インタビュー・コラム

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掲載日:2024年4月25日

足立 知美(あだち ともみ)さん

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プロフィール

埼玉県深谷市にある「すし・活魚 鮨政 和創彩花 あだち」の女性和食料理人。
父の東三氏が昭和46年に個人事業主として開業。昭和59年に法人化し有限会社足立へ。
3姉妹の末っ子で、幼少期から両親の働く姿を見て育ち、自身も料理人の道へ。調理師専門学校を卒業後、懐石料理店で約6年の修業を経て、「すし・活魚 鮨政 和創彩花 あだち」に入る。料理を作ることが大好きで、お客様に喜んでもらうことをやりがいにしている女性和食料理人です!

「すし・活魚 鮨政 和創彩花 あだち」のInstagram(別ウィンドウで開きます)QR

円グラフ

両親の背中を見て、同じ道へ

「すし・活魚 鮨政 和創彩花 あだち」は、もともと両親が経営をしていました。身近に料理人がいて、料理があり、お客様がいる、という環境で私は育ちました。そのような環境だったため、両親の管理のもと小さい頃から包丁を握り、料理を作るのが大好きで、高校までお店の手伝いをしていました。自然と「私もこのお店で料理を作りたい。両親の跡を継ぎたい。」と思うようになり、短大卒業後、料理の世界へ入ることを決意し、調理師の専門学校で和食を専攻し2年間通い、腕を磨くために、知人の紹介で熊谷市にある懐石料理店に修業に行きました。

そこは地元でもおいしいと有名な繁盛店でした。毎日大量の仕込みがあり、そのおかげで現在は、食材を切っただけで「この食材はパサパサしているから焼物に使えないな」と瞬時に判断し、食材を一番おいしく料理することができます。

振り返ると修業当時は、本当に大変でした。仕入れがあるため朝は早く、仕込みがあるため帰りは遅く、家族の誰とも顔を合わせない日々が続きました。繁忙日は、ベッドにたどり着けず、車の中で眠ってしまうこともありました。それでも辞めなかったのは、「女性だからやっぱり無理か」と言われるのが悔しく、「負けられない」という私の意地と両親に心配をかけたくなかったため、「簡単に挫折はできない」という気持ちがあったからです。また、同期2人(男性)の存在も大きく、励まし合い切磋琢磨できました。当時同じ店にいたパートさんが手紙をくれたり、励ましてくれたりして支えてくれたのもとても大きかったです。

修業を終え、実家に戻った時は、1階で父が寿司職人として、2階で私が和食料理人として料理を提供していましたが、2008年に、ワンフロアで料理を提供するスタイルに改装しました。今は両親と一緒に仕事ができるのはとても幸せです!

外観

私のこだわり と 出会えた食材に感謝

日本は肉、魚、野菜、果物、米などどれをとっても食材に恵まれています。地域によって気候や地形が違い、それを生かした特産物があり、世界に誇れると思います。美味しい食材が採れるその裏では、長い年月をかけて生産してくれる方がいたり、悪天候と闘いながら漁に出てくれたりする方がいらっしゃいます。その方たちのおかげで私たちは美味しい食材を料理できているので、どうしたらそれを最大限に生かし美味しくできるのか、というのを常に考えて料理を作るようにしています。せっかく巡り会えた食材を無駄にしないように、美味しく、かわいく、綺麗に変身させてあげたいという気持ちで愛情を込めて料理を作っています。

また、盛り付けにもこだわります。料理が引き立つ盛り付けで、お客様が「見て楽しい、食べて美味しい」と満足いただけるよう心を配っています。

父は、寿司職人なので私とは分野が違いますが、料理全般の味付けと盛り付けは父には負けません!たくさんのお客様や常連さんに「料理が美味しくなったね!」という声もたくさんいただいています。父の味を引き継ぎつつ、私の味も出せていることがとても嬉しいです。

料理左     料理右

休みの日も料理を追求!

毎週水曜の定休日は、オシャレをして外出することにしています。週に1回の自分へのご褒美なので、マッサージに行ったり、お風呂に行ったり、タイミングが合えばスポーツ観戦に行ったりライブに行ったりしてリフレッシュするようにしています。

また、行ってみたいお店をいくつかピックアップしておいて、主に都内や県南に食べ歩きに出掛けます。料理のヒントを得たり、トレンドや時代の変化を楽しみながら追求しています。

料理は、旬によって食材の味が変わります。同じ魚でも切り方によって食べやすさが違ったり、少しの調味料で味が深まったりします。一人ひとりの個性が表現されるのも料理人として面白いなと感じます。

変化した客層 と これからの課題

父は寿司職人であるため、主にお寿司を提供していますが、なかにはお寿司が食べられない方もいらっしゃいます。そのため、私が和食料理人として入った2006年頃から、ランチメニューを変更、デザートメニューの追加、仕出し弁当やオードブル、お寿司等のテイクアウトなどメニューを拡大してきました。そうすることでサラリーマン層だった当店もファミリー層が増え、今では、家族のお誕生日会で利用していただくことも多くなりました。家族で集まるお店の選択肢に当店を入れてもらうことは嬉しいですね。

ただ、当店はホームページがなくInstagramのみです。なかにはInstagramを見て市外の方がいらっしゃってくれますが、せっかくの美味しい食材と気持ちを込めた料理を発信・周知できていないので、今後はネットワークを駆使して発信していきたいと考えています。

埼玉県内には「女性の料理人」がまだまだ少ないと思います。料理人はとにかく体力が必要です。1日立ちっぱなしですし、動きっぱなしです。また、食材を扱う仕事なので休みも取りにくいのが現状です。最近は大手のホテルなどは働く環境が整ってきており、女性の料理人が増えてきていると聞いています。休日に外食した際、厨房をチラッと覗いたときに女性料理人がいると「あっ、ここにはいるんだ!」と嬉しく思います。頑張っているのは私だけではない、と勇気をもらえます。女性料理人のネットワークや交流会があればぜひ意見交換などもしたいと考えています。

捌く     鯛作り

ゆくゆくは父から承継 ~大切なこのお店を~

私が今後長く働くためには、まずは健康面を管理しなければいけないと考えています。料理人は体力がとても必要な仕事です。父は81歳ですが、現役でお寿司を握るくらい強靭な体力を持っています。創業者でもあるので、健康に気をつけて元気なうちは働いてもらいたいと思っています。私も姉も育ててもらったこの愛着あるお店を大切にしていきたいので、家族で協力し合い、必要に応じて働き方も改善し、私たちにしかできない雰囲気のお店を作っていきたいと思っています。

また、今までは母が経理事務をやっていましたが、現在は私が引き継いでやっています。実務をやるうえで、お店全体を考えた事業戦略やそれを形にするために従業員の意見をまとめて実行するまでの過程が難しいと感じています。何かをやるときは、勇気や知識がないといけないですし、タイミングも考えないといけません。世代交代するまでにいろいろ考え、家族と相談し、準備を進められたらと考えていますが、現在は、両親も現役で働いているので、お互いの主張を共有してお店を運営していければと思っています。

みんな

働く女性・働きたい女性に向けてメッセージをお願いします

仕事をしていくうえで、悩みや不安がない人はいないと思います。私自身、いろいろな分野で女性が活躍している姿を見るとすごく勇気づけられます。迷いながら一歩ずつ前に進むことで見えてくるものがありますし、頑張っていれば必ず応援してくれる人がいるので、そのような方たちを大切にして自分らしく輝いてほしいなと思います。私もそうなりたいので、一緒に頑張っていけたら嬉しいです!

 

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