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掲載日:2022年3月25日

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埼玉県の起業家インタビュー「想いをカタチに」(第13回:本多隆虎さん)

未来をより素敵なものにしようとチャレンジし続ける埼玉県の起業家や起業家スピリット溢れる経営者の方々にお話を伺うインタビュー特集「想いをカタチに」。

本多隆虎氏第13回は、公益財団法人埼玉県産業振興公社(創業・ベンチャー支援センター埼玉)が主催する、社会課題の解決を目指す創業希望者に対して集中型の支援でビジネスプランの実現を応援する「社会課題の解決につながる創業支援プログラム」において、令和3年度参加し、創業の夢を叶えた本多隆虎さん(Ainskala株式会社 代表取締役)です。

さて、本多隆虎さん流「明日を拓く」ヒントとは?さっそく読んでみて!

 

★インタビューは令和4年3月に行ったものです。

 

想いをカタチに
~未来へと挑み続けるチャレンジャーたち~

サムネイル(本多氏)

[Ainskala株式会社 代表取締役 本多隆虎さん]

 

デジタル活用により、健康で楽しい人生100年を目指して

 ――Ainskala株式会社の事業について、お聞かせください


当社は、公益財団法人埼玉県産業振興公社が実施する「社会課題の解決につながる創業支援プログラム」にてビジネスプランをブラッシュアップし、創業に向けた準備を整え、2021年10月28日に設立しました。
事業内容は2つございます。1つは、高齢者向けeスポーツ事業です。高齢者にeスポーツを提供することで、健康増進や人とのつながりによる生きがい向上につなげていきます。具体的には、eスポーツを行う店舗の開設・運営のほか、地域貢献意欲の高い地元の企業様への営業を通じた地域連携です。もう1つの事業は企画段階ではありますが、私がこれまでの経験で培ってきたプログラミングスキルを活用したブロックチェーン事業です。
なお、社名「Ainskala」は元々ドイツ語の造語で、Ain(ドイツ語のスペルはEin)が「1」を、Skalaが英語のScaleで「規模を拡大する」を意味します。由来は、事業を行っている祖父の言葉「目の前の一人を幸せにして、それを大きくしていく。お金は後から付いてくる。」に着目し、利益に目が眩むことなく、目の前のお客様を大切にしようと思い、また自分への戒めも含め、名付けました。

 

大宮事務所

[Ainskala株式会社 大宮事務所]

 

 ――創業のきっかけについて、教えてください


都内に住んでいましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、母が暮らす実家があるさいたま市大宮区に移り住みました。母はスポーツジムに行ったり、ボランティアに参加したりと積極的に活動していましたが、コロナ禍により移動が制限される中で、日中、ぼーっとすることが多くなりました。今後もコロナ禍が続き、人とのコミュニケーション機会が少なくなってしまうと、気持ちがさらに沈んでしまい、痴呆の進行など健康面を懸念しました。母に毎日を元気に過ごしてほしいという親孝行の思いと、高齢者全体が抱える問題であると認識し、何かできることはないかと考えました。
母はパソコン教室に通っており、デジタル関係に興味を持っていたこと、楽しいと思えることで成長してもらいたいと思ったこと、私自身がゲームやパソコン関係が好きで、サーバーの設定など専門的な知識・技術を有していたことから、ゲームを取り入れたビジネスアイデア「eスポーツ事業」を思い付きました。
eスポーツ市場は世界規模で成長を続けていますが、メインプレイヤーは10代~40代です。海外では高齢者によるeスポーツプロチームが結成されていますが、企業のパフォーマンスの色が強く、一般の高齢者まで浸透していないのが現状です。また、競争が激しい既存市場(レッドオーシャン)化している若者向けeスポーツより、競争相手のいない未開拓の市場(ブルーオーシャン)である高齢者向けeスポーツの方がビジネスとして成功できると考えました。実際、母にゲームをしてもらったところ「思ったより簡単に楽しめる」「友達と一緒にやりたい」と好反応で、事業化の感触を得ることができました。

 

大宮氷川参道沿いに立地

[大宮事務所は大宮氷川参道沿いに立地]

 

自身の懸命な努力により掴んだ創業と事業展開の可能性

――公社事業「社会課題の解決につながる創業支援プログラム」参加のきっかけや、参加して大変だったことについて、教えてください。


2021年3月頃から事業化の構想を練っていたところ、公益財団法人埼玉県産業振興公社が実施する「社会課題の解決につながる創業支援プログラム」の参加者を募集していることを知り、絶好の機会だと考え、応募させていただきました。
まず大変だったのが、本プログラム参加者を募集していることを知ったのが6月上旬であり、応募期限が6月末であったため、急ピッチで応募書類を作成したことです。幸いにも構想期間中に調べたデータが大量に手元にあったため、それらを活用し、社会課題の解決につながるビジネスアイデアであるロジックを組み立てていきました。
また、本プログラムは短期間で創業を実現することを目的にしていることから、参加後のスケジュールも非常にタイトでした。約3か月間、アクセラレーションプログラムと言われる創業に係る基礎知識を習得する研修を受けた後、すぐさまブラッシュアップされたビジネスプランを発表する機会がありました。発表前にアドバイザーから御指摘いただいた内容を発表資料に反映するために、あの時は時間との戦いでした。
さらには、行政のお墨付きとも言える補助金採択者として決まるまでは、ビジネスアイデアを事業化するために孤軍奮闘しました。例えば、2021年12月19日にオープンした大宮のBibli内店舗をデザインしてもらえる事業者を見つけるため、50社以上にダイレクトメールを送付し、返ってきたのは3社程度でした。そのほか、事業化前にも関わらず、さいたま市民シルバーeスポーツ協会と直接アポイントを取り、事業協力をお願いするなど、泥臭いことをしました。補助金採択者となった後も、創業の実現が近づくにつれ、土日や平日の夜だけでは対応できず、本業をしている平日の昼間の時間を活用していました。誰かがやってくれるわけでもないのが、創業の大変なところだと実感しました。

 

創業事例発表会プレゼン

[社会課題の解決につながる創業支援プログラム 創業事例発表会プレゼン]

 

――一方で、上記プログラムに参加して得られたことについて、教えてください。


本プログラムの優位性の一つとして、補助金額の高さが挙げられます。他の自治体が行っている同様のプログラムでは、どんなに頑張っても30~50万円程度のため、創業を希望する者にとって上限100万円は非常に魅力的であり、助かりました。
また、公的機関のプログラムであるため、参加のハードルが低い反面、参加後においてはビジネスアイデアのリーガルチェックが厳しい印象を受けました。eスポーツ事業は運営上、ゲームの著作権に関わるため、権利を侵害しない事業であることを警察に問い合わせ、法的に問題ないことを確認しました。しかし、そのおかげで補助金採択者として認められ、信用力強化につながりました。
さらには、現在も課題の一つであるPRに対して、創業・ベンチャー支援センター埼玉とつながりのある企業様を御紹介いただくとともに、メディアに自社の取り組みを紹介していただくなど、一個人ではリーチできない先にPRすることができました。先輩起業家によるメンタリングも大変有意義であり、埼玉県をハブとしたコネクションを大いに活用させていただいています。

 

高齢者の孤立解消・健康増進から、家族や地域をつなげるツールに

――「高齢者向けeスポーツ事業」の展開に当たり、課題に感じていること、その課題に対して現在取り組んでいることは何ですか。

 

“無償でサービスを提供し、弱いものを救う”という社会課題解決型ビジネスの性質上、収益化は最重要課題です。無償で活動しているボランティア団体と競合しつつ、差別化して価値を出し、収益につなげていかなければいけません。
そのためには、価値と感じてもらえるサービスにしていかなければなりませんし、これまでなかった新しいサービスに対してお金を払う習慣や考えがない中で認知してもらい、集まっていただける仕組みをどう作るのかが、喫緊の課題であります。
私が調べた限り、現在、日本でも3社程度しかない事業であり、認知いただけるまで相当な時間を要すると思っています。高齢者のこれまでの傾向を分析すると、男性には「所詮ゲーム」と捉えられがちであり、ゲームをすることに対してお金を支払う概念があまりありません。一方、女性はゲームを通じた社会コミュニティの形成に興味・関心を持つ方が多く、人との交流機会の提供に対して前向きにお金を払っていただけます。一朝一夕では叶わないため、高齢者の方々と信頼関係を徐々に築き、認知を広めていくほかないと考えています。
幸いにもここ最近、eスポーツが老化防止に役立ったり、障害者向けのeスポーツが出てきたりと、eスポーツが「単なる遊び」ではなく「健康志向」として認知され始めてきました。これを追い風と捉え、当社としても今後、大会を開き、優勝者に賞状を贈ることで身内に自慢できる高齢者が増え、eスポーツが家族や地域をつなげるきっかけになることを期待しています。

 

実施風景

[実施風景(本多隆虎さんのお母様が利用者をサポート)]

 

――事業の今後の展望について、教えてください。


まずは、大宮のBibli内店舗を盛り上げていきたい。具体的な数値目標として、登録会員数150人を目指しています。そのためには、大会を定期的に開催し、一過性にならないよう話題提供していくことが重要と考えています。
その後は、店舗で培ったノウハウを活用し、高齢者のコミュニティづくりに前向きな企業様とスポンサー契約を交わすことで、店舗拡大を図っていきます。
他方、中学や高校ではeスポーツの部活が増えてきている状況であるため、公共機関におけるeスポーツの導入コンサルティング事業も検討を進めています。
なお、eスポーツは子どもの知育にも有効のようで、今後の収益状況によっては、子ども向けプログラミング教室の開催を通じて、eスポーツの可能性を広めていけたらと思っています。

 


インタビューはいかがでしたか?身近な存在に寄り添うことで発見した社会課題を、自らの経験と努力によって解決を図っていく本多隆虎さん。何かしたいことのある人、チャレンジしてみたいことのある人にとっては、背中を押してくれる言葉の宝庫だったのではないでしょうか。
「未来へと挑み続けるチャレンジャー」の皆さんから学ぶ、「明日を拓く」ヒント。これからも、インタビュー特集「想いをカタチに」をどうぞお楽しみに♪

 

注目情報

公益財団法人埼玉県産業振興公社では、令和3年度から新しい技術やアイデアにより社会課題の解決を図ろうとする創業希望者を支援するため、「社会課題の解決につながる創業支援プログラム」を実施しています。詳細は以下のURLからご確認ください。

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0803/sspj.html
(埼玉県県産業支援課HP)

お問い合わせ

産業労働部 産業支援課 創業支援担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 本庁舎4階

ファックス:048-830-4813

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