損失補償額等の裁決申請
「裁決申請事件の処理」の項でもご説明しましたが、損失補償額等の裁決申請には、
- 土地収用法の規定による裁決申請
- 他の法律の規定による裁決申請
の二つがあります。
この裁決申請は、収用や使用の裁決申請のように土地の収用や使用を目的とするものではなく、ある事業の施行等によって受けた損失の補償額等のみを目的として申請するものです。このため、俗に「補償裁決」申請とも呼ばれています。
この申請は、土地所有者や関係人などの「損失を受けた者」からなされるのが一般的ですが、起業者も申請することができます。
1 土地収用法の規定による裁決申請
これには、次のようなものがあります。
- ア 測量や調査などによって損失を受けた場合(第91条、第94条)
- イ 事業の廃止又は変更などによって損失を受けた場合(第92条、第94条)
- ウ 収用又は使用する土地以外の土地に関して損失を受けた場合(第93条、第94条)
- エ 非常災害の際の土地の使用によって損失を受けた場合(第122条、第124条、第94条)
- オ 緊急に施行する必要がある事業のための土地の使用によって損失を受けた場合(第123条、第124条、第94条)
2 他の法律の規定による裁決申請
これには、次のようなものがありますが、裁決申請の仕方やその後の手続の進め方などについては、土地収用法第94条などの規定が準用されます。
ア 都市計画法
- (1) 立入り等によって損失を受けた場合(第28条)
- (2) 区域の変更によって損失を受けた場合(第52条の5)
イ 都市再開発法
- (1) 立入り等によって損失を受けた場合(第63条)
- (2) 従前資産の価額について(第85条)
※ これは、「補償裁決」申請の一つに分類されていますが、厳密に言えば、「損失」を受けた場合の裁決申請ではなく、再開発事業の施行者が定めた権利変換計画における従前資産の「評価」に不満がある場合に行うことができるという制度です。
裁決申請書の記載例はこちらをご覧ください。
ウ 道路法
- (1) 立入り等及び非常災害時における土地の一時使用等によって損失を受けた場合(第69条)
- (2) 道路の新築又は改築によって損失を受けた場合(第70条)
エ 河川法
- (1) 河川工事の施工によって損失を受けた場合(第21条)
- (2) 洪水時等における緊急措置によって損失を受けた場合(第22条)
- (3) 河川予定地における行為の制限によって損失を受けた場合(第57条)
オ 土地区画整理法
- (1) 立入り等によって損失を受けた場合(第73条)
- (2) 建築物等の移転・除却によって損失を受けた場合(第78条)
※ただし、施行者から移転・除却を行う旨の通知を受けた場合に限られます。(第77条第2項)
- (3) 仮換地の指定等によって損失を受けた場合(第101条)
カ 土地改良法
立入り等及び急迫の際における土地の一時使用によって損失を受けた場合(第121条)
キ 公共用地の取得に関する特別措置法
緊急裁決時までに審理を尽くさなかった損失について(第30条)
なお、2のイの(2)及びキを除き、まず損失を与えた者と受けた者が補償額等について協議する必要があります。そして、その協議が成立しない場合に、収用委員会に対して裁決を申請することができます。したがって、この協議を行わないで裁決申請をした場合は却下されることとなりますのでご注意ください。
「記載例(都市再開発法第85条第1項に係る申請書)へ」