経済・雇用対策特別委員会視察報告
調査日
令和7年7月28 日(月曜日)〜 29日(火曜日)
調査先
⑴有限会社戸田商行(土佐市)
⑵香川県/株式会社ハイレゾ「高松市データセンター」(高松市)
調査の概要
(1)有限会社戸田商行
(地域資源を活用した地場産業の振興・魅力発信について)
【調査目的】
■本県の課題
- 本県の地場産業は、高い品質と技術力で国内外で評価されているが、人材不足などにより産業の衰退が懸念されている。地域資源を活用した商品開発や販路開拓、人材育成などを支援し、地場産業の活性化を図る必要がある。
■視察先の概要と特色
- 従来の緩衝材としての用途に加え、近年は木毛を使ったインテリア製品や、木質バイオマス燃料など、新たな用途開発にも力を入れており、木材の有効活用を促進するため、様々な業界への導入を促している。
- 地元の森林所有者や森林組合、木材加工業者と連携し、間伐材などの木材を安定的に調達することで、森林の保全と資源の有効活用を両立させるとともに、地域全体で循環型経済を構築するための取組を進めている。
- 同社の取組は多くのメディアで紹介されるほか、オープンファクトリー等を通じて、木毛の魅力を積極的に発信することで、地域資源の価値向上にも貢献している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 高知県は森林率が84%と日本一である。同社では、地域資源の活用のため、全て高知県産の原料を使用した木毛製品、精油ビジネスを展開している。
- 平成27年からは、社内の様々な改革に取り組んできており、中でも「日本最期の木毛屋」というキャッチフレーズを付け、PR動画の作成やマスコミへのアピールを通じて、木毛の魅力を多方面に発信している。
- 同社は、ひとづくりを大切にしており、日頃製造している木毛製品がどんな意味を持つのかを、年に1回開催する経営方針発表会の中で改めて社員全員で共有し、社員一人一人のものづくりに対する真摯な姿勢を育んでいる。
- 令和4年からは、国の事業再構築補助金の採択を受け、木毛製造で培った木材加工の技術を活用できる精油ビジネスを開始し、翌年からは、全国の出荷量の90%以上を高知県が占める文旦を活用したオイル製品の開発を始めた。新規事業を開始するに当たっては、社員の納得と協力が不可欠であり、現場の社員と密にコミュニケーションを取り、試行錯誤を重ね進めてきた。
■質疑応答
Q:木毛製品の製造に当たっては、原料や製品の繊細な管理が必要だと思うが、歩留り率は良いときと悪いときでどの程度か。
A:平均では60%ほどである。近年、木毛の原料であるアカマツの出材自体が減少している。買い付けた際に、トラック一杯になるまで出材を待つことがあるが、工場に到着したときには、「藍」が、初めに積み込んだマツを侵食して歩留り率が低下してしまう。
Q:ヒノキやスギ、文旦以外の原料を使用したオイル事業の今後の展望はどうか。
A:アロマ製品の販売は、難易度が高いと感じている。ヒノキやスギに関しては、これまで培った木材加工技術があり、文旦は原料が豊富な点で事業化しているが、その他の原料については、原料の確保が難しく、搾汁率を上げない限りは収益化は難しい。

有限会社戸田商行にて
(2)香川県/株式会社ハイレゾ「高松市データセンター」
(企業誘致の取組について)
【調査目的】
■本県の課題
- 本県の企業誘致は、産業用地や人材の不足、一部の地域でインフラ整備の遅れなどの課題があるため、県・市町村・民間の連携による情報収集と発信、立地企業に対する支援を積極的に行う必要がある。
■視察先の概要と特色
- 同県は、「せとうち企業誘致100プラン」に基づき、企業誘致を強化しており、令和6年度の企業立地件数は、過去最高の61件となった。
- 情報通信関連産業やデータセンター(以下、「DC」)の分野を重点的に誘致しており、代表的な立地企業である株式会社ハイレゾは、県の既存施設と廃校を活用して、中四国初のAI開発専用のDCを整備した。
【調査内容】
■聞き取り事項(◎:香川県、●:株式会社ハイレゾ)
- ◎「せとうち企業誘致100プラン」は、(1)用地確保、(2)交通・物流インフラの整備、(3)人材確保、(4)独自の助成制度等による支援、(5)技術支援・ワンストップサービスの充実の五つの柱で構成されている。
- ◎同県も全国的な傾向と同様に、産業用地の確保が課題となっている。令和5年度に創設した都道府県初の制度として、民間事業者による工業団地等の開発を支援する仕組みや、官民で連携した未利用地や物件情報の一元管理を通じて、企業誘致基盤の整備を進めている。
- ◎より企業ニーズに沿った人材マッチングを支援するため、県独自のハローワーク「ワークサポートかがわ」を設置し、教育機関等と連携して企業の人材確保を支援している。
- ●同社のGPU事業は、AI開発に不可欠な高性能GPUによる「計算力」を、優れたコストパフォーマンスで提供するクラウドサービスであり、同県には、西日本最大のAI専用計算センターを、RISTかがわ(高松市)と旧綾上中学校跡地(綾川町)の2拠点に構えている。
- ●綾川町DCは、廃校の利活用という特徴を持つほか、敷地内の一部を「オープンエリア」として一般のかたがたにも開放し、地域交流や活性化に寄与する施設として整備する予定である。
■質疑応答
Q:民間事業者による工業団地の造成を支援するとのことだが、造成費用の助成以外では、県はどこまでの支援を行っているのか。
A :開発許可申請の前段階まで、地元との調整等の支援を行っている。一つの工業団地の造成費用は、用地取得費も含め、数十億~数百億円程度かかるが、用地取得はデベロッパーが行うため、県としては団地の造成に予算を投じない形となっている。
Q:埼玉県でも教育機関と連携した人材確保支援は行っているものの、工業高校等を卒業後、大学へ進学する学生が増えており、地元企業の人材確保が難しくなってきていると感じている。高校に向けた具体的なアプローチはどのようなものか。
A:工業高校等へ企業と一緒に訪問し、校長や進路指導の先生に対して、直接企業の魅力をPRし、企業と工業高校等をつなげる活動を続けている。