インタビュー・コラム

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掲載日:2023年10月6日

社会福祉法人杏樹会 特別養護老人ホーム杏樹苑

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プロフィール

【社会福祉法人杏樹会】
社会福祉法人杏樹会は1998年1月に設立し、老人福祉介護事業並びに児童福祉保育事業を入間市、狭山市、川越市、三芳町と埼玉県内に展開。
杏樹会は「熱意」「誠意」「創意」を法人の経営基本理念とし、全ての施設や事業において「利用者主体」を念頭においた運営を行っている社会福祉法人です。
従業員(施設全体):487名うち女性83.3%(2023年9月現在)
女性管理職割合(施設全体):45.4%
〈認定等〉
・シニア活躍推進宣言
・「健康優良企業」認定
・次世代認定マーク「くるみん」認定
・「埼玉県多様な働き方実践企業」プラチナ認定
・「埼玉県障害者雇用優良事業所」の認定   等々

【特別養護老人ホーム杏樹苑・杏樹苑滔々館(とうとうかん)】
杏樹苑・杏樹苑滔々館は、利用者一人一人の心を大切に、安心、衛生、健康を守る充実した設備を用意し、家庭のぬくもりそのままの心をつくしたサービスを提供。すべての人の満足にお応えする、入間市にある特別養護老人ホーム施設です。
従業員:157名 うち女性72.5%(2023年9月現在)
女性管理職割合:75.0%

〇取材対象者〇
特別養護老人ホーム杏樹苑・杏樹苑滔々館
  施設サービス部長   新井 千香(あらいちか)さん
2013年に看護師として入社。その後、杏樹苑爽風館の立ち上げに関わり4年間勤務。2019年から杏樹苑・杏樹苑滔々館に異動になり、働き方改革を実施。子育てをする職員にとっても働きやすい環境づくりをするべく、当時のやり方を見直し、一から作り上げた。

【社会福祉法人杏樹会】
URL:https://anjyukai.or.jp/
【特別養護老人ホーム杏樹苑・杏樹苑滔々館】
URL:https://anjyukai.or.jp/an/

女性が長く働く職場づくりに取り組み、辞めない職場へ

介護職の職場の多くは、女性従業員が多いのが一般的であり、杏樹苑・杏樹苑滔々館は女性が72.5%(杏樹会全体は83.3%)の比率で働いています。そして、女性は出産すると子育てに集中するために仕事を辞めざるを得なくなる方が多く、私(新井部長)もその一人でした。子供がある程度大きくなった頃、やはり働きたいな、と思いましたが、子供がいるためフルタイムでは働けず、パートタイムや時間短縮での働き方しかできないのが実状でした。また、仕事中に子供が体調を崩したとしても、すぐに帰れなかったり、休めなかったりというのがあり、「もし私が管理職になった時には、お母さんたちにもやさしい職場を作りたい」と考えるようになりました。そして、管理職になった今、会社から「女性が出産してからも、長く仕事ができるような環境づくりをしてほしい」という相談があり、「子育てしやすい・休みやすい・引け目を感じない」働き方・職場にしたいと考え、見直すことにしました。

まず取組んだのは、夜勤体制の改革です。16時間勤務といって、遅番(8時間)+夜勤(8時間)を組み合わせた勤務体制が介護職では一般的であり当社もその働き方です。介護職は、皆さん新聞やニュースでご存じのとおり、働き手は本当に少ないのですが、杏樹苑はたまたま人数の調整ができたので、遅番と夜勤の担当者を分けることができました。そうすることで、遅番担当者はその日のうちに家に帰ることができますし、夜勤担当者は出勤前に夜ご飯を家族と食べることができ、翌朝は7時までには家に帰ることができます。はじめはうまくいくかとても不安でしたが、職員の協力があり運営が滞りなくできております。また、子供に「いってらっしゃい」が言えるようになった、体力的にも働きやすくなった、という声があがっており、杏樹苑滔々館でも人数の調整ができるようであれば導入していきたいと考えています。

                   外観
                                                                                                                                              杏樹苑

周りの理解があるからこそ実現できた男性の育児休業取得率100%

女性が多い職場ですので、管理職から職員へのコミュニケーションはとても大事にしています。施設長と部長はラウンドと言って、毎日現場に行き、利用者さんの様子を見るのはもちろんのことですが、職員への声掛けも徹底しています。一言「頑張っているね」「介助が上手になったね」と声をかけることにより、本人のモチベーションが上がることもあるのでよく声をかけ、コミュニケーションを取るようにしています。

また、子供のことで休んでしまう、早退してしまう職員に対しては、私の子育て経験からアドバイスをし、子供が体調を崩してしまった時にはすぐに帰らせてあげられる環境づくりをしています。もちろん、早退しない、帰らない職員に対してもきちんとケアをし、人数が足りなければ部長や課長が現場に入りサポートをします。早退や休暇について職場のみんなに引け目を感じないようにする環境づくりを徹底しています。

こうした取組みが、男性職員の育児休業取得率100%につながりました。育児休業を取得する職員がいる場合、勤務の調整も係長と本人が相談して決めたり、休む日はみんなで数時間ずつ残業したり、非常勤で週に3、4日の出勤の人は、1日増やしてもらい、次週などに調整してもらうなど、全員が協力して業務を組み立てています。今あるマンパワーの中で、一人ひとりができることをお互いにしてあげる、という環境が整えられてきていると感じます。また、男性職員が育児休業を取ることによって、後輩職員も引け目を感じず育児休業を取れるので良い効果になっています。

一般事業主行動計画にも掲げているように、2025年3月31日までの計画期間内に、男性職員の育児休業取得率を80%以上に保てるように今後も職場環境整備をしていきます。

              観賞            春の桜
                                           桜を観賞する利用者さん                                                           春の桜

職場の変化、そしてそれによって見えた職員・利用者の変化

子育てをしながら仕事も両立できるように環境整備をしていく中で、職場の雰囲気がすごく良くなりました。実は3、4年前は、人材が全然育たなかったり、職員同士がコミュニケーションを取らなかったり、困っている職員がいるのに手伝わなかったり…と職場の雰囲気がとても悪かったです。これではいけないと思い、「誰のために何をしているのか」、つまり「利用者さんに安心安楽で過ごしてもらう、杏樹苑での時間をどうやって幸せに暮らしてもらうかを考える」という柱を決めて、環境整備・業務改善を行いました。今までは利用者さんに一から全部介助をしていましたが、自分でできることはやってもらう、できないことを介助する、というようにメリハリをつけたことにより、いろんなことが職員も利用者さんもできるようになりました。

一番驚いたのは、利用者さんがすごく穏やかになったことです。変化が見えてくると、次は利用者さんのために何ができるのか、あの人にはどのようなことをしてあげられるだろうか、と職員で話し合い、活気が出てくるようになります。当時は本当に忙しくて大変でしたが、職員みんなが頑張ってくれたおかげで今はすごく良い環境で仕事ができていると実感しています。まだまだ課題はありますが、今後もみんなが働きやすい、子育てしやすい職場づくりを目指していきます。

さらに、職員に変化があったのは「資格取得」です。3、4年前は、資格は取らなくてもいいと考える職員が多かったのですが、職場環境が変わったことにより資格取得を目指す職員が増えました。将来、認知症ケア専門士になりたいと言って認知症の勉強をしている職員もいますし、介護福祉士や介護支援専門員、教育・指導専門職になりたい職員もいます。介護は突き詰めると本当に面白いので、どんどんいろいろなことに興味を持ってもらい、資格取得もできるようにサポートをしていきたいと考えています。

              そうめん            家庭菜園
                                        夏の風物詩 流しそうめん                                        ベランダの家庭菜園

杏樹苑の女性管理職75.0%、介護の魅力PR隊~輝く女性へ~

職員の人数に対して、女性の割合が72.5%(杏樹会全体は83.3%)と多い職場になっており、女性管理職も75.0%(杏樹会全体は45.4%)と高い水準になっています。管理職は現場仕事だけではなく、職員をまとめたり、施設全体のことを考えたり、利用者さんがいかに幸せに過ごせるのかを考えたり、やることはたくさんあります。もちろん責任も伴ってきますが、それだけではないやりがいもあります。女性職員が管理職を目指せるように、管理職の仕事について明確化させていくのが今後の課題でもあります。

最近では『介護の魅力PR隊』(※下記参照)をやりたいという職員や全国老人福祉施設協議会が実施している大会で発表したいという職員が増えてきました。職場以外の場での活動により、同業者やその他の方々とのつながりが増え、視野がどんどん広がってきます。そこから勉強するものや学べるものがありますので、そういう機会があったらどんどん職員を推薦していき、スキルアップにつなげていきたいです。

仕事と子育て、親の介護を両立することは本当に大変なことだと思います。少し一息つく時間や自由になる時間を週に1日だけでも設けてもいいと思います。それにはやはり周りの理解が必要です。当社では女性が輝き、いきいきと過ごせるように職員ととにかく会話をするように心がけています。そしてその積み重ねで信頼関係を築き、いつでも相談できる体制を構築しています。職員がいきいきとしていれば、利用者さんにも良い影響があるので、今後も安心安楽に過ごせるように、心を尽くしたサービスの提供を目指していきます。

                   スキルアップ
                                                                                                                                スキルアップ研修

※介護の魅力PR隊について
介護職のイメージアップ及び魅力ある職場づくりを促進し、介護人材の確保を図るために、県と関係5団体が協力し、平成25年2月に「介護職員しっかり応援プロジェクト」を立ち上げました。介護の魅力PR隊の活動は、その一環として行っています。
隊員は、県内の介護現場で働く若手からベテラン職員で構成され、埼玉県知事から任命を受けて活動をしています。
令和5年7月28日、当課主催の「福祉・介護職セミナー」に、杏樹苑の職員に講師としてお話いただきました。

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