人材育成・文化・スポーツ振興特別委員会視察報告
調査日
令和7年2月4日(火曜日)~5日(水曜日)
調査先
⑴堺市役所・シマノ自転車博物館(大阪府堺市)
⑵裏千家今日庵(京都府京都市)
調査の概要
(1)堺市役所・シマノ自転車博物館
(自転車を活用したスポーツ振興について)
【調査目的】
■本県の課題
- 人生を豊かにするスポーツを、県民誰もが身近に楽しむ機会を増やすため、スポーツの魅力発信、多彩なイベント開催や環境整備を進める必要がある。
■視察先の概要と特色
- 堺市は鉄砲鍛冶の技術を受け継ぎ、「自転車産業のまち」としても知られ、スポーツ自転車部品大手の株式会社シマノ本社をはじめ、日本で唯一の自転車博物館であるシマノ自転車博物館や国際ロードレースの開催地になるなど自転車に関する資源が豊富にある。
- 同市は、自転車で街を巡り、歴史・文化や伝統産業に触れる自転車の新しい楽しみ方を提供したり、BMX試乗体験イベントやサイクルアートを活用した魅力発信をするなど、自転車を活用したスポーツ振興及びまちの魅力創出を実施している。この取組が評価され、スポーツ庁の「スポーツ・健康まちづくり」優良自治体表彰を受賞している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 自転車を「健康」「スポーツ」「アート」等と掛け合わせて、サイクルシティ堺の魅力を創出する様々な取組を実施している。例えば、堺市の魅力的なスポットを周遊しながら楽しむ「SAKAI散走」では、スタンプラリーを通じて健康増進につなげている。
- 取組に当たっては、堺市を中心に、株式会社シマノをはじめとする民間企業、地元のスポーツ団体や大学、大阪府、市民団体など産学公民連携による事業推進を図っている。シマノ自転車博物館では、堺と自転車の歴史に関する展示や子供向けの自転車の乗り方教室などを開催して、自転車の楽しさや新しい価値を広く発信している。
- イベント企画などソフト事業に加えて、自転車を安全・快適に乗れるよう、通行空間の歩行者との分離、不連続箇所の整備、休憩スポットの設置など、府内各地を周遊できる広域的な自転車通行環境を整備している。
- 交通安全啓発にも注力しており、ツアー・オブ・ジャパン堺ステージでの啓発活動、ヘルメットの無料貸出やヘルメット割引クーポンの配布などを行い、自転車の安全利用やヘルメット着用率向上を図っている。
■質疑応答
Q:「サイクルシティ堺」の取組に当たり、大阪府とはどのように連携しているのか。
A:例えば、大阪府と奈良県の大和川沿川自治体(8市8町)が相互に連携してイベントを開催する大和川サイクル月間(10月頃)では、各市町間の調整やイベントの機運醸成を大阪府と連携して行っている。
Q:自転車と「アート」を組み合わせた珍しい取組をしているが、どのようなきっかけでこの取組を行うに至ったのか。
A:スポーツ振興や地域産業等の庁内の関係部署の若手・中堅の職員で、サイクルシティ推進チームを作っている。その中で、シンボリックなものを作ろうという意見があり、モニュメントを制作したのがきっかけである。
Q:大和川リバーサイドサイクルラインはとても広い空間であるが、元々広い堤防だったのか、このために拡張したのか、どのように整備したのか。
A:元々は広くない堤防であったが、地下を走る阪神高速道路大和川線建設と国の高規格堤防事業により、広幅員の整備が可能となった。
(2)裏千家今日庵
(茶道文化の振興について)
【調査目的】
■本県の課題
- 文化芸術で心豊かな県民生活の実現に向けて、本県の多様な文化資源を生かして地域振興を図るとともに、文化芸術活動を支える担い手育成を進める必要がある。
■視察先の概要と特色
- 裏千家今日庵は、国の重要文化財である裏千家の茶室群の管理や、茶道の許状や資格を発行しているほか、茶会や講習会の開催等を通じ、裏千家茶道の伝授と普及を図っている。
- 昭和15年に全国各地に既存していた裏千家茶道愛好者の会やグループをまとめる形で宗家の直轄団体として「裏千家淡交会」が結成された。裏千家茶道の基本的な点前作法を統一し、茶道文化に関する諸種の調査研究を行うほか、学校茶道や海外普及に関する取組を行っている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 現在、茶道界では裏千家が一番大きな組織となっているが、大きく発展した要因は、学校茶道と海外普及の取組である。
- 明治初期、それまで大名や上流階級の楽しみであった茶道を、若い世代の教育に役立てるため、女学校にその門戸を広く開放したことから、学校教育における茶道がスタートした。令和6年の淡交会の調査では、幼稚園から大学までの全国約5,400校(在籍生徒数約148,000人)で学校茶道が行われ、埼玉県でも約110校(在籍生徒数約3,500名)で実施されている。
- 近年では、初等中等教育で授業として扱うことが増えている。京都市では、市内全ての小学校で、卒業までに一度は茶道を学ぶこととしており、この事業の原資は、宿泊税が活用されている。
- 海外への普及は、第二次世界大戦後に本格的に広がり、現在は、38の国と地域に113の拠点があり、そのうち100か所以上は現地のかたがたによって運営されている。
- 日本で唯一の三年制の茶道の専門学校「裏千家学園茶道専門学校」では、全日制の外国人研修コースを設置し、これまでに500人を超える修了生を輩出している。その大半のかたが自国に戻り、海外拠点での活動を支えている。
- 国や自治体、各種団体等からの協力要請があれば、国内外の組織力や特色を生かして、日本を代表する文化団体として、様々な要望に応えられるよう努めている。
■質疑応答
Q:千利休を由来とする三千家(表千家、裏千家、武者小路千家)との協力関係はどのようなものか。
A :組織の規模は変わったが、現在においても協力体制を構築している。特に、大きな行事では連携しており、来年の大阪・関西万博でも三千家で準備が進められている。
Q:海外普及が進んでいるとのことだが、どのような点が受け入れられているのか。
A:禅の心や茶道の精神などが興味を持つきっかけであると感じている。また、昨今の健康志向も普及につながっている。
Q:日系人が多いなど、日本に馴染みのある国のかたが茶道文化は浸透しやすいのか。
A:当初は、日系人の多いハワイ等から普及が進んでいったが、現在は、国を問わず普及が進んでおり、海外の拠点は、外国籍のかた、現地のかたが大半を占めている。

裏千家今日庵にて