埼玉県立がんセンター > 臨床腫瘍研究所 > 研究所プロジェクト紹介 > エピゲノムの状態からの細胞分化およびがん化の原因遺伝子の網羅的解析
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掲載日:2023年9月12日
担当: 杉野隆一、迎恭輔 、大平美紀、上條岳彦
ヒトの体はひとつの受精卵が細胞分裂を繰り返すことによって形作られます。体細胞が、細胞分裂を繰り返すことによって機能を獲得し、幹細胞能を失っていく現象は「分化」とよばれています。細胞分化は、DNA配列の変化を伴わない、いわゆるエピジェネティックな変化によって起こります。細胞の「がん化」は、細胞分裂で起こった際の異常によって起こります。がん化は、ゲノムに起こった異常が原因の場合もあれば、エピジェネティックな異常の場合もあります。細胞分化におけるエピジェネティックな変化を知ることは細胞分化のみならず、がん化のメカニズムを知るためにも重要です。
私達は網羅的なオミクスデータ解析により、細胞分化を引き起こした原因となったエピジェネティックな変化を特定する解析手法を開発することを目指しています。実験技術の進歩により細胞の情報は網羅的に集められています。さらに、そのデータは公共のデータベースで世界の研究者間で共有されています。これらの膨大なデータの解析は、主に自作のコンピュータープログラミングで進められます。
本研究ではips細胞とそこから分化させた神経堤細胞を用いて、細胞の分化に貢献したエピゲノム変異の探索を行っています。現在解析に用いているエピゲノム因子はDNAメチル化と、ヒストン修飾因子であるH3K27me3とH3K27acです。プロモーター領域のDNAメチル化は遺伝子発現を抑えることが知られていますが、本解析でもほとんどの遺伝子でそのルールが当てはまっていることを確認できました。またプロモーター付近のH3K27me3修飾は遺伝子発現を抑えると言われていますが、こちらはDNAメチル化よりも強い関係が見られました。現在より詳細な解析を進めています。
エピゲノムの変化の図
iPS細胞とそこから分化させた神経堤細胞の遺伝子発現およびエピゲノムの変化。神経堤細胞分化マーカーについて調べている。転写開始点付近のDNAメチル化の変化と遺伝子発現には概ね負の相関が見られる。またH3K27me3の修飾が新たに加わった遺伝子は遺伝子発現が抑えられていた。
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