埼玉県立がんセンター > 臨床腫瘍研究所 > 研究所プロジェクト紹介 > がんの網羅的ゲノム解析による新しい診断・治療法の開発
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掲載日:2023年9月12日
担当: 大平美紀、杉野隆一、上條岳彦
がんの治療では、診断時に腫瘍の悪性度などの性質をあらかじめ詳細に予測することが、効率的かつ副作用の少ない治療の選択に繋がります。臨床腫瘍研究所では、マイクロアレイ解析システム(図)を平成26年度より導入し、短いDNA断片が高密度に搭載されたマイクロアレイを使って、がん組織の染色体の欠失や増幅を網羅的に調べるアレイCGH解析や、DNAメチル化解析、ヒト全遺伝子の発現解析を行っています。このような方法で様々ながんのデータを蓄積し、バイオインフォマティクスを取り入れた統合解析を行うことで、診断や治療に役立つマーカーの検索や、がんの悪性化関連遺伝子の探索が可能となります。私たちのこれまでの解析から、代表的な小児固形腫瘍のひとつである神経芽腫では、染色体1番、11番、17番の部分的な欠失や増加、MYCNがん遺伝子の増幅の有無等のパターンにより、超高リスクから超低リスクまで分類できることがわかりました(図)。また、特定の遺伝子の発現パターンやDNAのメチル化パターンが、がんの悪性度と関連することも見出しました。これらの結果をもとに、日本小児がん研究グループが進める臨床試験の付随研究として、これらのリスクマーカーの前向き検証を進めています。また、マイクロアレイ解析とともに、次世代型DNAシーケンサーを用いた全遺伝子規模の遺伝子変異解析も行っており、治療抵抗性がんの原因となる遺伝子群の探索を進めています。近年難治性がんを対象に、がん遺伝子パネル等を用いて個々のがんの特徴を調べることで適切な治療薬を選択するPrecision Medicine(精密医療)が始まっています。より多くのがん種に対してこのような新しい診断法を導入するため、各診療科と連携し、様々なゲノム解析を進めています。
マイクロアレイを用いたがんの網羅的ゲノム解析の一例
がん組織の染色体の変化を網羅的に調べるアレイCGH解析の結果の一例を示します。多数の症例を調べ、臨床経過との関係を解析することで、悪性度の高いがんに特異的な遺伝子マーカーを見つけ出し、診断に役立てています。
1. Hishiki T et al. Int J Clin Oncol. (2018) 23(5):965-73.
2. Depuydt P et al. J Natl Cancer Inst. (2018) 110(10):1084-93.
3. Uryu K et al. Oncotarget (2017) 8(64):107513-29.
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5. Li Y, Ohira M et al. Oncotarget (2017)8(34):56684-97.
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