インタビュー・コラム

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掲載日:2021年11月1日

鈴木 美緒(すずき みお)さん

File2_鈴木美緒さん

プロフィール

埼玉県春日部市出身。
株式会社grain grain 代表取締役。
保育園とデイサービスを一体とした施設、自然食を中心としたカフェとミニデイサービス・保育園を一体とした店舗、など2店舗5業態を経営中。

2015年 起業。『つぶつぶ保育園・デイサービスおむすび』wpオープン
2016年 さいたま輝き荻野吟子賞 受賞
埼玉県経営革新計画 認定
埼玉県知事企業訪問
2017年 2017年 さいたま Smile Women ピッチ ビジネスコンテスト 最優秀賞
とちぎんビジネスプランコンテスト キャピタル賞受賞
かすかべビジネスプランコンテスト ふれあいキューブ賞受賞
2020年 『came came 30(かめかめさんまる)』をオープン

いろいろな経験と思いが起業につながった

高校を卒業した後、体育教師になる夢を叶えるために、体育大学に進学しました。ただ、教師になる前に社会経験をしておくことが必須だと考えたため、まず一般企業に就職しました。私が選んだのはワタミ株式会社です。2年間で居酒屋5店舗の店長を経験しました。
そして、念願だった学校への就職が実現しました。
意外なことに、教師になる前に経理部からのヘルプ要請で、学校会計を簿記の基礎から学ぶ機会に恵まれました。「学校を数字で体感できる経験はない」と、前向きにお引き受けし、その後、晴れて教師になりました。
しかし、教師になる同時期に長女が生まれ、育児もスタートすることになりました。その結果、教師と子育てを両立することに2年で挫折。その後、専業主婦をしていましたが、東日本大震災をきっかけに、今後の生き方を模索している中、ご縁が重なり起業することになりました。

導かれるような流れで起業へ

実は、私の叔父が介護施設を運営していたのです。そんな叔父が事故で急死してしまい、その施設を運営する人がいなくなってしまいました。そんな中、いとこからの声かけもあり、私がその施設を使って事業を運営することになりました。
そんな流れで、非常に短期間で起業することを決めました。4ヶ月で法人登記まで済ませ、3ヶ月後には保育園を設立していました。広さがあったので、デイサービスと保育園を兼ね合わせる施設にしました。
これが現在も運営している『つぶつぶ保育園・デイサービスおむすび』の設立への流れです。

まったく知識がなかったからこそ、追うことができた理想

まったく知識も経験もない業種に突然飛び込む形になったので、最初から苦労の連続でした。そもそも介護も保育も行政ビジネスなので申請が必要なのですが、それについてもわからないことだらけで、知り合いに聞いたり自分で調べたりなど、時間もお金もかかりました。知識がないということは、お金がかかることなのだということも実感しました。しかし、知識を得てからでは起業はできなかったような気がします。
今は、その時に踏ん張って強い思いで起業して良かったと思っています。経験がなかったからこそ、リスクを恐れずに理想の業態を生むことができたのだと思います。2020年にオープンした保育園とカフェを併設した『came came 30(かめかめさんまる)』も、その一つです。

5つの業態のメニューを一つの厨房でこなす難しさ

複数の業態を運営することで意外と大変なのが、厨房のオペレーションです。ちょっと見では料理するだけなのになぜそんなに大変なの、と思う方もいるかもしれませんが、高齢者向けの食事やカフェのランチメニュー、デザート作り、お弁当作りなど動線が違う業務を一つの厨房でこなすことって大変なのです。担当者と相談しながら工夫を繰り返しています。

自分の仕事を手放していく努力

まだまだチャレンジ中ですが、自分が抱えてやっていた仕事をできるだけ手放す努力をしています。スケジュール管理などデジタルにして、アナログの作業を減らすようにも努力しています。
業態が増えスタッフの人数も増えると、いろいろと仕組み化していく必要が出てきます。経営者としては、いつまでも自分が抱えてやっている場合ではありません。総務部などを作って、自分ではなくてもいい仕事を出来るだけ手放すようにし、本来の経営に集中できるように組織を工夫していきたいと思います。
現在、スタッフの数も60名を超えました。大所帯になり、経営者としての意識もより強いものになってきました。

スタッフと、どのようなコミュニケーションをとっていくかが課題

起業して間もない頃は、スタッフを採用しても定着しない状況が続きました。まだ、経営者としても人間としても未熟でした。そもそも、私たちの業態は人がコアになるビジネスです。だからこそ、人間関係も大切にしていたつもりでしたが、現実にはマネジメントも経営もダメな状況だったと思います。本を読んだり、人の話を聞いたりして勉強し、ある時期を境にして人材も定着してきました。
コミュニケーションや気配りは、とても大事だと感じます。ただ話せばいいのではなく、相手にきちんと興味をもつこと、そしてスタッフに感謝をして接することが大事だと気づきました。スタッフのみなさまには成長させていただきました。
スタッフがより働きやすい環境にするためにも、自分としては思いやりとか真心を大切にしたいと考えています。目に見える福利厚生の充実なども大切だとは思いますが、目に見えない温かさ、そしてスタッフが楽しく働ける環境作りを意識して行きたいです。

女性は家に帰っても仕事が多い

女性は職場から家に帰ってもいろいろと仕事を抱えています。なので、職場では押さえつけることなどが無いようにしています。外で生き生きと頑張れるからこそ、家事も育児も頑張れるのではないでしょうか。
自分が社会で活躍できる時間がしっかりあるからこそ、他人に対しても余裕をもつことができるメンタルを形成することができると考えています。仕事をする時間を尊い時間にしていきたいですね。

起業をするなら、自分だけではなく誰かのために役立つことを!

起業を目指している方にお伝えしたいのは、楽しく誰かのために役立つ仕事をやって欲しいということです。自分の思いを信じて飛び込んでやってみればいいと思います。人と地球を大事にするSDGs(エス・ディー・ジーズ)なども大事だと思いますし、人・地域・自然など、他の何かのために働くということが、これからさらに大切になると思います。そして、自分のやりたいことを楽しくやっていただきたいと思います。
また、そのような人たちと繋がって行きたいと思います。思いの強い人たちが連携し、得意なものを生かし合うことで、新しい流れも生まれてくると思います。
ただ、ニーズにあったものを世の中に提供することが大事だという原理原則は忘れないでください。
私も起業してからわかったことの方が多いと思います。むしろ、今が一番勉強しているかもしれません。失敗してもいいのです。失敗からしか学びはないと思っています。人生は1回しかないので、やりたいことをしっかり行動に移すことが大事です。自分にとって一番大事な人のためにも、より健康であって欲しいと思いますが、自分の人生を目標をもって精一杯生きてください。

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