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掲載日:2019年7月11日

令和元年6月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(日下部伸三議員)

急現場のDNAR(心肺蘇生不実施)について

Q   日下部伸三   議員(自民

今年5月12日の産経新聞に、東京消防庁が年内にかかりつけ医らの指示によるDNAR「Do Not Attempt Resuscitation」というんですけれども、心肺蘇生不実施を導入する方針を固めたという記事がありました。これは高齢者本人やがん患者本人が自宅などで心肺停止に陥った場合、蘇生措置を受けずに最期を迎えたいと希望していたにもかかわらず、救急隊が蘇生措置を実施したようなケースが後を絶たないからであります。
大多数の日本人は、最期は自分の家で家族に見守られて静かに息を引き取りたいと思っており、病院で管をたくさんつながれて死にたいとは思っておりません。しかしながら、いつの頃からか日本人は自宅で死ねなくなってしまいました。
私は、埼玉医大総合医療センターの救命救急センターで計5年間勤務いたしましたが、懸命に救命治療して生き残ったものの植物状態となり、それを誰が見るかで家族の仲が悪くなるケースもありました。膨大な医療費を使って救命はしたものの、患者さんも、家族も、医療従事者も誰も幸せになっていないケースも少なくありませんでした。
脳外科諸氏から反論はあると思いますが、私の救急救命センター5年間の経験では、70歳以上で初診時の意識レベルがJapan Coma Scaleの3-100以上、少し専門的で申し訳ありませんが、分かりやすく言えばたたいてもつねっても起きない、そういう重症の脳内出血、脳梗塞では、摂食、排泄、移動が自立するところまで回復した例は1例もございませんでした。人間も生物である以上、死は避けられません。その日は例外なく訪れます。
私は先のデータを平成6年の第22回救急医学会総会で発表した後、一撃で呼吸停止を来すような重症の脳卒中は、神が人間に与えてくれた苦しまずに死ねるいい死に方かなと考えるようになり、救急救命センターを退職いたしました。80歳以上の重症脳卒中や末期がん患者に救急隊が心肺蘇生処置を施して病院に搬送してくることは、救急救命センターの医師からすれば医療費の無駄であるばかりでなく、本当に救命すべき患者さんのベッドをふさいでしまう、あるいは本当に必要な患者さんのところへ救急隊の到着が遅れるなど、むしろマイナスの面が多いと考えます。
そこで、質問いたします。救急隊の出動件数が年々増加し、75歳以上の搬送者が急増している現状を考えると、埼玉県でもDNAR(心肺蘇生不実施)を導入すべきと考えますが、危機管理防災部長の見解を伺います。
また、DNARの導入に関しては、患者本人とその家族に事前の意思表示の必要性を浸透させるとともに、それをかかりつけ医に伝えておくことが必要になります。私の病院では、私がかかりつけ医になっている患者さんについては、電子カルテの1面に「不必要な延命措置希望せず。副院長日下部」と目立つようにメモ書きしておりますが、今後、県としてどう取り組んでいくのか、保健医療部長に伺います。

A   森尾博之   危機管理防災部長

現在、県内の8割以上の消防本部が、救急現場において傷病者本人が心肺蘇生を望んでいないことを家族などから伝えられた事案を経験しております。
傷病者が心肺蘇生を望んでいないにもかかわらず救急を要請した理由は、突然のことで家族の気が動転してしまった、介護施設内での情報共有が十分でなかった、死亡を確認するために掛かりつけの医療機関に搬送して欲しかったなど様々であると聞いております。
一方で、救急隊員は救命処置を行いながら、迅速に医療機関へ搬送する責務を負っております。
一分一秒を争う救急現場で心肺の蘇生を望まない意思が示されますと、隊員は処置を継続すべきか判断に大変苦慮することになります。
そのため、例えば、埼玉西部消防局では消防、地元医師会、救命救急センターの医師などで構成する地域のメディカルコントロール協議会の承認を受けたDNARの手順書を運用しております。
この手順書では、心肺停止を確認したときは蘇生を開始することを基本とした上で、傷病者の意思が提示され主治医などの指示があれば心肺蘇生や搬送を中止できるように定めております。
運用を開始した平成29年12月から現在までの約1年半で救命処置の中止を求められた事例は38件あり、この手順書に沿った対応で特にトラブルは生じていないとのことでございます。
また、総務省消防庁では、この全国的な課題を検討するため救急医療関係者のほか法律や介護、福祉の有識者を交えたワーキンググループを平成30年度に設置いたしました。
今年度も実態を調査しながら、引き続き検討を進めるとしております。
県内における75歳以上の救急搬送者の割合は、全体の4割を超えておりまして、心肺蘇生を望まないケースも増えていくことが見込まれます。
救急現場におけるDNARは、家族の理解はもとより地域の医療関係者などとの連携の上に成り立つものでございます。
今後、国の検討状況や県内消防本部の意見を踏まえながら、県のメディカルコントロール協議会で丁寧に議論をしていきたいと考えております。

A   関本建二   保健医療部長

命の危険が迫った状態になると、約70%の方が医療やケアなどを自分で決めたり望みを人に伝えたりすることができなくなると言われております。
また、患者の意思は時間の経過や病状の進行に伴う心身の状態に応じて刻々と変化します。
もしもの時に患者本人が希望する医療を適切に受けられるようにするためには、自らの意思を事前にかかりつけ医や家族などと、その都度書き改められるような書面の形で共有しておくことが重要です。
こうした背景から平成30年3月に厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が改訂されました。
このガイドラインでは、患者や家族と医療従事者が、患者本人の望む医療やケアについて前もって考え、繰り返し話し合い共有する「アドバンス・ケア・プランニング」、いわゆるACPが重要とされております。
そこで県では、県医師会などに協力し、人生の最終段階において希望する医療やケアについて自ら考える機会や、本人が意思決定を表明できるような環境整備を進めているところです。
昨年度、県医師会は4組の家族の看取り体験を収録したDVDを作成し、県内の郡市医師会や市町村、地域包括支援センターなどの関係機関が行う研修などで幅広く活用されています。
今年度は、人生の最終段階を迎えた患者が自らの意思を表明できなくなった場合に備えて、本人が希望する医療を前もって表明しておく事前意思表明書の標準例を県医師会に協力して作成を進めております。
この事前意思表明書は、かかりつけ医が患者と今後起こりうる病状の変化などについて繰り返し話し合い、理解を深め、患者の意思を共有するための一つの手段として活用されることを想定しています。
また、患者がその時点での希望を自ら記載することが非常に重要です。
今後、県医師会と協力して医療従事者に対する研修会を開催し、実際の診療場面での活用を促してまいります。
こうしたACPの概念を広く普及していくことがDNARの拡大に結びつくものと考えております。

 

  • 上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
  • 氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。
  • Japan Coma Scaleの正しい表記は、「ローマ数字の3」-100です。 

お問い合わせ

議会事務局 政策調査課 広報担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4923

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