インタビュー・コラム

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掲載日:2022年11月28日

増田 具子(ますだ ともこ)さん

File4_増田具子さん

プロフィール

埼玉県越谷市在住。一児の母。飲食店、WEB制作会社、新聞社などでの勤務を経験したのちWEB制作を主として起業する。有限会社アンサンブルアスク代表取締役。
39歳での出産・育児で悩んだ自分自身の体験をきっかけに「神社deままマルシェ」を立ち上げる。神社deままマルシェ実行委員会代表も務め、会社経営と地域活動の両立を図る。

神社deままマルシェ:https://mamafes.info/koshigaya/

有限会社アンサンブルアスク:https://ensemble-ask.com/

バランスのグラフ

起業するまでにいろいろなことを経験

大学在学中、生演奏が聴ける小規模な飲食店を運営したことがありました。ホームページを作成し公開したところ、遠方に住んでいるお客様も来店していただけるようになりました。そのような経験からホームページやインターネットの力ってすごいなと感じ、飲食店を辞めて、WEB制作会社に就職することにしたのです。

初めての会社勤めで、毎日朝から夜遅くまで働くことが当たり前だと思って働いていましたが、そのうち、自分の働き方や会社の営業方針・顧客対応について疑問を持つようになりました。その後体調不良となり、病気で退社することになってしまいました。

体調が回復した後も、WEB制作会社や新聞社を転々としましたが、毎日当たり前のように会社に行くことが辛いと感じることが多くなり、会社という大きい組織で働くより、自分のスキルを活かして自分のペースで納得する仕事がしたいと起業をしました。

会社勤めではとても苦労しましたが、そこでWEB作成のスキルや仕事のやり方を身に付けたことは大きな財産になりました。そして、そのスキルは起業につながりました。いろいろな経験は無駄ではなかったと思います。

心の病で退職した経験、産後鬱の経験など、自分が経験したからこそ他人の悩みにも真剣にかかわることができると思っています。転職で職種を変えながら苦労しつつも、今は楽しい人生を送っている自分、「起業して良かった」と思える自分がいます。

増田2

仕事のやりがい、目標

起業して、自分のこだわりが仕事に反映できることや自分のペースで仕事ができることは良かったのですが、飛び込み営業は苦手だったので、営業にはとても苦労しました。そこで、青年会議所という地域の団体に入りました。青年会議所の中で、地域のために何か活動しようと一生懸命に頑張っていたところ、その姿勢が認められて、私という人間を信用してくれる人が増えたのだと感じました。青年会議所の活動を通じて、企業経営者等の人脈も広がり、仕事にも繋がっていきました。

今では、ありがたいことに知人の紹介で仕事をいただくことが多くなっています。「増田さんに作って欲しい」と指名を受けて、お客様に納得しただけるホームページができた時は、本当にやりがいに感じます。仕事の目標は、「神社deままマルシェ」などの地域活動と自分のWEB制作のノウハウを融合して、まちづくりや社会に役立つ新しい事業を創り出すことです。AIの進歩等でWEB制作の仕事も人間が関わらなくてもよくなるかもしれません。だからこそ、人間が考え、人間が関わって社会に役立つ仕事をしていきたいと思います。

会社経営と地域活動「神社deままマルシェ」の両立を図る

<「神社deままマルシェ」とは>

越谷香取神社で、毎月第3金曜日子育て中女性向けのイベントを開催しています。雑貨屋や飲食店など約30店舗の出店があり縁日のような雰囲気の中、イベントの開催を通して、女性起業家の応援、育児中の女性の息抜き・情報交流の場所を提供できるような活動をしています。出店、来場、ボランティア参加など関わり方は人それぞれで、運営・スタッフ・出店者・参加者ともに女性が中心で開催しています。無料託児・多様な相談会・仮設授乳室なども用意しており、小さい子を連れて来ることができる、育児中の女性にとって優しいイベントを目指しています。

<マルシェを始めたきっかけ>

39歳という高齢出産で息子を出産し、育児が始まると、今までは自分のペースでできていた仕事がまったくできなくなってしまいました。出産前は従業員を雇わなくても今までどおり働けると思っていたのですが、現実は厳しいものでした。子供の体調不良で保育園からの呼び出しが頻繁にあり、仕事のドタキャンが度重なり仕事は激減し、子供がいて働くことの大変さを経験しました。夫は育児についてとても協力的だったのですが、ちょうどその時期は単身赴任になり、実質的にはワンオペになってしまったことが負担を増加させました。

次第に育児が孤独だと感じるようになり、私はいつも辛さを抱え追い込まれていきました。毎日夜中2、3時間おきに夜泣きで起こされ、眠れない日が続き、素直に子供をかわいいと思えなくなってしまいました。39歳という年齢での出産も「今まで多くの人生経験を積んできたから育児なんてできて当然」みたいな変なプライドが邪魔となり、孤独感を深めていったのかもしれません。育児がとても「しんどい」と感じる時期が続きました。

行政が開催している子育てサロンなどの情報も見ていましたが、ひとりぼっちになっていた私は、怖くて行けなかったのです。知らない人がいっぱいいて、私みたいな高齢で出産した人は子育てサロンなんか利用してはいけないと思い込んでいました。

引き続き苦しさを感じていた中、たまたま吉川市のNPOが開催するマルシェに行きました。出店者は女性ばかりで、赤ちゃんが泣いていても誰一人嫌な顔をしない、子供連れのお母さんがいっぱいいる心地よい空間でした。歩いているだけで、優しく話しかけてもらえる場所でした。ひとりぼっちの私は、ひとことふたこと会話ができただけで、すごいほっとしました。たまたまマルシェに行ったことが、張りつめていた気持ちを楽にするきっかけになりました。ただ、このようなマルシェも開催回数が非常に少なく、常に心のよりどころとするには至りませんでした。

ある時、「妊産婦死亡原因、自殺1位」という国立成育医療研究センターの調査結果をニュースで見て、35歳以上や初産の割合が高いことを知りました。

自分が子供を産んで育児を「しんどい」と思ったことは、「自分が弱いから」、「ダメ人間だから」感じたことではなく、私以外の人も同じように感じていることだということを知ることができました。

「赤ちゃんを連れて外出することの困難さ」「同じ子育て中の人と知り合えるきっかけづくりは、自分が努力しないとできないこと」は自分が実体験で感じており、育児の悩み・孤独を抱えている人の助けになりたいと考えました。

正直、人と話すこともワークショップ開催も苦手な分野でしたが、マルシェという「場」がこの問題の解決に向かう手段だと思っていたので、自分にとってやりやすい方法を模索しながら自分でマルシェを始めようと決意し、運営者も来場者も女性が中心の「神社deままマルシェ」を立ち上げました。

増田3

ままマルシェを始めて嬉しかったこと

ままマルシェに来て、ちょっと話しかけるだけでも「辛かった」と泣き出してしまうママたちがいます。泣ける場所を用意してあげられたことを良かったと思います。

育児中の小さな不安、プレッシャーや孤独が積み重なっていくことは産後鬱になる要因の一つだと思っているので、ままマルシェが少しでもママたちの気持ちが楽になってくれる場所になっていると感じたときは嬉しく思います。育児休業中で不安になっているママもいっぱいいます。ここへ来て、社会との繋がりを感じ笑顔になってくれる人が一人でも増えれば嬉しいです。

私自身も仕事や日常生活で嫌なことがあったり、ストレスを感じたりすることはあります。でも毎月ままマルシェがあると思うと、自然と頑張ろうと思えるのです。いつの間にか、マルシェから私自身がエネルギーをもらっていることに気が付きました。

悩みや不安を抱えている子育て中の女性へ

育児をしていて、「辛い・しんどい」と思うのは当たり前です。あなたは悪くありません。世の中の仕組みが今の時代に追いついていないのです。あなたは、充分がんばっています。自分を責めずに自分を労わってください。子育てが辛いと感じたときは、是非一度ままマルシェにご来場ください。

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「神社deままマルシェ」の様子

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