷密度を示している。しいていうならば、後者の方に30以上の値がないのに反し、関東山地には両神山地に見るように、舳畠中で最高値38を示している。これは関東山地は隆起地塊にあたるためで、複雑な谷が形成されたこと、造構造運動による断層の発達が良好なため、それによる谷の形成があったこと、を反映した数値であろう。

本図幅内の水系および谷密度は構成している表屑地質および地質構造が大きな役割を果している。主要河川がこれらによって流水を規制され、開析谷は緩・急傾斜面に従谷を形成している。従谷は主として、岩質の強弱の算定侃に鋭敏に反映されている。

(埼玉大学松丸国照)

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6利水現況図

この地域は、両神山、八丁峠、赤岩峠等秩父原生林に覆われた急峻な山々が連なり、これらの山々が県境、流域界をなしている。各河川には秩父山地を深く侵食してV字谷をなしている。中津川日雨量335.0mm(昭和24年8月31日)、上吉田日雨量227.0mm(昭和33年9月26日)を記録した。

神流川には、昭和43年に完成した、下久保ダムがある。下久保ダムの集水区域は323平方キロメートルをようし、洪水調節水道、工業用水、発電等の多目的ダムで神流湖と呼ばれ地域及び、近隣住民の憩いの場として利用されている。

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7防災図

この地域には、砂防指定地、地すべり防止区域急傾斜地崩壊危険区域等が指定されており、国土の保全と、地すべり、がけ崩れ、土石流等、災害からの人命保護のために砂防堰提、流路工等が構築されている。

下久保ダム

埼玉県児玉郡神泉村(右岸)群馬県多野群鬼石村(左岸)地先に多目的ダムとして水資源開発公団が神流川を堰きとめ昭和42年に完成した物である。

ダムのタイプはじょう力式アーチダムで高さ310m有効貯水容量120,000,000立方メートルで洪水調節、発電、水道、工業用水の供給、流れの正常な昨日の維持管理を図っている。

水道事業一覧(JPG:79KB)

お問い合わせ

企画財政部 土地水政策課 総務・国土調査担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 本庁舎2階

ファックス:048-830-4725

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