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掲載日:2023年12月12日

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土地分類調査報告書(秩父)

目次

序文

一昨年の石油危機を契機して経済社会の情勢は不安定のなかで大きな変化に遭遇し、いわゆるインフレ、不況と急激な進行を招いたそのなかで、地方自治体の財政は予想を超える厳しさに直面しております。しかしながら県は人間尊重、福祉優先の理念のもと、将来の県勢の望ましい姿を想定し県土の均衡ある整備を進めるために、各種計画を相互に補充調整しながら、計画的かつ効率な県土のりようをはかることとしております。
ご承知のように、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、地域の諸条件を配意して、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある発展を図ることを基本理念とした国土利用計画法が制定され、総合的かつ計画的な国土利用が図られるよう努力しております。
しかし適切な土地利用を図るために、地域の自然条件やその他の条件を密に調査し、十分実情を把握したうえで推進することが、何よりも大切であります。
この度関係者各位のご協力のもとに、土地分類基本調査を実施し、既刊の「鴻巣」図幅にひきつづいて「秩父」図幅が完成いたしました。この調査は、地域の地形、表層地質、土壌等の土地条件や土地利用上の規制因子となる利水条件、土地保全条件等土地の性質を調査集録したもので、今後の県土利用上極めて重要な基礎資料であります。自然の保全や回復を図りつつ真に人間性豊かな地域社会をつくるために、折角の調査資料を十分に活用されますよう希望するものであります。
なお本調査の実施にあたりまして、ご協力を賜りました、国土庁、東京都並びに本県の関係各位、また資料を提供していただいた関係機関に対し心から誠意を表する次第であります。

昭和51年1月

埼玉県企画財政部長松永緑郎

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まえがき

  1. 本調査の事業主体は埼玉県で、国土庁土地局国土調査課の指導と東京都の協力を得て、国土調査費補助金をもって実施した。
  2. 本調査の成果は、国土調査法施行令第2条第1項第4号の2の規定による土地分類基本図及び土地分類基本調査簿である。
  3. 調査の実施、成果の作成機関及び担当者は次のとおりである。
調査の実施、成果の作成機関及び担当者

調査項目

作成機関および担当者

  • 土地分類調査
  • 表層地質調査
  • 傾斜区分調査
  • 水系、谷密度調査

埼玉大学教育学部文部教官松丸国照

土壌調査

埼玉県農業試験場化学部長鈴木清司

〃主任研究員秋本俊夫

〃林業試験場造林保護部長野村静男

東京都農業試験場五日市分場長菊池盛太郎

〃造林研究室技師岩波基樹

利水現況調査

埼玉県農林部耕地計画課主任海野将

〃土木部河川課技師大郷雅仁

〃衛生部環境衛生課技師上杉幸子

東京都水道局水源林事務所計画所長山下進也

〃日原出張所長黒須晴一郎

〃〃技師嶋田勇

防災調査

埼玉県土木部河川課技師大郷雅仁

〃ダム砂防課技師南和美

東京都水道局水源林事務所計画課長山下進也

〃日原出張所長黒須晴一郎

〃〃技師嶋田勇

総括

埼玉県企画財政部土地対策課長小池甫

〃課長補佐山岸博

〃地籍調査係長武藤繁三郎

〃主任池谷清

東京都首都圏整備局企画部主査植竹英夫

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総論

1位置及び行政区画並びに面積

位置

「秩父」図幅は、関東平野の内陸部、埼玉県のほぼ南西に位置し、東京都の一部を包含する。
経緯度は東経139°00’~139°15’、北緯35°00’~36°00’の範囲であって図幅内の全面積は416.26平方キロメートルである。

行政区画

飯能市、秩父市、秩父郡横瀬村、小鹿野町、大滝村、荒川村、東秩父村、入間郡越生町、名栗村、比企郡都幾川村、東京都西多摩郡奥多摩町、青梅市の一部地域3市3町6村である。

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2人口

県の人口は昭和50年10月1日現在(国調)で482万人で、昭和45年(国調)以降5ヵ年間で24.7%の増加率を示している。
なお、本県の人口増加傾向は、従来の県中央南部集中型が変化し、外周部へ広がりつつあります。

第2表都心からのキロ圏別人口の動き

区分

30km未満

31から40km

41から50km

51から60km

61km以上

県計

人口

人口

人口

人口

人口

人口

昭和

千人

 

千人

 

千人

 

千人

 

千人

 

千人

 

35年

926

38

424

17

278

11

295

12

508

22

2,431

100

40年

1,338

44

547

18

306

10

307

10

517

18

3,015

124

45年

1,818

47

821

21

358

9

331

9

538

14

3,866

159

50年

2,486

52

923

19

522

11

321

7

569

11

4,821

198

※キロ圏別人口は圏内の市役所、町村役場の所在地により区分、その市町村の総人口とした。

61Km以上が本図幅の中心圏域である。

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3地域の特性

1自然的条件

(1)地勢

この地域の地形は、楕円状をした秩父盆地の南東に位置する山間地である。
比企、入間と秩父を陵線とした山頂から北西に向かって浦山川、横瀬川が荒川に合流し、南東に入間川の上流、その支流の高麗川が流れている。又多摩川支流日原川が南東に向かって流れている。
周囲は県立長瀞、武甲、奥武蔵、上武各自然公園、秩父、多摩国立公園等、美しい自然公園がつづき風光明眉な地域である。

(2)気象

本県の気候はいわるゆ表日本式で、冬は乾燥して晴天が多く、日中北西季節風が強く吹き、夜から朝にかけての冷えこみが厳しい。夏は南東の季節風は弱く、日中の最高気温はかなり高くなりむし暑く夕方雷雨が多い。
平野部では9月にもっとも雨が多く、(山地では雷雨のため8月に最も多い。)年降雨量は1,400mmくらいである。気温は平野部で14℃(年平均)くらいで山地では海抜100mにつき0.5℃ずつ低くなっている。

第3表気象記録(昭和46年)

月別

区別

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

平均

月別最高気温

9.2

10.5

13.2

18.6

23.2

25.9

30.7

31.8

24.9

19.4

16.8

12.3

19.7

月別最低気温

△1.8

△1.0

1.1

7.3

12.5

17.4

22.0

22.4

17.5

10.8

5.5

0.0

9.5

月別平均気温

3.0

4.0

6.7

12.3

17.1

21.0

25.6

26.2

20.5

14.4

10.3

5.4

13.9

月別降水量

16

23

39

96

70

101

158

329

207

133

15

22

mm
1209

※観測地熊谷資料熊谷地方気象台

(3)気象災害

本県の気象災害は夏を中心に発生し、10月から3月までは非常に少なくなっている。発生する度数の最も多いのは雷雨によるもので、全災害の半数に近い。そのうち半数くらいは降ひようを伴っての災害である。しかし災害高からいえば台風による風水害が全災害の80%くらいをしめることになる。本県では凍霜害も重要な災害となっている。

第4表気象災害回数(JPG:64KB)

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2社会経済条件

(1)道路

図幅には東京方面より国道、299号、熊谷より140号が走っており、それらを結ぶ県道林道が縦横に走っている。将来は関越高速道の完成及び140号の整備と甲府方面への延長によって首都圏の放射、環状線としてのネットワークへの参入をはたす。

(2)鉄道

図幅内の鉄道は、東京池袋より西部鉄道が44年に乗入れをおこない、熊谷方面からは、秩父鉄道がアプローチされており、両鉄道の輸送力の増強がみこまれている。

第2図道路鉄道(JPG:74KB)

(3)就業人口

県内の産業別就業人口の比率は、県南地域の住宅地化、工場化の影響を強く受けて、農業従事者が減少したことが要因となり、第1次産業人口率が低下して第2次及び第3次産業の伸展が著しい、この地域においても除々ではあるが同様の傾向を示している。
市町村の産業別就業人口の構成は第5図のとおりであるが、第1次産業の人口率が高いのは鉄道によらない交通機関に依存している町村部であり、鉄道沿線の市町村では、第2次産業の伸長が目立ち、これと並行的に配置される第3次産業人口の比率も高まっている。

第5表産業別就業人口構成(15才以上)(JPG:178KB)

(4)土地利用

土地利用形態は、山林、農耕地、住宅地、その他で、全面積に対し占める割合は山林が74%とその大半を占め、農耕地19%、住宅5%、その他2%となって、主として林業の占める位置が大きい。

第5表土地現況面積(JPG:100KB)

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4主要産業

1農業

土地利用等からみて生産基盤が劣弱であり、労働、土地生産性ともに低く、専業農家や農業従事者は年々減少し、農家経済の農外所得への依存度は依然として高い。基幹作目は、畜産、養蚕、工芸作物(こんにゃく、茶)、食用茸等であるが、その経営規模は零細で主産地形成も進行せず、今後経営の協業化や観光農業の促進を図り、山間地農業の零細性からの脱皮を目指すべきであろう。
今後、豊かな山村社会建設のため、未利用または低地用林野の活用、土地基盤の整備経営近代化施設の充実、農地保有の合理化等農業における構造改善を推進するとともに、林道の開設、改良、人工林への転換特殊林産物の栽培等をすすめ林業経営の近代化をはかる必要がある。

2商業

商圏は首都圏にありながら、立地的特性から閉鎖的経済圏を形成してきたが、鉄道の延伸、モータリゼーションの発達により、都心圏との時間距離が短縮されて、直接都市化の波及効果を受け、次第に開放的になりつつある。

第3図商圏消費者構成図(JPG:77KB)

3工業

工業については、就業者数、事業所数ともに漸増しているが、従業者数の少ない零細事業所が全事業所の大半を示し、経営の近代化も遅れている。当圏域の伝統産業は織物工業、窯業、木材、木製品工業であるが、いずれも伸び悩み、近年電子精密機械工業が若干ながら立地して秩父地域の工業化に新しい路を切り開き始めた。また、当圏域に豊富な石灰石、鉄鋼石等の鉱業開発も有望である。

第7表工場の概要(JPG:95KB)

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5開発の現状と方向

首都東京の過密過大都市化の現象は、隣接する本県も強い影響を受けて、地域構造は年を追って地すべり的な変動を続けている。この変動は県南地域の市街化形成、それに伴う人口の激増、交通ネットワークの風躍的な拡大等によって、首都圏の生活圏域も年とともに、大きく膨張した。一方労働時間の短縮等による、余暇利用が一層望まれるようになって、その対策の一環として、秩父市を中心とした大規模レクリエーション都市を開発し、首都圏のレクリエーション活動を吸収して地域の発展を図る事を目的とした計画がなされている。

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各論

1地形分類図

「秩父」図幅地域は関東山地の東部および東縁部一帯を占める。本図幅では5万分の1地形図「秩父」を使用して(0.5平方キロメートル)の方眼をかけた切峯図面(第1図)を見ると、古・中生層の古期岩石からなる関東山地では横瀬川および高麗川の各上流のNW-SE方向を境に、地形が大局的に異なっている。つまり、南西半は西隣「三峯」図幅地域の雲取山(2018m)から東方へ高度を漸次減じた山地が広がり、一方、北東半は「寄居」図幅内の大霧山(766.6m)、堂平山(875.8m)から南方へ高度を漸次減じて本地域に続く山地からなる。両者山地の境界は地形区分図で見るように必ずしも明瞭ではないが、秩父盆地の基底裂線と考えられる森川(1968)の観音山一巴川構造線の方向にほど一致することを考察すれば、深部裂線の地質構造によることが推察されるかもしれない。後述するように、表層地質図では、上述の古傷の構造は顕著に表現されない。
図幅内の最高所は西谷山(1718.3m)で、起伏量は400m以上のため急峻である。1000mを越える山は武川岳(1051.7m)、有間山(1210.8m)の南北方向を境に、その西半にあって、東半には存在しない。また、400m以上の起伏量は起伏量図(第1図)で見るように、入間川(上流は名栗川と別称)の西半に多く、東半は堂平山南麓丸山南麓、飯盛峠西麓、伊豆ヶ岳東麓に小分布が点在するほかは起伏量200~400m区間の中起伏山地が大半である。
一方、秩父盆地は関東山地の東部にあって、特徴的な方形をした盆地である。この盆地は図幅地域にも、その南西半が含まれている。秩父盆地は周囲の古・中生層とは東、北、南を明瞭な断層崖で、また、西は不整合で区画された矩形の断層盆地となり、第3紀層(海成層)からなる。秩父盆地内は荒川、横瀬川およびその支流が貫流して盆地床平野をつくっている。盆地床基盤および堆積物は開析されている。そのため、現在は起伏に富む品しゆう(しなしゆう)山地、尾田蒔・仲居・鷺ノ巣・横瀬川各丘陵地、尾田蒔・羊山・秩父・横瀬川各段丘などから構成されている。しかし、盆地の概形は失われていない。丘陵地および段丘の分類境界線は粗粒~細粒の段丘砂礫層の分布域に置いてあるが、不明瞭な箇所も多く、山地および丘陵地の境界線も原岩の露出状況から判断して求められているが、やはり不明瞭な箇所も存在する。本図幅地域は山地、丘陵地、段丘には一般に火山灰質の“関東”ロームを載せている。
本図幅内の水系は秩父盆地を流れる主要河川の荒川が図幅の北西部にあって、南西より北東に流れ、横瀬川は盆地に入って、流路を今までの東西方向より直角に曲げて北流する。赤平川支流の長留川諸河川に沿う所では段丘の発達が良好である。
関東山地を流れる主要河川は埼玉県と東京都の境に位置する西谷山-天目山-蕎麦粒山-日向沢ノ峰-長尾丸山-棒ノ峯-黒山の山嶺を分水嶺とし、北半と南半とに分かれる。前者はさらに、日向沢ノ峰-有間山-大持山-武川岳-二子山の南北方向の山稜が存在するため西部と東部では水系が相違する。つまり、西部では西より安谷川、浦山川下流が北へ流れ、南北方向の山稜に近づくにつれ、浦山川上流、橋立川、生川の諸河川は南東より北西方向に流れる。一方、東部では、入間川、中藤川および高麗川の諸河川は北西より南東に流れる。また、入間川の支流の炭谷入川、有間川などは東流する。横瀬皮は姥神までは南北方向の断層先行谷により、北流し、直角に曲がって、芦ヶ久保-横瀬間は西流している。図幅の北東隅に位置する都幾川は変成岩地域にあって、北東へ流向する。
南半の東京都側においては、WNW-ESE方向の日原川はその支流が西より孫惣谷、小川谷、カロ一谷、倉沢谷、川乗谷とあって、いずれも南東および南流している。従って、関東山地の主要水系は水系・谷密度図に示されているように、NW-SE方向にあるが、これは主として、秩父古生層の岩相走向方向にあたり、南北方向の河谷は主として断層線谷に従属するものが含まれていることが特徴である。
本図幅は地形特性から分類単位を集合統一し、その地形性質によって地域性を示す上で後述の地形区を設定し、各名称を記した。大地形区分としては関東山地と秩父盆地に2大別できる。前者は地殻変動に伴う隆起部であり、交差は沈降部であると言える。大地形区分の内部は、局地的性質、例えば地質、侵食営力などの関連要素によって区分される。関東山地では8つの山地形区に分類される。とりわけ正丸山地(Id)-伊豆ヶ岳山地(Ie)-および武甲山地(Ic)―棒ノ峯山地(Ig)間には入間川に沿う正丸峠-名栗構造線があるため、かなり明瞭であるが、他は山嶺および水系の発達状況の上から区別される。境界線は必ずしも明瞭ではない。分類は下記の如くである。

  1. 関東山地
    • 1a大霧山地
    • 1b堂平山地
    • 1c武甲山地
    • 1d正丸山地
    • 1e伊豆ヶ岳山地
    • 1f雲取山地
    • 1g棒ノ嶺山地
    • 1h鷹巣山地
  2. 秩父盆地
    • 21a品しゅう(しなしゅう)山地
    • 22a尾田蒔丘陵
    • 22b仲居丘陵
    • 22c鷺ノ巣丘陵
    • 22d横瀬川丘陵
    • 23a赤平川段丘および対比面
    • 23b尾田蒔段丘および対比面
    • 23c羊山段丘および対比面
    • 23d秩父段丘
    • 23e横瀬川段丘

第1図切峯面図(上図)および起伏量図(下図)(JPG:310KB)

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1関東山地

1a大霧山地

「寄居」図幅の大霧山地の南方にあたり、本図幅では西は横瀬川の南北方面の縦谷、南は同河川の東西方向の横呑部によって境され、東は都幾川の支流により堂平山地と分断されている。即ち、この山地は北より釜伏峠-登谷山-二本木峠-粥新田峠-大霧山-定峯峠-白石峠の山系からなる。藤本(1933)の刈米-黒山線は東方延長は不明瞭であるが、丸山の南を東西に走り、これを境に北は三波川変成岩の緑色および黒色片岩からなり、蛇紋岩などの緑色変成岩などをともなう。南は秩父古生層の主として、チャート、輝緑凝灰岩が分布する。

1b堂平山地

本図幅の北東隅の山地であり、「寄居」図幅の堂平山地の南方延長にあたる。西は大霧山地に接し、南は都幾川によって分断される。この山地の水系は北より観音山-笠山-堂平山-白石峠である。七重の山麓斜面は地上り性匍行があり、古生層の砕屑物質からなる。その上位にロームが載る。七重川上流では堂平山に発達する青色および赤色系nチャートが分布し、その南に緑色片岩が分布する。両者の接触は露頭不良のため不明な箇所が多いが、N75°Wの走向、北に20°と低角度の断層面が一ヶ所存在する。しかし、接触部の断層粘土は僅か数10cmであるが、堂平山自体がクリッペであるか否かの判定には十分興味深い事実である。山地南端は都幾川による谷底平野が存在し、同平野および山麓緩斜面沿いには集落が立地している。

1c武甲山地

東側は入間川によって境され、西は浦山川、南は有間川、北は秩父盆地に接し、断層で絶たれる。武甲山(1336.1m)の主稜はほぼ南北に長くL字状で、南北に小持山、大持山、蕨山、有間山そして、東方へ金毘羅山が続く。一般に山頂は鋭~鈍頂まであって、山腹斜面は西は急であるが、東はゆるやかである。古生層からなり、とりわけ武甲山は全山石灰岩からなるため、秩父セメント、日本セメントなどが地下資源として石灰岩を採掘している。武甲山南方の白岩および湯の沢の西でも石灰岩の採掘が行われている。

1d正丸山地

本地形区は北は堂平、大霧山地と西は武甲山地、南は伊豆ヶ岳山地と接し、東は隣「川越」、「熊谷」各図幅を含む飯盛・弓立山地に属して、その西部を占めている。古生層からなり、山地の傾斜は20°~30°が多い。高麗川、氷川沿いの山麓斜面は15°~20°と緩斜面である。

1e伊豆ヶ岳山地

北と南は高麗川および入間川で区画され、西は武甲山地と接する。チャートからなる伊豆ヶ岳(851.4m)の山頂は鋭頂であり、周助山北麓および吾野の石灰岩採掘斜面は30°~40°と急斜面である。大局的には前項の山地と同様、古生層山地としては谷線に接して山麓緩斜面を拡げている。本山地は南北系、NW-SE系およびNE-SW系の諸断層が多数発達し、ブロック運動しているため、活動地に伴う崩壊化が進んでいる。これは傾斜区分で見ると、かなり多くのランク区間が相対応している。

1f雲取山地

北は秩父盆地と日野断層で接し、東は武甲山地、棒ノ嶺山地と、南は鷹巣山地とそれぞれ接する山地である。主山稜は西隣「三峯」図幅中の雲取山(2018m)から北東へ白岩山、長沢山、滝谷の峰、そして酉谷山(1718.3m)に、また、ここで「三峯」図幅中の熊倉山(1427m)からの尾根と合流し、南東へ天目山(1576m)、蕎麦粒山(1472.9m)、長尾丸山(958.4m)、棒ノ嶺(969m)、黒山(842.3m)と伸びる。この北西より南東方向の山系沿いには三峯-雷電山構造線が存在し、大局的に南半は30°~40°傾斜および局所的に40°以上の急傾斜面が発達する。北半は矢岳(1357.9m)の山稜から主として西側山麓は30°~40°の急傾斜となるが、東側では20°~30°の傾斜面の方が30°~40°の傾斜面より多くなる。

1g棒の嶺山地

北側は武甲山地、伊豆ヶ岳山地と、西は雲取山地とそれぞれ接し、本地域の南東隅を占める。三峯-雷電山構造線の南半は30°~40°の急傾斜面からなるが、北半は入間川に向かって漸次20°~30°、15°~20°、8°~15°の各ランクに下向し、緩斜面になる。古生層からなり、主として西側はチャート、東側は硬砂岩と粘板岩との互層からなる。

1h鷹巣山地

本山地は図幅の南西隅に位置し、南隣「五日市」図幅n鷹巣山(736.6m)の北側山麓にあたる。八丁山(1280m)の西側山麓、および日原川沿いには局所的に40°以上の急斜面があって、全体として30°~40°ときつい斜面が発達する。古生層からなり、西側は硬砂岩と粘板岩との互層、東側は石灰岩と上述の互層とからなる。

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2秩父盆地

21a品しゅう(しなしゅう)山地

秩父盆地にあって、西隣「三峯」図幅中に南北に伸びた品しゆう(しなしゆう)山(639m)の東側山麓が本図幅の西端に接続する。第三紀の砂岩・礫岩層からなり、秩父盆地形成初期の侵食から回避された残丘的存在山地である。

22a尾田蒔丘陵

本地域の北西隅に位置するが秩父盆地の中央部にあって、荒川および赤平川に囲まれた部分の丘陵地。丘陵の最高所は440mで、東に向かって稜線高度を漸次低下し、北東縁で260mとなる。新第三紀の砂岩、礫岩、泥岩およびそれらの互層からなる。丘陵の頂部は尾田蒔段丘と呼ばれ、基盤の新第三紀層を切って段丘礫層、ローム層がのる平坦面である。丘陵斜面は第三紀層の一般傾斜に平行した斜面が随所に見られるケスタ状地形となる。本丘陵地の柴原では鉱原が湧出するため、地下深所には観音山-巴川構造線の裂線が当地をNW-SE方向に切って存在すると考察されている。

22b仲居丘陵

尾田蒔丘陵地がさらに赤平川の支流長留川によって解析された赤平川段丘面との間にある中間的丘陵地。一般に15°~20°の緩斜面の山麓として発達する。新第三紀の泥岩、礫岩、泥岩と砂岩との互層が発達する。

22c鷺ノ巣丘陵
尾田蒔丘陵の南麓で荒川旧流路跡の秩父段丘との間に発達する丘陵地で、東西方向に伸び、15°~20°の緩斜面を持つ。新第三紀の礫岩、砂岩、泥岩およびそれらの互層が発達する。

22d横瀬川丘陵

東の大霧山地、南の武甲山地のそれぞれ西方、北方の前面にあって、横瀬川段丘面および秩父段丘面との中間的地形を示す丘陵地である。荒川と横瀬川との盆地内分水嶺をなす羊山段丘面を載せた羊山丘陵地も大局的には本丘陵地に属する。新第三紀の砂岩、砂岩と泥岩との互層および礫岩からなる。

23a赤平川段丘および対比面

長留川の河岸段丘面であって、井森、駒沢に対比面が存在する。段丘上には集落、主要道、耕地が位置し、冲積面より比高数mの面である。5~10cm径の亜角礫、亜円礫の段丘礫からなる。

23b尾田蒔段丘および対比面

秩父の長尾根と通称され、前項尾田蒔丘陵の山頂平坦面であって、高度440~260mと北東に向かって下降する。荒川の扇状地性氾濫原の砂礫堆積物およびその上位に褐色のロームがあって、これは多摩ロームに対比され、八ヶ岳火山起源のものとされる。この面は秩父盆地中、最上位の段丘面であり、対比面は井森の北、標高325m地点に発達している。

23c羊山段丘および対比面

秩父市街地の東方、聖地公園の載る羊山丘陵、前項の横瀬川丘陵地の平坦面を指す。この面は尾田蒔段丘面より一段低い面で、秩父市街地の秩父段丘面より50mの比高を持つ。表層に褐色ローム層が2~5mほどあり、白色浮石層を扶在。この下位に10~12m径の円礫、亜円礫の段丘砂礫層が発達する。対比面は井森、安立、平仁田に散在している。

23d秩父段丘

一般には秩父市街地の載る段丘面であるが、秩父盆地は盆地床が開析期に入っている開析盆地のために、荒川および支流、また、他の河川が深く陥入し、階段状段丘地形を呈す。従って、地表の微起伏が明確である。現荒川河床より比高20~40mの面、市街地のように比高60mの面とが中でも特徴的な段丘面である。表層の腐植泥層の下位に1~3mの厚さで5~10cm径の亜円礫段丘砂礫堆積物が発達する。

23e横瀬川段丘

この地形区は羊山段丘の東にあたり、秩父盆地の南東隅に位置する。秩父盆地東縁を流れる横瀬川によって浅く陥入を受けた段丘面を指す。この段丘は前項の秩父段丘のうち、秩父市街地のある段丘面に対比される。兎沢には淡水珪藻植物化石、炭化物および鞘翅類などが産出する湖成起源の泥炭層が存在する。これは横瀬川段丘の一堆積物である。炭化物のC14法放射性年代測定によれば、立川ローム層堆積時に対比される。

(埼玉大学松丸国照)

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2表層地質図

本調査地域は関東山地と秩父盆地とでは地質区が異なる。前者は秩父古生層および東京都下、小川谷に発達する鳥ノ巣統の中生層とからなる。秩父古生層は一般走向がNW-SE系であり、同方向に褶曲軸を持つが、全体としては北傾斜の岩体である。地質時代は紡鐘虫化石層位学的見地からPseudoschwagerinaAcervoschwagerina亜帯からYabeinaglobosa-Lepidolinamultiseptata帯まで存在するため、二畳紀前紀より、後期前半までを指示できる。関東山地の地質構造論から見ると、本地域の秩父古生層は南帯に属し、この帯に主要な断層および大規模な構造線が存在する。つまり、NW-SE方向には、三峯-雷電山構造線、埼玉県と東京都との境界付近に発達し、山中-名郷断層もこの方向に属す。またNS方向には西より出牛-黒谷構造線の南方延長にあたる根古屋-広河原断層(新称)、栃谷-苅米断層、象が鼻-朝日根構造線の南方延長にあたる朝日根-芦ヶ久保新層(新称)と正丸峠-名栗構造線(新称、森川、1968の刈場坂断層と同方向で、一部報復するようである)、および高山-原市場断層(新称)がそれぞれ発達する。これらの諸断層、構造線によって、本地域の秩父古正層は水平移動およびアップ・ダウンの昇降ブロック運動をおこしている。とりわけ、正丸峠-名栗線と高山-原市場断層間のブロックにおいて著しく、前者沿いには石炭紀を示すFusulinella層が入る石灰岩礫をとりこんでいる。また、このブロック内に久通-芳延断層がWNW-SES方向にあって、北側小ブロックは相対的に上昇し、南側小ブロックは下降している。
一方、秩父盆地は主として新第三紀層が発達する。とりわけ、新第三紀層は横瀬の字根の上横瀬層から、中新世示準化石のLepidocyclona(Nephrolepina)japonica,L.(N)angulosa,Miogypsinakotoi,M.nipponicaが産出する。本地域の西隣「三峯」の小森川の宮戸層からも同様の化石が産出することから、本地域の新第三紀層は中新世の地層である。
本地域の地質系統表は第1表のとおりで、大半が秩父古生層からなる。埼玉県側の秩父古生層の基本層位の概念として代表的な柱状図を掲げた。しかし、詳細な地質調査は現在も続行中で、将来公表するが、不明な箇所も存在する。例えば、武甲山石灰岩の地質時代、有間谷、天目山のチャートや砂岩層の地質時代などである。本調査では、武甲山北麓の日和田のAcervoschwagerinaendoi,Pseudofusulnavulgarisなど、および寺沢のPs-eudofusulina,Staffela,およびNankinellaなどが安谷川にも追跡されることから、二畳紀前半の岩相として取扱っておく。本地域の秩父古生層の調査で、第1表の龍ヶ谷層から、Yabeinaglobosa,NeoschwagerinamargaritaeColaniadoubillei(第1図)などが発見された。これは埼玉県内の紡鐘虫化石層位学上、上位岩相を示すもので重要である。

1未固結堆積物

本地域に分布する未固結堆積物は山地では山頂、山腹の平坦面にロームが、山麓には岩石の二次的砕屑物などがある。段丘面に砂礫堆積物が発達する。

1-1砂礫・泥堆積物

本地域の荒川、長留川、横瀬川などの現河川、および旧流路跡の河道ないし氾濫原といった低位段丘面扇状地の河床堆積物である。荒川の現河床と秩父市街地の段丘面との比高は60mあるが、いずれもローム層を被っていない。一般に泥質混じり砂礫からなり、礫は角礫、亜角礫、円礫などで分級不良。礫径は5~10cmが多く、60~70m大もある。礫種は古生層のチャート、硬砂岩、粘板岩が多く、その他、花崗岩質礫もある。この堆積物は秩父市街地下で1~3mの厚さを持つ。

2半固結-固結堆積物

2-1礫

尾田蒔および羊山段丘および対比面に発達し、扇状地性氾濫原堆積物と推定されている。礫層は20~40mと厚くなる所があり、その上に火山灰質ローム層を載せている。礫径10~70cm大の角礫、亜角礫が多く分級不良である。顕著な発達層では1m大の礫も含まれ、部分的に砂層や褐鉄鉱の薄い層を扶在することがある。礫径はチャート、砂岩、粘板岩が多く、花崗岩質の礫もある。

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3固結堆積物

3-1礫岩

秩父盆地の新第三紀層中にあって、桜井、奈倉、鷺巣各地層は基底礫岩として良く発達する。とりわけ、鷺巣層基底の柴原礫岩部層は顕著で、図幅の北西隅にほぼ南北方向に発達している。荒川橋上流では礫岩と泥岩の互層の砂岩チャート、粘板岩、輝緑凝灰岩および起源不明の花崗岩質の礫からなる。また、平仁田層は礫岩と泥岩の互層主体となり、上横瀬層の上部は苅米礫岩部層が発達している。この部層は層厚が変なするが200m以上である。小礫から中礫が多く、古生層のチャート、粘板岩、石灰岩などからなり、充塡物は暗灰色泥岩となる。炭質物と炭化木の破片を扶在している。

3-2砂岩

秩父盆地の新第三紀層中にあって、桜井、奈倉、鷺巣、上横瀬各地層にある。一般に粗粒で青灰色ときに赤褐色である。硬さは古生層や中生層のそれに比較して低く、層理は見られないのが多く、塊状である。釜ノ沢の鷺巣層中の砂岩からは貝化石Spisula,Dosinia,Cardiumなどが産出する。

3-3砂岩・泥岩互層

秩父盆地の新第三紀層では、桜井、奈倉、鷺巣、平仁田、上横瀬各地層にあって、砂岩と泥岩が互いに10~15cm、ときに20cm厚の規則正しいリズミック互層が発達する。砂岩は青灰色、硬質で、風化面では泥岩より突出し、泥岩は暗灰色でもろく崩れ、風化面では凹む。泥岩中に玉ねぎ状構造が発達する他、互層中に層内褶曲も発達する。上横瀬層では字根の泥岩から中新世示準化石の大型有孔虫が多産する。

3-4泥岩

秩父盆地内での特徴的な泥岩は奈倉、鷺巣、平仁田、上横瀬各地層にあって、暗灰色、風化して褐灰色を呈する。鷺巣、平仁田各地層の厚い泥岩では無層理であるが、1cm~20cm大の団塊を含み、この中に有孔虫、貝殻、魚のうろこ、さめの歯などを産出する。

3-5硬砂岩・砂岩

秩父古生層および小川谷の鳥ノ巣統中生層中にある硬砂岩および硬質砂岩は石英が大半を占め、それに各種の岩石小破片からなる。非常に固結し、硬い、また、灰色~灰緑色を呈し、層理のない塊状岩が多い。粘板岩およびチャートと互層をなすこともある。安谷川および浦山川上流および有間山付近に顕著に分布する。

3-6粘板岩・千枚岩

秩父古生層および小川谷の中生層にある細粒堆積岩源のもので固結度の高い粘板岩および粘板岩と結晶片岩の中間の変成度のものの千枚岩が発達している、層理を示すものが多いが中には塊状の粘板岩、レンズ状に取りこまれるものもある。また、硬砂岩と互層する場合が多い。チャート発達地域では珪質粘板岩となることがあって、白岩付近によく発達する。

3-7硬砂岩・粘板岩互層

秩父古生層には硬砂岩と粘板岩とが互層をする場合が多い。とりわけ東京都の奥多摩地域および入間川、中藤川沿いに顕著に発達する。互層の形式は硬砂岩が主体のときも、逆に粘板岩が主体のときもあって、層厚が不規則の場合が多いが、ときにリズミック互層になる場合もある。

3-8珪質岩

チャートが主なものであり、大半は化学成分がSiO290%以上、Al203+Fe203が19%未満、CaO+MgOが1%未満である。色は化学成分によって多少異なり、青、緑、暗灰、灰白、赤褐色と多い。チャート中にはマンガン鉱が胚胎しており、小川谷などではチョコレート色の炭酸マンガン、二酸化マンガンなど、嫁行した所は現在、廃坑になっている。一般に、チャートは硬質で風化に強いため、急峻な地形をつくる。無層理もあるが川乗谷の百尋の滝ではチャート特有の褶曲が顕著に発達。

3-9珪質岩・硬砂岩互層

秩父古生層および小川谷の中生層中に珪質岩と硬砂岩ときに粘板岩を扶在して互層を形成する。硬砂岩と粘板岩との互層が発達する中でチャート地域に漸移する箇所にとりわけ良く発達している。

3-10珪質岩・粘板岩互層

秩父古生層および小川谷の中生層に見られる互層で前項の互層と類似するが、粘板岩が硬砂岩より相対的に多く、それと珪質岩とが互層を形成する。チャート地域および粘板岩・千枚岩地域の接触部付近にとりわけ良く発達する。

3-11石灰岩

秩父古生層および小川谷の中生層にある。とりわけ古生層において、石灰岩は地質時代を決定できる紡鐘虫化石などを含むため重要である。石灰岩は武甲山および日原にはとりわけ顕著に発達するが化石は未発見。石灰岩は本地域各所にレンズ状に発達。色は灰色は多く、場所によって暗灰色を呈する。特殊な例として久通では輝緑凝灰岩中に灰色、暗灰色斑点状の石灰岩礫が混入している。また、正丸峠-名栗構造線に沿った所では河又の石灰岩のように石灰岩角礫岩となる。武甲山、白岩、湯の沢、吾野、日原などではセメント、石灰などの原料として石灰岩の採掘がおこなわれたりして、秩父山地では最も重要な地下資源である。しかし、そのために地形は変ぼうした。

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4火山性岩石

4-1ローム

ロームは関東山地および秩父盆地に点在する。とりわけ、盆地内の段丘面にはロームが良く発達する。
尾田蒔丘陵の通称長尾根の平坦面は尾田蒔段丘と呼ばれ、高度360~440m、荒川河床より180~220mの比高を持ち、この面は多摩面に対比され、10数mのローム層が堆積し、最も厚い部分では25mに達する。ローム層は褐色砂質土壌で、下層に風化の進んだ50~60cmの白色浮石層が存在する。また、重鉱物は角閃石が多い。それ故、ローム層の起源を八ヶ岳においている。羊山段丘は羊山丘陵の平坦面であり(地形分類では横瀬川丘陵として総称されている)、高度240~290m、荒川および横瀬川の河床より50mの比高があって多摩面より新しい面である。ローム層は表層に2~5mの褐色ローム層があって、中に白色浮石層を扶在する。その下位に10~12mの亜円礫、円礫からなる段丘砂礫そうが堆積している。

4-2輝緑凝灰岩

秩父古生層中にあって、一般に濃緑色、暗赤色を呈し、火山灰、火山砂などが固結している。粗粒の凝灰岩層、集塊岩層、熔岩流などあり、層理の発達したものは割れやすく粘板岩状である。また、ズ図幅北東隅の氷川付近には準片岩などを呈しており、変成岩と区別しがたい。輝緑凝灰岩の地域は平坦な地形を示すことが多く、地形的にもその特徴が表れる。本地域では大局的に、山中-名郷断層以北に輝緑凝灰岩が顕著で、南半では発達は乏しい。

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5変成岩

5-1緑色片岩

緑色を呈し、主成分鉱物は緑泥石、緑簾石、曹長石であり、原岩石は主として秩父古生層の変質したものが多く、その他、塩基性火成岩、凝灰岩から変じたものまで含む。栃谷-苅米断層以東、西平付近にかけて東西に広く分布する。南は苅米-黒山断層で断たれるが舟の沢では不明。

5-2黒色片岩

本地域では小分布で、栃谷-苅米断層に接してその東側にある。主成分鉱物は石英、曹長石、石墨であり、一般に灰色黒色を呈し、多少金属光沢するものもある。

5-3石英片岩

西平の都幾川沿いの緑色片岩中に扶在している。多量の石英を含み、長石をともなう珪質の結晶片岩で、淡色で板状に割れやすくもろいが堅硬な岩石である。

第1表本図幅地域の地質系統表(JPG:152KB)

(埼玉大学松丸国照)

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3土壌図

1土壌の概要

本図幅はその大部分が山地である。北西部は第三紀層の丘陵地、段丘で「秩父盆地」である。山地は、さらにその大部分が、チャート、砂岩、硬砂岩、粘板岩、輝緑凝灰岩、石灰岩等の秩父古生層の岩種からなる晩壮年期地形の地域である。また、図幅北東部で、秩父盆地に接し長瀞系卸荷鉾式結晶片岩及び三波川式結晶片岩の分布している変成岩地域と、この変成岩上に「クリッペ」となって載っている堂平山の古生層地域が小面種出現している。山地土壌は、これら岩石の風化物を母材とし地形、気象、水湿状態森林の取扱い等のちかいにより、いくつかの異なった土壌に分類できる。
山地土壌のうち、結晶片岩母材のものは、地形が比較的なだらかであり、その緩斜面には風積性火山灰が保存されており、また基岩の風化物は埴質であり、適潤~やや乾性のものが出現し易い。古生層母材のものは、地形が急峻であり、海抜高も200m~1700mに及び、気象、地形、基岩の風化的性格から、角礫~半角礫に富んだ乾性~弱湿性の、歩行型或いは崩積型の褐色森土の分布が広く、古くからスギ、ヒノキの造林が行われ、隣接の「青梅林業地」とともに有名な「西川林業地」をつくっている。また、図幅西端の古生層山地で石灰岩、チャートの多いきわめて急峻な地域では、岩石地、岩屑地がところどころ存在し、崩積土の湿性褐色森林土は少ない。古生層山地でも、山頂あるいは比較的なだらかな傾斜の土壌はある程度火山灰の影響を受けており、また、ところにより平坦面に限って狭く黒色の火山灰が保存されており、これを母材にした土壌がある。
秩父盆地の大地及び丘陵地の林地土壌は、第三紀層の泥岩、砂岩等を基盤とし、第四紀の埴質、重粘土を母材とし、乾性~弱乾性の褐色森林土で、通気、透水性も良好でなく、一般に林地としては生産性の低い土壌で占められている。
耕地土壌は、山地、丘陵の谷底部とその周辺緩斜地、及び各段丘面上に集落と共に分布する。山地、土壌はおおむね残積または崩積土壌であり、局部的に風積火山灰土壌が存在する。一般に角礫、半角礫に豊み、壌質ないし粘質土壌である。母材の性質によっては強粘土壌となる。表土は所により強弱の差はあるが、火山灰の影響を受けている場合が多く、また下層は風化~半風化基岩、あるいは未風化岩盤となることがある。大部分が畑地である。段丘土壌は図幅中耕地土壌として最も広い面積を占めるが、段丘堆積物を母材とし、表土から腐植含量は少なく、細、小円礫半角礫の含量は高く、土性は壌~粘質である。下層ほど礫の含量は高く、粒径も大となり、しばしば礫土あるいは礫層が出現しおおむね畑地として利用されている。低地土壌としては、段丘の下位面に段丘堆積物を母材とした。礫質土壌、第三紀丘陵堆積物の影響の強い重粘な土壌があり、いずれも水田として利用されている。また、山地の谷底平野には河川堆積性の礫質土壌が帯状に分布し、畑及び水田となっている。
山地及び耕地の土地の土壌は、あわせて31の統に分類された。

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2土壌細説

(1)乾性褐色森林土壌

長瀞1統(Nt1)

長瀞系結晶片岩(緑色片岩類及び黒色変岩類)を母材にした乾性~弱乾性の残積土で、この図幅では、大霧山山地域の山頂部から斜面中腹一帯の乾燥し易い場所に生成発達する。黒色片岩類や緑色片岩類の風化生産物に由来し、後者の方が前者よりも土壌的にすぐれているがそのちがいは小さい。一般にAo層が発達し、A層への腐植の滲透は浅く、B層は埴質で固い。スギの造林には不適である。

大河原統(OK)

古生層のチャート、砂岩、輝緑凝灰岩、粘板岩等の風化物を母材とし、主として尾根筋にせまく線状に分母する乾性型の残積土であるが、凸型斜面の中腹の風衝地にも多くみられる。図幅中央部~西部で、弱ポドゾル化土壌や褐色森林土(暗色系)より標高の低い地域に分布が多い。一般にAo層が発達し易く、A層は粒状あるいは堅果状構造で乾燥し、B層にもこれらの構造の混在することもあり、A、B両層に菌糸を見出すことが多く、土層の色調は淡色である。スギの造林には不適である。

(2)褐色森林土壌

長瀞2統(Nt2)

Nt1統と同様結晶片岩類を母材としているが、Nt1統のように乾いた場所で生成されたものでなく、主として中腹の急斜面や山腹の緩斜面など、ほぼ中等度の水分環境下に生成された残積土である。Ao層はほとんど堆積することなく、暗褐色のA層は軟粒状や塊状構造が発達してやや深く、褐色のB層に漸変する。B層は塊状構造がやや発達するがほとんど壁状で堅い。スギヒノキに適する。

久須美統(Ks)

Ok統と同じように古生層岩石に由来する残積土及び一部の歩行土であるが、Okのように乾いた環境下に生成されたものでなく、稜線部でもあまり乾燥を受けない山頂緩斜面、山腹の緩急斜面など、ほぼ中庸の水分環境下に生成されたものである。暗褐色のA層は比較的深く、褐色のB層に漸変している。正丸山地、伊豆岳山地では、急斜地であるにもかかわらず比較的土層が深く、この土壌の分布がみられる。スギ、ヒノキの造林に適する。

定峯統(Sd)

Nt2t統と同様結晶片岩を母材とした適潤性の土壌であるが、これよりもやや乾燥傾向にある土壌である。林野土壌の{BD(d)}型土壌に相当する。Ao層のうち下層の発達がみられるほか、A層の腐植がうすく、堅果状構造がみられ、B層の堅密、腐植に乏しい。昔桑畑、畑地等に利用されたところもある。一般的にはスギ造林木の生育はあまり良好ではない。ヒノキの生育は良好である。

川浦統(Kw)

Ksと同様、古生層の岩石を母材とした適潤性の褐色森林土壌であるが、これよりもやや乾燥の影響の認められる土壌である。林野土壌の{BD(d)}型土壌に相当する。FまたはF-H層が堆積し、黒~暗褐色のA層はうるく、その下に堅果状または粒状構造が認められ、土層全体が堅く、腐植に乏しい。里山では薪炭林の短伐期をくりかえした結果、腐植に乏しく、A層の発達しない土壌もある。スギの生育はKs統等よりおちる。ヒノキの生育は良い。

内手統(U)

古生層山間谷あいの緩斜面(15°以下)n分布する残積あるいは崩積土壌である。腐植を欠き、全層壌質ないし粘質で、未、半風化の角礫を含み、下層50cm内外で角礫の砂礫層または岩盤となることがある。耕地の大半は桑園であるが、コンニャク、牧草地としても利用されている。

柴統(Sb)

古生層系各山地の山腹傾斜面から谷底地にかけて分布する残積あるいは崩積土壌である。表土は火山灰の混入を多少とも受けている所が多い。全層腐食を欠き、土性は壌質ないし粘質で、細粒ないし中粒の角礫を含む。下層では礫含量が高くなることもあるが、表土下1m間に礫層は存在せず、また酸化沈殿物の認められることからU統とは区別される。分布位置もやや下位である。利用型態はU統戸同様であるが、生産力はやや勝る。

(3)褐色森林土壌(暗色系)

天目山統(Te)

図幅南西部で、埼玉県と東京都に境界する海抜1400m以上の比較的安定した地形面の残積土を中心に分布する土壌である。土層は、黒褐色脂肪状のH層、またはH-A層の発達がみられ、A層は黒褐色、B層は暗褐色で、A層上部には団粒状構造がみられ、B層下部は壁状となっている。

(4)湿性褐色森林土壌

虎秀統(Ko)

古生層癌性の風化物を母材とする適潤性~弱湿性の土壌で、凹型急斜面や崖錐などにおける崩落堆積物や谷間の押し出し堆積物が母材となっている角~半角礫質の土壌である。土層が深く、腐植は深く、黒褐色ないし暗褐色のA層は軟粒状構造が発達し膨軟である。通気透水が良好で、養分、水分に富み、スギ造林木の成長は極めて良い。西川林業地地域は、この統の分布面積が広い。

日野沢3統(Hi3)

Ko統と同じく、古生層が岩石を風化母材とし、的潤性~湿性の水分環境下に生成された土壌で通気、透水良好で、養分、水分に富んだ土壌である。古生層母材の弱湿性褐色森林土壌のうち、図幅西武~西北部山地のものをこの統とした。高い標高のところにある弱湿性褐色森林土壌は、通常L層およびH層が発達し、H層の一部はH-A層の土地となり、褐色森林土壌よりも層が厚く、塊径も大きい。A層は腐植に富む暗色で、団粒あるいは塊状構造となり、B層は塊状あるいは無構造でよく腐植が混入している。層界が非常に漸変的で一ように暗色である。スギ、ヒノキの造林に適する。

長瀞3統(Nt3)

結晶片岩山地において凹型急斜面や崖錐などの崩落堆積物や谷間の押し出し堆積物などを母材とした角礫質の土壌である。中庸ないしやや湿りの環境下で生成されたもので、腐植の滲透が良く、暗褐色のA層が深く発達する。表層は軟粒構造が発達するが、下層は普通かべ状であまり堅くない。養分、水分に富み、スギ造林木の生長は良い。しかし、結晶片岩地域でこの図幅内この統の分布面積は狭少である。

(5)黒ボク土壌

城峯統(Jo)

山地の平坦地または緩斜面に保存されている火山灰を母材にした俗に「黒ノッペ」と呼ばれる土壌である。この図幅では、その北東部の開析のあまり進んでいない堂平山山地の、広い稜線斜面上に火山灰の分布が多い。また、壮年期山地でも山頂傾斜地、比較的巾の広い突出尾根の中腹~下部にも、面積的には狭少であるが、この土壌の分布がみられる。腐植にすこぶる富む黒色のA層が深く、褐色のB層との境界は明瞭である。表層に軟粒状構造が発達するが、平坦面ではとくに中~下層はカベ状である。また下層に旧表土(A’層)を有するものもある。この土壌の地域は古くから萱刈場として利用されていたが、明治になってスギ、ヒノキの造林が行われてきた。ヒノキの成長は良好である。

(6)淡色黒ボク土壌

宝登山統(Ho)

Jo統と同様に火山灰を母材とする土壌で、俗に「赤ノッペ」と呼ばれており、Jo統より標高の低い山腹および山麓の緩斜面や丘陵部に保存されている。A層は暗褐色であまり深くない。下層は軽くて柔らかい褐色ロームが深いがよくしまっている。急斜面では火山灰層が浅く、下部に基岩風化物に由来する土性の異なった土層の出現することが多い。Jo統と同様に腐朽浮石層や稀に基岩腐植含量は5%以下、普通畑として利用されている。

(7)乾性ポドゾル化土壌

雁坂統(Kr)

図幅西部の高所山地で、おおむね海抜1000m以上の山頂、凸斜面上部、突出した尾根すじ等乾燥の影響を受け易い場所に生成される。このような場所は、寒冷偏湿のため落葉の分解が悪く、Ao層が発達し、有機酸が生成され、ポドゾル化を受け易くなっている。本図幅では、集積層は認められるが溶脱層の認められるPD2型も小面積見出された。また、局部的には、この乾性ポドゾルあるいは暗色系の褐色森林土壌のあらわれる地域にも点在的に弱湿性褐色森林土(腐植型)もあらわれたところもあるが、山面積で図示しなかった。

岩石地(RL)

固い石灰岩あるいはチャートで、きわめて急峻な岩石血をつくっているところが少なくない。前者は武甲山、日原地域、後者は浦山地域等である。

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2-2丘陵地及び台地の土壌

(1)乾性褐色森林土壌

長尾根1統(No1)

第三紀層の泥岩、砂岩およびそれらの互層のものを母在とした残積土で、秩父盆地のいわゆる「長尾根」と呼ばれる丘陵や、盆地周縁部の第三紀層丘陵の頂部から中腹にかけて分布する。一般に表層は腐植に乏しく褐色ないし黄褐色を呈し、表層に堅い堅果状構造があり、下層はカベ状で堅くしまっている。礫の固結度は弱い。スギの造林には不適である。

尾田蒔a統(Oda)

秩父盆地の上位台地に見られる段丘堆積物を母材とする土壌である。上位段丘は、秩父市をはさみ西側が「尾田蒔段丘」、東側が「羊山段丘」で、荒川河床よりの比高は、尾田蒔段丘は200~180m、羊山段丘はこれより幾分低い。この統は、表層の重粘な粘土を母材としたもので、一般に腐植の浸透が浅く、暗赤褐色を呈し緻密であり、下層は灰黄褐色を呈する場合がある。最表層に火山灰の薄層を有するものもある。林地の生産力は高くない。

尾田蒔b統(Odb)

Oda統の母材となった粘土層が流されて露出した基底の円礫層や、段丘崖が崩れて現れた円礫層、あるいは台地斜面を更に歩行堆積した円礫などを母材にした土壌で、Oda統の周縁部の台地斜面に線状に僅かに分布する。未熟な円礫土で養分に乏しく、深さ1m以内に台地基盤の風化の進んだ第三紀層基岩の表れるものもある。

中井森統(Na)

段丘堆積物を母材としているが、Oda統とは異なり、表層から大~中円礫を含む埴土で、腐植に乏しく緻密である。中井森部落とその西方に僅かに分布するだけで他地区には対比できる堆積物はない。Oda統の母材よりも新しい下位の堆積物で規模も小さく薄い。深さ1m以内に基盤の第三紀層が表れることが多い。天然性のアカマツや広葉樹の育成は中庸である。

(2)褐色森林土壌

長尾根統(No2)

No1統と同じ丘陵地において、主として下面下部に歩行または崩落堆積した第三紀層泥岩、砂岩、礫岩等の岩石風化物を母材にして、中庸ないしやや湿りの環境下に生成されたものである。暗褐色を呈するA層はやや深く、軟粒状構造が発達しているが、下層は黄褐灰色を呈しカベ状である。地形のいりくんだ沢に沿って線上に発達しているので分布面積は狭少である。養分、水分にやや富むがスギの成長はあまり良くない。

蒔田統(Ma)

第三紀系丘陵地と上位段丘の接点付近から段丘にかけて分布する。本図幅では秩父段丘、横瀬川段丘に分布している。主に5~8°の傾斜地であり、表土は角礫、半角礫を多く含み、円礫は少なく、火山灰の影響のみられることもあるが、残積性の強い土壌である。土性は粘質のものが多い。下層は基岩の半風化、風化の礫層となり、母材は第三紀泥岩類が主となっている。桑畑が比較的多いが、普通畑としても利用されている。

厳田統(Id)

蒔田統と同様、第三系丘陵沿辺の段丘面に分布する。表土は細円礫を含み段丘堆積物母材の土壌で、壌質であるが、下層は一般に粘質な第三紀泥岩類風化物となり、角、半角礫を含む土壌となる。ところにより下層が岩盤となることろもある。傾斜面に存在するため水蝕に不安定であるが、大部分桑畑として利用されている。

和田統(Wa)

本図幅中耕地土壌としては最も広い面積分布する。主なものは荒川および横瀬川の河岸段丘にある。段丘堆積物を母材とした土壌で、腐植含量5%以下で、壌~粘質であるが、表土から、円、角、半角の礫含量が高く、下層70~80cmでおおむね礫土または礫層となる。桑畑及び普通畑として利用されているが、生産力は高くない。

東統(Azu)

主として赤平川沿いの段丘面に分布し、一部横瀬川段丘末端にみられる段丘堆積物を母材とした土壌である。壌粘質の土性をもち、表土の腐植含量も3%程度であるが下層は腐植を欠く、全層に未風化細小円礫を含むが、表層か1m間で礫層は存在しない点で、Wa統とは異なる。桑園普通畑として利用されており、生産力は中庸である。

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(3)褐色低地土壌

勅使河原統(Tg)

各名栗川の沿辺、都幾川支流の谷底平野に分布する。河川堆積土壌であり、表土は円礫を含み、腐植含量2%前後の壌質である。下層は未風化細小円礫に富む土壌となる。普通畑として利用されている。

釜の上統(Km)

赤平川段丘の川縁に、極く小面積出現する。現河川との比高は僅かで、河川堆積物土壌であるとみられる。表層は壌質土であるが、下層は砂質となる。全層に未風化の小中円礫を20~30含む礫質土壌である。桑園となっているが、耕地としては不良である。

(4)細粒灰色低地土壌

正永寺統(Sg)

赤平川段丘及び横瀬川段丘に小面積存在する水田土壌である。第三紀系丘陵堆積物の影響を強く受け、重粘で排水不良な土壌である。下層に黒褐色マンガン斑がみられるが、グラ層は出現しない。

宇根統(Un)

横瀬川段丘及び秩父段丘の下位面に分布する段丘堆積物を母材とする強粘質土壌である。火山灰の影響が認められ、燐酸吸収係数が若干大きい。全層腐植を欠き、表土は未風化小中円礫を含み、下層では礫質となることが多い。生産力は高くない。

(5)灰色低地土壌

長瀬統(Ng)

都幾川とその支流域に小面積分布する。Tg統と隣接し、断面形態も類似するが、水田利用のため水の影響を受け、土色は灰味を帯び酸化沈殿物が認められる。土性は壌質が主であり、礫含量は下層程高く、大円礫が含まれる場合もある。

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4傾斜区分図

本図幅において、大半を占める関東山地には大きな起伏変化が発達し、秩父盆地内は一般には差ほどの変かはない。しかし、例えば、水系・谷密度図に細かに表現されている尾田蒔丘陵では微細谷の成長が非常に進んでいるために、ここでは各傾斜パターン全体の傾きには、無関係に傾斜が高く表現されるだろう。そのため、傾斜の変化する境界は全体として、直径10mm(500m)の範囲で追跡し、微細谷発達地域では直径5mm(250m)の範囲で求めた。水系・谷密度図の結果でも明らかなように、現地形の状況に促すためには上記の範囲で求めるのが好ましい事から、この基準でオーバーレイを作成した。
この図幅のランクで見ると、中間勾配の20°~30°未満が圧倒的に広く、全体の56%近くを占める。次いで30°~40°未満、15°~20°未満の山地が広い。15°以下緩傾斜面は台地(段丘)の他、丘陵地、山頂の一部、山腹、山麓緩斜面などに見られる。一方、40°以上の急傾斜面は武甲山および飯盛山北側斜面、日原川および支流の小川谷、倉沢谷など、上昇地塊逆のぼるV字谷の谷壁沿い、天目山-酉谷山稜線の南側斜面、滝入の峯の東西側斜面、八丁山西側斜面などに分布する。
本地域における地形変化の一般的傾向は、切峯面図(第1図)から地形全体の起伏およびそれらの方向性が観察できる。これらは地史的背景の産物であるから、当然、表層地質図と照合すれば、主として関東山地の古・中生層地域はNW-SE方向の褶曲構造および岩相の走向方向、同方向の断層と南北性断層などの支配を受けているため、地質構造などが、切峯図面、水系・谷密度図にも反映されている。
傾斜区分図は上述のごとく各図で読み取れる資料との対比から特性が認められる。従って、傾斜区分図は一連の地形成長の過程で、大きくは地殻変動の影響と、局地的には表層地質の岩質素材の問題とから導き出されたものを刻明に反映している。
本地域の傾斜区分は大局的に三峯山-雷電山構造線を境界に南側ブロックと北側ブロックとが、また、正丸峠-名栗構造線の西側ブロックと東側ブロックがそれぞれ傾斜区分が異なる。前者は南側ブロックの方が急傾斜が多く、後者では西側ブロックの方がやはり急傾斜が多い。また、NW-SE系の復背斜構造が発達する小持山、蕨山、金毘羅山方向には急傾斜が発達している。都幾川などの変成岩地域では古・中生層地域に比べ、老年期地形であるため緩傾斜が多い。一方、秩父盆地内では古生層および変成岩地域と断層で接する所に変形地が存在するため、各ランクの傾斜区分がほぼ断層に平行して存在する。新第三紀層発達地域は正丸峠-名栗線の東側ブロックに類似した傾斜区分面が存在する。また、盆地内の第四紀層(砂礫層)発達地域は3°未満の平坦地形を呈している。

(埼玉大学松丸国照)

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5水系・谷密度図

「秩父」図幅内び水系は秩父盆地内のそれと、関東山地内のそれとではかなり相違している。前者においては、赤平川支流の長留川は新第三紀層の一般走向に平行し、北流する。荒川新第三紀層を切って傾斜方向に東流し、秩父市街地北西部では新第三紀層の一般走行にほぼ平行して北東へ流向する。横瀬川は、盆地内に入ると出牛-黒谷構造線に平行するように北流する。一方、後者においては、三波川変成岩地帯を流れる都幾川図幅の北東隅にあって、北東へ流向することを除けば、関東山地内の主要河川は殆どが、秩父古生層の一般走行であるNW-SE方向に規制されるか、地質構造のうち主要な南北方向の諸断層に規制されることが多い。高麗川、入間川の一部、日原川およびその支流、浦山川上流などはNW-SE系の方向に主として流れている。また横瀬川は姥神付近で、入間川は久林付近、浦山川は川俣付近、日原川の支流、小川谷では籠岩北方でそれぞれ直角方向に折れ曲がっているが、これらは構造線や断層および褶曲構造の支配によって形成されたふるい先行性谷の所が流路になっている為であろう。
作業規程によって算出した値を見ると、谷密度は地質の特性を反映したものであって、主として侵食営力の差が読み取れる。すなわち、秩父盆地では新第三紀海成層の砕屑岩からなるため秩父古生層より固結度が弱く、十分侵食が進んでいる。そのため、値は15~55と高い。とりわけ長留川およびその支流の侵食谷地域は目立つ。盆地内でも第四紀の砂礫台地(段丘)では逆に2~8と低いが、開析はまだ進んでいない為であろう。一方、関東山地の古生層地域(都下では鳥ノ巣統中生層を含むが)では、15~52の範囲まであって高い。とりわけ30付近が多い。これは古い先行性谷の存在、また、それを切る谷などがあって、関東山地は隆起地塊の故に複雑な谷が構成されていることによるだろう。これは水系図と表層地質図を照合すると、かなり良い相関関係が認められる。しかし、関東山地の変成岩地域は谷密度は貧弱であり、19~30の範囲内である。これは変成岩地域では水系の発達が不良であることによる。すなわち、この地域では東西方向に主要流路が存在し、分水嶺がそれにほぼ直交する南北性となっている。河川の支流はこの方向に発達している。全体として、変成岩地域の地形は老年期性の山地面であるため開析度は比較的小さい、などの理由に起因するだろう。
上述のように、本図幅内の水系および谷密度は、地域を構成している表層地質および、地質構造が大きな役割を果たしている。主要河川がこれらによって流れを規制され、長短の枝分かれが存在する。これらは谷密度の算定値に鋭敏に反映されてくる。本図幅では、主要河川と従谷との関係は秩父盆地と関東山地の各地域では逆の関係になって興味深い。つまり、秩父盆地内の主要河川と関東山地内の従谷との一般方向は一致する。逆に、秩父盆地内の従谷と関東山地内の主要河川の一般方向は一致する関係が見られる。これは盆地内の新第三紀層がNE-SWに一般走向を持つのに際し、関東山地内の古・中生層がNW-SEに一般走向を持つことに対処しているためであろう。もし、これが正しければ、水系は主として、地層の走向方向に平行するものが大きな因子になると思われる。

(埼玉大学松丸国照)

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6利水現況図

この地域は埼玉県内では、降雨量の多い地域で刈場坂日雨量306.0mm(昭和49年8月31日)、浦山日雨量330.0mm(昭和33年9月17日)秩父日雨量519.0mm(昭和21年9月15日)を記録した。
また人口増化による生活用水の不足、地盤沈下等による表流水への転換等、河川水の利用の増大をはかるため、荒川水系の改修計画は、上流ダム群と中流部調節池による洪水調節計画、利水計画をはかろうとするものである。
農業用水の利用は、図幅の西北を流れる荒川沿いに主たる地域をもつ以外、狭少な水田が谷間に耕作されている。横瀬川に主水源をもつ秩父用水土地改良区の地域については、都市化の進展で受益地域の減少が進行しているが、残存する農地への配水上、水量、水質の管理面から得に配慮が必要となっている。

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7防災図

この地域には、砂防指定地域を設定し、地すべり防止のために、砂防堰堤を各所に構築されている。その他相当数山腹防止の堰堤が構築されている。
洪水に対しては、ほとんどが山地河川であり昭和22年9月の台風以後は山地河川の破堤はんらんはほとんどみられない。

有間ダム

入間川支川有間川の入間郡名栗村大字下名栗地先に多目的ダムとして埼玉県が建設するものである。
ダムのタイプは、ロックフィルムダムで、高さ83m有効貯水容量725立方メートルで洪水調節、都市用水の供給、流水の正常な機能の維持をはかろうとするものである。

お問い合わせ

企画財政部 土地水政策課 総務・国土調査担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 本庁舎2階

ファックス:048-830-4725

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