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掲載日:2024年3月29日

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 評価基準を活かしたサスティナブルなまちづくりのヒント テキストページ

<セミナー>
<クロストーク>

セミナー

 オープニング

モデレーター 加藤勝

 ただいまから、埼玉版スーパー・シティプロジェクト促進企画「評価基準を生かしたサスティナブルなまちづくりのヒント」を始めさせていただきます。私は本日のモデレーターを務めさせていただきます、株式会社官民連携事業研究所の加藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 では、このセミナーの趣旨を説明させていただきます。
 今年度、今回で3回目になります。1回目は「スマート技術活用のヒント」をテーマに、2回目は「歩いて楽しいまちづくりのヒント」をテーマに開催してまいりました。県のホームページの方でアーカイブを配信しておりますので、見逃した方は是非、御覧いただければと思います。今チャットの方にですね、リンクも紹介しております。
 そして、3回目となります今回、「評価基準を生かしたサスティナブルなまちづくりのヒント」と題しまして、ISO(国際標準化機構)が設けた、持続可能な都市を実現するための評価基準について学びます。
 埼玉版スーパー・シティプロジェクトの取組を推進するためのヒントを得る機会としていただければ、幸いでございます。

 それでは、本番に入ってまいりたいと思います。
 セミナーの前半は講演になります。御登壇いただく講師の、株式会社ミチクリエイティブシティデザイナーズ 代表取締役社長の河野 通長(こうの・みちなが)さんを、私の方から簡単に御紹介させていただきます。
 河野さんは株式会社日立製作所において、ものづくり技術の研究開発、社内情報システムの構築運用、新事業の創出を長らく御担当され、2013年に同社を退職し、株式会社ミチクリエイティブシティデザイナーズを創設いたしました。
 スマートシティ分野のコンサルタントとして、国内外の自治体、関連企業へのアドバイザー業務、また都市関連の国際標準化活動に従事されています。

 本日河野さんからお話をいただくテーマは、「評価基準を生かしたサスティナブルなまちづくりのヒント」です。
 それでは河野さんに御登壇いただきたいと思いますが、河野さん、御準備よろしいでしょうか?

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 登壇者自己紹介

登壇者 河野通長

 ありがとうございます。今、御紹介いただきました河野です。

 今から45分か50分ぐらい、パワーポイントを使って今日のテーマの説明をさせていただいて、あと、皆さんからの御質問に答えたり、議論をさせていただければと思います。
 まず、自己紹介を。今、加藤さんから御紹介いただきましたように、日立製作所に長くおりまして、最初のうちは生産技術研究所というところでものづくりの検討、それから本社機構になりますけれども、日立グループ全体の情報システムを構築・運用する部署にいて、そこから最後の10年ぐらいは、技術戦略室とか経営企画室といったようなところで新しい事業を育てる、そういった新しい事業の中で、日立の中でまちづくりを新しい事業にしようというのでやっていた関係から、日立の中でのスマートシティに携わり、その後もいろいろスマートシティ関係の活動をしています。
(資料の)下の方に書いてあるのはいろいろ、海外といっても、ロシアと中国が多いんですけれども、そういったところでも呼ばれてしまっています。

 今日のテーマは「評価基準を生かしたサスティナブルなまちづくりのヒント」というタイトルなんですけれども、評価基準というのは、ここで先ほど加藤さんの御紹介にもありましたけれども、ISOという国際規格、都市の指標という国際規格というものが、あんまり皆さん、馴染みは少ないんじゃないかと思っています。だから今日、どういうふうに話を組み立てたらいいかなっていうのも、結構、なかなか難しいところもあったので、少し支離滅裂な話になるかもしれませんけれども、それは後で議論の中でまとめていければと思っています。

 今日お話しするものは、まちづくりの指標っていうものがまずあると。それから、都市の指標という国際規格があります。その都市の指標の国際規格って何が書いてあるのかというのをさらっと見てみて、埼玉県を中心に、この(埼玉版)スーパー・シティプロジェクトということで、自治体として都市指標の国際規格はどう使えるのか。そういった使う適用例だとか、あるいは前半メインにお話するのは国際規格、ISOを中心にした国際規格ですけれども、それ以外にも都市指標なんかがありますので、そういったものをどう使い分けていったらいいかといったヒントになればということでお話したいと思います。

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 1.まちづくりの「指標」というものについて

 まず、まちづくりの指標っていうのは何か、どういうものか。

 今日御参加されている自治体の方は、まちづくりに関係した部署にいらっしゃると思うんですけれども、一般的には、都市計画に当たってどういう指標を考えるか、評価項目はどういうふうにするのかっていうときに、現在は人口だとか、世帯数だとか、地価だとか、そういったものが中心で都市計画を作るわけですけれども、今後は生活の質だとか、イノベーションを生み出す力だとか、環境・レジリエンスといったようなものが重要になってくるだろうというのが、内閣府の資料なんかに書かれています。

 国土交通省の都市再生整備計画事業を策定する場合には、例えば、こういう評価項目で考えなさいというようなことが、(資料の)下の欄に書いてあるような、やっぱり人口だとか、交通の乗降客数だとか、経済とか、空間の利用ですね、ゾーニングも含めた。後はオープンスペース、そういったものが中心になっているわけです。

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 2.「都市の指標」という国際規格があります

登壇者 河野通長

 そういった、法律的にここをちゃんと押さえておかなきゃいけないっていうのとは別に、「都市の指標」という国際規格があります。

 ここ(資料)に4つ挙げてございますけれども、現在までにISO、国際標準化機構が制定した都市の指標というのが4つあると。ISOの規格番号で、37120というのが持続可能な都市のサービスと生活の質の指標という名前なんですけれども、要するにサスティナブルな都市というものの全般的な指標をここで定めている。これはかなり早くて、最初にできたのが2014年の5月ですからもう10年経ちますが、4年後に1回改定されています。

 それから2019年にスマートシティの指標というのと、レジリエントシティの指標というのが、ほぼ同時に制定されました。

 今、一番下に書いてある都市のためのESGですね、「エンバイロメント(Environment)」「ソサエティ(Society)」「ガバナンス(Governance)」について、都市はどういう視点から見たらいいかという指標が、一応その議論が終わって最終版が決まって、今年の5月か6月ぐらいに発行される、そういう段取りになると思います。

 これらの規格は全部同じISOの技術専門委員会、TC268の中の第2作業部会っていうところで審議されて、制定されています。

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 3.都市指標の国際規格には何が書いてあるのか

登壇者 河野通長

 都市の指標というのは何が書いてあるのか、というところですけれども、この37120、122、123っていう、これ一応37120シリーズと呼びますけれども、19のテーマと呼んでますけど、19の分野についていろいろな手法を決めています。

 その19のテーマっていうのはここにありますように、経済、教育、エネルギー、環境と気候変動、財政、ガバナンス、健康、住宅、人口、レクリエーション、安全、固形廃棄物、スポーツ、テレコミュニケーション、交通、食料安全、それから都市計画、廃水。この並び方はなんかバラバラみたいで、経済と社会とか都市計画とかって近いからそっちを合わせて、エネルギーとか水とか、そういうのはそういうのでまとめた方がわかりやすいんじゃないかって思うと思うんですけれども、これ実は、それぞれの項目名の英語のアルファベット順に並んでいます。
 こういうところが国際規格の作り方の一般受けしないところだと思いますけれども、それで何が書いてあるかっていうと、例えば19のテーマの中で、経済とかエネルギー、安全、交通っていうのをちょっと例に挙げて、それでこの3つのサステナブルシティ、スマートシティ、レジリエントシティのそれぞれの指標の規格の中では、例えば経済に関して言うと、基本になるサスティナブルシティというのでは失業率だとか、人口10万人あたりの企業数や特許出願数。

 一方、スマートシティになると、オープンデータ政策を含む市役所の行政としてどういうデータサービスをしているかとか、スタートアップ企業がどれくらい生き残れるかとか、ちょっと違った視点が入ってくる。

 レジリエントになると、これは災害の被災を減らすという意味で、これは実績みたいなもので、これまでの災害でどのくらい被害が出たかというようなことだとか、備えがどのくらいできているかっていうようなものだとか、1か所がやられるとかなりたくさんの被害が出るか、分散してるかみたいな、そういうような、それぞれレジリエンスだとかスマートさだとか、そういった観点でちょっと違った視点から、同じ分野でも違った指標が選ばれている。

 もちろん、こういうのは一緒に使うということがある程度前提ですので、重複はしないようにして選ばれているわけですね。
こういったような非常に基礎的なデータ、こっちの方(ISO 37120)は基礎的なデータで、こっち(ISO 37122)はいわゆるスマートっていうのはどちらかというと、デジタルデータをいかに活用してるかっていうところが多いので、そういったものに関連して、こちら(ISO 37123)は災害対応のデータを集中的にということになります。

 それで、埼玉県のスーパー・シティプロジェクトの中で、県が出しているKPIの事例というのがいくつか出てるわけですね。
それでこれ、県の方針(埼玉版スーパー・シティプロジェクトの基本的な考え方(骨格))では、埼玉県のスーパー・シティは「コンパクト」「スマート」「レジリエント」ということで、それに対してここ(資料)にあるような小分類、さらに、例えばそのKPIの例ということで、こういったものが公共交通機関の利用をできる範囲の人口割合とかですね、そういうようなものが一応挙げられているわけですね。

 ここ(資料)に挙げられているようなものを、先ほどの、例えばISOの37120だとか122だとかっていったもので、似たような指標が入ってるかというのをちょっと見てみると、一応例えば徒歩圏というか、公共交通が使える人たちの人口の比率なんていうのは、こういうところに一応入っているとかですね。これは全く同じですね、人口1人当たりの域内総生産とか。

 それで、スマートっていうのが、どちらかというと埼玉県のスマートっていうのは、高齢者の見守りとか健康とか買物支援、この辺が日本独自の少子高齢化という背景の中でのですね、日本のスマートシティっていうのはいわゆる共助のデジタル化みたいなところがありますから、そういったところに重点が置かれているので、国際規格のスマートというのとは割とフォーカスしてるところが違って、あまりぴったり合うものが少ないかなというふうな結果になっています。

 レジリエントに関しては、エネルギー関係ですね。あとはこれも似て非なるものですけれども、どのくらい住んでいる人たちが防災に関して意識が高いかみたいなところを測ってみようというようなものが、ここに入ってくるといえると思います。

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 4.自治体として都市指標の国際規格はどう使えるのか

登壇者 河野通長

 先ほどの、一番最初に「今日のお話は」って5項目ぐらい書いた中の、もう最後のところまですぐ来ちゃうんですけれども、まず自治体として都市指標の国際規格ってどう使えるのか。使われ方っていうのを、ざっくり言って3つぐらいの使われ方かなというふうに思っています。
まず、「まちづくりの方向性・論点の整理」。それからこれ似てるんですけど、ほとんど同じと言っていいかもしれませんけれども、「まちづくりの目標設定と自己評価」。それからちょっと違った視点として、「まちのブランド力の向上」と。こういったものが言えるかなと思います。それぞれについて、どんなふうに利用できるのかということを、ちょっとお話してみたいと思います。

 まず、「まちづくりの方向性・論点整理への活用」ということで、これは埼玉版スーパー・シティプロジェクトのホームページに出ている図ですけれども、いろいろな都市をつくるまちづくりの要素がこの中に含まれているわけですね。
 1つの自治体が、どこかの市、あるいは町が、スーパーシティあるいはスマートシティを目指そうといったときに、こういうところに書かれている、あるいは第1回のこの公開講座で、スマートシティ社会実装コンソーシアムの土屋さんが、スマート技術の使い方っていうところで、そのスマートシティの内閣府のモデルの絵を出されていましたけれど、あそこにも盛りだくさんにスマートシティの中で考えられる要素がいっぱい書いてあったわけですけれども、そういったものの中で総花的にやるのではなくて、どこに重点を置いたスマートシティにするか。そういったときに、その領域でどういう座標軸があるかっていうことを、先ほどの評価軸、評価基準と同じ意味ですけれども、どんなものがあるかなと考えるわけですね。

 そのときに県が示しているKPI例っていうのも参考になりますし、あるいは世界的に認められている国際的な規範である国際規格っていうものでは、どんなような物差しが示されているか調べてみようということが1つ、気がつかなかった視点を見つけるかもしれないケースになると思うんですね。
 そういう意味で、今のこの「方向性・論点の整理」っていうのは、基本、どういう尺度でこれから計画を作っていこうか、計画を作るときの尺度に何が使えるかというところになると思います。

 それで、「目標設定と自己評価」ってほとんど同じですって先ほど申し上げましたけれども、ここにあるように、選択した評価軸で、今、この都市の現状はどうなっているのかっていうのを、例えばそれぞれの軸で評価して、このレーダーチャートみたいなもので書いてみて、ここで引っ込んでいるところをどこまで伸ばすかとかですね、「今、伸びているところがやはり、ここのまちの特徴だから、ここをさらに伸ばしていこう」というような、どこに力点を置くかというものを、そういった様々な軸の中で、ここで言うと、ここ凹んでいるのもここまで伸ばすとか、もっとこの辺のところは優位だけれども、ここでさらに優位性を伸ばそうとかですね、そういうことをやって目標値の設定に使えるということになります。

 ただし、後ほどの説明でも繰り返すことになると思いますけれども、ISOの規格っていうのは評価軸を提示して、「こういうものを使って評価しましょうね」、それから「それはこういう計算の方法で評価しましょう」ということを決めていって、これがその先ほどの何とかの就業率とか何とかっていうのが、40パーセントを超えてなきゃいけないとか、60パーセントを超えてなきゃいけないとか、そういった目標数値、クリアすべき数値に関しては、国際規格の中では規定はしていません。物差しだけ与えて、「この物差しを使って測りなさいね」ということを決めているのが、ISOの国際規格です。

 それから、まちづくりの、「まちのブランド力の向上」というのがですね、もう1つの使い道ということになろうかと思います。
 ただ、ブランド化するためにですね、国際規格に基づく認証の取得ということがあります。
 ISOの認証というのは、企業の方々は身近に感じられると思いますけれども、ISOの9001だとか14001だとか、そういう品質だとか、それから環境関係ですね。それからCSRみたいなもの、そういったものに関して、会社の中でいろいろな手続きがちゃんと作られていて、ドキュメントがしっかり保存されているかどうかというのを評価して、ISOの9001、環境認証を取得しましたっていうのが取引のための条件になったりしていますから、企業の多くはそういった環境認証だとか、それから品質、さらにはCSRの認証を取っていくと。

 ただ、都市の場合は、(資料の)右側に書いてあるように、ISOのスマートシティに関連した規格で認証が行われているのは、ISOの37106という、これはさっきのリストの中には書いてないんですけれども、「スマートシティ運用モデルを確立するための手引き」というタイトルの規格で、これはいわゆる都市の指標の規格じゃなくて、スマートシティの計画から運営に至るところに、自治体として、あるいはまちの運営者として、どういう手順を踏んでどこに注意して、どういうことを押さえておかなければいけないかっていうようなことが書いてある。後ほどちょっと触れますけれども。そういうものとか、あとは先ほどの3つですね。
あと37125、ESG(の規格)はまだ正式にスタートしてないので、これができたらまた加わってくると思います。

 日本国内の事例で、この最初に書いてあるISO 37106っていうのを、2022年だったかな、名古屋市の東桜街区が取得しています。
これはイギリスの規格協会が認証者になって、この(資料の)写真にあるような認証証を発行して。
これはNTTのプレスリリースなんですけれども、2022年2月に日本初となるスマートシティの国際認証37106取得って書いてあって、この右に写真がある、あんまり広くない一つの街区ですね。
 複数のビルで組まれていて、ここ(名古屋市の東桜街区)は、ここ(資料)にありますNTTアーバンソリューションズというNTTグループの会社が開発して運用している地域なので、NTTとしては、こういうのを世界で最初に取りますと。
 それから、ここ(資料)にあるNTTデータ経営研究所が、これの取得に向けて一緒にやって、これからこの認証を取得するためのコンサルタント業務を1つのビジネスにしようということで、その先行事例として取得したものです。

 この規格がどういうものなのかというと、元々イギリスの国内規格だったものを、ISOのさっきのTC268に持ち込んでISOの規格にしたもので、なかなか分かりづらくて、私自身もここの中身は全部理解しているわけではないんですけれども、基本的にスマートシティを作るために行政のトップの人たちがどういうビジョンを持って、どういうふうな意思決定の仕方をしていくかとか、そういう行政の手順について、それからこういう点に、ここ(資料)に書いてある、戦略管理って書いてあるところにあるような、こういったようなことについて目配りをしながらスマートシティの開発をしなさいねと。
 ですから、認証のための評価もそういうようなことを行った痕跡があるとか、そういう記録が残っているとか、そういったことをチェックしていくというような方法をとります。
 これが37106の日本国内でまだ初めてってなって、その後2年経っていますけれども、続いてこれを取ったところは、多分、まだないんじゃないかと思います。

 それから、37120、元になった規格ですけれども、これについては倉敷市が取得しました、認証を受けましたって書いてあって5段階の準拠のうちの「アスピレーショナル」というのを取ります。ちょっとこれ、実はですね、あまり腐しちゃいけないんですけれども、どちらかというと努力賞みたいな形になっています。
 37120シリーズですね、先ほど申し上げました37120、122、123っていうのは、全部カナダのトロントに本部がある「ワールド カウンシル オン シティ データ(World Council on City Data)」、WCCDといわれている組織が認証を発行しています。
 これは、実は、この37120シリーズを全部作った、先ほどのTC268のワーキンググループ2のコンビナーをやっている方が規格を作り、それの認証もやるという、両輪で動いている仕組みになっています。
 37120については、出来た当初から5段階の「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」「アスピレーショナル」という、5段階の認証レベルというものを決めてやっています。

 評価の基準、並び順が(資料の)前のページと左右逆になっちゃってますけれども、ここにある指標が、37120っていうのは104個の指標があるんですけれども、その104個の指標のうちどれだけ市が把握しているかっていうことが、評価の基準になっています。
 さっき言ったように、どこまでそれが進んでいるかっていう達成度だとか、閾値だとかそういったものは全くなくて、(資料の)次のページ、ここにありますように、ここに104の指標が全部書いてありますけれども、ここに「コア」って書いてあるのと「サポ」って書いてあるのがあるんですけど、コア指標とサポーティング指標っていう2種類の手法を決めていて、「コア」っていうのは非常に重要なので、必ずこれは市役所で把握しておく必要がありますねとISOで決めてる指標ですね。
 サポーティング指標はそれ以外の指標で、先ほどの19のテーマといって、分野がこういうガバナンスだとか健康だとか、こういうふうにいろいろあるわけですけれども、これを今のでいうと、まずコアが全部クリアしていないと、次の「ブロンズ」「シルバー」に上がっていかれないですね。
 45のコアを全部クリアした上で、サポーティング指標をいくつ持ってるかによって、このグレードが決まると。そういう仕組みになっていまして、「アスピレーショナル」っていうのは、今、言いましたように、実はコア指標が、45個のコア指標をクリアできなかったっていうことなんですけれども、これは日本の場合はしょうがない事情があります。

 こういう国際指標っていうのを作るのは、ISOのこの委員会に参加している各国が、いろいろ意見を持ち寄って、「これを入れよう」ということで議論をするんですけれども、今回は私、この倉敷市が「アスピレーショナル」だったということで、市役所の職員の方とも電話でいろいろお話して伺いましたけれども、このコアが選ばれている中に、日本の都市の実態に合わない、要するに日本の都市の場合は市役所がデータを持っていないもの、例えば公安委員会が持っているとか、一般の住民からすると市役所ライクなものなんだけど、市役所としてのデータの把握ができてるかどうかっていうのが評価基準なので、そうなったら日本の場合はどうしても外れちゃうと。どうしてそうなっちゃったのかっていうと、この国際規格の審議っていうのは2012年から始まりましたけれども、これに自治体が参加していないんですね。
 当然、国際会議に自治体が参加する必要はないんですけれども、国に対する国内審議委員会のメンバーに参加していないので、日本の実態に合わない規格が阻止できなかった。
 これは大きな反省で、今度ESG投資もやはり、いろいろ私の方から(一般社団法人スマートシティ社会実装)コンソーシアムにお願いして意見を取りまとめていただこうとしたんですけど、冒頭申し上げましたようにやはり馴染みがないということが大きいと思いますが、なかなか日本の自治体の意見を反映した規格作りができないので、今日の議論の機会も含めて、何かそういう仕組みができないかなということは、皆さんと御相談できればと思っております。

 これが37120ですね。それから、先ほどの3つのセットになっているのを同時に取得している都市というのがあって、韓国の大邱だとか、カナダ、これWCCDがカナダにあるので、カナダの都市はみんなたくさん取ってます。それから、フィリピンのマカティという都市も、これも最初の時期から特に優遇されて取ってるっていうところがあるので、どこが取ってるかっていうのはあんまり気にしない方がいいと思います。それで、大邱は37120だけじゃなくて、さっきの名古屋の東桜(街区)が取った37106も取っていて、韓国の都市というのは割とこういうISOの認証を取るのが好きみたいで、あちこちの都市が取っています。

 今まででは、ISOと国際標準化機構の指標に基づく認証(についての説明)ですけれども、それ以外の認証っていう仕組みもありまして、多分皆さん御存知だと思いますけれども、アメリカのグリーンビルディングカウンシルっていうところが、USGBCというところが、リード(LEED)という、「リーダーシップ イン エナジー アンド エンバイロメンタル デザイン(Leadership in Energy and Environmental Design)」っていう、これは元々建物の環境負荷を評価して、この建物は環境に優しいということを評価する仕組みです。グリーンビルディングですね。
 最初、グリーンビルディングの基本的な設計だとか、インテリアだとか、それからこれは新築を対象にしたので既存ビルの運営とか、そういうところにだんだんその範囲を広げてきて、この「ネイバーフッド デベロップメント(Neighborhood Development)」っていうのは1つのビルではなくて、この(資料の)上の3つは1つのビルなんですけれども、いくつかのビル群を合わせた街区というものを対象にしてやると。
 ついにはその「シティー&コミュニティ」という、まち全体も評価しますというところに広がってきたんですけれども、成り立ちが環境性能評価なので、スマートとか何とかっていうより、どちらかというと環境に優しいということを標榜した認証です。
 日本での取得例というと、個別の建物についてはたくさん、既にもう240件ぐらいあるんですけれども、街区としてはこういった一番最初の頃は、「二子玉川ライズ」が最初に取得して、そこからだんだん増えてきてます。

「シティー&コミュニティ」というのは、2020年に札幌市が取得しました。
 これが札幌市が、このリード(LEED)の「シティーズ アンド コミュニティーズ(Cities & Communities)」のプラチナを取得したときのプレスリリースです。
 この当時よりもうちょっと後、2年ぐらい前に私が札幌市の市役所の担当部局の方にインタビューをして、目的とか、何か書いてはありますけれども、札幌市では札幌のまちを世界基準でとらえるとともに、客観的な評価を活用したシティプロモーションの展開を目的として認証に取り組みましたと。
 実際の手順ですけれども、2019年に認証取得業務の委託先、これは専門のコンサルタントを使う必要があるので、そういう入札をやったら1人しかできる人がいなかったということで、株式会社ヴォンエルフというところに委託して、840万円で取得の事業をやりました。
 ということで、20年の1月にプラチナを取得しましたということになっていて、まだ「シティーズ アンド コミュニティーズ(Cities & Communities)」、日本で札幌に続いているのはないと思います。

 リード(LEED)の「シティーズ アンド コミュニティーズ(Cities & Communities)」っていうのは、どういう評価項目で構成されているかというと、ここにありますように定性的な必須条件として、数値じゃなくて、こういう取組の姿勢みたいなものが適切に規定されていること、規定されて運用されていること、こういうのはエビデンスをちゃんと見せなきゃいけないんですね。
 それであとは、データ的にパフォーマンス評価項目として、KPIとしてこういうものが挙げられていて、それを提出することによって、先ほどの37120と似たような考え方で、ここ(資料)にありますように、「ゴールド」とか「シルバー」とか「プラチナ」とかがやっぱりありまして、それから「シルバー」の下が標準認証だったかな、要するに「合格ですけども、メダルはあげません」みたいな、そういうのもあります。
それで、こういうものが例えば使えますね、と。

 その他に都市指標っていうのは、いろいろなものがありますので、ちょっと簡単に御紹介をしようと思います。
 まず、このデジタル庁が、今、デジタル田園都市国家構想で活用促進しています地域幸福度、ウェルビーイング指標というのがあります。
 これは、一般社団法人スマートシティ・インスティテュートが、「リバブルウェルビーイングシティ(Liveable Well-Being City)指標」っていう名前で策定したものを、民間が作ったものをデジタル庁が担いで、みんなで使いましょうと言っているもので、これは住民の主観的な評価を含む点に特徴があります。

 それから、2番目はロックフェラー財団が「ハンドレッド レジリエント シティーズ(100 Resilient Cities)」っていう、レジリエントですね。レジリエンスに関する取組の優れた都市を、世界で100の都市を選んで、日本は富山市と北九州市が選ばれていたと思いますけれども、それを選ぶ際に使ったのが「シティレジリエンスインデックス(City Resilience Index)」というもので、このインデックス自体は、イギリスのアラップ(Arup)というエンジニアリング会社が作っています。
あと、OECDのレジリエンスシティというものがあるので、ちょっと御紹介します。

 リバブルウェルビーイングシティ指標、地域幸福度指標の概念、これはスマートシティ・インスティテュートのホームページに書いてありますので、ちょっと中身を細かく言っていると時間がかかるので、後で見ておいていただければいいかと思います。
 それで、ここ(資料)の「心の因子」と「行動の因子」と「環境の因子」って大きく3つ分けて、市民の主観的な幸せっていうことを、いろいろアンケートやなんかを使って調べます。
 それから、こちらは「場」とか、これは市民個人なんですけど、こちらは市民同士のコミュニティというような捉え方で、ギスギスしてないかとかですね、質問の中身を見ていくと分かるんですけれども、あります。
 それからあと、実際に日々どんな活動をしているかっていうようなことを、これもアンケート形式で、あとはウェアラブル端末を住民につけてもらって測定する。それで、それに対する満足度みたいなものをヒアリングして、やると。
 そういうようなものと、あと、行動実績をいろんなデータ、カメラのデータとかそういったものを集めて評価するというところですね。
それから、ここはどちらかというと従来の都市の評価手法に近いところですけれども、まちの在り様を数値化したもの。こういうもので、実際はものすごく因子の数と更に細かい評価項目があるので、非常にたくさんのポイントを集めて評価することになります。

 次の、これは「シティ レジリエンス インデックス(City Resilience Index)」、ロックフェラー財団のものですけれども、項目っていうか分野としては、ここに健康だとか経済、それからインフラ、リーダーシップ戦略、そういったようなものを挙げて、それぞれの中にさらに小分類があって、最終的に数値化できる項目を挙げてこれで評価しましょうと。
 実際にそれを使って評価して、さっき申し上げましたような「ハンドレッド レジリエント シティーズ(100 Resilient Cities)」を選ぶ。

 それからOECDでは、「レジリエントシティーズ(Resilient Cities)」ということを言っていて、ここはこの「経済」と「社会」と、「ガバナンス」と「環境」という四つのフレームワークということで、「社会」に関してはこういう項目、それから「経済」はこういう項目、「環境」はこういう項目、あとは制度面、「ガバナンス」ですね。そういったもので、それぞれいろんな評価基準を作っています。
 さっきから、物差しだけを与えていて、どのくらいOKだったらいいかっていうのは決めてませんっていうお話をしましたけれども、ちょっと(資料が)見えにくいんですけれども、ITU-Tっていう通信関係の国際規格を決めている団体があって、そこが出している評価、これもスマートシティの評価基準なんですけど、通信系の国際規格なので、非常に通信系に偏ってるんですけれど、ここではですね、ここ(資料)にちょっと細かくて見えないんですけれども、技術推奨ということで、こういうもの(指標)が出されています。

 それで、その中で、ここはどちらかっていうと、この規格自体は、さっきのと同じ「こういう物差しで測りましょうね」っていうことだけ決めてるんですけれども、ここの組織がちょっと変わっているのは、これ(資料)が規格そのもので、どんなものが中に入っているかっていうのが書いてあって、ここにノルウェーのトロントハイムのレポートがありますけど、これがITUですね、先ほどの規格を作っているところですけれども、ずっと見ていきますと、それぞれの指標にこれはどういう指標の種類があるかっていうのを書いているんですけど、それぞれの指標についてここにありますように、ベンチマーク視点、これはICTのインフラは結果こうですと。こういうふうにクリアしています、ここはまだできていませんとか、こういうレポートを都市と組んで、自己評価ではなくてITU自身が一緒になって都市の評価をやって、認証を与えるというわけではないんですけれども、ここの都市はこういう成績ですよというレポートを出しているというものがございます。
 ですから、国際規格そのものは物差しを提示していますけれども、規格団体が一緒になって評価もやって、一応お墨つきのある評価結果、レポートを出しているという例もあります、というものを、ちょっと1つ御紹介しました。

 それでは、一応、時間も予定の時間になってまいりましたので、あと、議論させていただく時間をとりたいと思いますから、この辺で一応私からのお話を終わりにして、皆さんからの御質問とか御意見への議論にしたいと思います。

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 クロストーク

モデレーター 加藤勝

 はい、河野さんありがとうございました。

登壇者 河野通長

 なんかね、雑駁なって言っちゃうと申し訳ないんだけど、なかなか皆さんに馴染みがないので、どこから入っていったら入りやすいかなっていうのは難しいところがありますので、いろいろ言ってみましたけれども。

 是非、さばけた話の中から焦点を見つけていただければと思います。

モデレーター 加藤勝

 はい。どうぞ皆さんチャットを使って、御質問も一部いただいておりますけれども、基本的な質問でもよろしいかと思いますので、感想などをお寄せいただければと思います。
 おそらく、今日の河野さんのお話というのは、多くの自治体の職員さんにとってもすごく新しい話といいますか、分からなくて当たり前の話だと思いますので、遠慮なく基本的な質問などをお寄せいただければと思います。

 まず、皆さんから御質問が寄せられるまでの間ということで、ちょっとつなぎたいと思うんですけれども、河野さんの方から冒頭といいますか、お話があったとおり、自治体さんは割と、もうしばらく20年、25年ぐらいの間にKPIだとか、まちづくりの指標みたいなことを掲げて、そこが目標値がこうで、これに立って総合計画に従って「5年経ったらこれぐらい達成しました」「10年経ってこれぐらい達成しました」みたいなことを、だいぶそういう数値管理みたいなことには馴染んできているかと思うんですけれども、とはいえですね、馴染んできてはいる一方で、こういう他都市と比較するとか、横と比較するという使い方っていうのは、あまりされてないかと思いますので、そういう意味では、今日のお話は「なるほど、自分たちのまちづくりの指標として管理はしてきたけれども、国際標準、国際規格として横での比較もできるというような、そういうものもあるんだな」ということを、おそらく多くの自治体さんにとっては、今日、御参加いただいている、あるいはこの後アーカイブで聞く方も含めて、おそらく新鮮な感じで受け止めたんじゃないかなというふうに思っております。

 それで、ちょっと私の方から御質問なんですけど、これ、どちらかというと日本国内というよりかは、先ほど韓国の大邱だとか、カナダ、フィリピンの都市のお名前も挙がっていたんですけど、そういう都市において、海外の先進の都市において、河野さんがおっしゃっている国際規格の使い方、使われ方、先ほど三つの軸で「まちづくりの方向性・論点の整理」というお話、「ブランド力の向上」という話、「目標設定と自己評価」という3本のお話の使い方といいますか、軸の話があると思うんですけど、そういう使い方をされている海外の諸外国の先進事例では、「特にこういう使い方をしていますよ」とか、特徴的なPRの仕方、使い方みたいなものがあったら教えていただきたいんですが、いかがですか。

登壇者 河野通長

 やっぱり、実際に認証を取得している都市の大半は、大半はっていうと変なんだけど、外から見て分かるのは、「ブランド力の向上」のために取っている。
 先ほど申し上げましたように自分たちで、今、加藤さんがおっしゃったように、いろいろな軸を見て、同じ軸でもって他の都市と比較するとか、そういうことは非常に有効だと思うんですけれども、外から見て「それをやっています」ということは、あまり見えないわけなんですよ。多分やってるんだと思うんですけれども、むしろ外部から見て目立つのは、やはり「取得しました」。

 ですから、ISO37120シリーズ、これを取得をすると、これWCCDのトップであり、またISOの委員会の議長をやっているパトリシア・マッカーニー(Patricia McCarney)っていうトロント大学の先生なんですけれども、先生というよりも極めて熟達した商売人なんですけれども、取得した都市の表彰式みたいなのを、いろんな大きなまちの、ワールドシティズカウンシルってシンガポールで毎年やっているものだとか、有名なのはバルセロナでやっているスマートシティEXPOっていうのがあるんですけど、そこではあんまりやってないんですけれども、いろんな世界の都市だとか、それからあとは不動産業者が集まるようなイベントだとか、それから1月の初めにアメリカのラスベガスでやっているCESっていう、コンシューマーエレクトロニクスショーね、ああいった人が集まる場で、表彰式をやるんですね。そうやって、人が集まるところでそういうことをやるっていうのが1つ、これを取る上でのブランドを広告するチャンスになっている。

 それからもう一つ、真面目にっていうと語弊があるかもしれないけれども、ISOの37120を取得した都市は、先ほど言ったWCCDのポータルにデータをアップできるんですね。そこのポータルで、同じ尺度でみんな比べていますから、他の都市との比較ができる。
そういうサービスをWCCDは提供しているので、そういう日本の都市の間であれば何か情報のやり取りをして比較しようとか、そういうことはできると思うし、特に標準化した比較じゃなくても、自分が今、関心のある事項に対して、他の都市に問い合わせるっていうことは可能だと思うんですけれども、国際標準で37120で準拠すれば、海外の都市とも比較ができるということにWCCD自身も、取るっていうことは同じプラットフォームで、このポータルに載せて皆さんと比較できますよっていうのをかなり強調していますので、そういう意味での効果はあると思います。

モデレーター 加藤勝

 割とブランド力の向上という視点で、そうなるとその認証そのものが認知されている必要がありますよね。

登壇者 河野通長

 そうですよね。

モデレーター 加藤勝

 あのISOの認証を受けてるんだっていう、そういうことがまず前提としてあって。それで、「そうですか、わが町は認証を受けてるんだな」っていうことになってくのかなと思います。

 そういう意味では、まだ認証に対する認知そのものが、先ほど、カナダの国は協議会の事務局があるのでみたいな話があったんですが、まだまだこれからという段階ですかね?日本の場合は。

登壇者 河野通長

 そうですね。

 日本は先ほど言いましたようにいろいろな制約があるので、必ずしも有利ではないので、一時期私自身もWCCDの日本のレプリゼンタティブを仰せつかって、いろんな都市に行ってみたんですけれども、やはり「それ取ってどうなるの?」っていうのが基本的にあって、なかなか認知されにくいし、今で100都市ぐらいが37120を取得しているわけですけれども、世の中的に見るとね、「取りました」って言っても、「それ、なに?」になっちゃうので、そういう意味で認証する側のブランド力みたいなことから言うと、LEEDの方がずっと高いんですね、今はね。

モデレーター 加藤勝

 なるほど。

登壇者 河野通長

 ですから、日本でも先ほどのネイバーフッド デベロップメント(Neighborhood Development)だけでも10いくつ取得していますから、結構、それぞれの町はそういうことを。どっちかっていうと街区なのでそんなに大規模じゃなくて、1つの事業者が全体を、二子玉川だとか、柏の葉だとか、そういうところは東急電鉄だとか、三井不動産だとかが、1つの企業がまとめて運営している。そういうところが適していると思うんですね。

モデレーター 加藤勝

 なるほど。

 今の視点で自治体が、より積極的に、これをポジティブにまちづくりに生かしていくっていう視点で考えたときになんですけど、先ほどISOは、目標だとか、あるいはベンチマーク的なことはやらないんだと。指標をお示しするまでなんだということだったんですけども、どうしても自治体でこれをまちづくりに生かしていこうとなると、やはり先ほども申し上げました目標管理だとか、それに向かって掲げた指標に対してどうやって近づけていくかっていうことが、自治体で使っていこうとするとやっぱり避けられないのかなというふうに私としては思うんですけれども、このISOの37120とかを、ただ指標を測定して公表するっていうのが認定源だと思うんですけれども、さらに自分たちのまちづくりに生かしているっていう視点で、目標管理としても機能しているとかっていう、多分、あったとしても国外事例になると思うんですけども、そういう事例もございますでしょうか?

登壇者 河野通長

 具体的にどの都市がどういう評価をして、何を目標にやっているかっていうのは、実はちょっと個別に取得した都市に、いろいろ尋ねれば情報は得られるかもしれないんですけれども、そこまでは私も把握はしていないんですが、いくつかの都市でグレードが上がっている、ある年に37120の「シルバー」を取ったと、2年後に今度「ゴールド」が取れたと。そういうふうにしてグレードが上がっている都市っていうのは、いくつかあるんですね。

 ですから、やはりここも、どれだけのデータを市が把握しているかっていう評価基準ですから、先ほど言ったように、例えばネットワークの普及度合いが何十パーセントから何十パーセントに増えたっていうんじゃなくて、市が今まで把握していなかったデータを把握するようになったとか、それから民間企業が持っているデータを市がもらえるようになったとか、そういう改善なんですけれども、いずれにしても指標を使いながら、その指標に沿って改善をすると。

 それから、もっと顕著なのは、まだ日本では名古屋だけですけれども、指標じゃないんですが、先ほどの37106ですね、そういったものはマネジメントスタンダードですから、やっている運営の仕方だとか、ドキュメントの残し方だとかそういったものが、管理体制が問われるものなので、これが指標を使いながらここが弱いということが分かったらそこを強化していくっていうのは、行政の質の向上っていうのには当然役立つんで、そういったことも含めて使えるんじゃないかなと思います。

モデレーター 加藤勝

 今、多くの自治体さんの課題の1つ、先ほどデータ活用って話も出てきたんですけど、シートの中にも一部EBPMって話もありまして。

 世の中に溢れている、まだそれがちゃんと利活用できていないデータっていうのがたくさんあって、それを政策に反映していくんだ、エビデンスを持って政策に反映していくんだということが、大きいテーマとして1つトレンドになっているわけですけど、そこのうねりと指標の動きとつながっていきますよね。

登壇者 河野通長

 ええ。だから、やっぱりEBPMをやるときに、何のエビデンスを取ればいいんだ、と。そのときに「どういうデータを集めたらいいかな」っていうのを考える上での1つのヒントであり、それから「海外の都市はこういうデータを気にしてるのね」ということがわかるためのガイドブックとして、意味があると思うんですね。

 多分、ちょっとISOとは別ですけれども、国内でも都市計画学会や何かの中でも、データドリブンな都市計画手法っていうね。だから従来、都市計画をやるときに使われていたデータと、今、集められるデータっていうのがずいぶん変わってきていて、交通量なんて以前は道路のところにあの、カチカチっていうのをいくつも板にくっつけて椅子に座って計測、今でもやってますけれども、時々そういうのをやっていたのがリアルタイムで、鉄道であればICカードの利用だとか、それから道路交通であれば、監視カメラの映像とかを使って交通量なんてリアルタイムでどんどん取れちゃうわけですよね。

 そうなってきたときに、都市計画の手法そのものも変わってくるんじゃないかっていう考え方の上で、そういうデータドリブンな都市計画法の研究っていうのも行われているので、だからそういう意味でデータが豊富になってきたっていうことが、ちょっと国際規格とは違いますけれども、まちづくりの手法に影響をだんだん与えてくるだろうというふうに感じられます。

モデレーター 加藤勝

 転じて、今日のテーマに引きつけると、今までは指標として測定できないだろうというふうに思っていたような事柄についても、指標についても、データをうまく活用することによって把握、補足していける、そういう時代になってきたかなということかなというふうに思います。

 ちょっと今、海外事例とか、ちょっと大所高所の話をしてきましたが、今日は自治体の方もたくさん参加されていますし、官民連携のテーマなので、御質問いただいております。プラチナ認証を受けた事例の紹介があったということで、「この認証を受けたことにより具体的にどのようなメリットがあったか分かりますでしょうか」というチャットでの御質問なんですけど。

登壇者 河野通長

 これが確かに難しいところで、効果測定、要するにブランド力、例えば札幌市なんかと話してると、やっぱり企業誘致だとか「投資してほしい」、それからあとは「個々の住民の方々に移住してきてほしい」。

 だから、個人レベルあるいは企業レベルでの転入を促進するっていうのが目的で、どの都市もそうだと思うんですけども、ブランド戦略っていうのはそういうところにあると思うんですけれども、それをやった結果として実際に人口が増えているのか、投資が増えているのか、企業が転入してきているのかというのを、測定はできますけれども、それがこれの効果かっていうのは、非常に難しいわけですね。なので、なかなかその効果を、あるいはメリットがあったか分かりますかという御質問に対しては、なかなか難しいですね。

 それで、先ほどの札幌市のケースの場合は、これはリード(LEED)の「シティーズアンドコミュニティーズ(Cities & Communities)」ですけれども、市長さんがどこかで聞き込んできて、それで「これをやれ」と言って、結構、市長さん主導でやったんですね。

 そういう意味で、市役所も一生懸命やったっていうところもあると思うんですけれども、我々から見ると、市長さんがこういうものを見つけてこういうのをやれって言ったこと自体の市長さんの先見性みたいな、要するに、世の中を見てこういうものに取り組もうっていう姿勢自体は、市民の方から評価を受けるかどうかわからないですけど、一般的には、こういうのを「市長主導でやりました」っていうと市長の株も上がるだろうとは思うんですけれども、ただ、これ「840万に値するのか」っていう意見も出るかもしれませんけれども、直接的に人口が増えたとか何とかっていうよりも、そういうのを取り組んだっていう市長さん以下、市役所もそれは当然、他の認証もそうですけれども、市役所も一生懸命働かなきゃならないですから、そういう活動をやったっていうことが評価されるとは思いますけどね。市民の方々から見てね。

モデレーター 加藤勝

 指標の1つ1つをつぶさに見ていくと、やっぱりそこに関心を高く持っている方っていうのは、それぞれ分野でいると思うんですよね。教育の分野、コンパクトの分野、交通の分野とか、エネルギーの分野。

 それぞれに関心を持たれている方々、それを1つ、人口や投資や移住定住や、っていうことに直接的につながるかどうかって、本当に河野さんのおっしゃったとおり、それが決定打になるか、それが唯一最大の決定打になるかっていうと難しいところだと思うんですけども、ただやはり、そのまちに「投資だ」「移住だ」ということを考えたときに、やはり情報を求めますので、そういう情報がちゃんと入手可能な形で、あるいは比較可能な形で提供されているっていうのは、やはり大事なことかなって。

登壇者 河野通長

 そうですね、外からだけじゃなくて、こういう認証を受けようとすると、いろんなここに挙がっている項目、今の加藤さんがおっしゃったように、市役所の中でもデータを持っている部署が違うわけですね。あちこちの部局にまたがっていくので、認証を取るためにコンサルタントを使うにしろ、例えば市役所の中の企画調整課か何かが中心になって動くにしても、どこにどういうデータがあるかっていうのが市役所の中で見えるようになるんですね。

 その効果っていうのは多分あるだろうと思っていまして、これはこの認証に限らず、アメリカで2016年ぐらいだったと思うんですけども、アメリカのスマートシティズカウンシルっていうところがやっているアニュアルミーティングに行って、ちょうどその頃オープンデータっていうかシティポータルで、各都市がポータルを作ってそれで情報公開するっていうのがどんどん進んでいた時期で、そのときにそこに参加していたアメリカの都市の人たちに話を聞いたら、オープンデータをやるために、主に市役所の中のIT推進部みたいなところが中心になって、いろんな部署が持っているデータを集めてきて、これをポータルで同じような形に加工して。こうやってやっていると、市役所の中で「あそこの部署にこんなデータがあったのか」と。「それだったら俺たちも使えるね」みたいな、そういうようなオープンデータを進めることで、いわゆるサイロっていう、例えば縦割りの壁が低くなっていると。そういう話を聞いたことがあるんですけれども、おそらくこの認証を受けるというプロセスを通じて、どこにどういうデータがあるかっていうのをくまなく探しますから、そういう意味では、この認証、何を受けたか何が取れたか、あるいはそれがそのどういう効果があるかっていうよりも、認証を取るためのプロセスの中で、いろんなものが改善されるっていう効果はあると思います。

 これは企業の中でのISOの9001だとか、環境のだとか、生産性なんかの規格がありますけれども、そういったものを取るときに、非常にその中の業務が整理されて、そっちの効果が大きいっていうのがありますけれども、それと似たような効果があるんじゃないかと思うんですね。

モデレーター 加藤勝

 はい、ありがとうございます。

 すみません、もう一つちょっと観点を変えてなんですけれども、この埼玉版スーパー・シティプロジェクトの大きなテーマとして官民連携っていう視点がございます。ちょっと今までのところ、自治体が自治体がっていう視点で御質問をしてきたんですけど、今日は民間企業の方々もたくさんいらっしゃいますので、官民連携を促進していくという視点で、指標を活用していくという視点で何か御示唆があれば、いただきたいんですけれども。

登壇者 河野通長

 官民連携って、2つの側面があるだろうと思います。

 1つは、例えばこのスマートシティ、スーパーシティを開発するというか立ち上げていく上で、自治体が中心で旗振りをやって、そこにいろいろ民間企業の新しいソリューションをどんどん盛り込んでいって、一緒になって作り上げていくっていう、そういう意味での官民連携っていうのがあると思うんですけれども、指標っていう側面から言うと、この指標を上げていくためには、こういう分野の産業との協力が必要だっていうのはもちろんあります。

 それは、どっちかっていうと、今言ったのと似たような側面があるんですけれども、やはり例えば、電力事業なんかは民間企業が担当しているわけで、電力に関するデータっていうのは民間企業が持っていて、市役所が持っていないものが多いわけですね。

 そうしたときに、その指標を、いろいろな指標を揃えることによって、その都市の一種の人間ドックみたいなものですから、今、自分の健康状態どうなんだと。そういったときに、ISOなんかで示されているような指標をザーッと全部並べて見ようとしたときに、民間企業からデータをもらわないとわからない。そういうふうな意味で、そこで民間企業からの協力を得て、データを揃えて、初めてその全体が見渡せるみたいな。そういう意味で、市役所の側からそういった民間企業に働きかけて、「このデータを共有しましょう」と。「国際規格でも言っているんだから」みたいな、そういう使い方をしてもらえれば、市としての全体を見る、またこれ、市が主体になっちゃいますけれども、そういう意味で民間事業者との連携みたいなところは、もちろんバス、鉄道みたいなのも、市営交通以外のものは、データは民間にありますから、そういうところがあるかなと。

 あとは、例えば指標作りのときに、市が参加できる仕組みが欲しいなと私が言ったような中で、そういったところに民間企業も入って、自分の得意技術をそこのまちの評価指標の中に入れてしまいたいと。そうすると、世界中で使われるようになるだろう、そういうのがあるんですよね。

 これはちょっと、手法を使ってというより手法を作るときの1つなんですけれども。長くならないようにちょっと1つ事例を言うと、37120って2014年にできて、2018年に1回改訂されたって言いましたけれども、そこの中に分野として1つ増えたのが「都市農場」、要するに都市の中で農作物を作るプラス、それが都市の食料安全保障につながるっていう項目が、これ大項目として1つ、ガバッと増えてるんですね。

 これは何かっていうと、スウェーデンのプランタゴンっていう会社がこの審議の場に乗り込んできて、このプランタゴンっていうのは植物工場の会社なんですね。都市のビルの中に畑を作る会社なので、それを世界に広めたい。そのためには、こういう都市の中に農場があるっていうのを評価項目に加えるっていうのをやればいいんじゃないかっていうので、それでだから2018年版になってそういうものが、2014年版になかったものができて入っている。そういうふうに日本の得意技術っていうのは、いっぱいあるだろうと思うのでね。そういうものを何か国際規格の中に潜り込ませると、「これは国際規格で決めているんだから、これ使いましょうよ」って言えるんですね。

 民間側からすると、そういう使い道があるかなと思います。

モデレーター 加藤勝

 ありがとうございます。

 今、2点コメントをいただけたかなと思うんですけど、1点目のやっぱりデータ、民間企業さんが持っているデータも踏まえて指標に反映していきましょうという話、そのとおりかなというふうに思いました。

 何も「ISOの指標を全部測定しましょう」とか「認証を受けましょう」ということではなく、1つ1つをつぶさに見ていくと、「この指標を測定することによって、うちのまちづくりの進み具合が把握できるので、こういう見方、こういう視点、こういうデータの把握の仕方もあるんだね」っていうのがすごく参考になるかと思っていまして、民間企業さんと、私ども実証実験なんかも企業と民間とでやるときに、「この実証実験でゴールとしてどこを目指しますか」といったとき、もちろん定性的なゴールも目指すんですけども、この中で「ISOの37120のこの指標を上げていくということを目指して、実証を実験一緒にやっていきましょう」みたいな使い方ができるのかなというふうに、今お話伺ってきて。

登壇者 河野通長

 まさに、私の話の中で目標設定に使えるっていうのは、そういったようなところですね。ですから、その目標に到達するために官民連携でいろいろ一緒にやっていくっていうのは、非常に良い姿だろうと思いますね。

モデレーター 加藤勝

 そうですね。全部が全部じゃなくても、一つの指標ですね。共に改善していこうという取組は、有効かなというふうに思いますね。ありがとうございます。

 すみません、時間も迫ってまいりまして、最後に一言河野さんの方から、この埼玉版スーパー・シティプロジェクトを進めていく自治体さん、企業さんについて、この世界標準の指標を活用したまちづくりの視点ですね、何かエールといいますか、激励のお言葉を頂戴したいんですが、お願いします。

登壇者 河野通長

 今日、ずっとお話してきたことに尽きるんですけれども、とにかくこういうものがあるので、皆さんはこれまで、あんまり馴染みがなかったかとは思いますけれども、今日のお話で「こういうものがあるのか」ということを知っていただいた上で、今日は細かい中身までは踏み込んでいませんけれども、いろんなところで具体的な指標の測定の仕方とか、そういうのも規格の中に書き込まれているので、それを御自分の関心のあるようなところはそういったところを見ていただいて、世の中ではこういうやり方をしているのか、あるいは先ほど言いましたように、データの取り方自体がどんどん変わってきているので、規格にはこういうふうに書いてあるけど、同じような目的のデータは、「今だったらこういうやり方でもできるじゃないか」っていうのも当然出てきています。

 ですから、そういったようなことを、規格に目を通すことをきっかけにして、新しいアプローチを考えていただいたり、そこでまた新しいソリューションの導入に結びつけていっていただければ、まさにこれはスマートなアプローチになるので、そういったきっかけ作りにその規格っていうものがあるんだということを、ちょっと頭の片隅に置いて取り組んでいただければと思います。

モデレーター 加藤勝

 ありがとうございます。

 認証を取るとかっていうと、すごくハードルが高いし、それがどういう使い方とかって難しいかと思うんですけど、一つ一つの指標だとか、データの利活用だとか、官民で一つの目標に向かっていくという視点では、いろいろ使い方といいますか活用の仕方があって、その先に認証とか、そういうことがあればいいのかなと。認証を目的化しない取組かな、というふうに承ったと思います。

登壇者 河野通長

そう思います。

モデレーター 加藤勝

河野さんありがとうございます。(終)

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