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掲載日:2023年3月13日
Q 小島信昭 議員(自民)
第201回国会における施政方針演説の中で、安倍内閣総理大臣は規制改革に触れ、IoT、ビッグデータ、人工知能、第四次産業革命の大きな変化の中で、デジタル時代の規制改革を大胆に進めます。本年から無人自動運転を解禁し、中山間地域の皆さんに安全で便利な移動手段を提供します。自動制御ブレーキを備えたサポートカーに限定した新たな免許制度を設け、その普及を拡大しますとおっしゃっております。
近年、技術発展の著しいロボット、AI、IoTなど先端技術の活用による生産性革命は、様々な分野で実証実験が行われ、成果が上がっています。これからはいかに普及を拡大し、その恩恵を多くの県民が享受できる環境を作るかが非常に大切です。特に農業分野では就業人口が減少の一途をたどっており、日本総合研究所の試算では、2015年の約220万人から、20年後の35年には約100万人と半数以下に落ち込むことが見込まれております。
就農者数の減少、高齢化に対応するため、ロボット農機やドローンなど先端技術を組み合わせたスマート農業に対する期待が大きく高まっています。AI等の導入による生産性の向上とともに、経験豊富な働き手の熟練技術を見える化、可視化して、新規参入しやすくすることは、農業の担い手不足の解消、負担の軽減にもつながります。
例えば、農耕車の自動運転では、直進と旋回の自動運転を可能とする自動操舵システムの開発や、機体上部に衛星GNSS、いわゆるGPSから送られてくる位置情報を基に正確な自動運転が可能となりましたが、皆様方もカーナビで体験していると思いますが、衛星の位置、数などによって誤差が数十センチから1メートル近く生じる場合もあります。日本の狭い圃場や、日本人独特の境界線に関する考え方で、事故や近隣とのトラブルとなる可能性もあります。
そこで、これらの精度を更に高め、補正するリアルタイムキネマティック、RTKというシステムで補正し、位置を数センチの測位精度で把握する取組などにより高精度な農業が可能となり、RTK、GNSSを備えた田植機では作業員が乗車せず、苗補給を一人で作業できる上に、高速で植付け作業を行っても、熟練者並みの直進精度が初心者でも得られ、少ない作業人数で高い精度を維持しながら、長時間作業や能率向上が期待できるなどメリットがあると言われています。
また、ドローンの利用でも高精度な飛行作業が可能となります。また、これまでデータを収集、集積したら活用は翌シーズン以降というサイクルでしたが、各センサーの進歩により植付けをしながら土質や肥料分の分析をしたり、収穫しながら食味や水分量の確認を瞬時に行い、出荷に向けての調整で品質を高精度にすることが可能となりました。
そのほか、センシングデータ等の活用、解析により、農作物の生育や病害を正確に予測し、高度な農業経営が可能になるなど効果が上がっていますが、実証実験と並行して、その効果をそれぞれの分野に普及できなければ意味がありません。
普及に向けた課題は何と言ってもコストです。自動走行トラクターであれば、1機一千数百万、この秋に発売されるという自動運転田植機は約七百万程度、ドローンは500万程度と高額なため、作付時期が異なる地域をまたぐ広域のリースや、シェアリング、アウトソーシングなど、普及に有効な手法を考える必要があります。
また、農場やハウス管理に便利なLPWAですが、主要な規格の一つシグフォックスは、県内のほぼ全域で利用可能な一方、双方向性となっていないため、農場やハウスから送られてくるデータを見て人間が判断し、対応をするために現場に足を運ぶという必要が生じます。産業労働部で平成30年度から、13市町におけるLPWAを活用した実証実験として取り組まれたのも、このシグフォックスです。
これがその端末でありますけれども、これを現場に設置することによって、温度、湿度、あるいは明るさ、加速度、磁力のいずれかを選択して、それをLPWAの回線に乗せて、自分のスマートフォンやパソコンに送るシステムであります。
このシグフォックス以外に、昨年から別の規格、ローラ、こういうものも埼玉県内で今展開しておりますけれども、ローラの場合は交互の通信が可能で、単純な動きなら操作が可能となり、農業のみならず、工業、商業分野など幅広い活用が可能であります。しかし、現在利用できるのは県内のごく一部と、なかなか普及はしておりません。
また、GNSSを補正する先ほどのRTKでありますけれども、広域で利用可能なものはメーカー設置で、利用料金を年間数十万円、利用者から徴収しており、利用時間、期間を考えると割高感が否めません。さらに、現在市販の自動運転トラクターや田植機の多くは、機械とセットのRTKを自前で圃場ごとに三脚を立てて設置し、圃場を移動するたびに移設するといった煩雑さもあります。
スマート農業実現のためには、LPWA、RTK基地局など、基盤整備としての支援も必要だと思いますが、スマート農業の推進にどのようなお考えをお持ちなのか、知事にお伺いいたします。
A 大野元裕 知事
労働力の減少など本県農業が直面する構造変化に対応し、その「稼ぐ力」を強めるためには、こうしたスマート農業技術について、農業現場へ導入・普及を進めていく必要があります。
そこで私は、知事選において「ドローンや無人運転トラクターの導入、AIを活用したスマート農業・林業支援を促進します」と公約に掲げさせていただきました。
具体的には、ロボットや各種のセンサー技術などを導入することにより、農作業の「省力化」・「効率化」が見込まれます。
また、IoTなどの技術を活用することにより、熟練農家の知識や技術がデータとして蓄積され、いわゆる「見える化」により、次代を担う農業者がノウハウを円滑に習得できることも見込まれます。
ただし、スマート農業技術については、日進月歩の状態です。
このため、私は、本県の農業現場へスマート農業技術を導入・普及させていくためには、技術の進捗度合いと品目ごとに導入の可能性を見極めながら進めていく必要があると考えております。
実用化された様々なスマート農業技術が既に存在する施設園芸などについては、現場への普及実装を進めることで大きな効果を上げることができると考えます。
一方、露地野菜や果樹など、適用する技術の多くが未だ開発段階の品目については、メーカーなどとも連携しながら、本県の状況に適した研究開発や技術実証を行っていく方向性が考えられます。
こうした考え方に立って、令和2年度当初予算においては、「研究開発」、「技術実証」、「普及実装」の大きく三つの段階に分け、取り組むこととしております。
議員お話しのコスト面については、「技術実証」の中の取組として、リースやシェアリングなどの可能性を検討してまいります。
また、LPWAやRTK基地局といった基盤の整備については、ロボットトラクタのような自動走行農機などの導入効果を高めることが分かっており、その普及拡大に必要なものもあると考えております。
このため、費用対効果の観点からどのような通信環境の整備が本県農業にとって適切なのかを技術実証の一環として見定めた上で、導入支援について検討してまいります。
スマート農業技術は、本県農業を成長産業に大きく転換させることができる力をもったツールとなると思います。
今お願いしている予算におきましては、それぞれの品目に応じた効果的な実装を進めるために県としても取り組むものであり、より適切に費用対効果が上がるように進めてまいります。
スマート農業技術の普及については、農家が取り組みやすい形で品目と技術の進捗度合いに応じバランスよく進めることで、儲かる農業の推進を図ってまいります。
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