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掲載日:2025年12月19日
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第1部:オープニングスピーチ「700人の村がひとつのホテルに」の著者によるまちづくり実践例
第2部:パネルトーク産官学5者連携による次世代のまちづくり「BRIDGE LIFE Platform構想」(久喜市)
モデレーター 渡邊 智裕
それでは会場にお集まりの皆さん、おはようございます。
時間になりましたので、埼玉版 スーパー・シティプロジェクト「まちづくり先行事例セミナー」を始めてまいりたいと思います。私は本日進行を務めます、株式会社官民連携事業研究所の渡邊智裕と申します。どうぞよろしくお願いいたします。このセミナーは、埼玉県の主催となっております。なんでこういうセミナーを今日開催しているかというところなんですが、埼玉県は今、超少子高齢社会というのを見据えて、埼玉版スーパー・シティプロジェクトというまちづくりの取組を進めております。これは行政だけではなくて、民間企業の皆様とも一緒に、新しいそのアイデアやノウハウも取り入れながら進めていこうという取組になっていまして、その取組を皆様に知っていただきたい、あるいは実際に自治体と関わったりとかですね、何か皆様のビジネスを広げたりということも含めて、そのきっかけにつながるようにということで、今回この時間を持たせていただいております。今から大体11時半までですので、おおむね1時間ぐらいのお時間になりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは早速、その埼玉版スーパー・シティプロジェクト、まずはどういった取組なのかというところを御担当されております埼玉県エネルギー環境課の西田稜馬さんから、皆様に共有をしてもらいたいと思いますので、西田さん御準備の方お願いいたします。それでは西田さん、よろしくお願いいたします。
埼玉県 エネルギー環境課 西田 稜馬
埼玉県エネルギー環境課の西田と申します。
日頃から埼玉版スーパー・シティプロジェクトの推進に御理解・御協力をいただきまして、ありがとうございます。まちづくり先行事例セミナーに先立ちまして、私からは埼玉版スーパー・シティプロジェクトの概要について改めて御説明をさせていただきます。
本県では、人口減少・超少子高齢社会の到来を見据え、誰一人取り残さない持続可能な社会を構築するため、市町村の「コンパクト」「スマート」「レジリエント」の3つの要素を兼ね備えた持続可能なまちづくりを県が支援する埼玉版スーパー・シティプロジェクトを推進しています。
具体的には、コンパクト化により、超少子高齢社会や老朽化するインフラの更新、地域交通維持困難等を見据えた取組を行います。このコンパクト化により、集積された地域にスマート・レジリエントの機能を付与することにより、持続的・効果的・効率的な取組となるとともに、コンパクトなまちの魅力を高めることを意図しております。「コンパクト」「スマート」「レジリエント」を一体となって相乗的に高めることで、持続可能なまちの実現を目指してまいります。
なお、このプロジェクトに取り組む市町村は、昨年度末時点で56団体まで拡大しており、令和8年度までには全ての自治体の参画を得て、全県でこのプロジェクトの推進に取り組んでまいります。
人口が減少する中で活力のある社会をつくるためには、企業の皆さまの持つ技術力やアイデアを活かすことが重要であると考え、本県では市町村と企業の連携強化に取り組んでいます。その取組の一つがガバメントピッチです。これは、市町村の課題やニーズと企業のソリューションをマッチングさせるイベントで、令和5年度からこれまでにかけて8市町、15事業者のマッチングが成立しています。また、市町村と企業の連携を推進するために、市町村と企業等の交流会を開催しており、今年度は全3回の開催を予定しております。なお、本日のまちづくり先行事例セミナーでは、市町村と企業のコラボの成功事例の一つである、久喜市の産官学によるまちづくりを御紹介いたします。このように、市町村と企業の連携による持続可能なまちづくりをより一層推進していきたいと考えております。
簡単ではございますが、埼玉版スーパー・シティプロジェクトの概要は以上となります。本日は多くの企業の皆様がお集まりかと思います。企業の皆様には、是非、埼玉版スーパー・シティプロジェクトについて御理解いただき、市町村のまちづくりに御協力いただけますと幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
モデレーター 渡邊 智裕
西田さんありがとうございました。埼玉版スーパー・シティプロジェクトの概要を共有いただきましたが、「コンパクト」「スマート」「レジリエント」、この3つの要素を兼ね備えたまちづくりを埼玉県として県内の自治体と市町村と一緒に進めているという取組でして、先ほど御説明にもあったとおり、企業との連携で、誰も見たことがない、超少子高齢社会、新しい社会ということでもありますので、是非企業の皆さんの新しいアイデアとかノウハウを自治体と一緒に形にしていく、そういうところを実現していきたいというプロジェクトになっております。今日は、この後全国の事例と、実際にスーパー・シティプロジェクトの取組事例と、2つの事例を皆様の方にも共有をさせていただきますので、そこから何かきっかけをつかんでいただければと思います。
プロジェクトについて詳しくは、埼玉県の担当のエネルギー環境課がH-19にブースを出していますので、もっと詳しく聞きたいというお話がありましたら、そちらのブースの方に是非お越しいただければと思います。
モデレーター 渡邊 智裕
それではここから、先行事例の共有をさせていただきたいと思います。まずは全国でこういった地方創生、地域活性化の事業を地域と一緒に手掛けられていらっしゃいます株式会社さとゆめから、今日は「沿線まるごとホテルプロジェクト」、おそらく皆さんも聞いたことがあるかと思いますけれども、このプロジェクトについて御紹介をいただきたいというふうに思っております。
その後、実際に埼玉県の久喜市の方で取り組んでいる「BRIDGE LIFE Platform 構想」というまちづくりの事例を、皆様の方にもう一つ御紹介したいと思っております。
それでは、最初の共有になります。本日は、株式会社さとゆめから代表取締役CEOの嶋田俊平さんにお越しいただいております。それでは嶋田さん、どうぞよろしくお願いいたします。
株式会社さとゆめ 代表取締役 嶋田 俊平
皆さんおはようございます。朝早くからたくさんの方にお集まりいただきまして、本当に嬉しく思っております。こんな朝早くから人が集まるのかなってちょっと心配していたので、席が埋まっていて、本当に話甲斐があるなというふうに思っております。
改めまして、さとゆめの嶋田と申します。私、かれこれ20年ぐらいですね、こうやってまちづくりとか村おこしとか、そういったことに関わっているんですけど、本当にこんな格好いいアリーナで、しかもビジネス系のセミナーの中で、こういったまちづくりっていうのがテーマになるっていうことに非常に隔世の感があるというか、20年前とかこういうイベントって、だいたいその市役所とか公民館とか、そういったところでやっておりましたので、時代が変わったなっていうふうに思っております。ただ、本当に皆様のようなビジネス経験豊富な方が、こういったまちづくりとか地方創生に目を向けてくださるっていうのは、地域にとって間違いなくいいことだと思っております。なので、私、15分から20分ぐらいってちょっと短い時間であるんですけど、皆様が地域に入っていくときに、何かヒントになるような話ができたらいいなっていうふうに思っております。
ちょっと時間が短いんですけど「沿線まるごとホテル」っていう事例を中心にお話ししたいと思います。その前にちょっと弊社、さとゆめという会社、初めて聞いたって方もいらっしゃると思うので、会社紹介から入りたいと思います。12年前に創業しまして、地方創生に特化した事業プロデュースとかコンサルティングを行っております。
ここに資本金が3億5,000万円とありますけど、これまで3回資金調達をしておりまして、 JR東日本さんとか旅行会社のHISさんとか、ベンチャーキャピタルとか、そういったところが資金的に様々な面から、我々を応援してくださっています。こういったまちづくり会社、地方創生、そういったことが、ある種投資対象にもなってきているというのも一つの時代の流れかなというふうに思っております。
我々は業種でいうとコンサルティング会社なんですけど、計画・戦略をつくるとか、調査で終わらずに、目に見える商品、サービス、お店とか事業をつくるところまで徹底的に地域に伴走していくという、伴走型のコンサルティング会社っていう形で旗揚げしたわけなんですけれど、今有り難いことにいろんな地域からお声がけいただいて、北海道から沖縄までだいたい50ぐらいの地域で様々な事業の立ち上げ、運営を支援しております。
ただ、6年ほど前から、「さとゆめさん、裏に隠れてないで表に出てきて、一緒に事業をやろう」とか「一緒に会社作ろう」っていうような声をかけていただくことが増えてきております。やっぱり高齢化の中で、地域でどんどん、プレイヤーがいなくなってきている中で、我々も引きずり出されてプレイヤーになる、という場面が増えていまして、今9つの地域で事業を運営する会社を子会社として立ち上げておりまして、うち4社が事業を開始しています。
こういった形で、単なるコンサルティングとか事業支援だけではなくて、事業に参画していくというのも一つの流れかなというふうに思っております。そんなこんなで、今8つの事業を直営でやっておりまして、4つのホテル、3つのショップ、そして1つのコワーキング施設もやっております。
ここからですね、「沿線まるごとホテル」というプロジェクトを御紹介したいと思います。「沿線まるごとホテル」は、弊社とJR東日本が2021年12月に沿線まるごと株式会社という会社を設立しまして、その会社で運営しております。JR東日本さんのような大きな会社が、我々のような小さな会社に、ほぼイーブンで会社をつくる、ということはかなり珍しいことらしいんですけど、その背景にはコロナがあったり、あとはリモートワークとか推進する中で、鉄道に乗る人がどんどん減ってきている。さらには、その沿線の人口が減少する中で、全国のローカル線の維持というのが非常に難しくなっている中で、JR東日本さんとしても新しいチャレンジをしたいということで、我々に注目してくださって、一緒に取り組んでいこうということになった次第です。
この「沿線まるごとホテル」につながる地域がありまして、その話から始めたいと思います。山梨県の小菅村という多摩川の源流にある人口700人弱の小さな村です。ここで我々、10年以上前から、まさに伴走型で、700人の人口を維持するためにありとあらゆることをやってきました。道の駅を立ち上げたり、村づくりの計画を作ったり、そこから村づくりの計画に書いたことを全部やってきたと。そういう中で観光客が倍増したりとか、あと人口減少スピードが緩やかになったり。ただ、我々はそれで終わらず、ここまではコンサルティングとしてやっていたんですけど、もう一歩踏み込もうっていうことで、2019年の8月に「NIPPONIA 小菅 源流の村」という古民家ホテルを立ち上げました。これが、「700人の村が一つのホテルに」。簡単に言うと「村まるごとホテル」というようなコンセプトで、村の中にある空き家を1軒1軒客室に変えて、かつ非常に不便な村なので、なかなか稼働率は8割とか9割は現実的でないと。40パーセントの稼働率でペイするモデルってことで、逆に一人からちゃんとお金をいただくという、高付加価値型のモデルを実現して、かつ村人が運営に参画して村ぐるみでお客さんをお迎えするという仕組みです。開業してもう6年ほど経ちますが、非常に高い稼働率で推移してますし、今40パーセントぐらいが外国人になっております。このモデルをJRの沿線に展開しようということで、「沿線まるごとホテル」というプロジェクトが4年ほど前にスタートしました。地域への伴走が企業との共創につながってきている、こういった流れが最近非常に増えています。
その「沿線まるごとホテル」ですが、無人駅をホテルのフロントに見立てて、無人駅の近くの集落の空き家を客室に変えて、集落住民がホテルのキャストとなってお迎えするっていう形です。いまいちイメージがつきにくいと思うので、ここで動画を見ていただきたいなと思います。我々のこの「沿線まるごとホテル」がですね、浜辺美波さんっていう有名な女優さん主演でCMになりましたので、それを見ていただきたいなと。浜辺さんに主演していただいて、まちづくり頑張ってきてよかったなと思いました。よければ御覧ください。
~CM放映~
はい、ありがとうございます。拍手をいただいていいでしょうか。ありがとうございます。こんなことをやっております。
ここから少し詳しくお話ししたいと思います。舞台は青梅線、立川から東京の西の端の奥多摩まで行っている路線なんですが、その中の真ん中ぐらいにある青梅という駅から西の端の奥多摩というところまでに「東京アドベンチャーライン」っていう名前がついて、観光路線化を目指していて、ここが舞台になっています。13ある駅のうち11駅は無人駅になっていて、沿線が非常に過疎化が進んでいて、空き家も多いっていう「本当にここは東京なの?」っていうような場所です。この青梅線を維持していこうということで、このプロジェクトが始まりました。この11ある無人駅をホテルのフロントに見立てて、改札口を出たらホテルだと。駅の近くの空き家を客室に変えて、その集落の方々と共に運営すると。
この、駅と集落という単位でどんどん増やしていくわけなんですが、それが増えたらこうなるっていうふうに妄想しました。この青梅線がホテルのエレベーターの機能を果たすんじゃないかと。ホテルのエレベーターはビルが垂直に立っていて、上下に移動しながら客室があるフロアとか、温泉があるフロアとか、眺望がいいフロアとかに行って、いろんな楽しみ方をする。同じように、青梅線というエレベーターで水平に移動して、無人駅っていうエレベーターホールに降り立ち、集落というフロアで様々な楽しみ方をする。地域にしっかりお金が落ちて、雇用が生み出されて活性化していく。
こんなことを考えたら、5年前は「何言ってんの?」「そんなことは実現するの?」と。私も自信を持ってたわけじゃないですし、そういったことも言われましたけど、それから、まさに観光庁さんとか、地元の自治体さんとか、様々な支援をいただきながら、コンセプトの実証、コンテンツの実証、モビリティの実証、地域連携の実証、様々な実証を重ねてきまして、この実証を3年4年重ねる中で面白いことが起きました。実証実験というのはあくまでも事業化のプロセスでしかないわけなんですけど、実証実験って外から見えるんですね。そうすると地元の自治体さんが「何か手伝えることありませんか?」って声かけてくださったり、地域の事業者さんが「ちょっと参加させてよ」ということで参画してくれたり、地域住民の方がガイドや送迎や様々な形で応援してくださって、民間企業、JR東日本さんとかさとゆめの民間、収益、収益事業というよりは、一種のソーシャルキャンペーンのような様相を呈してきまして、様々なメディアに取り上げられたり、様々な賞をいただいたりしました。こういうことが、まちづくりの醍醐味というか、面白さですよね。一つの会社でホテルをやったら、その自分の所有地、自社が所有しているビルの中で事業が完結するわけなんですけど、まちづくり×(かける)ビジネスという進め方をすることで、沿線の自治体さん、住民、事業者みんなが応援してくれて、その地域をまるごと事業のアセットとして使えるっていう、これがまちづくりの魅力。かつ、それがビジネスにもちゃんとつながってくるっていう、そういうことかと思います。NHKスペシャルで取り上げられたり、いろんな賞をいただいたときは、実はまだ開業してないどころか、工事も始まっていませんでした。そういう中で、さっきの「ジャパンツーリズムアワード」という、観光業界のM-1グランプリみたいなものの最高賞をとりました。「モノ消費からコト消費」とはよく言いますけど、本当にそうだなというふうに思います。
地域に雇用を生み出していこうとすると、泊まれる場所や施設が必要だということで、名もなき集落の名もなき空き家を改修して、レストランにしたり、サウナにしたり、客室にしたりして、2024年の5月に開業を迎えたというかたちになっております。そしてハコモノだけ作っても意味がなくて、1泊2泊しても飽きないだけのコンテンツを作る必要がありまして、「無人駅チェックイン」とか「沿線まるごとパスポート」とか「集落ホッピング」やいろんなアクティビティの開発もしてきまして、いい形で開業のスタートダッシュを切れております。
今後の展開なんですが、この青梅線に8棟ほど古民家を改修した施設を作ります。かつ青梅線で終わらず、全国の鉄道沿線が非常に苦境に直面しておりますので、この青梅モデルを 2040年までに全国30沿線に展開しようっていうふうに考えております。
こんな感じで、まちづくりって1つのまちで終わらないんですよね。それがモデル化すると全国に広げられるっていう、これも何かまちづくりの醍醐味だな、というふうに思っております。
青梅線から始まったんですが、第二沿線ですね、今年の9月にJR東日本の千葉の木更津から房総半島の奥地まで進んでる久留里線というところでやることが決定しまして、先日記者会見をしてきました。
最後に、地域で事業を開発していくときのコツというか、私がいろいろやってきた中で「こういうことなんじゃないか」って考えていることを少しお話ししたいと思います。地域で事業をするというときに、どうしても施設、ハコモノが注目されがちです。ホテルとかレストランとかサウナ、この一番上にあるやつ、ファシリティですね。
ただ、我々がこれだけこのムーブメント化、「沿線まるごとホテル」っていう事業を単なる施設型事業じゃなくて、なんで自分たちはムーブメント化できたんだろう、なんでこんなにたくさんの方が応援してくれるんだろう、なんでこんなにメディアが取り上げてくれるんだろうって考えたときに、自分たちはそのファシリティの前に、もっとベースとなる事業のレイヤーを重ねてきたんじゃないかというふうに考えました。「沿線まるごとホテル」というような点を線にして面につないでいくような概念。この「沿線まるごとホテル」っていうコンセプトを生み出した瞬間に、自分たちはWebサイトを作り、SNSのアカウントを作り、紙の媒体、マガジンを作り、発信を始めました。メディアですね。
次に無人駅を改修して、「沿線まるごとラボ」という共創拠点を作りました。ここに地域の方や企業が集まって、いろんなコンテンツを生み出していった。プログラムとかツアーとかコースとかですね。
コンテンツがある程度整備できた次に、モビリティ。その無人駅で電動トゥクトゥクとか、電動バイクを貸し出す、そういったサービスを実証して実用化したわけなんですけど、このコンセプト・メディア・ラボ・コンテンツ・モビリティっていうような階層ができた上で、最後にファシリティを作ったというのがうまくいった秘訣なんじゃないかなというふうに思っております。
これをちょっとわかりやすく説明したいと思うんですけど、鏡餅をイメージしてください。みかんありますよね、橙とかお餅。これがテーブルの上に散らばっていても誰もそれに注目しませんし、何のありがたみもない。なんですけど、このお餅とか橙をちゃんと台に載せて、紙垂(しで)とか裏白とか引いてですね、お餅を重ねて、最後にうやうやしく橙を置くからこそ、鏡餅ってものが手を合わせたくなるぐらいのありがたみをもって、お金を払ってでも買いたいってなります。そして、捨てずに大切に保管していこうってなる。
これはまちづくりも同じなんですよね。施設を作っても単体では何の意味もなさない。そこにちゃんと想いだったり、コンセプトだったり、様々な楽しみ方だったり、移動手段だったり、そういったものがあって、最後に施設があるっていうのが意味がある。皆さんの地域では、このお餅とか橙が散らばってませんか?メディアを作ったり、コンセプト考えたり、イベントやったり、それがちゃんと重なってますか?そういったことを是非一度考えてみられたらどうかな、というふうに思っております。ちょっと話があちこち行きましたけど、後半の議論の何か話題になればなと、論点になればなというふうに思っております。もしこの我々の小菅村での事例だったり、「沿線まるごとホテル」に御関心がある方がいらっしゃいましたら、この「700人の村が一つのホテルに」という本が文藝春秋から3年前に発刊されていまして、アマゾンとかでポチっと買えますので、よろしかったら御一読いただければと思います。短い時間ではありましたけど、話題提供させていただきました。ありがとうございました。
モデレーター 渡邊 智裕
はい、嶋田さん、どうもありがとうございました。15分という限られた時間ではあったんですけれども、その中で「沿線まるごとホテル」プロジェクトのお話から、地域協働の成り立ちといいますか、10年以上の長いフレームの中で様々な実証実験とかを通して、地域との関係を深めてきた経緯、それから事業開発のスキームのところまで、密度の濃い話をいただいたかなというふうに思っております。どうもありがとうございます。嶋田さんは今日セミナーの終了まで会場の方にいらしていただけるということでございますので、もし名刺交換等御希望の方いらっしゃいましたら、是非つながりをつくっていただければというふうに思います。
モデレーター 渡邊 智裕
それでは続いて、2つ目の事例を皆さんと共有していきたいと思います。こちらは埼玉県で実際に自治体さんが取り組んでらっしゃる事例になります。埼玉県久喜市さんの「BRIDGE LIFE Platform 構想」という取組になりますけれども、こちらは久喜市さんと民間企業、関係者の皆様で連携しながらまちづくりを進めている取組になります。まずは、この取組がどういったものなのかというところを、御担当されております久喜市の田辺 薫さんから皆様に共有をいただきたいと思います。
それでは、田辺さん、御登壇いただきましてお話をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
久喜市都市計画課 田辺 薫
皆様、おはようございます。久喜市まちづくり推進部都市計画課の田辺と申します。本日は、このまちづくり先行事例セミナーにおいて、本市の南栗橋で推進しております「BRIDGE LIFE Platform 構想」について御説明する機会を賜り、誠にありがとうございます。私は本構想の立ち上げ以前からこのまちづくりを担当し、町並みの変化を最も近くで見続けてまいりました。本日は、その経験を踏まえまして、本構想を通じたまちづくりの概要について御説明いたします。
初めに、久喜市の現況から少し御説明させていただきます。本市は、都心から50キロ圏内、埼玉県の東北部に位置し、5つの鉄道駅と2つの高速道路のインターチェンジを擁する人口約15万1000人の都市であります。また、令和3年4月に「久喜市ゼロカーボンシティ」を宣言いたしまして、脱炭素社会の実現を目指した取組を進める中で、昨年11月には本市が株主となります地域新電力会社を立ち上げまして、今年度から公共施設への電力供給というものを開始したところであります。そのほか、人口減少や少子高齢化といった社会課題に対応するため、現在「立地適正化計画」の策定を進めているところでありまして、都市機能と居住の集約によるコンパクトシティのビジョンを描く準備を進めているところでございます。
これからまちづくりの説明に移りますけれども、「BRIDGE LIFE Platform 構想、我々は、このBridge Life Platform、それぞれの頭文字をとってですね、「BLP構想」と呼んでおります。是非この「BLP構想」というものを頭の隅にでも置いておいていただけると幸いでございます。この「BLP構想」の舞台であります南栗橋地区は、平成23年3月に発生しました、東日本大震災によって甚大な液状化被害を受けてしまった地区であります。復旧工事や液状化対策工事を実施しまして、復興から発展への道を一歩一歩歩んできたところでございます。そして現在では、コンパクト・スマート・レジリエントを兼ね備えた持続可能なまち、「サステナブルシティ」の実現を目指しております。こうした歩みや理念に御賛同いただきました、こちらにいらっしゃいます東武鉄道株式会社、それからトヨタホーム株式会社、イオンリテール株式会社、早稲田大学大学院小野田研究室と、令和3年11月に「まちづくり協定」を締結しまして、産官学連携による次世代のまちづくりプロジェクト、「BLP構想」が始動しました。また、本構想は埼玉県のスーパー・シティプロジェクトの趣旨に沿っていたことから、令和3年10月よりプロジェクトに参加させていただき、埼玉県との連携も強化しております。
続いて、地区の概要ですが、東武日光線の南栗橋駅の南西約500メートルに位置します、南栗橋8丁目とその周辺における約16.7ヘクタールのエリアが対象でございます。健康・安心・東京・自然、そして未来といった生活に関わる多様な要素と人をつなぐ、ブリッジする、そういったことをコンセプトに、5者が連携して、それぞれの強みを生かしながらまちづくりを進めているところでございます。本地区は、3つの街区、戸建て街区というものと商業街区、それから生活利便街区というもの、それから遊歩道、公園、そういったもので構成されております。戸建て街区では、全172戸の住宅建築に加えて、新たに59戸の建築が計画されておりますけれども、全ての住宅に太陽光発電やホームエネルギーマネジメントシステムを導入したゼロエネルギーハウス、いわゆる、ZEH(ゼッチ)を採用いたしまして、また、停電時には自動車から住宅へ電力供給も可能となっております。また、街区全体に5G Wi-Fiを導入いたしまして、リモートワークの普及に対応した通信環境というものが整備されております。さらに、地域交流の拠点としてクラブハウスが今年度に完成いたしまして、これから地区内にお住まいの方々に開放していく予定であります。
商業街区では、令和4年5月の街開きに合わせて「イオンスタイル南栗橋」が開業し、地元農家の新鮮な野菜を取り扱うなど、地域に根差した店舗運営というものを展開しております。生活利便街区では、保育園や高齢者向けのショートステイ、デイサービス施設、介護付有料老人ホームが開設され、今後は医療施設やスポーツジム等の誘致を実現していくことで、多世代が利便性を実感でき、安心して暮らせる地域づくりを進めてまいります。
遊歩道や公園では、各街区における開発の進捗に合わせて、居心地がよく歩きたくなる空間の形成に向け、リニューアル工事を進めております。さらに、自動運転技術を活用した配送ロボットや非接触型ごみ収集ロボットなど、次世代モビリティの実証実験を行い、まちづくりと連動した先進技術の社会実装を目指しております。
また、「BLP構想」の始動を契機に、東武鉄道株式会社の御協力をいただきまして、令和5年3月のダイヤ改正で南栗橋駅に特急列車の一部が停車するようになり、都心へのアクセスがより向上し、地域の魅力と利便性が一層高まったところでございます。
本市としましては、引き続き、ここにいる5者間でしっかりと連携を図り、地域特性を生かしながらも、時代の変化に対応した持続可能なまちづくりを推進してまいりますので、「BLP構想」の今後の展開に御注目いただけると幸いでございます。私からの説明は以上でございます。
モデレーター 渡邊 智裕
田辺さんどうもありがとうございます。それでは、この構想について、先ほど田辺さんからも連携というお話ありましたけれども、どういう中身なのか、民間の企業さんと自治体と連携しているのかというところを深めていきたいと思いますので、関係の皆さんも御登壇いただきまして、こちらの方で話を進めていきたいと思います。5者連携ということで、久喜市さんを含めて5名の方に御登壇いただいております。それでは、先ほどお話しいただきました久喜市の田辺さんのほか4名の方に御登壇いただきましたので、まずはお一人ずつ簡単に自己紹介をお願いできればと思います。
東武鉄道株式会社 高村 晃
東武鉄道の高村といいます。よろしくお願いいたします。
トヨタホーム株式会社 尾崎 彰彦
トヨタホームの尾崎と申します。本日はよろしくお願いいたします。
イオンリテール株式会社 丸山 崇
イオンリテールの丸山と申します。本日はよろしくお願いいたします。
早稲田大学大学院小野田弘士研究室 相川 大樹
早稲田大学小野田研究室の相川と申します。本日はよろしくお願いいたします。
関係の5者からそれぞれお越しいただきました。では、ここから早速ですけれども、まちづくりのお話を深掘りして伺っていきたいと思います。まずは経緯といいますか、結構大きなプロジェクトだなと思って私も見させていただいていて、きっかけになったのは、行政からの「やりたい」のお話だったのか、それとも企業さんサイドからのお話だったのかというところは、どちらからの話がスタートになりますか。東武鉄道さんからいいですか、はい、では高村さんお願いします。
東武鉄道株式会社 高村 晃
当社では、この南栗橋エリアにおきまして、平成3年頃から住宅の開発を進めてきていました。もうかれこれ400戸ぐらい住宅を供給してきたんですが、先ほど田辺課長の方からもお話があった、東日本大震災でかなりダメージを受けまして、郊外の住宅市況がかなり低迷した時期がありました。そういった中で当社としても、今回対象になっている土地を保有しているという状況の中で、久喜市さんとどんなことができるかということで御相談をさせていただきまして、久喜市さんの方の多大な御協力もいただきまして、住宅を中心とした、こういった構想を進められないかということで立ち上げた経緯があります。
その中で、もともと当社としてもお付き合いのあったトヨタホームさん、そして商業施設も当然、住民の方が生活していく上で必要ですので、イオンリテールさん、そしてたまたま御縁があって早稲田大学大学院の小野田研究室の方ともつながることもできまして、今回このようなプロジェクトが立ち上げることができております。
モデレーター 渡邊 智裕
最初はビジネスベースと言いますか、東武鉄道さんとして、沿線の宅地開発を「この先をどうしようか」というところですね、そこからのお話が発端だったのかなというふうに思うんですが、これを田辺さんの方に御相談されたという形なんですかね?
東武鉄道株式会社 高村 晃
そうですね、まずは本当に大きな土地がそのまま残っていましたので、やはりそこを開発していくに当たっては、久喜市さんの御協力がなくてはどうにも開発が進められないだろうということで、御相談させていただいております。
モデレーター 渡邊 智裕
行政と関わる最初のきっかけがそこでできたと思うんですけれども、今度は田辺さんに伺いたいんですが、行政職員はなかなか土地開発のスキルを持っているわけでもない中で、そんな大きな土地の開発の話を持ちかけられると「うっ」ってなるなっていう気持ちも、勝手に想像しちゃったりするんですけど、お話いただいたときの感触ですとか、これを久喜市でどう活かそうかという視点をどのようにお持ちになったかっていうところ、差し支えない範囲でお話しいただけますか?
久喜市都市計画課 田辺 薫
はい。場所としては、先ほど私の方から御説明させていただきましたけれども、南栗橋駅の南西に500メートルほどしか離れていない、非常にいい場所だったんですね。そこが未利用地のまま、かなり長い期間残されているということもあって、久喜市の方でもですね、こんないい土地を「久喜市だったらこんな開発をしたいな」というような構想は職員の方でいろいろ持っていたんですね。そういった中で、東武鉄道さんの方からかなり斬新な、いろんな御提案をいただきまして、すんなり協議に入っていけました。市で考えていたものと、ほとんど構想としては合っていたので、そんなに困ったとか、そういうような印象というのは持っていないですね。
モデレーター 渡邊 智裕
もともと内部では「どうしようかな」と考えていたところに、言ってしまえばたまたまといいますか、東武鉄道さんの方で「アイデアありますよ」ということで話が来たというところが、最初の接点ということですかね。
久喜市都市計画課 田辺 薫
そうですね、それもありますし、久喜市の方からも、東武鉄道さんの方には「どうでしょう、土地利用を一緒に考えませんか」みたいな、そういうお話を少し前からさせていただいていた状況でございました。
モデレーター 渡邊 智裕
普段からのコミュニケーションが、その提案の機会につながったというお話かなと思います。その後、東武鉄道さんと久喜市さんでお話を進めていくっていう流れもあったかと思うんですけれども、トヨタホームさん、 イオンリテールさん、それから早稲田大学さんもお入りになって、5者の連携に広がっていったっていうことなんですが、この厚みを出されたっていうところは、お声がけは高村さんの方からお声をかけられたということでしょうか。
東武鉄道株式会社 高村 晃
そうですね。当社の方から、普段お付き合いのある会社さんということで、お声がけもさせていただいて、こういった連携ができることになりますね。
トヨタホーム株式会社 尾崎 彰彦
弊社が20年ぐらい前から、首都圏を中心にこういうまちづくりみたいなことをずっとやらせていただいてたんですけれども、その中で、同じ埼玉県の川越が東武鉄道さんのいわゆる巨大ターミナルなんですけれども、そこから徒歩10分ぐらいのところでまちづくりをしていて、それを東武鉄道の関係者の方が御覧になっていただいて、「何かトヨタが面白いことをやっているな」っていうところを感じていただいて、「南栗橋という場所で何か一緒にできないか」というところでお声をかけていただいたというのが、今我々がここに参画させていただくことになったきっかけでした。
モデレーター 渡邊 智裕
そこもやはり以前からお互いにビジネスの中で見ている、それぞれの得意技や分野があって、そこで「あ、もしかしたら」っていうことで声掛けが始まったっていう形になりますかね。ありがとうございます。イオンリテールさんも同じような流れで話が始まった形ですか?
イオンリテール株式会社 丸山 崇
そうですね、イオンとしても久喜市さんとは包括連携協定を結ばせていただいておりまして、幅広い分野で協力させていただくというスタンスで取り組んでいる中で、今回こういう話をいただいたときに、各分野のエキスパートさんたちが集まっているチームですから、その中で一緒にこういう企画に参加させていただけるということは、イオンにとってもすごくメリットだなということで参加させていただいております。
モデレーター 渡邊 智裕
それぞれ自社のビジネスとも絡めて、メリットがありそうだというところも含めての参画だったかと思いますが、大学の研究室が入っているというのは、たぶんビジネスとはまた毛色が違うところかと思うんですけれども、当時の経緯とか、今研究室での感じているメリットみたいなところ、関われることでどういう厚みが取組に出ているかという視点で、もしよければお話しいただければと思うんですが、いかがでしょうか。
早稲田大学大学院小野田弘士研究室 相川 大樹
大学の研究室ですので、少し学術的なところでは、実証できるフィールドというところが結構重要になってきます。例えばシミュレーションだとか、実験室の中で実験してみるとか、そういうところだけではなかなか見えてこないところもあるので、今回のような「BLP構想」のようなところに参画させていただいて、実証実験であったり、新しい取組であったりというところをさせていただけるのは、非常に我々としてもメリットだなというところで、参画させていただいたというところになるかなと思います。
モデレーター 渡邊 智裕
そういったフィールド活用のメリットがあるということなので、皆さんそれぞれに、関わることでの当初メリットを感じて、こちらの方に参画をいただいたということで、それはいきなりポンと生まれてくるものではなくて、おそらくふだんの皆さんのコミュニケーションの中で少しずつ、っていうところかなというふうにも思ったりもしています。今の取組の話にちょっと移らせていただくと、今も月に一回皆さんで集まって、定期的に打ち合わせの機会を持たれてるということだったんですが、田辺さん、どういうお話をされてるかというところを、この会場にいらっしゃる皆さんに共有いただいてもいいですか?
久喜市都市計画課 田辺 薫
はい。今、大体月に一回ぐらいのペースで、我々は定例会議とか5者会議って呼んでるんですけれども、集まって、それぞれでこれから進めようとしているまちづくりのことについて提案してもらって、それをみんなで議論したりとか、あとは早稲田大学さんのほうで新たな実験をするに当たって、「こういったことをやってみたいんだけれども、例えばイオンリテールさんの方とこういった部分で連携できないか」とか、そういったことを話し合う場というのを設けています。また、これは宣伝になるんですけれども、12月の7日から、現地でイルミネーションイベントを実施します。バレンタイン過ぎの年明け2月15日までイルミネーションをずっと点灯しておくんですけれども、そういったイベントを控えているときには、月に2回ぐらいの頻度で集まって、イベントをどういうふうにやっていこうかとか、そういったことなんかも、その会議の中で話し合うようにしております。
モデレーター 渡邊 智裕
それぞれがやりたいことやアイデアも含めて、共有の機会が定期的に持たれているというお話かなと思います。ただ、民間の事業者さんの立ち位置からすると、ビジネスとしてさまざま展開している中で、調整でプラスに働くこともあれば、時々自社のビジネスの方向性と違うなとか、「そこまでうちで今やることなのかな」みたいなこととか、皆さんとの調整が難しい場面というのが、もしかしたら時折出てくるのかなと思ったりもしていまして、5者でお話をするときに、大事にしている視点とか、こういうことに気をつけているみたいなことがあれば、お伺いできればなと思っております。まず、高村さん、このあたりはいかがですか。
東武鉄道株式会社 高村 晃
そうですね。やはり久喜市さんもそうですし、我々は民間といっても、私たちとトヨタホームさん、イオンリテールさん、それぞれ立場や、やっている事業も違ったりもしますので、お互いの立場をしっかり理解して、それを尊重するような形でお互い意見交換をしながら意思疎通を図っていくということで、ずっとやってこれてるんじゃないかと思っております。
モデレーター 渡邊 智裕
ありがとうございます。ここは尾崎さん、いかがでしょうか。
トヨタホーム株式会社 尾崎 彰彦
そうですね、この5者がこういうふうな形で集まっている、その一つの大きな目標だったり、ゴールじゃないですけれど、目指すべき方向みたいなものが、やっぱりこの今回のプロジェクトを通して、「このエリアを、この地域を活性化していこう」とか、もっと言うと「もっと元気にしていこう」とかというところを一つの旗印としてみんなで集まってやっているというところなので、そこがぶれないようにというところで、何かやるにしても、やっぱり「少し元気にさせたいよね」とか「盛り上げていきたいよね」とか、それから「少し外から注目されるようなことをやっていきたいよね」というものを、アイデアを出させていただいて、あとは本当にここの5者で話し合って具現化していく、実現していくという、そのプロセスはすごく大事にしています。
モデレーター 渡邊 智裕
やはり形にしていくに当たって、時には難しいな、ということもありますか?
トヨタホーム株式会社 尾崎 彰彦
そうですね。難しいことはあるんですけれども、ちょっと話がそれるかもしれないですが、我々のようないわゆる民間事業者が何かやろうとすると、いつも行政の方に「何かをしていいですか」という形で陳情していくことが多いんですけれども、それが実は一番大変なことなんです。この5者でやっている状況は、何かを陳情していくのではなくて「こういうことやったら面白いよね」みたいなことをお互いにアイデアを出していって、久喜市の方も「是非やりましょう」ですとか「こういうことだったら協力できますよ」ですとか、そういう形で答えていただけるので、そういう意味では、一緒にやっていく一番の障壁になるであろうところがなくて、一緒にスクラムを組んでやれているというところが有り難いなというふうに思っています。
モデレーター 渡邊 智裕
なるほど。大事なお話を共有いただいたかなと思います。今の陳情の形ではなく、というところだと思うんですが、逆にここは田辺さんの、自治体側の方の視点をお聞きしたいところで、やっぱり民間の事業者さんと一緒に話をしていく中で、どうしても予算とか規則みたいなものは、もちろん外せない部分もあるという中だと思うんですけれども、今の尾崎さんの話に返すような形になるかと思うんですが、田辺さん側の方で大事にしていらっしゃる視点とか、そういったものがあれば、是非お話しいただければと思います。
久喜市都市計画課 田辺 薫
はい。ちょっとスクリーンを御覧になっていただきたいんですけども、ちょっと小さくて見づらいかもしれませんけれども。ここがですね、トヨタホームさんの方で172戸の住宅分譲をしているところなんですね。で、中のいわゆる街区道路というものが、放射線状って言うんでしょうかね、ちょっとなかなか見ない形状になっているんですね。当然トヨタホームさんの方とすれば、斬新なまちづくり、ちょっとインパクトを与えるまちづくりをしたいということで、こういう道路の形状を考えてくださったんです。最初、正直私この絵を見たときは「ん!?」と思ったんですけどね。これって本当にデザインとかは素晴らしいんですが、この道路は帰属を受けて今は市が管理しているんですけれども、ちゃんと管理ができるのか、それから、ここの道路を通る方の交通の安全性を確保できるのかとか、いろんなことが頭をよぎりました。ですが、やはりその辺はいろいろ協議をする中で歩み寄って、例えばこのエリアの中の電話線や電気の線などの電線関係は全て地中化してもらってるんですね。そういったことを市の方から交換条件じゃないですけれども、こういうことはできませんかと提案をして、それにトヨタホームさん、東武鉄道さんの方と相談しながらしっかり応えてくれる、そういう持ちつ持たれつの関係を作って、なるべくその提案を実現できるように、関係法令に抵触しない限りは実現できるように、市としてはしっかり支援をして今に至っているという状況ですね。
モデレーター 渡邊 智裕
お互いにできるところをちゃんと探り合っていくというか、そこである意味妥協しないっていうところですね、そういった視点が大事なのかなと思ってお話を伺っていました。「行政って本当にここまで提案してできるのかな」とか「正直こんな話をしても聞いてくれないんじゃないか」みたいなところだと、なかなかこういう関係性になりづらいと言いますか、物が形になりづらいっていうところもあるかなと思いまして、そういった視点でのお話を伺ったかなと思っています。次は視点を変えてイオンリテール、丸山さんに伺いたいんですけれども、イオンさんもこの中にお店を構えていらっしゃって、やはりここにお店をこの5者連携の中で構えるからには、1店舗の売上だけではなく、先ほど現地の野菜のお話もあったんですけど、様々な地域との関わりっていうのもやっていかなきゃならない部分もあるかと思うんですね。さっきの投げかけと一緒で、なかなか「どこまでできる?」みたいな話もあるかと思うんですが、採算との関係とか、ビジネスとの兼ね合いの中で、それでもやっぱり「こういうこともやった方がいいよね」というメリットを感じられていらっしゃる場面ってどういうものがありますか?
イオンリテール株式会社 丸山 崇
イオンとしても当然小売業なので、営業していく中でいろいろ考えることはあるんですけれども、『BLP構想』の中では、地元、地域、近隣を発展させるまちづくりに参画していくという考えですので、当然売ったり、そういうサービスをしたりというのは非常に大事なんですけれども、今の店として心がけているのは、お客様は当然地域の方々が来られるわけなので、そこで来られたお客様の声をいかにこの売場に反映させていくか。一例なんですけれども、当店は開店当初からずっと「100円均一が欲しい」というお客さんからのすごい要望があったんですけど、いろいろな経費の面があったりしてなかなか叶えられなかったんですけれども、今年の5月にいよいよ100円均一も売場内に導入することができまして、よりお客様から意見をもらうことによって、こちらもお客様ナイズしていただくというんですかね。ふだん使いに、使い勝手のいい店にしてもらいたいなということで、お互い、まちも発展する、それに伴ってこちらも発展していけたらなと考えております。
モデレーター 渡邊 智裕
ちょっと投資的な側面もあるというか、マーケティング的な側面もあるというか、そこも含めて地域との関わりっていうところのメリットをお話しいただいたかなと思います。あとはそういった関わりの中で、大学の実証事業っていうのはまたちょっと、関わり方が違うかなと思っているんですけれども、ここで小野田研究室として実証ができるっていうところのメリットとか、どういう取組をやってらっしゃるかとか、今それがどのようにエリアの価値向上につながっているか、みたいなところを相川さんから共有いただいてもいいですか?
早稲田大学大学院小野田弘士研究室 相川 大樹
先ほどちょっとお話があったかなと思いますが、定期的に開いているイベントの際には、飲食があることがあります。例えばそういうときに、よくゴミ箱がゴミで溢れかえっているみたいなところをたまに見かけるかなと思うんですが、そういったことを防止するために、ゴミ箱に今どのくらいゴミが入ってるかというセンサーを取り付けまして、リアルタイムに、もうすぐ満タンになるというような予測ができるようにして、もし満タンになったら自動運転ロボットでゴミを回収に行くというような実証を行っております。これは、今後、例えば住宅街区に自動販売機などが置かれたようなときに、ペットボトルが満杯になって捨てられないようになってしまうようなことを防止するというところで、住民の方に還元できるかなというふうに思っております。
モデレーター 渡邊 智裕
なかなかその実証もアイデアだけではできない、フィールドがないと当然できないというお話かと思いますので、そこを5者連携の中でお話しする中で、それぞれ協力いただく場所ができて、それが結果として地域の価値の向上だったり、暮らしやすさにつながっているっていう形ですね。社会課題の解決もこういう取組の中でできているっていうのがいいと思いますが、やはり皆さんのコミュニケーションの厚さといいますか、ふだんから一つの目標に向かっていく、「まちを元気にしたい」という目標に皆さんで向かっていかれてるっていうところが、すごく印象に残ったかなというふうに思っています。
さて、もう間もなくお時間がくるんですけれども、まだまだ聞きたいことがいっぱいあるんですが、まだこれからももちろんまちづくりは続いていきますし、整備も進んでいくし、ソフト面の事業も、先ほどクラブハウスの話なんかもありましたけれども、進んでいくかと思います。
これからその連携とか共創の取組も引き続きやられていくと思うんですが、今日は企業、自治体の皆さんがいらっしゃっています。このプラットフォーム構想はエリアも広いですし、大きな事例にはなると思うんですが、連携の根っこは一緒かなと思っています。関心を持たれた方の中には「この次どうしようかな」と思ってらっしゃる方もいらっしゃるかと思うんですが、皆さんそれぞれの企業、自治体、それぞれの視点から、「興味があるな」「これからどうしようかな」って考えてらっしゃる皆さんに、「こういうことを心がけてやってもらえると、もしかしたらいいかも」とか、「是非こういうところで一緒に頑張りたいです」とかっていう形でのエールやアドバイスを、皆さんから最後に一言ずついただいて終われればと思います。ここは田辺さんに最後に締めていただきたいと思っていますので、最初に高村さんの方から順番に頂戴できればと思いますが、いかがでしょう。
東武鉄道株式会社 高村 晃
はい、東武鉄道としては、南栗橋だけではなくて沿線各方面ありますので、それぞれの地域でいろんな課題を抱えています。ですので、それぞれの地域に見合った課題、それに対してこういったことができないかといった御提案をいただけるのであれば、是非連携して取り組んでいければと思っております。
トヨタホーム株式会社 尾崎 彰彦
この南栗橋のところで言えば、今、我々5者でやっているんですけれども、ここに新しい住民の方もお住まいになってきているので、そういった方と、それから元々お住まいの方たちもうまく巻き込んで、この流れを止めないようにやっていければな、というふうに思っているのが1点と、それから何か新しいフィールドでということなんですけれども、基本的には関係者が同じ目線で、同じ社会課題に対していろいろ議論しながら進めていく、一方的に何かを与えるというわけではなくて、そういう形で一緒にやれるパートナーの方がいらっしゃれば、是非新たな事業なんかも考えていきたいなというふうに思っております。
イオンリテール株式会社 丸山 崇
はい。私もこの企画に参加させていただいている中で、産官学の連携というのも非常に重要といいますか、全く違う視点からの意見をいただけるので、その関係性は企業だけでもだめだし、市だけでもだめだろうなというのがこの経験を通じて非常に今体感しているところでありますので、今後も顔を合わせながら意見交換をして、課題が出る前にお互いに意見交換をして、その課題をつぶしていくというようなスタンスでやっていければ、地域の活性化につながるのかなと思っています。
早稲田大学大学院小野田弘士研究室 相川 大樹
我々は研究というところを主でやっております。今の少子高齢化や過疎化といったような問題というのは日本全国で起こっている問題です。この解決というは、「これが答えだ」「これをやれば何とかなる」というところはまだ見つかっていない。おそらくたぶんそんなものはあんまりないとは思うんですけども、そういったような状態ですので、新しいことを皆さんと一緒にやっていけるような枠組みというところが重要なんじゃないかなというふうに考えます。
久喜市都市計画課 田辺 薫
皆さんの話からも出ましたけれども、こういったまちづくりを進める上で一番大切なことは、課題や将来ビジョンというものを一緒に、まちづくりに取り組む事業関係者間で、定期的に共有するっていうのが非常に大事だと思います。我々は月に一回は、Zoomなどのオンライン上でつなぐような会議ではなくて、実際フェイストゥフェイスで会って話すっていう機会を必ず作るようにしております。そういったものを大事にすると非常にいいんじゃないかなと思います。
あとは地元自治体として、もし自治体の関係者の方がいらっしゃいましたら参考になればと思うんですけれども、最初から「いや、それは無理だよ」とか「それはできないよ」ということではなくて、まずは民間事業者さんや大学の方の御提案やお話をまずはしっかり聞くというのが非常に大事になるんじゃないかなと思います。そういう話を聞いた上で、自治体は、じゃあそれを実現するために何ができるのか、自治体側もしっかり本気で考える必要があるのかなと。その繰り返しが、今回のような5者連携のまちづくりにつながって、こういう形で発表させていただくような機会をいただけるまでに成長したのかなと思っております。
モデレーター 渡邊 智裕
はい、ありがとうございます。そういった目線合わせ、同じところを見ていくっていうことは非常に大事かなと思って、皆さんのお話を伺っていました。とはいえ関係の構築には少しお時間も必要で、ここは第1部の嶋田さんのお話にもあったところですけれども、さとゆめさんも10年ぐらいの伴走の中で地域と関係値を深められてらっしゃったりとか、その中で新しいビジネスをつくっていく。いきなり「この商品を買いませんか」っていうコミュニケーションとはちょっと違うところから新しい価値が生まれているという、そういうお話につながっていったかなというふうに思います。第2部の久喜市の構想のお話は以上で締めさせていただきたいと思います。皆さん、今日は本当にありがとうございました。