地方創生・行財政改革特別委員会視察報告
調査日
令和7年2月7日(金曜日)
調査先
⑴野村證券株式会社(東京都千代田区)
⑵羽田イノベーションシティ(東京都大田区)
調査の概要
(1)野村證券株式会社
(地方自治体の基金等の運用について)
【調査目的】
■本県の課題
- 県民の3人に1人が高齢者になると見込まれる2040年を見据え、限られた予算・人員を最大限活用し、効率的な行財政基盤を構築して行政サービスを提供していくことが必要である。
■視察先の概要と特色
- 同社は日本の総合証券会社大手5社のうちの一角であり、顧客は個人投資家・国内外企業等多岐にわたるが、地方自治体向けには公金管理等の支援・提案を行っている。
- 国内109店舗、約30の国・地域の拠点でサービスを展開しており、顧客資産残高は約134兆円(令和5年9月時点)で国内最大の規模である。
- コア業務である証券業務だけでなく、地方自治体、学校法人、宗教法人、社団・財団法人、医療法人等、さまざまな公共・公益法人に向けて、それぞれのニーズに合った提案を行っている。
- 地方自治体向けには、公金管理体制の構築、基金等の適正運用、地方債の多様化、施設建替え等についての提案を行っている。
- 同社を視察することにより、本県における基金等の運用の参考とする。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 2016年度から2021年度までは国債はマイナス金利の時期が続いていたが、2022年度から満期5年の国債の利回りもプラスとなった。20年や30年と満期が長い債券への投資はためらうが、5年ならば検討できるという方が増えたため、債券投資への機運が高まっている。
- アンケートによると、公金等の運用について、道府県の場合ラダー運用を基本方針としている団体が50%(うち約25%が10年ラダー、約75%が20年ラダー)、政令市では100%となっている。
■質疑応答
Q:道府県と政令市の運用の基本方針の比較の説明があったが、結果として最も運用の結果が優れるのはどのような運用方法だったのか。
A:自治体ごとに財政状況が全く違い、また多少長期間で比較する必要があるため、一概に比較することは難しい。ただし、経験的に、ラダー運用は多くの自治体が採用しているが、10数年もそのような形になっているので、少なくとも合理的な説明ができ、きちんとしたパフォーマンスになっているということはいえると考えられる。
Q:GPIFも、年金というとても大切なお金を預かって運用を行っているが、ある程度のリスクを負ってもよいというような方針で運用をしているように思われる。一方で、自治体の基金についてはとにかく安全性を重視することとされており、これらの違いは何によるものなのか。
A:都道府県の減債基金も比較的足は長いが、GPIFの運用する年金積立金は更にはるかに長期である。運用期間が長いため、リスクを取りやすいという性質がある。
(2)羽田イノベーションシティ
(官民連携によるまちづくりについて)
【調査目的】
■本県の課題
- 本県の人口は、平成27年と令和2年を比較した人口増加率では1.1%増となっているが、市町村別では38市町村が人口減となっている。また、現在は人口増となっている県南エリアでも、令和17年をピークに人口減に転じる見込みであり、民間事業者や市町村と連携した魅力ある地域づくりに向けた取組が必要である。
■視察先の概要と特色
- 羽田イノベーションシティは、大田区が羽田空港跡地第一ゾーン整備事業として羽田みらい開発株式会社と官民連携によるまちづくりを進め、2020年7月に開業した。
- 大田区は、同シティをテストベッド(地域課題の解決の場)と位置付け、持続可能な都市を構築するための課題の解決のため、様々な先端技術の実証実験を同シティ内で行っている。現在は無人自動運転バスの運行、換気制御プロダクトの活用による換気量の自動制御、電池レスデバイスによる混雑状況のデータ化、配膳ロボットによるレストラン営業等の実証実験を行なっている。
- 令和4年には「スマートシティEXPO」を2回開催し、これ以降も先端技術と文化を軸とした催しを複数回開催している。
- 官民連携により先進的なまちづくりを行なった事例として、同シティを視察する。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 同シティでは、最先端技術の実装とまちづくりのデジタル基盤の構築を二つをテーマとしてスマートシティの取組を推進している。前者の分野では、現在は施設内を巡回する自動運転バスの運行や自動清掃ロボット、警備用ロボットの活用を進めている。後者の分野では、3Dフィールドと名付けたデータ連携基盤を用い、施設内のビーコンと人が所有するスマートフォンを用いてBluetoothにより行動軌跡を記録して可視化する等している。
- 地震等の非常事態発生時もスマート化を進めており、3Dフィールドを活用してシティのゾーンごとに地震直後の建物の安全状態を把握することができる。これにより、企業のBCPへの活用や避難誘導業務の効率化に役立てられるよう検討している。
- また、同シティは電気・ガス・熱・水素の4種類のエネルギーインフラを備え、災害に強いまちづくりを進めるとともに、電力供給の最適化によって省エネを進めている。
■質疑応答
Q:平日である現在はあまり来客者がいないように見受けられるが、休日はお祭り、イベント等で集客ができるのか。
A:通常の平日も自動運転バスの運行はしているが、来場者数が多くなるのはイベントを行う土日である。イベントの際は多くのロボットの実験などをお見せできるため、大田区のかたをはじめとして近隣のかたにお楽しみいただいている。

羽田イノベーションシティにて