インタビュー・コラム

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掲載日:2021年11月1日

石田 七瀬(いしだ ななせ)さん

File3_石田七瀬さん

プロフィール

新潟県佐渡市出身。埼玉県川口市在住。
NANASE株式会社代表取締役。ものづくりコーディネーター。
「工場のお医者さん」を目指し埼玉県川口市を拠点に日々活動している。
町工場と企業をつなぎ、課題の解決・サポートをおこなう。特に人材育成やコストダウンを得意としており、これまでにのべ100機種以上、平均50%のコストダウンを実現。
建設業・精密部品・産業機械の製造会社など数々の現場にて、購買担当を15年ほど経験。
離婚、出産、育児、介護などの経験を生かしてキャリアコンサルタントとして活躍しながら、女性の働き方改革にも積極的に取り組んでいる。
プライベートでは 7 人の子を持つ母でもある。

前職までの経験が今の仕事に繋がった

私は、前職までの経験を生かして、独立・起業しました。主に『ものづくりコーディーネーター』というお仕事をさせていただいており、『工場のお医者さん』だと思っています。工場それぞれの長所・短所について、上辺だけでなくしっかりと理解し、それぞれの問題解決に繋がるようなマッチングを行うことで活性化をはかっていきます。

新しいシナジーを生み出せるマッチングを意識して

様々なものづくりの現場で15年間購買担当を経験してきました。
前職で、さらに幅広い経験を積ませていただいた結果、特長のある工場と企業をマッチングしていくことの大切さを実感し、その専門性を生かした仕事をしていきたいと考えるようになりました。
工場のもっている技術を、高い技術だけを求めている方たちにとっては直球でぶつけていく場合もあれば、価格を考慮する場合もあれば、品質にこだわったりとか、納期が重要だったりなど、いろいろなポイントがあります。本質的なことをしっかり理解してマッチングさせていただくからこそ、きちんと成果が出せているのだと思います。

仕事での底力をつけられた前職での苦労

前職に入社してから1ヶ月後に、その仕事を30数年やっていた担当者から「俺、来月で辞めるから!」と言われてパニックになりました。それまでに町工場で働いていた経験はありましたが、仕事をしていた分野や受け持っていた工程のポジションなどが部分的なものだったので、図面も見ることができないし、加工の細かいところなど当然わからないので、非常に苦労しました。外部業者から値引きを要求されたり、図面通りにやったはずなのに「違うから追加工事を無料でしろ」などと言われたりなど、現場では常に戦いでした。さらに、担当が女性に変わったということで、強気に出てくる業者さんもいて大変でした。しかし、段々と知識がついてきた頃には自分の仕事を相手に認めていただけるようになり、逆に現場でアドバイスをいただけることが増えました。本当に誠意を持って取り組んでいくと良い結果に繋がっていくのだな、と実感しました。

コミュニケーションを大切にして業務をスムーズに!

最近では、AIでマッチングするコンサルティング企業も出てきていますが、結局うまくいかないことが多いと感じています。AIは本当に素晴らしいとは思うのですが、仕事をしているのは人間です。まだ、人間の深いところをAIに読み込ませるには至っていないと思います。
だからこそ、大切にしなくてはならないのが「コミュニケーション」だと思います。私はコストダウンを得意としていますが、有効なコストダウンもコミュニケーションがしっかりできていなくては実現できません。相手にとって、より役立つ内容について、自分がどのくらいマッチした提案ができるのかなど、もうそれも本当にパズルですよね。コミュニケーションがしっかりとれているお陰で、平均で50%のコストダウンが実現できています。最高では、80%くらいコストダウンに成功したケースもあります。
また、地道に努力していると助けてくれる人も現れてきます。その人がそこの会社で決裁権がある人ではなくても、うまく社長とか現場の人を調整していただけるなど、キーマン的な立場になってくれれば、業務がスムーズに動きます。

女性だからこそできることを生かして!

7人の子育てを経験していることは、自分の中ですごく生きていると思います。
例えば、何にも言葉がわかってない子供にいろいろなことを教えるとか、子供の行動を操作するような経験って、場面によって仕事に生かせると思います。母親として子供にしっかり向かい合ってきた経験があるからこそ、私は今の仕事が出来ていると思います。
いろいろなことを経験しました。女性だからと甘く見られたり、育休切りをされたこともありますし、妊娠しただけで雇用を打ち切られたこともあります。いろいろな経験をさせていただいたからこそ、今何かお客様のところで問題が起こっても「これはこう対応すれば大丈夫だよ」って自信を持って言うことができます。
女性は男性以上にマインドセットをしっかり作っていく必要があって、「出産したら時間が制限されるから働けない」とか、「子供を産んだらこれしかできない」ではなく、可能性は無限大なのだと考えるべきだと思います。

起業は夢と現実のバランスをしっかり見極めてから

私は起業を目指すのであれば慎重に行った方がいいと思っています。起業にあたってはいろいろな苦労があります。会社経営について知らないことが数多くあって、それは意外と起業塾とかでも教えてくれないことが多いと思います。本当に大切なことを教えてくれる人はなかなかいない、というのが現実なのだな、と実感してします。
「女性社長って素晴らしい」というような風潮は、私はあまり快く思っていません。起業しないとわからない苦労は本当に多いのです。起業を目指すのであれば、しっかりと自分の今の立ち位置を考えて、一番確実な方法を考えてみてください。独立して、年収何千万になりましたっていう方もいらっしゃいますが、普通は無理ですからね(笑)。起業を勧める人も、「起業っていいのよ」とか都合のいい話ばかりしないでほしいと感じています。

企業が、社員が独立していけるような土台を!

今後、もっといろいろな企業が、まずは企業内起業というようなポジションを作ってあげて、その先に業務ごと独立できる、というようなスタンスがもっとあってもいいのではないか、と考えてしまいます。副業が解禁になってきているのだから、そういう事例がもっと増えてもいいのではないでしょうか。機会があれば、もっと企業側に提案していきたいですね。内情がわかっている協力会社が増えるわけなので、企業にとってもプラスになるはずです。

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