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掲載日:2025年12月19日
不動産登記法第14 条第1項は、登記所には地図を備え付けるものとしており、この地図(以下「登記所備付地図」という。)によって、登記簿に記載された土地の位置及び区画を明確にすることができる。
一方、同条第4項は、この登記所備付地図が整備されるまでの間、代替として、地図に準ずる図面を備え付けることができるとしており、一般的に公図と呼ばれる図面が用いられている。しかし、公図は明治期に作成されたものが多く、精度と正確さに欠け、現況と大きく異なる場合があり、登記所備付地図の早期整備が必要である。
登記所備付地図の整備は、昭和26 年に制定された国土調査法に基づく地籍調査によって進められてきたが、令和6年度末の進捗率は、国有林等を除いた要調査面積の53%にとどまっている。その原因として、土地所有者等の探索や筆界の確認に時間を要すること、調査の実施を担う市町村で予算や人材の確保が困難になっていることなどが挙げられる。
このような状況において、土地所有者等の現地立会いの負担軽減や測量作業の効率化に資するものとして、高精度の空中写真や航空レーザ測量から得られる「リモートセンシングデータ」を活用した手法が導入されている。その活用範囲は、測量技術の進展により、従来の対象である山村部に加えて、令和6年からは農用地及びその周辺にも拡大された。
また、法務省は、都市部における人口集中地区の地図混乱地域を対象に法務局地図作成事業を実施するとともに、登記官による助言など市町村の地籍調査への協力を行っている。
登記所備付地図は、不動産の流通や公共事業の円滑な実施に資するほか、道路・下水道整備等の社会基盤の整備に役立つとともに、災害発生時の復旧・復興の迅速化に大きな役割を果たし、適正・公平な課税やまちづくりの観点からも重要である。
よって、国においては、全国の登記所備付地図を早期集中的に整備するための具体的な工程を示すとともに、リモートセンシングデータの活用推進や市町村への更なる支援などにより整備事業の課題解決に実効的に取り組み、事業費の確保など地籍調査の強化の推進や、法務局地図作成事業対象区域の大幅な拡充を行うよう強く求める。
以上、地方自治法第99 条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月19日
埼玉県議会議長 白土 幸仁
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衆議院議長 |
様 |
家庭の経済状況にかかわらず、全ての意志ある高校生等が安心して教育を受けることができるよう、家庭の教育費負担の軽減を図ることは喫緊の課題である。
国は、高校生等の授業料に充てるため、年収910 万円未満の世帯の生徒を対象に、高等学校等就学支援金を措置してきた。
加えて、令和7年度に限り、現下の物価高騰による子育てに係る経済的負担の軽減を図るとともに、現在の高等学校進学率が99%に達し、準義務教育的な状況となっていることを踏まえ、年収が910 万円以上の世帯の生徒を対象に、高校生等臨時支援金を措置している。
これら支援金は、都道府県や学校現場の支給に係る事務負担を軽減するため、原則として学校設置者が代理受領し、授業料に充当することになっているが、保護者等が申請手続を行う制度となっている。また、世帯年収によって支給される支援金が異なるため、所得要件の審査が必要となり、本県においては、公立高校は全額国の負担により委託事業者が、私立高校は申請を各学校で受け付けた上で県が、それぞれ審査事務を行っている。
令和8年度以降、私立高校等も含め全ての高校生等がいわゆる高校授業料無償化の対象となった場合、所得判定が不要となることから、保護者等・都道府県・学校の事務の簡素化を図るとともに、それでも必要となる事務費については全額国の負担により措置すべきである。また、無償化のための制度設計は、保護者等・都道府県・学校に混乱が生じないよう、早期に確立されるべきである。
よって、国においては、高校授業料無償化について、保護者等・都道府県・学校の事務を簡素化した制度を早期に確立するよう強く求める。
以上、地方自治法第99 条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月19日
埼玉県議会議長 白土 幸仁
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衆議院議長 |
様 |
現在、日本を含む世界各地で、気温上昇の影響によって大雨や高温現象などが増加しており、今後、より一層対策を強化する必要がある。代表的な温室効果ガスである二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素の大気中濃度も上昇を続けており、温室効果ガス削減は喫緊の課題である。
カーボン・オフセットは、日常生活や経済活動において排出され、削減努力によっては削減しきれない温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により埋め合わせをする、温室効果ガス削減の仕組みの一つである。
国は、カーボン・オフセットに用いる温室効果ガスの排出削減量・吸収量を認証し取引対象とするカーボン・クレジット制度としてJ-クレジット制度を運用しており、企業や地方公共団体が行う排出削減・吸収の取組が登録されることで、取引対象であるJ-クレジットが創出されている。
J-クレジット創出には、温室効果ガス削減の技術や方法ごとに国が承認した「方法論」が適用可能であることが必要である。
この方法論として、経営活動や植樹・造成が承認されているのは森林に関してのみで、茶生産のために植樹されている茶樹については認められていない。
茶樹の寿命は約40 年といわれ、その間は樹体に二酸化炭素が固定される。標準的な樹高の30 年生茶樹における炭素ストック量は1ヘクタール当たり31.3 トンと推定する試験研究データがある。この長期にわたる炭素ストック効果は、J-クレジットの方法論として認めるべきものといえる。
また、本県とともにお茶の主要な生産地である静岡県では、民間主導により官民連携でお茶を起点としたJ-クレジット創出の取組が始まった。お茶は日本を代表する文化の一つであり、国内の各地域で特色ある茶生産が行われていることから、今後の茶業の発展のためにも、茶樹を温室効果ガス削減に活用する取組に対し、国としても支援を進めていくべきである。
よって、国においては、茶樹の植樹による温室効果ガスの削減についてもJ-クレジットの方法論として承認するとともに、各地域での茶業を起点とした温室効果ガス削減の取組を支援するなど、茶業におけるカーボン・クレジット創出推進を行うよう強く求める。
以上、地方自治法第99 条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月19日
埼玉県議会議長 白土 幸仁
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衆議院議長 |
様 |
2012年7月に「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」に基づく固定価格買取制度が開始して以降、再生可能エネルギーの導入が促進され、太陽光発電については、電源構成に占める割合が2023年度時点で9.8%となった。我が国は、2040年度において、温室効果ガスを2013年度から73%削減することを目標としており、太陽光発電が電源構成に占める割合は23~29%となる見通しが示されている。
一方で、太陽光発電の導入拡大に伴い、使用済太陽光パネルへの対応が課題となっている。不適切な管理や放置がなされた場合、ガラス面の破損等の状況によっては、感電や飛散、有害な含有物質の流出等が発生するおそれがある。
太陽光パネルの寿命は約20~30年で、使用済太陽光パネルの排出量は2030年代後半以降に顕著に増加すると予想され、ピーク時には年間約50万トンに上ると推計されている。現行法では使用済太陽光パネルのリサイクルを義務付けていないため、再資源化を着実に進めなければ、最終処分量の大幅な増加につながることになり、適正処理及び再資源化のための体制整備は急務である。
本県議会は、以前から、国に対し、太陽光パネルの適正処理及び再資源化のための制度を構築するよう求めているが、現行のリサイクル関連法制の枠組と費用負担の仕組みが整合せず、いまだ制度構築に至っていない。国が再生可能エネルギーの導入を推進してきたことに鑑み、太陽光パネルの適正処理及び再資源化についても、国が責任を持って進めるべきである。
よって、国においては、コスト低減に向けた技術開発を促進し、費用負担の仕組みや回収処理ルートの整備など、必要な制度構築を早急に行うよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月19日
埼玉県議会議長 白土 幸仁
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衆議院議長 |
様 |
質の高い保育の提供や、社会のセーフティネットである児童養護施設や保護施設などの運営は、安定的に行われる必要があるが、そのためには、担い手である福祉人材の確保と、給与や運営費の原資となる公定価格を適切な水準に設定することが極めて重要である。
公定価格は、国家公務員の地域手当に準拠した市区町村ごとの地域区分が設けられているが、東京都と隣接する県内市との間では、生活圏の一体性や経済活動の強い結びつきがあるにもかかわらず、実際の経済的状況や地域情勢を適切に反映していない不公正なものとなっている。
このような状況において、令和6年の人事院勧告では、地域をまたぐ異動の円滑化等に資するため、地域手当は都道府県単位を基本とすることとされた。東京都特別区は最も高い20%の水準が維持される一方で、県内の市町村の約3分の2は引き下げられ、東京都との隣接市においても、格差の拡大や支給割合の逆転が生じることとなる。
この点については、令和6年12 月に、保育の公定価格の地域区分は令和7年4月からの見直しは行わず、引き続き見直し方法について丁寧な議論を進めていくとされたが、児童入所施設措置費や保護施設事務費などは、一部経過措置はあるものの令和7年4月1日から適用される方針は維持された。
よって、国においては、下記の措置を講ずるよう強く求める。
記
1 保育等の公定価格については、令和6年人事院勧告における国家公務員の地域手当の級地区分及び支給割合をそのまま適用せず、地域の実情を十分に反映し、現在の水準を超える設定とすること。設定に当たっては、地方自治体と丁寧に議論するとともに、その意見を反映させること。
2 都内自治体との格差及び地域の実情からの乖離を是正するため、住民の都内就業率が高い地域については、就業先における地域区分及び支給割合との均衡や居住地の平均所得、不動産公示価格など、他の客観的な指標も考慮して地域区分を設定すること。
以上、地方自治法第99 条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月19日
埼玉県議会議長 白土 幸仁
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衆議院議長 |
様 |
我が国は現在、少子高齢化に伴う労働人口の減少、社会インフラの老朽化といった課題に直面し、さらに、感染症の世界的大流行やカーボンニュートラルへの対応、地政学的リスクによるエネルギー・食糧問題など、新たな課題も顕在化している。
このような状況下において、ロボット産業での先端技術の開発は、様々な課題を解決し、持続可能な社会を築くため、今後更に重要性を増すと考えられる。本県でも、社会課題の解決に資するロボット分野の開発を支援し、県内中小企業などがロボット産業に参入するための拠点として、令和9年度中の開所を目指して「SAITAMAロボティクスセンター(仮称)」を整備しているところである。
我が国は、これまで、高品質の優れた産業用ロボットを多数生み出してきたが、近年は市場変化への対応が十分ではなく国際市場で苦戦している。例えば、我が国は産業用ロボット市場では約7割のシェアを誇るが、近年はシェアが低下しており、今後大きな市場規模と成長が見込まれるサービスロボット市場においては、米欧中に後れを取っている。また、現下AIロボティクス開発が米中で進む中で、ロボティクス領域全体におけるハード・ソフト両面での技術革新や、人材エコシステム形成で出遅れた結果、既存の産業用ロボット領域における産業競争力も喪失するおそれが指摘されている。
さらに、令和7年11 月に閣議決定された「『強い経済』を実現する総合経済対策」には、AIロボティクスの戦略策定への言及はあるが、他の分野においては課題解決手段として活用が記載されているにとどまる。
よって、国においては、ロボット産業振興のため、先端技術の開発を集中的に支援し、技術革新の基礎である人材開発を強化するとともに、研究開発税制を拡充するなど、ロボット産業への重点的な投資促進を行うよう強く求める。
以上、地方自治法第99 条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月19日
埼玉県議会議長 白土 幸仁
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衆議院議長 |
様 |
令和7年1月28日に埼玉県八潮市内の県道で発生した陥没事故では、発生から10か月以上経った現在も、現場周辺の住民の生活や事業者の事業活動への影響が継続している。
事故発生後、2月11日には、災害救助法を1月29日に遡って適用する決定がなされたが、被災自治体が実施する事故対応には、災害救助法の対象とならないものが存在することが明らかとなった。
災害救助法は、昭和21年の南海地震を契機に、発災後の応急期における救助を目的として制定された。近年、インフラ等の老朽化を背景として災害級の事故が発生する危険性が全国的に高まっていることを踏まえると、事故発生時に被災自治体が継続的に安心して対応できる新たな法的枠組みが求められる。
よって、国においては、被災自治体による迅速かつ柔軟な対応を実現するため、災害救助法の対象とならない取組についても被災自治体が躊躇なく行えるよう、被災自治体の財政的負担を軽減する新たな仕組みを導入することを強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月19日
埼玉県議会議長 白土 幸仁
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衆議院議長 |
様 |
現在の地方分権社会において、地方公共団体は、それぞれが抱える様々な課題に対して、地方自らの判断と責任において、実情に即した実効性ある対応を行うことが求められている。
課題解決の方策の一つとして、地方自治法では、地方公共団体は法令の範囲内で条例を制定することができ、また、実効性を確保するための措置として、条例中に2年以下の拘禁刑又は100 万円以下の罰金等を科する旨の規定を設けることができると定めている。
このうち罰金刑が、実効性担保の手段としての機能を果たすためには、その額が、地域の実情や違反行為の性質・態様に適合しており、かつ刑罰としての重みを有していることが求められる。法律においては、例えば法人企業に対し、罰金額を大幅に引き上げ、5億円、1億円等と規定するものがある一方で、条例で定められる罰金刑の上限は、平成3年に100 万円と改められて以降、見直しは行われていない。
結果として、地方公共団体が実効性担保の手段として選択できる罰金刑の上限が十分でないために、違反行為により得られる多額の利益に比して罰金の額が過少となるなど、現在の上限額では十分な抑止効果が確保できない可能性がある。
よって、国においては、地方自治法の改正を行い、条例で定めることができる罰金刑の上限を見直すよう強く求める。
以上、地方自治法第99 条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月19日
埼玉県議会議長 白土 幸仁
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衆議院議長 |
様 |
近年、地球温暖化による夏季の記録的な高温が、米作に大きな影響を与えている。水稲は、出穂後に昼夜高温が続くと、米に白色不透明な部分がある白未熟粒が発生しやすくなると言われている。
昭和26年に始まった農産物検査制度は、本来、病害虫等の被害がない安全で良質な食品を国内に流通させ、公正・円滑な取引や品質改善を促進すること等を目的としている。受検は任意であるが、全国的に大量の取引を行うものは、規格取引の根拠として検査を受けるのが一般的であり、米の場合は生産量の約7割が検査を受けている。検査基準である農産物規格規程には、米(水稲うるち玄米)の品位規格について、1等から3等までの各等級が定められている。検査の際、白未熟粒が多くなると、食味は良好なのに下位等級に格付けされてしまう。
制度開始当時と比較すると気候変動による温暖化が進み、等級に影響を与える白未熟粒の割合が増加しやすい環境となっており、高温耐性品種の開発や導入が各地で行われているが、消費者の既存銘柄への需要などから、急な作付け転換など対応可能な範囲にも限界がある。このような状況の中、米の等級は、出荷契約米概算金単価の基となり農業者の収入に影響するため、安定経営の観点からも、食味に変わりがないとされる白未熟粒の取扱いの見直しが必要である。
よって、国においては、米の検査規格について、現在の気候変動による米作への影響に鑑みた基準に見直すよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月19日
埼玉県議会議長 白土 幸仁
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衆議院議長 |
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