インタビュー・コラム

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掲載日:2024年3月28日

釜田 孝志(かまだ たかし)さん

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プロフィール

34歳。二児の父。
2020年12月にSunnyキッズクリニック オープニングスタッフの看護師として入社。
2022年5月に医療法人社団Sunnyとなり、同2022年10月から1年間、同社の男性としては初めて育児休業を取得。
現在は、法人全体の人事・労務部門の業務を担当し、看護師として現場のフォローに入ることもある。

従業員数49名(2024年2月時点)
埼玉県多様な働き方実践企業 プラチナ認定
埼玉県 男性育児休業等推進宣言企業

オープニングスタッフとしてクリニックを軌道にのせる

私は看護師として大学病院の救急病棟に勤務していましたが、小児科にもすごく興味があったため、2018年にさいたま新都心にある埼玉県立小児医療センターに転職しました。現在、私の弟も(医)Sunnyで働いているのですが、当院の理事長と私の弟が以前同じ医局で働いていました。理事長から弟に「開業したいので一緒にやらないか」と声がかかり、その流れで、弟から私に「オープニングスタッフとして一緒にやらないか」という相談がありました。元々、私の実家も開業医であり、クリニックが地域に密着して慕われている姿を見ていたので、自分もいつかクリニックをやりたいという意識はありました。当時、上の子がまだ0歳だったことや家を購入したこともあり迷っていた私に、妻から「やってみたらたらいいよ」と背中を押してもらえたのがきっかけで、そのお話を受けました。

2020年12月はすでに新型コロナウイルス感染拡大の真っ只中であり、私たちも開業のタイミングに悩みましたが今しかないと決め、開業に踏み切りました。当時のスタッフは7人ほどで、私も看護師として現場で働きつつ、労務や人事、レセプト管理など、多岐にわたって業務を遂行していたのでとても大変でした。現在は人事・労務部門としての仕事を中心にしながら、人手が足りない時などは、看護師としても現場で働いています。

男性で初めて育児休業 ~理事長と同僚の後押し~

第一子が生まれたのは前の職場の時であり、育児休業を取りませんでした。1人目の時に取得できなかったことは、自分の中でずっと「取ればよかったな…」と後悔がありました。その思いもあり、育児休業を取得して来院されるご家族がすごく良い表情をしているのを見て、他のスタッフとも「育休を希望するスタッフがいたら、取らせてあげたいね」と話していました。結果的に最初に取得した男性が私でした。

当初は育児休業を1年取得することに抵抗がありました。妻とも3か月か半年でいいんじゃないか、と話していたのですが、理事長に相談すると、「(看護師兼労務担当者である私が)取得すればみんなが取りやすくなるよ」と言ってもらえました。現エリアマネージャーからも企業というものを長く続けるにあたって、福利厚生がきちんとしていて育児等と仕事を両立できる環境はスタッフの定着にもつながるから取るべきだ、と後押しがありました。一生懸命子育てをしているお父さんお母さんと間近に接している当院だからこそ、育児をする人たちに対する理事長や現エリアマネージャー、また同僚の理解が深く、それが、私が育児休業を取得するきっかけとして大きかったと思います。

また当院は、正しい医療情報の発信を大事にしているほか、余裕のある人員配置やDX化を進め、在宅ワークや業務の標準化に力を入れることで属人化を防ぎ、スタッフ全員がいろいろな仕事をできるよう整えています。例えば、クラウド型電子カルテを導入することによって、クリニックではなく自宅でも書類作成やレセプト点検などができるため、事務的な業務は在宅ワークが可能です。こうした取り組みが、今回、私が育児休業を取得するまでに確立できたのは非常に良かったと実感しています。

3人

育児休業で得た「家族とゆっくり向き合う時間」

私は、第二子が生まれた日から育児休業を取得しました。家事などの役割分担を妻と決めたわけではありませんが、私と妻で得意な家事が異なっていたこともあり、自然と上手く分担できていたと思います。また、小児科に勤めていることもあり、普段から子供と関わっていたので、育児に対する抵抗感などはありませんでした。基本的に私が上の子の面倒を見ているときに、妻が下の子の面倒を見ていました。上の子が生まれた時は育児休業を取れなかったこともあり、今回の育児休業中に上の子とたくさんの時間を過ごせたことはとても良かったです。また、上の子が保育園に行っている間は、私も下の子にミルクを飲ませたり、離乳食をあげたり、おむつを替えたりして、新生児期から乳児期の期間の成長をゆっくり楽しむこともできました。育児休業の1年間を振り返ったときに、上の子の1歳までの時と、下の子の1歳までの期間の「記憶の濃さ」みたいなものが全く違いました。それを実感したときに、「男性も育児休業は取るべき」と強く思いました。

また、1年間一緒に育児休業を取ってくれた妻にも感謝しています。夫婦としても1年間という期間の中で、今後のことを妻とゆっくり話し合い、お互いのこれからの考えやイメージを共有し意見をすり合わせる時間をたくさん持てたのはとてもよかったです。仕事を一生懸命頑張るのはもちろん大事ですが、前提として家族の応援がないと駄目だと思っています。まずは家族という自分から一番近いコミュニティの中で応援してもらえる、応援し合える状況を作った上で、仕事は頑張るべきだ、という考え方に変わりました。子どもには、親という一番近くにいるロールモデルとして、誇れる仕事がしたいと考えています。社会に還元しようとしている姿や、次につなげようとしている姿をしっかり見せていきたいです。

子供と

育児休業から職場復帰する時に見えたこと

育児休業を取得する際は、看護師をやりつつ、人事・労務の管理を担っていた私の仕事は他のスタッフにお願いしました。当院はDX化や業務の標準化をしていたため、スムーズに引き継ぐことができました。育休中は仕事の対応はしませんでしたが、労務関係で「何か困ったことがあったらいつでも聞いてください」という態勢ではいました。

職場復帰する少し前には、スタッフと話す機会をいただきました。1年間の育児休業からの復帰後に初めて会う人もいるので、これから復帰するにあたり、自分がどういう立場で、どういう仕事をして、みんなにどのようなサポートができるか、という話をしました。しかし、いざ復帰する時、不安はゼロではありませんでした。育児休業を取得すれば、どうしてもブランクというのは生まれます。私自身、復帰する前に会社の現状を把握したり、スタッフと話す機会があったりしましたが、実際復帰した時には「勘の鈍り」みたいなものがありました。後押ししてくれた理事長やスタッフに迷惑をかけてしまっているな…と思ったので、人事・労務担当者として、これから育児休業を取得するスタッフにはそう思わせないように、そこのサポートが大事だなと感じました。

復帰後に歯がゆい思いをし、「取らなきゃよかった」と思っては本末転倒です。スタッフにとって、私の育児休業取得から復帰までの様子を見れたことは、自身が取得するときのイメージになると思いますし、取ってみようかな、と考えるきっかけにもなると思います。私もこの1年間を通して、「育児休業は絶対取った方がいい」と自信を持って言えるようになりました。実際、「機会があれば取りたい」、「夫にも取ってもらいたい」というスタッフもいます。人事・労務担当者として、また経験者として、そのような周囲の声を聞いてサポートし、男性でも女性でも育児休業を取りやすい環境にしていきたいです。

仕事

一緒に働くスタッフのために

このクリニックで子育てしながら仕事ができる、育児休業から復帰しても働き続けることができる、そういったことをイメージできる職場にしていくために、新しく入ってきたスタッフに対して仕事と子育ての両立支援制度や給付金を丁寧に伝えるなど、情報提供には力を入れています。
※埼玉県仕事と介護・子育て・治療の両立支援を参考にしてください。

他にも、元々当院は、病児保育室を併設しているため、スタッフの子どもが体調不良の時は病児保育室に預けながら働ける体制を整えています。育児休業に関しては、一定の条件下で就労しても育児休業給付金が支給されることもあるので、復帰時に不安がある人には、少しずつ慣らす期間を作ってあげるのも良いのではないかと考えており、社会保険労務士とも相談して環境を整えていければいいなと思っています。
※厚生労働省「育児休業中の就労について」を参考にしてください。

長期的な視点で目指していきたいものとして、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を整備し、長期的にスタッフが能力を最大限に発揮できるような支援を提供する企業にしていきたいです。特に長期的な視点での「公平性・公正性」という部分が重要だと考えており、結婚や出産、育児、さらには子の思春期や受験への対応、または親の介護や自身の健康など、スタッフには様々なライフステージの変化があり、その変化の背景は一人一人異なります。その前提の下で「多様性」と長期的な「公平性・公正性」を互いに認め合う企業文化を創りたいと考えています。

※ダイバーシティ:多様性、エクイティ:公平性・公正性、インクルージョン:包括性

みんなで

育児休業を考えている男性へメッセージをお願いします

これからお子さんが生まれる男性には、「ぜひ育児休業を取得してほしい」と思います。取得を躊躇されている男性は、キャリアが途絶えてしまうのではないか、給与がすごく減るのではないか、職場に迷惑をかけるのではないか、といった不安を抱えているかと思います。そういった不安を解消するためにも、職場が育児休業の正確な情報を伝え、サポートすることが大事ですし、先を見据えて考えれば、従業員のロイヤリティ向上や、当院のように男性でも育児休業を取得したという実績が新たな採用に繋がり、企業にとってもプラスになると考えています。

私は看護師でありながら人事・労務担当の立場ですが、そういう立場の人こそ育児休業を取った方がいいと思います。私の育児の経験は、スタッフとのコミュニケーションを取るいろいろな場面ですごく生きています。そして、管理職の立場にある人が育児休業の経験や理解があるというのは、従業員にとって心強く、この企業で働き続けたいと思うきっかけになり、スタッフの働きがいにつながると思います。その先で、育児休業を取得する人たちがどんどん増えていき、企業の考え方や文化などが少しずつ変化し、それを繰り返すことで企業全体が磨かれていくと考えます。

今回の私の経験が、これから取得を考えている男性の背中を押せるように、そして推進したい企業の参考になればいいと思っています。

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