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掲載日:2023年1月18日

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決算特別委員会視察報告

期日

 令和4年10月19日(水曜日)

調査先 

(1) 中川水循環センター(三郷市)
(2) 埼玉県立がんセンター(北足立郡伊奈町)

調査の概要

(1)中川水循環センター

(中川水循環センターの運営状況について)

【調査目的】

 県内の九つの水循環センターでは県の人口の75%に当たる約558万人分の下水の処理を行っている。
 下水の処理では多くの温室効果ガスが排出されており、これを削減する取組の一環として、令和3年11月1日から中川水循環センターで全国最大規模の「汚泥消化・バイオガス発電システム」の稼働が始まった。当システムは微生物によって汚泥を分解して減量し、その過程で生じたバイオガスを利用して発電を行うことで、温室効果ガスを年間約17,000トン削減できるとされており、発電した電力は民間に売却している。
 こうした取組により、令和4年9月に国土交通大臣賞「循環のみち下水道賞」のグランプリを受賞した。
 稼働開始から約1年経過した発電システムの状況と、電力の売却状況、事業の効果について視察する。

【調査内容】

 中川水循環センターにおける下水処理工程は、水処理施設の工程と汚泥処理施設の工程に大別される。市町の公共下水道からの汚水は、流域の幹線やポンプ施設を経由して同センターに流入して処理が行われる。
 流入した汚水は、まず「沈砂池」において、重い土砂類を沈めるとともに大きなゴミをスクリーンで除去する。次に、「最初沈殿池」で細かい汚泥を沈めて除去する。その次には水処理の中心的な役割を果たす施設である「反応タンク」において、空気を送り、活性汚泥(微生物)の働きにより汚れを分解する。次の「最終沈殿池」では、活性汚泥ときれいになった水を分離させる。分離した活性汚泥は反応タンクに返送され、そのうちの一部は後述の汚泥処理施設に送られて処理される。最後に、「消毒施設」において上澄みの水を次亜塩素酸ソーダにより消毒し、放流口から中川へ放流している。放流水の令和3年度の平均BODは1.1mg/Lであり、これは環境基準の5.0mg/Lよりも優れた水準である。
 同センターは、「汚泥消化・バイオガス発電事業」に取り組んでおり、下水処理の過程で生じる汚泥を活用してバイオガス発電を行っている。同センター内の汚泥消化施設は、容量9,000立方メートルの汚泥消化タンク4基、容量5,000立方メートルのガスタンク2基、汚泥消化棟1棟で構成されている。汚泥処理施設において濃縮された汚泥は、送泥管により消化タンクへ投入される。消化タンク内では、微生物の働きにより汚泥中の有害物質が分解され、バイオガスを発生させている。このバイオガスは脱硫塔で有害な硫化水素を除去した後、ガスタンクに貯留される。この貯留したバイオガスが汚泥の焼却や民間発電事業者の発電に利用されている。この事業によって年間約17,000トンの温室効果ガスを削減できる計算であり、これは一般家庭約4,200世帯分に相当する。
 概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で、「事業収益の中でバイオガスの売上げはどの程度か」との質問に対し、「令和3年度の売上げは、事業が開始した令和3年11月からの5か月間でおよそ1億3,000万円である」との回答があった。ほかにも、汚泥消化の過程で余ったバイオガスの量やその処理状況について質問がなされた。
 概要説明や施設見学を通じて、中川水循環センターの運営状況について理解を深めることができ、決算審査の参考となった。

視察の画像

中川水循環センターにて

(2)埼玉県立がんセンター

埼玉県立がんセンターの運営状況について)

【調査目的】

 埼玉県立がんセンターは、「都道府県がん診療連携拠点病院」として本県のがん診療をリードするとともに、地域の医療機関と連携して県全体のがん診療の向上を目指している。がん治療の中心となる手術・放射線・薬物療法については最新の技術・機器・薬剤を積極的に取り入れ、患者のニーズに応える体制を整えている。
 また、令和元年には全国34か所のゲノム医療拠点病院の指定を受け、周辺医療機関と連携して本県のゲノム医療の推進に努めているほか、併設の臨床腫瘍研究所では発がん機構の解明によりがんの予防・治療につながる研究を行っている。
 令和3年4月に地方独立行政法人埼玉県立病院機構が設立され、その運営費負担金として令和3年度は予算額として155億660万5千円、令和4年度は予算額として153億1,527万1千円が病院機構に支出されている。地方独立行政法人化したことにより、病院の運営状況がどのように変化したか視察する。

【調査内容】

 今回の視察は、がんセンターが行っている新型コロナウイルス感染症対策に従い、オンラインで実施した。
 同センターの説明に先立ち、地方独立行政法人埼玉県立病院機構から県立病院の地方独立行政法人化後の取組と、令和3年度決算及び事業実績について説明を受けた。実績については、令和2年度に新型コロナウイルス感染症の影響でやや落ち込んだ外来収益が令和3年度についてはコロナ禍前の水準まで回復し、医業収益としても感染拡大前の水準を確保できたとの説明があった。
 同センターは、「唯惜命」の理念を基に、「患者さん中心のチーム医療」「高度・先進的な医療」「地域医療連携の推進」「職員の教育・育成と質の向上」「診察情報等の適正管理」「患者と職員が宝物」の六つの基本方針を掲げ、「先進的ながん医療を実践する、進化する病院」「日本一患者と家族にやさしい病院」を目指している。
 同センターは、令和4年度に地域連携・相談支援センターと入退院支援センターを合併し、患者サポートセンターを設置した。認定がん相談支援センターとして、「入院支援」「退院支援」「地域連携」「医療福祉相談」の四つを柱とし、医師、看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなどが積極的に関与し、患者のがん診療全般を支援する体制を整えている。
 がんの治療は放射線治療、手術による治療、薬物療法の三つが中心となるが、同センターではいずれも最新の技術、機器等を積極的に取り入れて患者のニーズに応えられる環境を整えている。
 放射線治療は、IMRT(強度変調放射線治療)を中心に、SRT(数個の転移への定位照射)と並行して実施している。IMRTの利点は、正常組織を避けて病巣にのみ高線量の放射線を照射できるため、臓器の正常機能を温存できる可能性が高いことである。また、同様の総患者数であっても照射料が増収になるという経営的メリットもある。同センターは、現在はSynergy(Agility)、TomoTherapy、Novalis TX&ExacTrac、Synergy(MLCi)という4種の装置を導入しているが、Synergy(MLCi))については令和4年11月で稼働を終了し、令和5年3月末に新たな装置が稼働を開始する予定である。
 手術による治療は、がんの病巣を外科的に切除・摘出する根治的な治療法である。その最先端の技術として、ロボットによるサポートを用いた手術方法が開発されている。同センターは、12室(うち、内視鏡下手術専用室3室)の手術室を有している。内視鏡下手術を精密かつ安全に実施するため、支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を設置しており、ロボットアームを使って手術を行っている。令和3年度は泌尿器科、胸部外科、消化器外科の手術で、ダ・ヴィンチを活用した手術が合計317件行われた。
 薬物療法としては、当病院は令和元年9月には全国34か所のゲノム医療拠点病院の指定を受けており、がんゲノム医療を実践している。がん組織からシークエンサーで遺伝子を調べることで、そのがんの治療に最も効果的な治療薬を選択することができる。
 概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で、「緩和ケア病棟について、年間の稼働率はどの程度なのか。また、今後病床数を増やしていくなどの方針はあるか」との質問に対し、「令和3年度は一部を新型コロナウイルス感染症用の病床として使用していたため通常の評価はできないが、約8割の病床稼働率となっている。稼働率は上がってきており、コロナ収束後は活動実績が上がっていくものと考えている」との回答があった。ほかにも、がんゲノム医療の実績などについて質問がなされた。
 概要説明及び動画を用いての施設紹介を通じて、同センターの運営状況について理解を深めることができ、決算審査の参考となった。

お問い合わせ

議会事務局 議事課 予算決算特別委員会担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4922

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