コラム

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掲載日:2023年12月11日

口惜しきもの、自分の中の『思い込み』

2024年に放送されるNHK大河ドラマ第63作『光る君へ』。約1,000年前の働く女性の大先輩である紫式部が主人公として取り上げられます。紫式部の同時代人であり、「枕草子」の作者である清少納言も物語に登場するということで、どのように描かれるのか個人的にとても楽しみです。

特別な人以外は、女性の場合は名前が記録されることのなかったこの時代において、確かに彼女たちは目立った働きをしていたのだなぁと感じます。平安の世は決して男女平等ではなかったでしょうし、働く女性達が絶賛されたわけではなかったのでしょう。枕草子第21段では「女性が社会に出て知識を深めることのどこが悪いの!」と解釈できるような一節も。総務省の労働力調査によると、2022年の女性就業者数は、3,024万人、2012年からの10年間で約360万人増加。また、令和5年版男女共同参画白書によると「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」と回答した割合は、男女ともに約6割まで上昇しています。紫式部さんや清少納言さんも喜ばれているかもしれません。

しかしながら、女性の就業者数は増えていても、内閣府男女共同参画局の第5次男女共同参画基本計画における成果目標の動向によると、管理職に占める女性の割合(2022年)は、課長相当職が13.9%、係長相当職が24.1%。政府が掲げていた「2020年までに指導的地位に女性が占める割合が30%」は実現できず、現在は2025年の目標達成に向けて取り組みが進められています。

この状況には、様々な原因が複合的に絡み合っているのだと思いますが、無意識の偏見もその一つなのだろうと思うのです。内閣府男女共同参画局の令和4年度性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究によると、男女とも「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」の割合が第1位(男女とも約5割)。女性の上位10項目の中には「組織のリーダーは男性の方が向いている」も。ただし、年代によってはその考えには差があり、将来的にはこういったバイアスは解消されて、女性管理職の統計なんて意味がなくなるのではないでしょうか。

とはいえ、バイアスが確かに存在する現状に対して、個人ができることは少ないですが、まずは自分の中にも様々な固定観念による「べき」が存在していて、それを不快に思う人がいることにも心を向けなければならないのだと思います。

女性管理職登用の課題に関する研究(田中利佳、脇寛(2023)「女性就業実態の現状から見る女性管理職登用の課題」)によると、女性自身が管理職を望まない理由として「周りに同性の管理職がいない」、「自分には能力がない」等が挙げられています。確かに私自身もそう思っていました。でも、ほんの些細でしかないかもしれませんが、自分自身の経験や知識が社会に還元されることは「能力がない」とは言わないのではないでしょうか。

最近では、イノベーション創出、組織パフォーマンスの向上のため、タスク型ダイバーシティ(経験やスキル、価値観といった目には見えない内面の多様性)が注目されています。

性別も立場も関係なく、働く中でも様々な経験を積む、様々な価値観を得ることで、それを社会に還元する機会がますます増えるのだろうと思います。だからこそ、約1,000年前の先輩を見習って、日々「いとをかし(とても素敵!!)」と心が動くような経験を周囲の人々と積み重ねていきたいと思います。

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