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掲載日:2024年5月13日

女性リーダーから学ぶチーム作り(2024年3月11日実施)

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働く女性応援講座 ~特別講座~ いつかはなりたい自分へ

埼玉県女性キャリアセンターでは、2024年3月11日に「働く女性応援講座 ~特別講座~」を開催しました。
埼玉県内で活躍する3名の女性経営者を招き、働く女性のキャリア形成についての考えや、従業員の意欲向上の仕方など職場での悩みの解消法についてお話しいただきました。3名とも民間企業での勤務を経て経営者となられた方で、その過程において様々な苦労や難題を乗り越えてきた経験を持つ女性です。
今回の講座では、働く女性応援講座に参加された方々から寄せられた質問に、それぞれの視点からお答えいただきました。

■パネリスト
清水 小百里氏(株式会社KMA 取締役) 写真右
中島 伊都子氏(中島製本株式会社 代表取締役) 写真中央
■コーディネーター
石田 美枝氏(株式会社Office Nutrie 代表取締役) 写真左

<略歴>

清水  小百里氏

1971年さいたま市生まれ。大手企業や中小企業で勤務し、2001年に結婚、長男を出産。2004年、結婚相談所を経営していた義母が病に倒れたため、次男を出産後すぐに二代目仲人として入社。仕事と家事育児の両立を工夫をしながら、2018年に取締役に就任。多様な働き方実践企業やSDGsの認証も受け、たくさんのご縁組をしてきた。LGBTQのご縁組や、LGBTQを正しく認知してもらう講師活動にも力を入れている。

中島  伊都子氏

大学卒業後、出版社に勤務し、書店や団体への営業、営業管理業務を担当。
父が創業した中島製本株式会社に2001年に入社し、2013年に代表取締役に就任。
週刊少年ジャンプやヤングジャンプなどのマンガ雑誌を中心に製本しているが、近年のデジタル化等による市場の縮小に伴い、地域の会社と連携した自社での製品開発や、新規市場の開拓に向けて取り組んでいる。

石田  美枝氏

市役所職員として学校給食業務に従事し、フリーランスを経て法人を設立。管理栄養士として多岐にわたる「食」と「健康」にかかわる事業を手掛ける。妊活期のからだづくりから高齢者向けの食事とライフスタイルなど「着床から天国までの栄養指導」をテーマに全世代にわたる栄養指導を多角的かつ実践的に取り入れられるような活動として展開している。

 

経営する企業等の情報は、各ホームページにてご確認ください。

株式会社KMA  https://kma-h.co.jp/

中島製本株式会社  https://nakajima-seihon.co.jp/

株式会社Office Nutrie  https://eiyoushi-oshigoto.com/

仕事上での指導や人事等、伝えづらいことを伝えなければいけない時、気を付けていることはありますか?

<中島>

私は、現場での仕事をしたことがないため、技術的なことは分かりません。そのため、現場をよく知る職人さんに対して命令口調にならないように、お聞きする、お願いする、という姿勢で話すようにしています。

人事面では、異動や降格などの繊細なことを伝える時に、相手の気持ちを考えて、きちんとフォローするように心がけています。そのきっかけになったのが、会社の決定で私がある従業員に降格の人事異動を伝える際に、結果を伝えるだけで終わらせてしまい、数年間ぎくしゃくしてしまったことです。今思えば、人事異動など繊細なことを伝える時は言って終わりではなく、「今回の人事異動はこうですが、今後はこんなことをお願いしたいと思っています。」といったフォローをしていれば、良い関係を構築できたのかなと反省しています。

<石田>

職場内だけでなく、お客様相手に伝えないといけない場面、清水さんはどうしていますか。

<清水>

私は、「言いづらいことは前もって伝える方が傷つかない」と思っています。

もし、失敗した時に色々言ってしまうと、自信をなくしてしまうので、「これをやったら失敗するから絶対に気を付けて」と具体的な例も交えて伝えるようにしています。もちろん1回伝えただけにせず、日頃のフォローや定期的なチェックも必要です。

結婚相談所では服装や髪型などの身なりに気をつかうのも大切ですから、その重要性を理解してもらうために、必ず最初に第三者の例を挙げます。例えば、身だしなみを整えていないとだらしなく見られて、それが原因でお見合いが上手くいかないことがあった、という事を伝えます。

次に、3つ褒めて1つ指摘する、というアドバイスの仕方をしています。これは持論ですが、この伝え方は、素直に聞いてもらえている気がします。例として会員の男性に、まずその人の魅力に感じる部分を挙げて、「あなたはここと、ここと、ここが良い」と褒めます。その後に「それがあなたの魅力なのに、もし服装や髪型などで気付いてもらえなかったらもったいない。だからマイナスな印象を与えないよう、身なりには気をつけて」と指摘し、そのために必要なアドバイスを加えたりします。これをネガティブな面から指摘してしまうと慰めのように感じてしまうので、改善につながりにくくなると思います。

<石田>

3つ褒めて1つ指摘するというのは、「ちゃんとあなたのことを見てるよ」というのがしっかり伝わりますね。すごく大事なことだと思います。

普段の仕事や会議で、活発に意見交換をしてもらうためのコツはありますか?

<清水>

私の以前の職場もそうでしたが、役職がついている人の意見が強くなることが多々あると思います。そのため、私はなるべく二番手、三番手に意見を聞くようにしています。

例えば、意見の聞き方として「私はAがいいと思ったけど、Bもありかなと思う。皆はどう思う?」というように、相手に選択をさせます。そこで「Bがいいと思います」という意見が出たら、「それはどうして?」と少し深掘りして、「じゃああなたは?」とどんどん話を振っていくと色々な意見が出てきます。それを会議のたびに続けていくと習慣化し、下からの意見が聞き出しやすくなったのが実感できました。また、その場の雰囲気を重くしないように、自分が少しくだけた雰囲気や、失敗談などを交えて話すようにした方が、意見が言いやすくなると思います。

<中島>

私の会社も、どんどん意見が出てくるような雰囲気の会社ではないので、委員会(技術革新委員会、品質向上委員会、リーダー会議等)を作って、意見の出しやすい場を作っています。

現代はデジタル化が進んでおり、製本業全体の業績が厳しくなっているので、自分たちで新たな企画や、事業を始めないといけない局面を迎えています。そこで、社員たちにも好きなものを企画、商品化してもらうために20人くらいで委員会を作って、展示会やギフトショーに出展したりしています。この時に、社員それぞれが得意とすることを担当してもらうことで、積極的に意見が出るようにしています。まだ始動して間もないですが、一人ひとりが特性を生かして活躍できるように、今後も続けていきたいと思っています。

<石田>

積極的に意見を出してもらうためには、お二人の話されたような工夫をまずは試してみる、これがテクニックの1つなのかなと思います。その上で、周りの意見を聞きながら、試行錯誤を繰り返すうちに、独自のテクニックになっていくのだと感じます。

周囲に仕事を振るのが苦手で、自分でやった方が早いのではないかと考えてしまいます。同僚や部下に、自発的に挑戦したり、モチベーションをもって取り組んでもらうには、どうすればいいのでしょうか?

<清水>

私は「褒めて育てる」ことが、人がやる気を持って取り組むことにつながると思います。ただし、褒めて育てるといっても、決して甘やかすわけではありません。褒めることでその人に自らの課題に気付いてもらうきっかけにするのが目的です。そのためには相手に関心を持って関わることが不可欠で、そこで見つけた長所をたくさん褒めてあげます。もしこれが問題点の指摘ばかりでは、お互いに疲れてしまいます。

先の例でいえば、アドバイスを受けて美容院に行った会員の男性に、「すごくかっこよくなったよ!」と思いきり褒めると、それをきっかけにスポーツジムに通い始めたり、肌に気をつかい始めたりと、自ら課題を見つけて積極的に改善していました。このように1つ褒めることが、いくつもの改善につながると考え意識して使っています。

<中島>

私も、どうしても自分でやりたくなってしまいますが、心配でも積極的に人に任せるようにしています。

先ほど言った委員会でも、初めは私が中心になってやらなければと考えていましたが、部下に委員長をお願いすると、私が思っている以上に自分事としてとらえて責任をもって取り組んでくれていました。むしろ私が途中で口を出したら、「社長は黙っていてください」「こちらで好きにやらせてください」みたいに言われてしまいましたね(笑)。

2年目には、「自分たちで主体的に進めたい」「自分たちが中心になってやりたい」と言われ、そこまで会社のことを考えてくれているのだと嬉しくなりました。

その経験からもっと社員を信じて、任せていくことが大事だと思っています。失敗してもそれは全部経験になるので、どんどん新しいことに挑戦してほしいですね。

<石田>

こちらが仕事を振ったあとの干渉に、「自分たちでやりたいです」とか「黙っててください」と言われると、逆に社員の主体性が実感できたようで、ちょっと嬉しいかもしれませんね。

自分でも実際に、社員のやる気を実感できる嬉しさを感じてみたいですね。

応援メッセージ

<清水>

もし役職がついたり、リーダーになったとしても、「完璧にしなければ」とか「強くなければ」と思う必要はありません。肩の力を抜いて、自然体でやればいいのです。会社に勤めている方は、みんな誰かの部下で、必ず上司や先輩がいる、ということを忘れないでください。そしてその人たちをもっと頼ってください。

また、先程の質問にもありましたが、「自分でやった方が早い」とか「自分でやった方が正確だから」と、全部抱え込んでしまう方もいると思いますが、部下にやらせてみて、失敗したらフォローする、くらいの心持ちで待つのも、リーダーの役割ではないでしょうか。あなたがリラックスして仕事を楽しむ姿を見せれば、部下も楽しく仕事できますし、リーダーになっても辛いことばかりじゃない、という見本にもなっていることを忘れないように、仕事をされたらいいと思います。

<中島>

渡辺和子さんの「置かれた場所で咲きなさい」という言葉があります。今もしかしたら、自分が思っていたような人生ではないかもしれません。それでもこの言葉のように、今置かれた環境の中で、新たに夢を持っていけば、道は少しずつでも切り開けます。

また、落ち込みそうになったら、同僚や部下などにもどんどん相談してください。私も社長になった頃は、「弱音は吐いちゃいけない」、「悩みは絶対言えない」と思い込んでいました。しかしネガティブになっても、落ち込んでも、いいことは何もありません。時には弱音を吐いたりしながらも、チームでそれぞれが得意なこと、好きなことを活かせる環境作りをするのが、リーダーのすべきことだと思います。良いリーダーになりたいという思いを持っている方に、性別は全く関係ありません。そのチームの中で叶えたい思いを掲げて、自分流に引っ張っていただきたいですね。

これからも時代はどんどん変わり、周囲の声を「聞く力」が必要になる中で、女性の力は益々発揮されるようになると思いますし、同じように良いリーダーになりたいという志を持つ仲間も周りにたくさんいます。是非、皆さん一緒に頑張ってまいりましょう。

 

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