トップページ > 県政情報・統計 > 広報 > 広報紙・テレビ・ラジオ・ソーシャルメディア > 広報紙「彩の国だより」 > 「彩の国だより」令和7年6月号 > 知事コラム「ムジナモからネイチャーポジティブ(自然再興)の実現」
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掲載日:2025年6月1日
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皆さまはムジナモをご存じでしょうか。水生の食虫植物で、NHKの「連続テレビ小説」で有名になった発見者の牧野富太郎博士が、その形状がタヌキの尾に似ていることからムジナモと名付けたとされています。このムジナモが、ここ埼玉で国内でも極めてまれな「野生復帰」を果たしました。
国内のムジナモは、台風による沼の増水や開発による水質変化などにより1960年代に絶滅状態となりました。このような状況の中、羽生市、羽生市ムジナモ保存会、埼玉大学が主体となり、ムジナモが野生で生育できるよう水質の改善や他の生物とのバランスなどについて試行錯誤を重ねてきました。40年以上にわたるこれらの取り組みが実を結び、このたび、見事に「野生復帰」を果たしました。
絶滅状態にあった動植物が、野生で生育できるようになったことは、県内では初めてであり、国内でもトキやコウノトリなど限られた事例しかありません。埼玉県にとって大変誇らしい偉業であると考えています。
皆さまはネイチャーポジティブという言葉をお聞きになったことはありますか。これは、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」という考え方です。これまでは生物多様性の減少傾向(ネガティブ)が続いてきましたが、まずは損失を止め、2030年までに増加(ポジティブ)に反転させることで、2050年には自然と共生する社会を実現するとされています。県では、ネイチャーポジティブの実現を目指し、優れた自然や貴重な歴史的環境を保存する緑のトラスト運動や、希少野生動植物の保全などに取り組んでおり、地域住民の保全活動により、ムジナモが野生復帰したことは、まさにネイチャーポジティブのシンボル的な事例と言えます。
生物多様性は他の生態系を支えるのみならず、食料、水、木材、繊維など、直接的に利用できる資源を提供し、気候調整、水質浄化、病害虫の抑制など、環境の安定を保つ役割を果たすなど、私たちに多様な影響を与えます。このため、従来の自然保護にとどまらず、自然を再興する、より積極的な取り組みを社会全体で進めていく必要があります。全国に誇るネイチャーポジティブの実践経験を持つ本県でも、県や市町村、企業、県民の皆さまがワンチームになって、ネイチャーポジティブの実現に取り組んでまいります。
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