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掲載日:2023年5月23日

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公社事業対策特別委員会視察報告

期日

平成30年8月21日(火曜日)~23日(木曜日)

調査先

(1) (一財)世界遺産白川郷合掌造り保存財団(岐阜県白川村)
(2) (一財)岐阜県魚苗センター(美濃市)
(3) (公社)岐阜県森林公社(美濃市)
(4) 名古屋空港ビルディング(株)(愛知県豊山町)

調査の概要

(1) (一財)世界遺産白川郷合掌造り保存財団

 (出資法人による特色ある取組について)

【調査目的】

 (一財)世界遺産白川郷合掌造り保存財団は、世界遺産に登録された白川村荻町伝統的建造物群保存地区と地域の環境を保全し、住民の生活環境を向上させ、白川村の振興発展に寄与することを目的に平成9年に設立された。
 白川郷を訪れる観光客は、平成7年の世界遺産登録を機に70万人から150万人へと急激に増加し、土産物店や飲食店などの増加による雇用創出で経済的な恩恵を受け地域活性化につながった反面、景観の悪化や交通渋滞といった地域住民の生活環境上の問題も発生している。
 観光客増加の成果と課題に対する同法人の特色ある取組状況を視察することで、本県出資法人の取組の参考とする。

【調査内容】

 白川村は、岐阜県の西北部に位置し、白山、日照岳、人形山など急峻な山々に囲まれた農山村で、村の面積のうち95.7%を山林が占めている。飛騨地域の中でも険しい地域で、急斜面の間を縫うように庄川が流れ、その流域に集落が形成されている。11月の初雪から降雪期間が4か月余り続く日本有数の豪雪地帯である。人口は、平成30年7月1日現在、1,633人となっている。
 (一財)世界遺産白川郷合掌造り保存財団は、世界遺産に登録された保存地区と地域の環境を保全し、住民の生活環境を向上させることを目的に平成9年に設立された。同法人の主な事業は、世界遺産集落の保存のための調査、研究、指導、援助及び普及である。
 合掌造りは、木材を梁の上に手の平をあわせたように山形に組み合わせて建築された勾配の急な茅葺きの屋根を特徴とする住居であり、保存地区内には109棟が存在している。この茅葺きについて、昔は村の共同作業制度である「結(ゆい)」を中心に茅や労力を出し合い葺き替えていたが、現在では結による助け合いが困難となり、メンテナンスを業者に依頼することで多額の維持費が必要になったという。同法人では、合掌造りの所有者の負担を軽くするため、様々な助成制度を設けている。このほか、トタン屋根の建物についても色彩を茅葺きと調和させるためのトタン屋根葺替助成として補助事業を展開している。また、地域活性化事業として、人材育成にも取り組み、小中一貫の義務教育学校である白川村立白川郷学園でのふるさと学習を支援して、景観保全学習につながる教材への助成を行っている。なお、農村景観の保全のために水田復旧事業として、耕作放棄地の解消にも努めたとのことであった。
 観光客数は、東海北陸自動車道が全線開通した平成20年に過去最高の186万人を記録し、昨年も176万人が訪れており、近年は外国人観光客も増加している。このため、交通対策として、平成21年に大型車両を、平成26年に観光車両の世界遺産地区への乗り入れを制限し、併せて、観光駐車場やバスターミナルを整備している。同法人は、村から駐車場管理運営業務を受託している。
 交通網が格段に向上した影響で、滞在時間1時間程度の通過型観光が主流となっているが、村では、宿泊施設を誘致して滞在型・体験型の観光を促進しており、村内40か所への共通ルータの設置によるWi-Fi環境の整備や多言語対応マップの作成等に努めているとのことであった。
 概要説明の後、冬季の観光客数や保存地区の建物の内装などについて、委員から活発な質問が行われた。質問後は、白川村荻町伝統的建造物群保存地区を視察した。
 今回視察先を調査できたことは、本県の出資法人の特色ある取組を推進する上で、大変参考となるものであった。

(2) (一財)岐阜県魚苗センター

(出資法人による施設の運営について)

【調査目的】

 (一財)岐阜県魚苗センターは、岐阜県河川漁業の最重要魚種であるアユ種苗の生産、供給を行うとともに、生産技術の改良、資源調査、情報の提供などアユ漁業を中心とした同県水産業の振興に寄与することを目的に、同県と岐阜県漁業協同組合連合会が共同出資し、昭和58年に設立された。同センターは、その後、平成24年に一般財団法人に移行している。
 同県のアユ漁獲量は近年、冷水病の発生などにより減少しており、同センターでは、放流用アユ種苗の安定確保と価格の安定化を図り漁獲量を回復させるため、平成29年度に冷水病菌を持たない放流用種苗(稚アユ)の生産能力を増強する施設の整備を行っている。
 施設拡充に係る成果と課題などについて、同センターの取組状況を視察することで、本県出資法人による施設の運営の参考とする。

【調査内容】

 (一財)岐阜県魚苗センターは、放流用アユ種苗の安定確保と種苗価格の安定化を図るため、岐阜県と岐阜県漁業協同組合連合会が共同出資して、昭和58年1月に(財)岐阜県魚苗センターを設立し、翌月に業務を開始した。平成24年9月に(一財)岐阜県魚苗センターに名称変更している。センターの組織は、代表理事、業務執行理事、事務局長、事務局次長がおり、その下に総務課及び業務課を配置している。同センターは、岐阜県内に2か所の事業所を有しており、今回訪問した美濃事業所は、12,548平方メートルの敷地に、屋外池を含むA棟からG棟の飼育池、出荷池、管理棟、機械棟などを設置している。
 アユの稚魚を作るには、産卵期の秋から翌春に渡り6か月以上飼育管理する必要があり、ふ化してから90日頃までは、水温15度前後の人工海水で飼育し、その後、淡水に切り換えて放流サイズまで飼育するとのことであった。このため、最新の技術を駆使して、飼育池の水温を自動コントロールできるようにしている。
 同センターの施設の特徴として、アユが病気にかかったときに、ほかの飼育池へ感染しないよう各飼育池にそれぞれろ過槽を設置しているほか、外部からの病原菌の進入防止を図るために、車両の消毒槽を設置するなど防疫体制に万全の注意を払っている。また、アユを傷めずに取り上げることができるように各池にフィッシュポンプの接続口を設置したほか、作業通路幅を広くするなど業務の効率化、省力化を図る施設となっている。
 同センターが設立された昭和58年まで、アユの市場は天然物のみの売手市場であり、定価では良質なアユが確保しにくい状況であった。しかし、平成29年度には、岐阜県内河川放流量全体の120トンのうち、同センター生産分が約6割の70トンを超え、価格も昭和58年度の6割以下にまで抑えることができており、設立当初の目的は達成されているとのことであった。
 なお、平成27年に「清流長良川の鮎」が国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産(GIAHS)に認定されている。同センターでは、アユの遺伝子の多様性に配慮し、毎年、多数の天然親魚から採卵を行い、「清流長良川の鮎」を支えているとのことであった。

公社_(一財)岐阜県魚苗センターにて 

(一財)岐阜県魚苗センターにて

 概要説明の後、委員からは活発な質問が行われた。その中で、「岐阜県内で生産された魚苗は県内でのみ流通するのか」との質問があり、「前提としては県内のみだが、実際には県外にも活魚として出している」との回答があった。質問後は、平成29年度に新規に整備した飼育施設であるG棟を視察した。
 今回視察先を調査できたことは、本県の出資法人における施設運営について、大変参考となるものであった。

 

(3) (公社)岐阜県森林公社

(分収林事業に係る経営改善の取組について)

【調査目的】

 (公社)岐阜県森林公社は、昭和41年に岐阜県、市町村及び岐阜県森林組合連合会等を社員に社団法人として設立された。その後、平成9年に岐阜県森林公社に名称を変更、平成25年に公益社団法人に移行している。
 同公社は、木材資源の充実と水源涵養等の確保を目的に、土地所有者から預かった土地に、公社が造林者と費用負担者としてスギ、ヒノキ等を植え育て、将来生長した木材を伐採し土地所有者と収益を分収する事業(分収林事業)を行っている。分収林事業は、全国の公社等が行っているが、木材価格の低下や労務費の上昇等により経営は非常に厳しい状況にある。こうした中、同公社では平成28年に分収割合の変更を含む第6期分収林計画を策定し経営改善に取り組んでいる。
 本県公社と同様の業務を行う出資法人である同公社の経営改善の取組を視察することで、本県公社の取組の参考とする。

【調査内容】

 (公社)岐阜県森林公社は、昭和41年に社団法人として設立され、平成9年に岐阜県森林公社への名称変更を経て、平成25年に公益社団法人に移行した。設立の目的は、地球温暖化防止、水源涵養、県土の保全等森林の多面的機能を発揮する森林の整備・保全を図り、森林資源の育成を進め、併せて人材の育成・確保の支援を図ることとされている。社員は、岐阜県、市町村、森林組合など58団体で構成しており、出資金は、548万円で、岐阜県の出資比率は47.8%となっている。組織体制は、理事長以下29名の人員を配置している。
 同公社は、戦中戦後の大量伐採による森林の荒廃や木材需要の急増等に対処するために国が進めていた拡大造林政策に従って、特に山奥など森林所有者自ら管理することが困難な森林を中心に整備する役割を担うために設立され、以来、1万4,000ha余りの分収林を造成してきた。この間、分収林の適正な保育管理を通して県土の保全、水源の涵養、さらに二酸化炭素の吸収による地球温暖化対策に重要な役割を果たしてきたほか、山村地域の雇用創出に貢献してきた。その分収林も成熟期を迎え、ここ数年は利用間伐による木材生産量も着実に増え、本格的に伐って利用する時代に入っており、今後は岐阜県の木材供給の一翼を担っていくことが期待されている。しかし、公社設立当時に上昇していた木材価格は、木材の輸入自由化などにより昭和50年代半ばから下落に転じ、その傾向は現在に至るまで続いている。一方で、人件費の上昇から森林整備に係る経費が増加し、結果として分収林事業の採算性は悪化していった。そこで、同公社は、平成6年頃から職員の削減、長伐期施業の導入、保育事業の実施基準の見直し、低利融資制度や有利な補助金の活用、利用間伐による中間収入の確保などの経営改善のための取組を実施した。さらに、平成28年を始期とする第6期分収計画では、平成12年度以降の契約で3対7だった分収割合を土地所有者2割、森林公社8割に見直す変更を行った。こうした様々な経営改善に取り組んでいるが、依然として厳しい状況にあり、今後も不断の取組を続けていくとのことだった。
 概要説明の後、委員からは活発な質問が行われた。その中で、「長伐期施業の期間をどれほど延長したのか」との質問に対し、「50年から60年を伐期とした標準伐期施業から100年を伐期とした長伐期施業に転換した」との回答があった。
 今回、本県公社と同様の業務を行う出資法人の経営改善の取組を調査できたことは、大変参考となるものであった。

(4) 名古屋空港ビルディング(株)

(出資法人による経営改革の取組について)

【調査目的】

 名古屋空港ビルディング(株)は、昭和32年に名古屋空港のターミナルビルの建設、管理運営を担うため、愛知県、名古屋市及び地元財界等の代表が出資し設立された。名古屋空港は、平成17年2月の中部国際空港の開港に合わせて同県が設置管理する名古屋飛行場、通称「県営名古屋空港」となり、同社は所有する旧空港施設の撤去や企業規模の縮小により経常赤字に陥った。同社は、旧国際線旅客ターミナルビルを複合商業施設に転活用するため、旧国際線エリアの土地等を一般競争入札で取得し、ユニー(株)と建物等賃貸借契約を締結した。この事業により不動産賃貸収入を計上し、経常黒字に転じた。こうした取組が評価され、総務省の第三セクター改革等先進事例集に経営健全化した事例として紹介されている。本県出資法人の経営改革の参考とするため、同社の取組を視察する。

【調査内容】 

 名古屋空港の前身である小牧飛行場は、太平洋戦争最中の昭和19年に名古屋防衛のための防空飛行場として旧豊山村に旧陸軍により建設された。終戦後は、アメリカ軍が接収し、その管理のもとで滑走路などの整備、拡張が進められたが、昭和27年に日本航空による定期航空路線が開設されると空港ターミナルビル建設の機運が高まり、昭和32年に、当時としては前例のない地方自治体と民間が出資する第三セクター方式による名古屋空港ビルディング(株)が資本金5,000万円で設立された。
 その後、航空需要の増大に対応するため、ターミナルビルの増築などの整備を重ねたが、周囲を市街地に囲まれ施設拡大が困難な状況もあり、平成8年に中部国際空港の着工が決定された。中部国際空港が開港するまでの間の旅客者数増加に対応するため、名古屋空港にも新たなターミナルビル建設が不可避な状況となったが、完成しても利用される期間が10年に満たないこともあり、採算が取れるか疑問視する意見もあった。しかし、税収や地元産業へ影響を与えることになるため地元自治体から愛知県に対し、国内航空路線の存続を求める申し入れがあり、同社においても、既設ビルの有効活用、建設費の低減、新ターミナルビルの転活用などによって、中部国際空港へ定期航空路線が一元化された後も採算は確保できるとの見通しを立て、平成9年に国際線旅客ターミナルビル計画を発表した。計画発表後の同年には、地元自治体、経済界、学識経験者などによって構成された検討会議が設置され、中部国際空港開港後の名古屋空港の活用及び周辺地域の振興に関する検討が進められた。平成11年に新国際線ターミナルビルの供用が開始されると同時に、検討会議による名古屋空港の活用などに関する基本構想が示され、その中で、集客型産業の創出に複合型商業施設の誘致を図ることが提案された。これを受けて、同社では複数の専門事業者から国際線旅客ターミナルビルの複合商業施設化計画を進めることとなった。
 平成17年の中部国際空港の開港に合わせて、同社のターミナル施設の賃貸業務の全てと販売・案内業務の大半が終了し、新たに開港した県営名古屋空港の指定管理者として、同社が改めて空港施設の運営業務と空港の運用業務を担うこととなったが、同社が所有する旧空港施設の撤去や企業規模の縮小により経常赤字に陥いることとなった。一方で、同社は、多くの大型商業施設事業者と協議面談を実施し、建物全体を一括して借用することで同意したユニー(株)と平成19年に賃貸借仮契約を締結、平成20年に複合商業施設であるエアポートウォーク名古屋をオープンさせた。この結果、同社は安定した不動産収入を得ることとなり、経営状況が改善し平成21年度から経常黒字に転じた。同施設には年間650万人を超える来店者があり、空港周辺地域の振興や雇用促進の一翼を担い、地域社会に大きく貢献している。また、平成29年度には同社が指定管理者となる、あいち航空ミュージアムが隣接地に開館し、更なる経営改善に資することが期待されている。
 概要説明の後、施設転用に関する工夫などについて、委員から活発な質問が行われた。質問後は、エアポートウォーク名古屋及びあいち航空ミュージアムを視察した。
 今回視察先を調査できたことは、本県出資法人の経営改革の取組を推進する上で、大変参考となるものであった。

公社_名古屋空港ビルディング(株)にて

名古屋空港ビルディング(株)にて

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