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掲載日:2023年12月18日

令和2年12月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(辻浩司議員)

奥山自然林の保全・再生で熊と人間の共生を

Q  辻浩司  議員(民主フォーラム)

昨年、今年は熊が人里に相次いで現れたり、人身事故も多く発生している事態となっています。埼玉県にも秩父地方を中心にツキノワグマが生息しており、今年10月末時点におけるツキノワグマの出没件数は52件で、22頭捕獲、有害とされ殺処分されております。
元来、熊はおとしなく、人の気配を感じると逃げたり隠れたりして人と出会わないようにするという習性を持っているにもかかわらず、熊による被害が多発している背景には、熊が好んで食べるドングリのなる、ブナ、コナラ、ミズナラなどの落葉広葉樹林が昔と比べて減少していること。もう一つには、里山などの人手をかけて管理する山林が山村の過疎化、高齢化で人が入らなくなったことによって、以前のような野生動物を寄せ付けない環境ではなくなり、奥山で活動していた熊が人が入らなくなった里山に下りてくるようになったという社会環境の変化が考えられます。
ツキノワグマは埼玉県レッドリストでは準絶滅危惧2型に評価されており、県は個体数維持が必要との理由からツキノワグマの狩猟自粛を狩猟者に呼び掛けていますが、目撃されたり集落近くに出没するだけで捕獲や駆除の対象となりがちです。また、イノシシや鹿などの捕獲を目的としたわなに熊が誤ってかかってしまう錯誤捕獲については、捕獲後に自然界に放す放獣が原則となっていますが、熊の放獣には危険が伴うために専門家による放獣体制がなければ、結局、駆除されてしまうことが多いと聞きます。
私は、熊と人が共存していくためには、熊の豊富な餌場である落葉広葉樹林を増やし、おなかをすかせた熊が里に下りてきて食べ物をあさらなくて済むように、熊の生存できる自然環境を再生していくことが必要と考えます。
石川県小松市では、今年、例年の5倍を超える熊の出没があり、人身事故も発生したことを受け、熊を森に帰そうと呼び掛け、熊がドングリを食べられる餌場を作るとともに、循環型の森林づくりを推進するための寄附をガバメントクラウドファンディングで募集しています。熊の出没・捕殺という人と熊の不幸な連鎖を断ち切り、熊の棲める森をつくることで人と熊の共生を図り、また、市民による森づくりの促進を行っております。埼玉県としても見習うべき点があると感じます。
本県でも、森林再生の財源として期待される森林環境譲与税を市町村が使い、放置人工林を広葉樹を中心とした自然林に転換していくことを進めていくために、市町村に対し情報提供してはいかがでしょうか。農林部長の御所見をお伺いします。
また、捕獲された熊については、駆除ではなく、奥山に放獣できるよう放獣体制の構築が必要です。神奈川県などでは専門業者に熊の放獣を委託するなどの措置をしています。埼玉県でも放獣体制を確立すべきと考えますが、環境部長の御見解をお伺いします。

A  強瀬道男  農林部長 

「市町村が森林環境譲与税を使い、放置人工林を広葉樹中心の自然林に転換していくための情報提供」についてお答えを申し上げます。
昨年度から始まった森林経営管理制度により、市町村が森林環境譲与税を活用し、森林所有者自らが管理できず林業経営に適さない森林について、所有者から委託を受けて管理する仕組みができました。
市町村がこうした仕組みを活用していくためには、まずは森林を長期的に管理することへの不安感を和らげることが重要であると考えています。
このため、奥山など林業経営に適さない人工林については、将来的に人手をかけずに管理できるよう、針葉樹と広葉樹が混ざった

混交林

や広葉樹林に移行させることが有効と考えられます。
これまで県では、林業経営に適さない人工林について、水源地域を中心に針広混交林の造成や広葉樹の森の再生などを約1万ヘクタール行ってまいりました。
この中で、広葉樹が自然に生えてくる間伐の仕方や、その土地に適した広葉樹の選び方など、広葉樹が生育するために必要な技術的な知見を積み重ねてまいりました。
県としてはこうしたノウハウを活かし、市町村が多様な生物が生息できる放置人工林の広葉樹林化に取り組めるよう積極的に情報提供を行ってまいります。

 

A  小池要子  環境部長

 

「捕獲した熊の放獣体制の確立について」お答えを申し上げます。
クマの放獣については、住民の安全確保が大前提であり、放獣されても人里に魅力的なエサが豊富にあることを知ったクマが再び現れることに地域住民は大きな不安を抱いております。
そのため、地元の市町村からの理解は得られにくく、里山において捕獲したクマの放獣は大変難しいところであります。
そこで、県では、可能な範囲でクマの放獣に取り組んでおります。
具体的には、奥山の標高の高い地域においてシカを捕獲する事業を行っておりますが、クマが誤ってわなにかかっていた場合には、麻酔銃で眠らせたうえで、わなを外して放獣することとしております。
今年は全国でクマの出没が相次いだことから、国は関係省庁による連絡会議を10月に開催し、クマの出没や被害の状況を共有いたしました。
それを受け、県でも、11月24日にクマに関する市町村との連絡会議を開催し、追い払い、放獣及び有害捕獲といったクマ対策について情報提供や意見交換を行いました。
今後とも関係市町村等と連携し、クマの生存と人間の生活環境との調和をどう図るかなど幅広に研究してまいります。

 

 

 

 

 

  • 上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
  • 氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。 

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議会事務局 政策調査課 広報担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

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