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掲載日:2024年4月2日

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答申第158号 「埼玉県南部工業用水道事業の給水事業所一覧表」についての部分開示決定(平成22年9月21日)

答申第158号(諮問第204号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県公営企業管理者(以下「実施機関」という。)が平成22年1月14日付けで行った、埼玉県南部工業用水道事業の給水事業所一覧表の部分開示については、次の部分を除き開示すべきである。

工業用水受水事業所の契約水量

2 異議申立て及び審議の経緯

(1) 異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成21年12月25日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し「埼玉県下に於ける工業用水道契約会社一覧に基づく事業所名称、事業所の所在地、工業用水の契約形態及び使用水量等」についての開示請求(以下「本件開示請求」という。)を行った。

(2) これに対し実施機関は、本件開示請求に係る公文書について「給水事業所一覧表」(以下「本件対象文書」という。)、「給水申込書のうちの表面(総数160件)」及び「埼玉県南部工業用水道事業一般配管図」の3文書を特定し、「本件対象文書」のうち「受水事業所名のうち公開することに同意を得ていないもの」及び「受水事業所の所在地のうち公開することに同意を得ていないもの」(以下「不同意情報」という。)並びに「契約水量」について、条例第10条第2号及び同条第5号に該当することを理由に不開示とし、その余を開示とする部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、残り2文書について部分開示決定及び全部不開示決定を行い、申立人に通知した。

(3) 申立人は、平成22年2月5日付けで、実施機関に対し、本件処分の取消しを求めて異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

(4) 当審査会は、本件異議申立てについて、平成22年4月14日に実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5) 当審査会は、実施機関から、平成22年5月20日に開示決定等理由説明書(以下「理由説明書」という。)の提出を受けた。

(6) 当審査会は、平成22年6月24日に申立人から理由説明書に対する反論書(以下「反論書」という。)の提出を受けた。

(7) 当審査会は、平成22年6月28日に実施機関から意見聴取を行った。

3 申立人の主張の要旨

申立人が主張している内容は、おおむね次のとおりである。

(1) 実施機関は、アンケート調査を行ったにもかかわらず、公開することに同意を得ていない受水事業所の顧客情報を公表すると、信頼関係を損ね、損害賠償請求されるおそれがあると説明しているが、埼玉県以外の自治体においては、情報公開しており、アンケート調査自体行われていない。アンケート調査による損害賠償のおそれを理由に情報を非開示にすべきではなく、行政機関は損害賠償請求のおそれの如何に、機関の方針を左右されるべきでないと考える。

(2) 実施機関は、工業用水道を利用していることが明らかになると業種によっては企業イメージを低下させるおそれがあると説明しているが、受水企業の工業用水用途に関しての情報を要求している訳ではなく(この度の開示情報では工水を飲用利用か又は製品に利用しているのかは不明である。)、このことが企業イメージ低下につながるとは考えられない。

工業用水を非公開で受水する生産活動こそ不信を招きかねず、イメージ低下につながると考える。

(3) 工業用水契約水量の情報保護の判断に関しては譲歩する考えがある。

4 実施機関の主張の要旨

実施機関が主張している内容は、おおむね次のとおりである。

(1) 平成20年度において、受水事業所名及び所在地について公表することに同意か不同意かを調査するために全受水事業所を対象にアンケートを行った。

その結果を考慮して、同意すると答えた受水事業所以外の情報を不開示とした。公表することに同意していないと答えた受水事業所の情報を開示することは、著しく信頼関係を損ねることになる。

(2) また、埼玉県の工業用水は、飲用に使用できるよう処理されていない分、上水道より料金単価は安いが、水質は劣っている。工業水道を利用していることが明らかになると、業種によっては企業イメージや製品イメージを低下させるおそれがある。アンケート調査を行ったにもかかわらず、公開することに同意を得ていない受水事業所の顧客情報を公表すると、信頼関係を損ね、損害賠償請求されるおそれがある。

(3) 埼玉県工業用水道事業では、受水事業所に、工業用水使用量等料金徴収に必要な情報、工場移転、解体、企業の経営状況の著しい変動又は水需要の動向等、工業用水道事業に有益な情報の報告を頂いている。受水事業所の顧客情報を公表し、信頼関係を損ねることになれば、このような情報を得ることは難しくなり、工業用水道事業の運営に著しい支障を及ぼすおそれがある。

(4) したがって、不同意情報については、条例第10条第5号本文に該当するため不開示とした。

なお、実施機関は、本件処分時において、不同意情報を不開示とした理由を条例第10条第2号及び同条第5号としていたが、理由説明書において不開示理由は、条例第10条第5号本文のみであるとした。

(5) また、埼玉県工業用水道事業は、契約水量に基づいて料金を徴収する責任水量制を採用している。特定の企業の契約水量を公開すると他社との契約水量の比較から当該企業の経営状況や契約形態を判断できる情報を公開することと同様の効果をもたらし、企業の競争上の地位及びその他正当な利益を害するおそれがある。

(6) したがって、「契約水量」については、条例第10条第2号に該当するため不開示とした。

5 審査会の判断

(1) 条例第10条第2号及び第5号該当性について

条例第10条本文では、「実施機関は,開示請求があったときは,開示請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(次条から第13条までにおいて「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該公文書を開示しなければならない。」と規定している。

同条第2号は、「法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」を不開示とする情報としている。

また、同条第5号は、「県、国若しくは他の地方公共団体(以下この号において「県等」という。)の機関、独立行政法人等又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を不開示とする情報としている。

そこで、以下では、条例第10条第2号又は第5号に該当するとして不開示とした実施機関の主張について、個別に検討する。

なお、実施機関は、本件処分時において、不同意情報を不開示とした理由を条例第10条第2号及び同条第5号としていたが、理由説明書において不開示理由は、条例第10条第5号本文のみであるとした。

よって、当審査会では不同意情報については、条例第10条第5号の該当性について検討する。

(2) 本件対象文書について

本件対象文書は、埼玉県南部工業用水道事業の給水事業所の一覧表であり、「承認番号」、「受水事業所名」、「受水事業所の所在地」及び「受水事業所の契約水量」が記載されている。

(3) 不同意情報について

実施機関は、平成20年6月に受水事業所名・所在地について公表することに同意か不同意かを確認するために全受水事業所を対象にアンケート調査を実施した。また、当該アンケート調査実施後に契約をした受水事業所に対しては契約時に調査票により確認を行った(以下、上記アンケート調査及び調査票による確認を併せて「本件アンケート調査等」という。)。実施機関は、本件アンケート調査等の結果を考慮し、同意すると答えた受水事業所以外の情報を不同意情報として不開示としたものである。

実施機関は、不同意情報が公になると工業用水道事業の顧客である受水事業所との信頼関係を損ね、受水事業所から損害賠償請求されるおそれや工業用水道事業に有益な情報を得ることが難しくなり、工業用水道事業に著しい支障を及ぼすおそれがあると主張する。

確かに、受水事業所は、実施機関が本件アンケート調査等の回答に従うとの期待を有したであろうし、実施機関の事業の性質上、受水事業所との信頼関係の維持は重要な意義がある。
しかしながら、そもそも情報の開示又は不開示の決定は、公正で開かれた県政の推進に寄与するという条例の目的に照らし、条例の定める不開示情報に該当するか否かによって判断すべきものであるから、これにより受水事業所の上記期待が保護されない結果となることはやむを得ないというべきである。

そして、条例第10条第5号の「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、単なる確率的な可能性では足らず、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を生じることについて、法的保護に値する蓋然性が認められなければならないところ、実施機関の主張する上記の「おそれ」は、いずれも抽象的かつ確率的な可能性の問題にすぎず、法的保護に値する蓋然性があるとは認められない。

よって、当該情報は開示することが妥当である。

(4) 受水事業所の契約水量について

埼玉県工業用水道事業では、契約水量は契約時に企業側で設定をし、その契約水量に基づいて実施機関が料金を徴収する責任水量制を採用している。給水開始後、企業の経営状況が著しく変動し、当該企業より契約水量の変更の申出があり、契約水量の変更がやむを得ない状況にある場合には、契約水量の変更を行っている。

これら受水事業所の契約水量を公にすると、同業種の他社の契約水量との比較から、当該企業の経営状況及び業務形態等が推測され、当該企業の競争上の地位及びその他正当な利益を害するおそれがあると認められる。

したがって、条例第10条第2号に該当するとして実施機関が不開示としたことは妥当である。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)

磯部 哲、 尾崎 康、 加々美 光子

審議の経過

年月日

内容

平成22年4月14日

諮問を受ける(諮問第204号)

平成22年5月20日

実施機関から開示決定等理由説明書を受理

平成22年6月24日

異議申立人から反論書を受理

平成22年6月28日

実施機関から意見聴取及び審議(第二部会第56回審査会)

平成22年7月26日

審議(第二部会第57回審査会)

平成22年8月30日

審議(第二部会第58回審査会)

平成22年9月21日

答申

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