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掲載日:2020年3月31日
Q 西山淳次 議員(公明)
昨年10月12日に東日本を襲った令和元年東日本台風は、本県にも甚大な被害をもたらしました。とりわけショッキングだったのは、県内5カ所で堤防が決壊したという事実であります。私たちは久しく堤防の決壊を経験しておりません。県内では実に37年ぶりのことであります。私も越辺川と都幾川の2カ所の生々しい決壊現場を視察しましたが、こんなになってしまうのかと洪水時の水の破壊力、恐ろしさをまざまざと感じました。今回の水害の教訓をどう生かすかは、我々に課せられた大きな使命であります。
そこで、私は、荒川水系の洪水メカニズムを研究している田中規夫埼玉大学教授を1月下旬に訪ね、教えを請うてまいりました。田中教授から伺ったお話を私なりにまとめますと、1、今回の豪雨は雨のピークの継続時間が長かったため、本来なら小さな川の流量が先に増え、後から大きな川の流量が増えるという時差がなくなって、合流箇所があふれて決壊してしまった。
2、今回決壊した場所は昔からあふれてきたところであり、もともと弱点だった場所である。また、先人の知恵である霞堤という不連続堤防も閉めてきており、昔より水は集まりやすくなってきている。
3、入間川流域には大きなダムや遊水地がない。今後は新たに水を溜める方法が不可欠である。
4、温暖化の影響で今回のような雨の降り方は今後もあり得る。今回あふれた場所には、これ以上住宅を増やさないことが必要。
5、堤防の高さを上げれば、上げただけあふれたときの被害は大きくなる。コスト負担も無限にはできない。今後はあふれることを前提にしたまちづくりも本気で考えないといけない。
以上、本県の今後の治水の在り方を考えるに当たり、非常に大切な御意見と思い紹介させていただきました。
さて古来、治水は政治の最重要課題でありました。江戸時代、本県は「利根川の東遷、荒川の西遷」と呼ばれる利根川水系と荒川水系を切り離す、誠にスケールの大きな河川改修を完成させた歴史を持っております。これは何と親子3代、100年の歳月をかけてなし遂げられた偉業であります。近年は大水害が減少したためか、治水に対する意識が私も含めて全般的に鈍くなってきた感は否めませんが、今回の台風は「川の国埼玉」にとって、治水はいまだに古くて新しい重要課題であることを私たちに再認識させました。
そこで、知事にお伺いいたします。令和元年東日本台風の水害の教訓をどのように捉え、本県の今後の治水にどう取り組んでいかれますか。また、その際には、さきに御紹介したような専門家の意見はもとより、先人の知恵や歴史に学んでいくことも重要と考えますが、いかがでしょうか。知事の御所見を伺います。
A 大野元裕 知事
令和元年東日本台風では、県内の気象台14観測所のうち11観測所でこれまでの記録を上回る雨量となるなど、大規模な被害をもたらした過去の台風に肩を並べる降雨となりました。
これにより、県管理河川では、合計164カ所において河川管理施設が被災したほか、堤防の決壊に至った2カ所を含め、合計57カ所において越水・溢水を確認いたしました。
また、内水氾濫によるものも含めると、全半壊を含む浸水戸数は県内で7,000戸を上回りました。
一方、これまで進めてきた河川改修や、洪水を一時的に貯留する調節池の整備などにより、浸水を防止・軽減する効果があったと考えております。
これらを踏まえ、気候変動の進行に伴う豪雨の頻発化・激甚化により、毎年のように大洪水が起きることを前提に、ハード整備とソフト対策の両面から備えを進めていく方針です。
第1に、洪水時の水位を低下させることを基本に、合流先の河川の強化を国に求めていくとともに、県でも河川改修や調節池の整備などを計画的に進め、治水安全度を着実に向上させてまいります。
また、堤防の平坦性の確保や河道掘削、樹木伐採などにより、整備効果の持続に努めてまいります。
さらに、流域内に降った雨水を校庭や公園などで貯留・浸透させることで、河川に流入する水の量を少しでも減らす取組を市町村とともに進めてまいります。
第2に、河川インフラの整備水準を超える洪水となり、堤防から越水・溢水が起きることを想定した対策にも取り組みます。
いわゆる超過洪水を想定したハード整備として、決壊リスクを少しでも低減し壊滅的な被害とならないよう、堤防の上面の舗装や市街地側の法面補強など新たな堤防強化対策に取り組みます。
あわせて、ソフト対策として、確実かつ迅速に避難できるよう、洪水浸水想定区域図などを基にした市町村のハザードマップ作成や、事業者による避難確保計画の作成などを支援してまいります。
これらの取組を進める際には、河川環境や水辺利用に十分配慮するとともに、県民の皆様の御理解と御協力をいただきながら進めてまいります。
令和元年東日本台風を踏まえ、補正予算も含めて予算措置を講じており、今後も万全な治水対策にしっかりと取り組んでまいります。
次に、先人の知恵や歴史に学んでいくことの重要性についてでございます。
本県では、低平地が広がっているため、利根川や荒川など河川の多くが幾筋にも分かれて蛇行し、洪水の際には流路が変わることから、古来より水害に悩まされてまいりました。
このため、近世には、利根川の東遷や荒川の西遷とともに、集落などを堤防で洪水から守る一方、霞堤として堤防に開口部を設けることで、洪水を計画的に溢れさせる治水手法が取り入れられておりました。
こうした先人の知恵を参考に、国や市町とともに本年1月に策定した「入間川流域緊急治水対策プロジェクト」においては、洪水の一部を貯留する遊水地を整備するとともに、土地利用やお住まい方の工夫を検討することとしています。
地域における水害の歴史を知ることは重要な視点だと思います。
頻発化・激甚化が進む豪雨に備えるため、今後とも、先人の知恵を踏まえつつ、本県の治水対策に取り組んでまいります。
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