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掲載日:2024年3月21日

令和3年2月定例会 代表質問 質疑質問・答弁全文(田並尚明議員)

DXについて

Q   田並尚明  議員(民主フォーラム)

県民生活、企業や社会全体でニューノーマルが求められる昨今、令和3年度予算の柱の一つでもあるDXについてお伺いいたします。
そもそもデジタルトランスフォーメーションとは何ぞやということです。正直、私も全部理解できているわけではありません。2004年にスウェーデンのウメオ大学、エリック・ストルターマン教授が提唱した定義によると、「デジタル技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」とのことです。
話は少しずれますが、2017年にノーベル経済学賞を獲得したリチャード・セイラー教授は、「ナッジ」と呼ばれる行動経済学の法則を見つけたそうです。その「ナッジ」の例として、男子トイレに入りますと壁に「一歩前へ」と書いた貼り紙をよく見ますが、その効果を実感したことはあまりありません。教授は、小便器にハエのシールを貼るアイデアを思いつきました。その結果、トイレの利用者は小便をハエに当てようとして自然に一歩前へ出るようになり、その結果、トイレの清掃費が約8割も減ったそうです。小便器の周りが汚れて清掃費がかかるという課題をハエのシールを貼るというアイデアで解決したという例ですが、デジタルトランスフォーメーションでは社会的課題をどのようにしたら解決できるか、そのアイデアをデジタル技術で実現するということではないでしょうか。
少し長くなり恐縮ですが、デジタルトランスフォーメーションについて三つ例を挙げさせてください。
一つ目は、デジタルトランスフォーメーションで貧困から脱出した例です。国内外で日本企業が金融領域でデジタルトランスフォーメーションを実現した例です。
これは海外の例でございますが、ローンというのは、通常は勤続年数や貯蓄残高などの与信がないと審査が通りません。この取組では、職がなかった人が、位置情報が分かり、車両を持って逃げようとするとエンジンがかからなくなる仕組みが搭載されている小型タクシーを銀行からローンで購入し、タクシー業から就労を開始してもらう取組です。銀行にとっては顧客が増え、借りる側も財産がなくても位置情報でタクシーがきちんと稼働していることが分かるため、働きぶりが与信となります。この方はこの与信で子供の教育ローンがすぐに組めたそうです。就労に加え、子供の教育を受ける機会も実現しました。地元の金融機関と車両メーカーが提携、連携したすばらしい社会的デジタルトランスフォーメーションだと思います。
二つ目は、スキルのシェアの例です。
スキルを短時間だけリモートでシェアや販売したり、短時間だけ働いたりするようなスキルシェアは、最近耳にすることが多くなってきたと思います。退職者の中で語学や知識など高いスキルを持った人たちや、御家族の事情で終日は働けないような方々が3時間だけ働くといったことが、マッチングサービスによりできるようになっています。
現在、このコロナ禍において在宅ワークが増えるなどして、埼玉県内に多くの人材、スキルが蓄積されている状況だとしたら、このような取組は新しい生活様式の維持にもつながるのではないでしょうか。また、こうしたマッチングサービスで町内会運営や伝統工芸の継承、教育や子育てなど、様々な地域活動に必要な情報を分かりやすくマッチングできるようになれば、社会の活力と交流促進になるのではないでしょうか。
三つ目は、小さな取組ですが、市民が自らのスマートフォンで撮影したたくさんの動画をプロが編集して、世界中に地域の本当の魅力を発信するブランディングムービーで成功を収めている例もあります。
一方で、県の取組事例には「ポケットブックまいたま」「埼玉コンシェルジュ」がありますが、この二つは大変すばらしい取組だと思います。ただ、情報を得るためには、これらのアプリにアクセスしなければなりません。これは、デジタルトランスフォーメーションというには一工夫足りないのではないでしょうか。
奈良県生駒市では、自治体の行事を市のアプリで発信するのではなく、個人が使っているカレンダーアプリに市の行事などの情報を掲載してもらうように取り組みました。それにより、市のアプリに一々アクセスしなくても、その人が自分のスケジュールを確認するためカレンダーアプリを開くと、自然と市の行事も確認できるという仕組みです。これは、デジタルトランスフォーメーションと言えると思います。
こうしたデジタルトランスフォーメーションの取組は、社会や地域の課題に耳を傾け、そこにデジタル技術を生活に浸透させるアイデアを結び付ける、市民目線で共感するプロデューサー役が必要となります。実際にデジタルトランスフォーメーションを推進するに当たって、東京都では産官連携した有識者会議を、佐賀県では産官学でラボを設立することを発表しました。また、東京都や神奈川県ではCIOも外部人材を登用しているとのことです。このような推進体制には、多様な方々が参加するワークショップを通じて社会課題に気づき、地域の魅力を再発見して、そしてデジタル技術を生活に浸透させるアイデアを見つけていくということです。
埼玉県のデジタルトランスフォーメーション推進計画案はどうでしょうか。社会全体のデジタルトランスフォーメーション実現を中心に、「快適で豊かな真に暮らしやすい新しい埼玉県への変革」がうたわれており、その部分は大変すばらしいと思います。
一方で推進体制を見てみますと、情報システム担当のCIO指揮の下の庁内体制であり、また、外部専門家も技術・セキュリティ分野となっています。この推進体制では、庁内業務のデジタル化は進むかもしれません。もちろんデジタル化は大切だと思っておりますが、しかし、推進計画にもうたわれている社会全体のデジタルトランスフォーメーションの実現、県民の皆様の日常生活、子育て、教育、介護、企業での働き方や生産、事業継承、技術継承など、様々な社会的課題を新しいやり方で良い方向に変革、トランスフォームしていくことができるでしょうか。
今年度の施策では、今後デジタルトランスフォーメーションを進めるため、その基盤整備ということですが、社会が抱える様々な課題を何か特定のデジタル技術のみで解決できるということはないと思います。デジタルトランスフォーメーションを実現していくためには、県庁を出て、地域コミュニティや企業と連携して社会や地域の課題に耳を傾け、そこにデジタル技術を生活に浸透させるアイデアを結び付けるということが大事なのではないでしょうか。
長くなりましたが、そこでお伺いいたします。
デジタルトランスフォーメーションを準備していくに当たり、技術・セキュリティ分野だけでなく、プロデュース的な分野にも外部の人材、知見を活用することが必要と考えます。そして、県民、企業、様々なコミュニティなどの社会や地域の課題に耳を傾け、そこにデジタル技術を生活に浸透させるアイデアを結び付けていく、さらにはそこで育成されたスキルを伝えていくことも必要と考えます。そうしたデジタルトランスフォーメーションの柔軟な推進体制がよいと考えますが、知事のお考えをお聞かせください。
併せて、国のIT新戦略には、デジタルミニマム、デジタルに詳しくない人も支えるとあります。埼玉県のデジタルトランスフォーメーションを推進していくためには、これらの視点も必要と考えますが、併せて知事のお考えをお聞かせください。

A   大野元裕  知事

外部の人材を活用し、柔軟な推進体制をについてでございます。
議員お話しのとおり、DXを推進していくためには、社会や地域の課題に耳を傾け、そこにデジタル技術を結び付けることで新たな価値を創出していくことが重要であります。
そしてDX推進のため、全ての施策においてデジタルを前提とした視点で事業に取り組む必要があると考えております。
念のため申し上げれば、DXはデジタル化ではありません。また地域におけるニーズに応じ、デジタル化を浸透させることだけでもありません。デジタルを前提とした社会や行政の在り方の転換に他なりません。
そのためには、デジタル技術に通じたそういったノウハウを持つ方だけではなく、現場をよく知る事業部門とデジタル化のノウハウを持つ情報部門が連携していくことが必要であります。
現場の声を吸い上げてデジタル化と結びつけるため、令和3年度から新たにコーディネーター役としてデジタル政策幹を設置するところです。
デジタル政策幹が中心となって、テーマごとに事業部門と情報部門で、中堅、若手職員が参加するプロジェクトチームを立上げます。
チームの中で、議論を深めながら、まずはビジョンやロードマップの策定に取り組んでまいります。
さらに、デジタル化の幅広い知見、専門知識、先進事例などにも精通する外部の専門家の活用も重要です。
そのため、ロードマップ策定段階に加え、実施段階においても、外部の専門家のアドバイスなどを受けながら、情報部門が伴走型でサポートしていくことでOJTによる人材の育成と事業の実効性を高めてまいります。
加えて、民間企業のICT部門への職員派遣による人材の育成や、新たに民間企業の社員を行政実務研修員として受け入れる制度の創設など多様なデジタル人材の確保に努め、職員のスキルアップにつなげていきたいと考えています。
しかしながらDXの推進は、社会変革への大きな挑戦であり、最適な手法がひとつとは限りません。
今後も社会環境の変化や技術の進展、国の動向などを見極めながら、議員御指摘のとおり、柔軟な推進体制を構築してまいります。
次に、デジタルに詳しくない人も支えていく必要があると考えるがいかがかについてでございます。
一人一人が最低限度の情報通信技術を活用できるいわゆるデジタルミニマムを確保し、デジタル利用の裾野をどう広げるかが重要と考えています。
現在策定中の埼玉県DX推進計画においても、誰もがデジタルの恩恵を受けられる社会を目指して「利用機会等の格差の是正」いわゆるデジタルデバイドの解消に取り組むこととしています。
昨年12月25日に国から発表された「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」のビジョンにおいても、誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を目指すことが示されました。
具体的な取組として、国では令和3年度、高齢者等に対してオンラインでの行政手続や民間サービスの利用方法等に関する説明会・相談会を全国1000カ所以上で実施を予定していると伺っています。
県としても、例えばデジタル活用の知識がある民間事業者等と連携をした、スマートフォンの体験教室や利用相談など、デジタルデバイド対策に取り組んでまいります。
また、高齢者が多い県内中小企業経営者に対しても、商工会議所・商工会を通じてDX推進員を派遣し、きめ細やかな対応を行ってまいります。
今後も、国、民間事業者など様々な主体と連携しながら、誰もがデジタルの恩恵を受けられる社会を目指して取り組んでまいります。

  • 上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
  • 氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。 

お問い合わせ

議会事務局 政策調査課 広報担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4923

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