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掲載日:2025年11月7日
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和光市や朝霞市、志木市の委託事業として、高齢者の訪問栄養活動や調理教室などを行っている『特定非営利活動法人ぽけっとステーション』。全国でモデルとされている活動の内容について、山口代表理事と野島理事からお話を伺いました。(取材日:令和7年10月8日)。
この法人は、高齢者や障害者またはその家族に対し、介護保険、障害者支援に関する事業と、市民に対し、栄養や食事に関する指導、助言、啓蒙普及事業を行い、福祉と健康の増進に寄与することを目的とする。
★全国でも先駆けの食事・栄養指導による介護予防支援
★みんなが元気になれるコミュニティの場所づくり
(山口理事)元々、私は民間のケアマネジャーをやっていました。管理栄養士の資格を持っており、地域の栄養士さんが集まる朝霞保健所管内「えぷろん」という地域活動の団体に入っていて、そこで野島理事と知り合いました。
NPO法人設立のきっかけは、和光市から介護予防の訪問栄養の事業を開始したいという相談を受けたことです。そこで、「えぷろん」の管理栄養士さんに協力してもらい、野島理事と一緒にこのNPO法人を立ち上げました。和光市で介護予防の制度が始まった平成18年から、市の委託事業として訪問栄養指導の事業を始めました。
始めたばかりの頃は、何件の依頼が来るかもわからなかったので、私はケアマネジャーとしての仕事もしつつ、訪問栄養指導を徐々に増やしていくような形でした。最初の月は0件の依頼でしたが、徐々に増えていきました。
(野島理事)栄養士といえば病院や学校給食での仕事がほとんどで、地域でお金をもらって仕事をすることがなかったので、初めはその金額設定に苦労をしました。
例えば、栄養教室をやってくださいと言われても、その価格をいくらにするかを一から考えなくちゃいけない。今でこそ、栄養士会でも、例えば献立を立てるのに1件いくらという価格基準がありますが、当時はそれがまだなかったのです。
(山口理事)全国に先駆けで始めた事業だったので、本当に一つ一つ決めていったような感じです。今は、こういった事業も全国に広がってきていて、見学に来る方々もいます。私たちのような事業をやりたいという方々から、参考として具体的なお金の話などの質問を受けることもあります。
(山口理事)訪問栄養事業は、在宅療養者の自宅に管理栄養士が訪問して栄養や食事に関する相談・支援を行うものです。市から委託を受けてご家庭に訪問しています。
平成20年からは、和光市の本町小学校の福祉交流室で、食事や健康に関する相談や、講座を行う「ヘルス喫茶サロン」を始めました。(令和6年で事業終了)
平成26年には、高齢者の孤立予防や育児の相談など、世代間の交流を推進するため、誰でも気軽に管理栄養士や保健師・看護師による栄養・健康相談が受けられる「まちかど健康相談室」を開設しました。
その他には、栄養講座や通いの場保健事業といって、公民館や体操教室の場などに出張して、栄養の講座をする事業も行っています。
(野島理事)この地域は、団地、自衛隊宿舎、学校の集まりで普通の住宅がない地域なので、互いに顔の見える場にしたいと考えるようになったことです。そのきっかけとなったのは、東日本大震災です。私たちも栄養士会の災害派遣で被災地に行ったのですが、その際に、顔が見える関係になっておかないと、いざという時に何もできないということをすごく実感しました。そのような体験をしてきたので、私たちに何かできないかと思うようになりました。
(山口理事)有効な支援をするためにはコミュニティの拠点となる場所が欲しいと思って、このまちかど健康相談室をプロポーザルしました。ちょうど和光市と私たちの考えが一致し、採択されました。
(山口理事)ぽけっとステーション全体としては、37人のスタッフがいます。ケアマネジャーの事業とヘルパー事業も行い、私はケアマネジャーとしても活動しています。まちかど健康相談室では、管理栄養士が常駐しており、その他に看護師、保健師、歯科衛生士が交代で来ています。
利用者数は、実人数で月に約100人、延べ人数で約400人です。利用者のうち、男女比率は5対5です。大抵サロンというと、女性ばかり集まるイメージが多いと思うのですが、ここでは、5割が男性で、リピートして来るのは、結構男性の方が多くいらっしゃいます。輪に入るのが苦手な男性が多いですが、訪問で栄養支援をした方に対して、まちかど健康相談室を案内することで、だんだんと男性も増えていきました。
イベントや講座は予約制ですが、普通のサロンは、誰でも来られます。栄養士も看護師もいるので、血圧や健康診断の検査結果を持ってきて、「これ、どうなの?」といった相談をしに来る方もいらっしゃいます。また、介護をしている側の方も利用されますし、高齢者だけでなく、育児中の方も来て、離乳食の相談なども受けています。
(野島理事)まちかど健康相談室は日本栄養士会の認定栄養ケアステーションにもなっています。
(山口理事)園芸や体操、囲碁・将棋、手芸、折り紙、音楽などいろいろとやっています。私たちからの提案というより、利用者からの声で始めていったら、どんどん増えていきました。スタッフだけで教えることは難しく、得意な利用者の方が講師になっています。
(野島理事)利用者の方が、やりたいことがあるなら、やれるよう一緒に考えて実現したいと思います。「栄養士、看護師がいるので、相談に来てください」というだけではなかなか人は来ないので、来てもらうためにはいろいろな楽しいイベントがあったほうがいいなと思っています。
本来の栄養士の仕事ではないと思われがちですが、例えば、「明日は囲碁があるから、そのために頑張って食事して寝るぞ」と思うだけで元気になっていくんです。楽しみなことを目標に、元気でいるためにちゃんと食べようと思ってくれるのであれば、どんな活動でも良いと思います。ここでは、園芸クラブのような地域の人とも関わってもらう活動も行っています。
(山口理事)また、利用者自身が役割を持つということも良いと考えています。初めは「リーダーなんかできないよ」と言っていた方がサークルのリーダーとして活動していることもあります。
【園芸クラブ】
近所の小学校の花壇で活動。
【らくらく散歩】
団地内の散歩コースで散歩。
【体操】
看護師さんによる体操。
【専門講座】歯科医師の講座
【囲碁・将棋を楽しもう】
【ゲートボールを楽しもう】
【手芸を楽しもう】
【折り紙を楽しもう】
【お譲り会】
(野島理事)「お譲り会」というイベントを去年から始め、年に1、2回開催しています。部屋の片付けのきっかけにしてもらうため、必要なくなったものや手作りの作品など誰かに譲りたいものを自宅から持ってきてもらう形です。残ったものは持ち帰るというルールにしています。
このイベントをすると多くの人がまちかど健康相談室の前を通るので、いろいろな人にこの場所を知ってもらう機会になっています。チラシを渡して私たちの活動について説明し、興味を持ってもらい、気にはなっているけれど来たことはないという方にも来てもらえるよう働きかけています。実際、他のイベントも紹介するとその場で予約をしていく方もいました。
(野島理事)一人一人が楽しい気持ちになって、「来て良かったな。気持ちが晴れたな。また来たいな。」と思って帰ってもらうように心がけています。
(山口理事)固定の人だけの場所にならないよう、はじめて来る方も、いろいろ悩みを抱えた方なども、みんなが気持ちよく過ごせるように配慮しています。
(野島理事)まちかど健康相談室を15時に閉めたら、実はそこからが忙しいのです。
地域包括支援センターが、介護になる少し前の段階の方をまちかど健康相談室に連れてくることもあるので、その方が、きちんと来ているかどうかの状況の報告をしたり、地域包括支援センターから情報を収集したりします。
(山口理事)毎日来る方の様子がちょっとおかしいなと思ったら、地域包括支援センターに「こんなことがありました」という連絡をします。毎日開いているまちかど健康相談室だからこそ、それが出来ると思います。月に1回程度のサロンでは、なかなか利用者の様子の確認や状態を掴むことができないと思います。
やはり私たちがいろいろなところと繋がらせていただいているので、このような連携ができるのかと思います。地元の方に、こういう人たちがいるんだということを知ってもらうのが大切かなと思います。
(山口理事)和光市全体としては若い世代が多いのですが、この団地では、高齢化率が40%以上とかなり高いです。団地内での孤独死も起きますし、同じ棟内に住んでいてもお互いを知らないこともあります。まちかど健康相談室に来て、「あら、同じ棟なの」と気がつく方もいて、そういった意味では、ここがコミュニティの場になっていると思います。
団地周辺の学校関係や保育園や高齢者施設、郵便局、スーパー、自治会、民生委員、包括などが集まり、地区社協が立ち上がり、毎月困りごとなど懇親会に参加しています。団地のお祭りの手伝いや、避難訓練も実施しました。団地ごとにメガホンを使って「顔を出してください」と呼びかけて、ベランダから手を振ってくれた方に、非常食の「えいようかん」を渡したりしました。
(野島理事)やはり何か楽しくないと、なかなか参加してくれないので、そういった工夫をしました。東日本大震災の頃から、地域の繋がりについて考えるようになり、地域の人の集まりがあれば、そういったものに参加してみることも頑張っています。毎月1回、団地内のスーパーで出張相談をしていて、「あそこで血圧測定をやっていた人ね。」と覚えてもらえることもあります。
まちかど健康相談室の隣に保育園があるのですが、様子がおかしい高齢者をみつけて、こちらまで連れてきてくれたこともあります。地域の集まりに顔を出し、保育園の方とも知り合えているからこその関係かなと思います。「あそこに連れていけばいいんだ」と思ってくれているのが嬉しいです。
(山口理事)団地内で倒れたり、怪我したりしている人がいると呼ばれて、すぐに駆けつけることも結構あります。ちょっとした“町の保健室”のようになってきています。
(野島理事)要介護だった妻を亡くし、昼から飲酒する生活をしていた80代の男性がいました。妻のケアマネジャーがサロンやまちかど健康相談室を勧めてくれました。
その方がサロンに来た初めのころは、お昼に菓子パンを持っていらしていたのですが、ここで料理講座などに参加するうちに、変化がみられ、おにぎりに変わり、そのうち、おかずのお惣菜もつけるようになり、さらに、自分で料理したお弁当を持ってくるようになりました。サラダのドレッシングにも減塩を意識するなど、徐々に改善していくようになり、お酒の量や回数も減っていきました。最近では、市が養成しているヘルスサポーターにも登録して、サポーターさんとして活躍をしています。
(山口理事)糖尿病や腎臓病などがあり、食事制限や水分制限など医者から言われているけど、どう食べたらいいかわからない高齢者の方に、ご自身やご家族で実践可能な方法を一緒に考えていくのが基本になります。「栄養指導」というより、「食の自立支援」になります。料理の経験が少ない男性高齢者の方に、簡単な料理ができるようになっていただいたり、コンビニやスーパーでの買い物の利用の仕方やヘルパーさんへの情報提供などもしています。高齢者だけでなく、障害者や育児家庭にも訪問し、一件一件異なり、ケースバイケースで対応しています。
(野島理事)例えば、事情があって親が食事を作れない場合に、お子さんが自分でも簡単に作れるものを伝えたり、家計の見直しも手伝ったりします。毎日菓子パンを買うよりも、食パンを買えば何日間も食べられることを説明したり、毎日ペットボトル飲料を買う代わりに、ペットボトルの再利用や水筒を使うことを勧めたり、幅広くお話をしています。
(野島理事)今は国が、介護予防、疾病予防、重症化予防を推進するようになっています。
一人暮らしの方で、透析治療を受けたくないと、まちかど健康相談室に毎日やってきて、いろいろ食生活の助言をし続け、10年以上も人工透析にはならずに過ごせた方がいました。
たらればの話にはなりますが、私たちの活動は医療費削減にも貢献しているのではないかと思います。このまちかど健康相談室に通うことで、腎臓の悪化や人工透析を食い止めた方はかなりいると思います。
病気にならないように自分から体操教室や体育館に通おうと思える人や、料理教室に自主的に参加する人は、食生活も大丈夫な方が多いです。でも、教室とかに参加しない人たちに対して働きかけたいというのが、私たちのそもそもの始まりです。そういった方々に声を届けるには、行政と協力して、伝えていくことが大切だと思います。
(山口理事)人工透析の医療費は、月に約40万円、年間に約480万円ほどかかり、とても高額になります。人工透析になる前の元気なうちに過ごしていけるよう、予防に力を入れるのが一番だと思います。
人工透析を受けることになった方や、脳梗塞で片麻痺になった方にも、関わりますが、やはり皆さんから「あの時ちゃんと食事に気を付ければよかった」という後悔の言葉をたくさん聞きます。軽度で維持したり、重症化しないよう、食事に気を付けようとする方を増やしていきたいという思いで活動しています。
(山口理事)このまちかど健康相談室を維持しながら、地域での繋がりをもっと深くしていきたいと思っています。
(野島理事)私たちの他にも、いろいろな場所で、こういった取組をするところが出てきてくれれば良いなと思っています。

【写真】(前列右から)山口代表理事、野島理事(後列)ぽけっとステーションのスタッフの皆さま
栄養支援にとどまらない、楽しい活動を通じた取組は、地域社会の健康づくりの拠点として全国的にも注目されており、まさにこれからのレジェンド!利用者の方も働いているスタッフの方も笑顔が多く、温かい雰囲気が印象的でした。ぽけっとステーションの皆さま、インタビューにご協力いただき、どうもありがとうございました!
※本記事の掲載内容は取材時点の情報です。
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