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掲載日:2024年3月31日

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「書く」

以前に比べ、日常生活で「書く」ことが少なくなった今。「書く」ことの魅力などについて、書道家・根本 知さんにお話を伺いました。

【問合せ】県広報課
電話:048-830-2857

手書きの文字は、言葉以上の思いを乗せることができるんです。

プロフィル 根本 知(ねもと さとし)

昭和59年生まれ。越谷市出身。博士(書道学)。立正大学、放送大学などで教壇に立つ傍ら、創作活動も多岐にわたる。大河ドラマ「光る君へ」(NHK・令和6年)題字揮毫(きごう)および書道指導。近著に「平安かな書道入門 古筆(こひつ)の見方と学び方」(雄山閣、令和5年12月)がある。

▲出典:「平安かな書道入門 古筆の見方と学び方」(雄山閣)、根本 知・筆

― 根本さんの近著を拝見しましたが、仮名文字がとても素敵ですね。

平安時代、仮名文字は自由で、皆同じ字を書きませんでした。これが現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」の見どころの一つで、登場人物によって字を変えて俳優の皆さんを指導しています。
例えば、柄本佑(えもとたすく)さんが演じる藤原道長は、筆跡が残っていて、おおらかで実直なイメージ。実物を柄本さんにお見せしたら「これってうまいんですか?」とおっしゃっていましたが、実はうまくないことで有名なんです。これをご自分でやってくださいと指導しました。

*小筆を使い、草書を用いて筆記する。現在使われる平仮名だけでなく、「変体仮名」といわれるものを含む。例えば、平仮名の「あ」はもともと「安」からできているが、変体仮名では同じ音の「阿」なども用いて書き表す。

― 仮名文字とはどのように出会ったのでしょうか。

小学2年から習った習字は、こうしなければならないというルールが苦手で、結局小学6年でやめてしまいました。
中学2年から、家庭教師に勉強を教わることになったのですが、この方が仮名文字の作家で、私の元師匠です。この現代で、かばんに巻物を入れていて…驚きましたよ(笑)。習字と違い、小筆できれいな色紙(いろがみ)に書く仮名文字。絵を描くのが好きだった僕は、まるで画家のようだと心を奪われ、もう一度書道の世界へ戻りました。

― 高校、大学、そして大学院と書道をなされたのですね。

高校では書道部で、大学では書道学科を専攻しました。大学の書道学科は、漢字が中心の世界。仮名文字ばかり書いていた私は劣等生でした。周りは感覚に優れた天才の集まりで、辛かったですね。でも、この経験から、こうすれば先生に褒められる、というポイントを知ることができました。後に出版する美文字の法則についての著書にもつながっています。

― 「書く」ことが少なくなっている現代において、自分の手で「書く」ことの魅力は何でしょうか。

手書きの文字は、言葉以上の思いを乗せることができる。また、多くを書けないので、選別され、本当に伝えたいこと・残したいことだけになる。「自分ってこんなふうに思っていたんだ」という気付きも与えてくれます。
「書く」ことは時間のかかるもので、とってもぜいたくな時間。非日常を味わうものとして、「書く」ことが選ばれるようになってほしいですね。

― 文字を美しく「書く」簡単な方法を教えていただけますか。

できるものは、漢字の偏(へん)の右端をそろえること(下記参照)。漢字を大きく、平仮名を小さくすること。字間を狭くすること。これを意識するだけでも、きれいに書けると思いますよ。

― 最後に、今後の目標を教えてください。

昔の私と同じように、自分の字にコンプレックスを持っている人に「こうしたらうまく書ける」という自信を持たせたい。そのために、文字を美しく書く法則はどんどん教えます。でもこれは最終的な目標ではありません。なぜなら、皆同じ字になってしまうから。手書きの文字は人の心が伝わるもので、同じ字にしてはいけないんです。私はその先があると思っていて。文字を美しく書くルールを理解した上で一度手放し、自分らしい字を書く。これに仮名文字がすごく合うと思っています。
私が習字を習ったとき、仮名文字(小筆)のクラスはありませんでした。小筆はいつもボロボロで、カチカチになっていて…(笑)。私は運よく仮名文字と出会いましたが、もし小学生で仮名文字と出会える環境があったら、仮名文字をやりたいという子供が増えるかもしれない。「光る君へ」をきっかけに、全国に仮名文字(小筆)のクラスができてほしい。これが一つの目標ですね。

春は、別れと新しい出会いの季節。皆さんも、手書きの文字に特別な思いを乗せ、大切な人に届けてみませんか。


県内最大の規模を誇る公募美術展 72 埼玉県美術展覧会

例年、3,000点を超える出品があり、うち約2,000点が会場に展示されます。今回から、書部門において高校生などの臨書・模刻作品の出品が可能に。

【問合せ】県教育局文化資源課
電話:048-830-6925

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応募資格

15歳以上の県内在住、在勤、在学者(絵画教室等の生徒を含む) ★中学生は除く

部門

日本画(水墨画を含む)、洋画(版画を含む)、彫刻、工芸、書(篆刻(てんこく)・刻字を含む)、写真

応募期間

5月8日(水曜日)~13日(月曜日)

鑑賞する入場無料

期間

5月29日(水曜日)~6月20日(木曜日)

場所

県立近代美術館(北浦和公園内)
★北浦和駅下車徒歩3分

QRコード

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お問い合わせ

県民生活部 広報課 テレビ・ラジオ・広報紙担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 本庁舎1階

ファックス:048-824-7345

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