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掲載日:2025年12月22日
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シニアが活躍できる制度を導入した特定非営利活動法人mamacare・代表理事の藤川 友子さんにお話を伺いました。
・特定非営利活動法人mamacare(入間郡三芳町大字北永井305番地3)
2014年に任意団体として、医療的ケアを必要とするお子さんがいる家族会のような形でスタートし、NPO法人化を経て、2023年に訪問看護ステーションを開設。訪問看護の仕事として、主に医療を必要としながら在宅で生活をしているお子さんたちのお宅に伺い、健康観察、お風呂や食事の介助、人工呼吸器の管理や痰の吸引、排泄のお手伝いなどを行っています。
従業者は現在8名で、65歳以上はまだいませんが60歳以上の従業者が1人います。
定年を60歳から65歳へ引上げ、定年後の継続雇用も65歳から70歳へ引上げました。きっかけは、働いている看護師が59歳になり、60歳定年だとこの大切な人材を手放さなくてはならなくなる、という危機感を持ったことです。年齢を重ねるイコール経験を重ねることでもあり、特に看護師は経験がものを言います。先輩看護師は大抵のことは経験済みですので、物事に動じず、同行する看護師も安心できます。客観的な視点をもち、後輩たちにも的確なアドバイスができるところが本当に心強いので、まだまだ働いてもらいたいという気持ちがありました。
また、自身が60歳を迎えてみて、「あれ?まだ十分元気じゃない?」と実感したこともあります。周囲の同じ年齢の友人たちも同様で、何なら今から新しいことをやりたいなという人もいるぐらいでした。昔の60歳と今の60歳とでは、20歳くらい若々しさが違っている気がしています。
やはり、今働いてくれている看護師を手放さなくて済んだというのが一つです。当人にもまだまだ現役でいたいという気持ちがあったので、その気持ちを活かせたことは大きいと思います。そして、彼女がいることで、新しい看護師を育てることができ、その看護師もどんどん成長しています。
また、高齢の従業員からは、長く働けるという安心感が持てたり、加齢により体力が減少しても、疲労度合いを考慮したシフトにしてもらえるという安心感が得られたという意見をもらっています。若年・中堅の従業者はまだ自身の体力が減少してしまうとか、あと何年働くとか、そうした先のことまでは考えていないようですが、経験の豊富な先輩看護師がこのまま働き続けてくれることへの安心感を持てているようです。

勤務時間の柔軟化は考えています。シフトを組む際に体力面を考えて、前日にきつい業務になってしまったから次の日はゆるくしようとか、前の週や後の週とのバランスや業務内容による疲労感なども考慮しています。もちろん労働時間は決まっていますが、なるべく残業にならずに済む方法などを考えるようになりました。働く看護師の方が「何とかしてあげたい!」という気持ちに駆られて、勤務時間外での業務を引き受けてしまうことがあるので、体力的、精神的にきつくならないようなシフトを考えるのが私の役目だと思っています。
そのほか、血圧計を事業所に設置し、いつでも使えるようにしてあります。仕事柄、血圧計は別に持ち歩いており、ここの従業者は皆、看護師やヘルパーとして医療・介護に携わる者ですから、自身の健康には人一倍気をつけているのですけどね。

高齢の定義が時代とともに実態と合わなくなっていると思います。だから、数字のマジックに踊らされず、その人自身を見てほしいです。私自身は60歳になっていたので実感が持てていますが、経営者が若い方の場合、やはり「シニア」に対してピンと来ないところがあるでしょう。これを補うために、身近の様々な年齢の方とたくさん接すれば、「この年齢は大体こんな感じかな」というのが具体的に感じ取れるようになると思います。「思ったより元気だ」ということに限らず、自分には当たり前にできていることが歳を重ねて大変になってくるということも具体的に知ることができ、事業所で配慮できることにつながると思います。そして何より、「高齢者」として一括りにせず、各人において環境が異なるという認識が必要です。